
発進時、クラッチペダルから最後に足をすっと離すとき、ギクシャクするような不自然さが残り、ジャダーが発生してしまう。
気のせいか違和感は日ごと増しているように思われ、クラッチ周りのトラブルを疑った。
はじめに疑うのは、定番のレリーズシリンダー(画像1)。バッテリーを外し目視確認すると、漏れはないようだが、ミッションの上にオイル滲みの乾いた跡に見えなくもない痕跡が見られた。
予防整備のつもりで、ストックのレリーズシリンダーに交換、ワンウェイバルブ付きホースを用い一人でエア抜きを始めたが、いつまで経ってもペダルが戻ってこない。
フルードは上がってくるのだが、一向にペダルの感触が戻らない。
電話でkapiさんに相談すると、
「手伝いましょう」
と駆け付けてくださり、しばし二人でエア抜きを再開するも、やはり状況は変わらず。
可能性は低いが、念の為シリンダーが外れだったことを疑い、BENDIX製を秘蔵のALFA純正品に交換、それでもやっぱり状況は変わらない。
どうも他に問題がありそうだ。
kapiさんが室内側ペダルの奥を覗き込み、「これはマスターかもしれませんね」
と一言。
クラッチペダルの奥をライトで照らしてみると、マスターシリンダーにはオイリーな汚れが付着している。どの程度の漏れが発生しているか覗き込んだだけでは不明だが、マスターシリンダー(画像7)のトラブルであることは間違いなさそうだ。
マスターの在庫はなく、作業は一旦中断。ebayで欧州から購入し、到着を待った。
パーツは10日程で届いたが、交換作業はなかなか大変そうだ。
シリンダー自体は室内側から締め込まれているナット2ヶ所を緩め、リザーバタンク側・レリーズシリンダー側それぞれの配管を解放すれば外れるのだが、車室側ペダルスペースの最奥部に位置するので、何しろ手が入らない。
無理して手を入れるにも、今度は体の置き場がない。
これは既に交換を終えての画像だが、このようにペダルやリンクの交差する向こう側に鎮座する。
ネットを検索すると、運転席に逆さに座るようにして作業する画像が出てくるなど、かなりアクロバティックな姿勢が強要されるようだ。
作業を少しでも楽にするため、思い切って運転席とダッシュボード下顎を外し作業に臨むことにするが、加えてマスターからレリーズへ向かう配管はエンジンルーム側からでないと手を付けられないため、インテーク回りもどけておく必要がある。
あれこれ外す作業が億劫で結局一月ほど放置するうち、梅雨も明け本格的な夏到来、クルマなしではどうにもならないだろうとようやく作業を再開した。
インテークを外したエンジンルーム。画像は既に外した後だが、マスターの配管を抜くには、アクセルケーブル・ストラットのカバーも邪魔になる。
アクセルケーブルのカバーをはずす前。真ん中の黒い金属の覆いがそれ。
ちょうどこの陰にリザーバからの配管、レリーズへ向かう配管のフレアナットがある。
室内側もダッシュボードと運転席を外し、作業者の体の置き場と工具の入るスペースをできるだけ確保し作業再開。
マスターシリンダー本体は室内側から2ヶ所、13mmナットで固定されている。作業中は暑くて画像等撮っていられなかったので、新しいシリンダーに交換後の画像。
ナットはエクステンションで緩めればよいが、同じく室内側にあるリザーバタンク側配管からのゴムホースは上側に差し込み口があり、ホースバンドを緩めるのも至難の技。バンドのプラスネジの頭が、何故か工具の入らない方向を向いており、結局エンジン側でゴムホースを外し、シリンダーごと室内へ引っ張り込み、シリンダーを摘出してから取り外した。
DELPHIの新品マスターシリンダーと、取り外したものを並べてみる。
寿命を迎えているのは一目瞭然、フォークは手で押すと引っ掛かりがあり、無理に押し込むとフルードが跳ね飛んで底付き、戻ってこなくなってしまった。
クラッチのギクシャクの原因は明らかにマスターであったようだ。路上で不動になる前でよかった。
ゴムホースにもシリンダー差し込み部に劣化が見られたため、これまた予防整備で交換することに。
ホースの内径約8mm。
外径約13mm。
マスターシリンダーを外したエンジン側。
プラカバーの付いたホース通し穴がタイトで、13mmより太いホースは使えそうもない。モノタロウに内径やや細めながら、ちょうどよいサイズの
耐フルード性ホースがあり発注、到着を待つ間、再度作業中断。
さすがのモノタロウ。ホースはすぐに届き、翌週作業再開。
先にマスターシリンダーにホースを装着してしまうと、室内側からバルクヘッドを通すのは、①穴の位置がほぼ手の入らないような奥にあること、②穴のサイズがタイトであること、これら理由でほぼ不可能。
よって、通し穴にシリコングリスを塗って滑りやすくした上で、330mmホースを切らずにそのまま、先端がクラッチペダルの先に顔を出すまで通してしまう。室内側でマスターにホースを接続したら、エンジン側へ引っ張り戻し適正長にカットするという手順を取った。
これはカットする前のホースを引っ張り戻したところ。既にマスターは室内側から固定し、レリーズシリンダー側配管も装着が済んでいる。
この後ホースを適正長にカットし、右のリザーバタンクからの配管に接続する。
ようやく作業完了、再びkapiさんと今度こそのエア抜き開始。
今度はペダルに感触が戻ってきた。しかし、フルードに混じった気泡が消え始めると、一気に感触が抜け、またエアを噛みこんでしまう。何度やっても同じ状態の繰り返し。どこからか漏れが発生しているのだろうか。
リザーバタンクからマスターシリンダーへの配管、マスターからレリーズシリンダーへの配管を手袋を外した指先と目視で辿り、特にゴムホースの差し込み部分など注意して確認するも、漏れらしいものは見付からない。
残る可能性として考えられるのは、画像3、リザーバからのゴムホース部分からエアを吸っていることくらい。ペダルを踏み・離ししても、マスターから上流側へ逆流する圧は掛からないはずなので、フルード漏れがなくても充分考えられるトラブルだ。
他に原因が思い付かず、kapiさんのトランクに常備されていたゴムホースがサイズ的に何とか合いそうだったので、拝借することに。
採寸しなかったが、元のものはリザーバ側・配管接続側と内径の異なる専用品。リザーバ側は内径が少し太くなっており、拝借したホースでは少し細かったのだが、ドライヤーで温めながらホースバンドが掛かる位置までグリグリと押し込んだ。
ホースを替えエア抜きを再開すると、今度はすぐにペダルの感触が戻り、抜けてしまうこともなく無事完了。やはりリザーバからのホースが原因であったようだ。
近所を一回りすると、クラッチは格段に軽くスムーズにつながるようになり、やはり145が一番と思うのだった。
kapiさん、ありがとうございました。