
好天の期待できそうな三連休初日、正月休みで鈍った足に喝を入れるべく、Iさんを誘い神奈川の虫沢林道・秦野峠林道を走りに出掛けてきた。
虫沢林道は昨年5月、秦野側を起点に西山林道・三廻部林道と組み合わせ時計回りで巡り、ハードめな未舗装路面と途中開けた斜面からの眺望が気に入り、再訪したいと思っていた。
しかし、まるっきり同じルートをトレースするのも芸がない。今回は「道の駅山北」を起点に高松集落を経由、秦野峠林道で丹沢湖へ下る反時計回りのルートを辿ってみた。
起点の「道の駅山北」。毎度ながらIさんは先着されていた。
お互い周りに停められるのが嫌いな性分。二台分だけ白線の引かれた道路側に縦列駐車する。
表丹沢林道ツーリングの際、ややギア比が高めのエンペラーで難儀したというIさん。今回は一対一を切るローを備えたPEUGEOTのMTBを持ち込まれた。
聞けばこの自転車もご自身でいろいろ手を掛けられている。
元々のVブレーキアッセンブルをディスクに換装、といってもただ交換しただけではない。
クラフトハウスに溶接を依頼したというリアのキャリパー直付け台座は、ご自身で削り出したものだとか。
美しくエッジの立った台座はまさに職人技。こういうこだわりの方向もあるのだ。
スタートは7時を少し回った辺り。
予報では山北周辺は8時頃迄氷点下となっていたが、そこまで冷え込んではいなさそう。
それでも246方面へ下り始めると、やはり風はかなり冷たく、この冬一番の防寒体制でも体を縮め込むことになった。
246まで下りきらずに手前で左折、路肩の狭い酷道は避け側道を行くことにする。上を通るのは東名高速。
流れ落ちる水が氷柱となってぶら下がっていた。
振り返ると富士山が白い頭をのぞかせている。雲一つない空だ。
しばらく246と並走の後、山北駅の先で尺里川沿いに左折、最初のピーク「尺里峠」を目指し登坂の始まり。
徐々に増す勾配。すぐに汗が吹き出し、着込んでいた防寒着を堪らず脱ぎ捨てる。
やはり体が鈍っており休み休み登るが、冷たい空気がすぐに体を冷ましてしまうので、寒くなってはペダルに足を乗せての繰り返しだ。
それでも少しずつ高度を稼ぐと、再び富士山が顔を見せてくれる。
峠までポイント、ポイントで見える富士山は、足を休めるよい口実だ。
高松集落手前にある公衆(?)トイレ。
地元の方が掃除をされている最中で、声を掛けてお借りした。
ちょうどそろそろと思っていたところ、茂みに入って行って・・・というのがどうも苦手なので、とても助かった。
高松集落。
この辺りを頻繁に走られているINTER8氏のブログで拝見し気になっていた廃校「旧高松分校」。
高松集落を通り抜け、運よく見付けられれば寄って行こうと思っていたが、先程のトイレ脇に案内標識があり、お蔭で立ち寄ることができた。
校庭には一面霜が降りている。振り返ると、ここからも、大きな富士山が見えていた。
分校の裏手を巻いてこの日最初のピークに到着。
それを示すものはないが、尺里峠と名付けられていることを後で知った。
やれやれとひと段落したいところが、殆ど日陰でちょっと腰を下ろす気になれない。
左手の道を少し登った先に暖かかそうな陽だまりが見え、そちらへ移り小休止。
峠の向こうが虫沢集落。本日メインの林道への取っ付きだ。
下って行くと、爽快な眺めが広がっていた。何と高い空だろう。
九十九折れを下って行く。
立ち止まった分岐でIさんが急に笑い出した。
その訳は・・・。
右へ行くと九十九折れをショートカットする近道なのだが、標識脇の電柱に"親切な"落書き(?)が。
曰く"滑るが近い"。
これには自分も噴き出してしまった。
進んだのはもちろん、滑らない方のルート。こちらは茶畑の中をうねりながら下って行く。
寄方面からの道と合流。
ここで先程のピークが「尺里峠」と名付けられていることを知った。正確には、帰宅して画像確認後のことであるが。
ここから先秦野峠までは、5月に走ったルートのトレースとなる。
とは言え、虫沢林道起点も新緑の頃とは全く別の印象。
汗を洗い流した水場も・・・。
溢れ出した水が凍っている。
そして少々残念な変化は、この冬の間のうちに、舗装区間が更にまた広がってしまうということ。
前回、一部区間のきれいな舗装路面に、そのうちスポルティーフで走れるようになってしまうかもしれないというようなことを書いたが、それが現実となるのもそう遠くないようだ。
今回の工事対象となっているのか不明だが、この荒々しさが魅力の切通し区間も、いずれはアスファルトで覆われてしまうのかと思うと残念でならない。
などと感傷に浸りながらカーブを曲がると、ドドーンと現れたアイスバーン。
渡良瀬渓谷のアイスバーンで新品リジダをひん曲げ、坂東で顔面を打ち付け、以来、滑ったり躓いたりしそうなものに異様に恐怖を感じるようになってしまった。
ここは慎重に参りましょうと押しで逃げることに。
この先思いやられるな~と嘆くのもつかの間、一転し舗装準備の為一面均された路面が続くようになり、唖然とさせられる。
切通し区間の押しを覚悟すれば、今ですらもうスポルティーフで来ることも可能な状態だ。
先へ行くと、路面を均した重機が路肩に停められていた。
ここまで一気にやってしまおうということのようだ。
このコースならばと、出番の少ないSILKを引っ張り出したが、次は連れてきてあげられるかな?
虫沢林道のピークに到着。
正午を大分回りそろそろ昼休憩としたいところではあったのだが、全く日の当たらないここでは寒すぎる。日向をもとめ先へ下ることにする。
適当な場所が見付からず、秦野峠まで下ってしまった。
前回は気付かなかったが、峠の碑の裏へ回ると、わずかに顔をのぞかせる富士山が見えていた。
5月は騒々しかった碑の回りも、この日は時折ハイカーが通過する程度。
空腹には換えられず、邪魔にならない位置に自転車を移動させ、この場で昼食を広げることに。
Iさんとお互い持ち寄ったメニューを交換し、お握り+カレーに卵スープにカフェオレにミルクティーと、かなり賑やかな食卓となった。
ここまでも何度か見掛けた遥か上空を行く猛禽類。丹沢ではよく観察されるらしいオオタカ(?)だったりするのかな。
秦野峠からは、一旦下ってこの日最後のピークに挑むことになる。
まずは落っこちるようなカーブや、
九十九折れを下るが、
満腹のお腹が思いの外重く感じられ、150m程の登り返しはやってらんない程きつかった。
やっと最後のピークに辿り着き、ほっとするひととき。
眺めも最高だ。
遥か下を行くエピローグのダウンヒル。
今日はもうこれで何も心配することはなし。悩みがないっていいなぁ~。
と、このときは思っていた。
それでは、いざ!
すい~っと行くはずが、日陰に入るや行く手に広がるガチガチのアイスバーン。
あ~、キモ冷えた~。
こんなところは当然押して進み、しばらくは様子を伺いつつそろそろと下って行く。
あの橋も凍ってませんか?
大丈夫でしょう、と先に通過したIさん、あ、やっぱり凍ってますね。
だから、言ったでしょう!
しかし、橋の上からは霞に囲まれ墨絵のような富士山が見えており、足を止めしばし見入ってしまった。
橋の先からはアイスバーンの出現も無くなり、順調に下って行くと間もなく、丹沢湖が見えてきた、富士山を背景に。
丹沢湖に下り着くと、日の光はもうすっかり夕方のそれだ。
湖畔の自販機で購入した温かいアップルティーを喉に流し込むと、意識していなかったが体は随分冷えていたようで、甘みと温かさが体中に沁み渡って行くようだった。
距離にすると40km程ながら、一日、表情を変える富士山を横目に、楽しみどころ満載の充実したツーリング。今月中に終了する虫沢林道一部区間の舗装工事で、次回訪れるときには随分印象も変わってしまうことだろう。
その意味でも、貴重な一日を過ごすことができた。
Iさん、お付き合いいただきありがとうございました。
〈コース〉
