
箱根の北側にすっくとそびえる金時山の麓を走る明神林道と金時林道。
NC誌’85年2月号の記事で知って以来気になってはいたものの、ハードな未舗装路であるとのレポートに尻込みし走りそびれていた。
だがその記事ももう27年も前の話だ。調べてみると明神林道は大分路面が改良されているらしい。金時林道の方は相変わらず荒れているようだが、距離にしてたかだか10km程度。いざとなれば押してしまえばいいのだ。
大井から足柄峠へ向かう足柄街道の途中、地蔵堂を起点に、新矢倉沢峠(明神林道)・長尾峠・坂田峠(金時林道)・足柄峠と4つの峠を巡る周回コースを走った。
舗装路ながら所々、とんでもなく急勾配な地蔵堂から足柄峠への道のりは下り行程に組み入れ、NC誌とは反対周りを辿っている。
今回タイヤは実測29mmと太めのグランボア28C。未舗装路の走りで、どこまで頑張ってくれるだろうか。
地蔵堂から「夕日の滝」方面へ登り、500m程先を左へ折れれば明神林道(正確には途中まで黒白林道)の始まりだ。
雨続きで多少路面は湿っているが、舗装はしっかりしていて勾配もそこそこ。インナー30Tとリア18T、20Tでずんずん進む。
時折雲の切れ間から日は射すのだが今一つ空はすっきりしない。それでも新緑の色が鮮やかだ。

程なくして一つめのピーク、新矢倉沢峠に到着してしまった。

峠には全長300m程の金時隧道。ソービッツだけでは心許ないかとキャリアの反対側にぶら下げてきたワンダーが活躍、トンネル内では路面をくっきり照らし出してくれた。

金時隧道の先、仙石原方面への道のりも下ってみれば全線舗装で、コース取りを御殿場へ下り金時林道をエスケープ、足柄駅を回り戻ってくるようにするならもっと細いタイヤの方がよさそうだ。
登坂用レシオを組めばレーサーでも充分だろう。
国道138号と合流したら右折して乙女トンネル方面へ。休日の為国道の交通量は少なくないが、すぐ先で長尾峠方面へ折れてしまえばもう車はほとんど入ってこない。
かつての『新車情報』辛口・M本さんの“いつもの山坂道”は、左手に箱根方面の展望が開け、時折緑のトンネルを抜ける快適ルートだ。

箱根山と煙を上げる大涌谷。

仙石原ゴルフ場の向こうに芦ノ湖が見える。相変わらず空ははっきりしない。

長尾隧道の手前が本日二つめのピーク、長尾峠。自転車で来たのは初めてだ。
クルマでは通過するだけだったので、ゆっくり立ち止まったのも初めて。

本当の峠はトンネルの上、さらに歩いて登ることも初めて知った。
ま、若い頃ならまだしも自転車担いで登るのも面倒なので、今日の所はここまでにしておいてやろう。
トンネルの向こうは再び国道138号と合流するまで、6km程の爽快ダウンヒルが続く。
道幅も適度に広く、左手には御殿場の街と雄大な富士山が・・・
富士山が・・・
富士山が・・・
見えない!

予報ではもっと晴れ渡るはずだったのだが、山頂は雲の中。非常に残念・・・。
国道との合流は左折して御殿場方面へ。しかし調子に乗って下っていくと金時林道への入り口を通り過ぎてしまう。
合流交差点から100m程先右手、このホテルへの入り口が実は金時林道入り口だ。

正確には建物前を通り抜けたさらに奥が入り口へと続いているのだが、この門構えではまさか中に道が続いているとは思わないだろう。自分も一度は見逃し行き過ぎてしまった。
全く紛らわしい!
いよいよ本日のハイライト、いや最難関、金時林道の始まりだ。
林道起点から程なくして路面は未舗装に変わる。路面が締まり走りやすいのは初めのうちだけで、雨続きのお蔭で水たまりとぬかるみだらけ、ギヤを極ロー・背水の30T×24Tに落としても杉目パターンのタイヤではずりずり滑って前に進まない。

時折バラスの敷かれた路面も現れ大きなのがゴロゴロして走り辛いのだが、道を選んで進める分まだこちらの方がましだ。
いずれにしても立ち漕ぎができないので、ある程度勾配がつけばもうギブアップ。

乗って押してを繰り返し、いつしか殆んど押し続け、広場のような所に辿り着いた。
「もしや」の期待を胸に地図とGPSで確認すると、そこが三つめのピーク坂田峠だった。
それを示すものはなにもないが、道も先へと下っている。間違いない。

峠の先は極少ながら一部舗装区間もありつつ、しばらくは下り道。下りなら荒れた未舗装路でも何とか乗って行けるので、距離も時間も随分稼げそうだ。
この分ならかなり早めに足柄峠に到着できるだろう。峠では、バッグに忍ばせてきたランチとお茶をゆっくり楽しめるかな。
・・・などと妄想しつつ進んでいくと、程なくしてこれが甘い考えだということを思い知らされてしまった。
進む程にここの所の大雨の爪痕が生々しくなり、荒れ放題。落石や木の枝が散らかり、まるで沢の底のように路面がえぐれている所も。

例え下っていようがもう乗車は不可。
それでも救いは、鮮やかな緑の色だ。これが冬枯れの寒々しい木々の中では目も当てられない。
少々荷物の多い新緑ハイキングと割り切り、とりあえず進むことにしよう。

いつしか下り勾配が登りに変わり、立ち止まって糖分補給をしていると、前方からマウンテンバイクに乗った男性がやって来た。彼によれば先はまだしばらく荒れているという。
「下りだから何とか乗って来れました」
という彼の自転車のタイヤは、頼もしげなブロックパターン。自分とは反対周りのコースで明神林道を走って行くそうだ。
しばらく立ち話をし、お互い「気を付けて」と声を掛け合い別れた後、気付くと押しの足取りが随分軽くなっている。間違いなくこの一休み、いや彼のお蔭だろう。
これから自分が行く道を走って来て、自分が走って来た道をこれから行くという、一緒ではないのだが一緒に走るような不思議な感覚で、何だか気力がもりもり湧いて来た。
ありがとー! MTBさん。
ペースが上がり進むうち極端な路面の荒れも治まり、舗装路と合流。地図で確認すると登って行くと金時山、下ると足柄峠だ。
峠には正午過ぎに到着。雲の厚くなって来た空に、ランチにするかどうするか迷っていると、
ポツリ!!
そう言えば日が差さなくなったな、と思ってはいたのだが、まさか降り出すとは。
デポ地の地蔵堂まであとは下るだけだ。
本日最後、金太郎さんとの記念写真を収め、一散に駆け下りTOEIをトランクに仕舞ったのだった。

結局ランチは「万葉うどん」でざるうどんと味噌おでん。
ま、これはこれでOKなんだけどね。
<今回のコース>
