
ブレークスルー 突破口を探る
バスを守れるか
(1)存続の危機 (2011/11/07)
その3.細る利用 存続の道は
○八戸市営バスを考える。
地方の公共交通は、人口減やマイカーの普及に伴う利用者減少に歯止めがかからず、厳しい状況下にある。八戸市営バスも例外ではなく、上限運賃化実証実験や民間と連携した等間隔運行など、さまざまな取り組みを講じて存続の道を探る。2012年に80周年を迎える市営バスの歴史や路線の変遷を振り返るとともに、輸送人員や乗車券などのデータを基に利用の実態を分析。持続可能なバス交通の未来に向けた識者の提言を紹介する。
(工藤洋平、松原一茂)
写真・利用者減に歯止めをかけるため、さまざまな模索が続く八戸市営バス=10月、十三日町バス停
○変遷
都市基盤拡大で伸長
乗客、1969年ビークに減少
八戸市は1932(昭和7)年10月1日、民間事業者から営業権とバス7両を買収し、バス事業を開始した。開業当時の運行系統は新荒町―鮫町間と八戸駅(現・本八戸駅)―鮫町間。戦時下の企業整備統制令で、五戸鉄道(現・南部バス)に一時的に統合されたが、48年7月に再スタートを切った。
その後、隣接村との合併や大手企業の進出、郊外への団地造成などで市内の都市基盤が拡大。急激な人口増加も相まって、バス路線網は飛躍的に伸長した。
年間利用者数は側年度に2837万人とピークに達したものの、マイカーの普及や交通手段の多様化などで減少傾向に転じ、市営バス事業は経営が悪化。74年には15年間にわたる再建団体の指定を受け、事業再生に向け苦難の道を歩んだ。
2010年度の収入は16億3101万円で、ピーク時だった93年度の39億7263万円の4割まで激減。営業規模の縮小に合わせ、市は正職員乗務員の配置転換や車両数の見直しなどコス・卜削減に取り組む。
路線網は最大で21路線あったが、河原木団地、日東、新工場内、大橋循環、階上の5路線が廃止された。現在の全16路線のうち、10年度に黒字だったのは南高校、根城、岬台団地の3路線のみとなっている。
○利用実態
平成以降 落ち込み顕著
高齢者の割合、一気に拡大
八戸市営バスの年間利用者数は、1969年度の2837万人をピークに、その後は下降線を描いている。
89年度には2千万人を下回り、2002年度には1千万人を割り込んだ。91年度からは20年連続で前年度を下回るなど、特に平成に入ってからの落ち込みが大きい。
2010年度は657万人となり、ピーク時の4分の1以下にまで減少。1日平均の利用者数は1万8千人にとどまる。
乗車券別の利用比率を見ると、70年度は定期券の割合が38・24%に上り、通勤券が全体の4分の1以上を占めた。
その後、定期外の利用者が増え、90年度は高齢者や障害者を対象とした特別乗車証(74年度導入)が7 ・48%に。定期券は減少を続け、通勤券の割合は70年度の半分以下となった。マイカーの普及が背景にあるとみられる。
2010年度は定期外が全体の8割弱を占め、うち特別乗車券が43・99%に上った。データからは高齢者の利用割合が一気に拡大したことが見てとれる。
運賃は市営バスが営業を開始した32年10月に1区間5銭と設定。その後、距離に応じて加算するシステムとなり、82年10月には最低料金が100円に。今年10月の上限運賃化に伴い、初乗りは150円となった。
○識者に聞く
八戸圏域公共交通計画推進会議座長 吉田 樹氏
実証実験「攻めの投資」
民間との役割分担を
-八戸圏域で実施中のバス上限運賃化実証実験の狙いは。
これまで補助金は運行費の赤字を補頃(ほてん)する意味合いがあった。だが、今回の実証実験は将来の公共.交通を残すために投資するという考え方。守りではなく、攻めに転じているのが特徴だ。
ただ単に安かろう、悪かろうではいけない。JR八戸駅から八戸市中心街までの等間隔運行や定期券売り場の集約、停留所を分かりやすくするなど、運賃政策だけではない努力を積み重ね、"合わせ技"として効果的に実施する必要がある。
―公営と民間の連携で求められることは何か。
八戸地域では市と民間事業者がバスを運行しているため、本数と路線は残されており、住民にとっては恵まれた地域と言える。それほど新しい投資をしなくても、調整することでサービスの向上が図られる。
例えば、市内であれば市営バスと南部バスはかなり競合していた時期もあった。現在は互いに連携する「協働」に変わりつつある。
バス路線は、
①黒字路線
②公営なら赤字だが、民間であれば黒字路線
③赤字路線
―の三つに分けることができる。②は民間活力を使うべきで、③の民間の採算ベースに乗らない路線は公営が補うなど、路線の特性に見合った役割分担があってもいいのではないか。公営交通には安定的なサービスが求められている。
―まちづくりなどヘの活用の可能性は。
郊外店と中心街の店舗を見ると、郊外店には全国展開するテナントも多い。街なかにはそういうテナントを呼ぼうと思っても難しいのが現状で、行政の政策でもできない。
だが、公共交通は行政がまちづくりにアプローチできる最大の武器だ。公共交通を生かすことができれば、新たな試みにもつながるだろう。
―バス交通を持続可能にするにはどうすればいいか。
バス路線は利用者が減少することで廃止、縮小につながる。そうなればさらに不便になり、ますます使い勝手が悪くなる。こうした悪循環を断ち切らないといけない。
バスを魅力あるものにしていくのが一番大事な作業だ。これまでの取り組みもそこに集約される。公共交通を毎日使わなくてもいいが、交通手段の選択肢として市民に知ってもらいたい。
路線や運行本数が減少すれば、バス事業の維持に向けたハードルはさらに高くなる。ここで手を打たないと、将来にバス交通を残すことができなくなる。
【略歴】よしだ。いつき 1979年、千葉県松戸市生まれ。東京都立大大学院都市科学研究科博士課程修了。2007年4月、首都大学東京のリサーチアシスタントに就き、08年1月から同大大学院助教。専門は公共交通政策。11年1月、八戸圏域公共交通計画推進会議の座長に就任。32歳。
デーリー東北 より
この「細る利用 存続の道は」は7面に掲載され、デーリー東北HPには出ていない。この3つの記事で"(1)存続の危機"である。
「74年には15年間にわたる再建団体の指定を受け・・」
私にとって、もろに学生期間である。あの時期からも、八戸市営バスは新車導入しかしていない。南部バス・十鉄バスのように中古車は入れてない。それだけ乗車人数が多かったということか。
「1969年度の2837万人をピーク」
69~74年で再建団体になるのだから、いかにた大衆乗用車ブーム・モータリゼーションが凄かったか分かる。これで地方の自家用車通勤が定着し、企業活動も自家用車通勤が前提の活動になったと言える。高卒時は普通免許習得が常識であるから。
個人でヴェルファイア(全長4865mm)を持つ時代、ハイエーススーパーロング(全長5380mm)やコースター(全長6255、6990mm)、ポンチョ(全長6290、6990mm)が魅力アップ出来るか。
Posted at 2011/12/04 12:49:22 | |
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