
全く、週末は雨ばかりで自転車に乗れやしない。
今度晴れたら山へ行こうと、じーてぃーすりー氏との計画が、ようやく実現できたのは9月も後半になってからのことだった。
久々の晴れ予報に勇み、山梨・中道往還(右左口峠)から大窪鶯宿林道(鶯宿峠)を周回するプランを描き遠征。
しかし残念ながら、青空が顔をのぞかせたのはほんの僅か。楽しみにしていた眺望には終始靄が掛かり、おまけに右左口峠への登り途中、ダートの石ころでタイヤサイドをカットするバースト、続いてアルミトークリップが破断し、最後は自分の体調不良でプラン半ばにして撤収と、同行いただいたじーてぃーすりー氏には誠に申し訳ない、何とも冴えない一日となってしまった。
クルマは「道の駅とよとみ」にデポ。
目指す背後の山には雲が掛かっているが、このときはすぐに晴れてくるだろうと高をくくっていた。
道の駅から国道を右手に出てすぐ、「豊積橋南」交差点を右折するとすぐに緩く登り始め、5km程進むと、かつての宿場町「右左口宿(右左口町)」だ。
県道29号から「下宿」交差点を右折すると、少々気合いの要る登りが始まる。
今回は峠に未舗装路があるため、35AのSILKにするか迷ったが、舗装路で楽をしたくて白いTOEIを持ってきた。
タイヤはブルベ・エディション、多少の未舗装は何とかなるとの目論見であったが、それが外れるのはもう間もなくのこと。
先日換えたばかりのHGチェーンに合わせ、フリーも少々大き目のローギヤを備えたデュラエースに交換してきたが、ギヤは既に最軽29×26T。往時の宿場町の面影を横目に、ゆっくりと登って行く。
宿場を抜け見下ろす甲府方面は、雲にかすんだままだ。
「右左口トンネル」へ向かう国道358号との交差点。
こちらへ入ってくるのは、自転車やオフロードバイクのもの好きくらいだろう。
この夏~秋口までの激しい雨の影響か、舗装路面も水に流されたと思われる石ころだらけ。舗装が途切れると、水流にえぐられた跡で路面はなかなかの荒れ具合だ。
SILKにしておけばよかったなぁ、と思い始めた矢先、
パーン!
大きな音がして、
「パンクだ」
じーてぃーすりー氏が声を上げた。
てっきり、(彼の自転車が)パンクをした、ということかと思ったら、後輪がペシャンコになっていたのは自分の自転車だった。ブルベ・エディションと言えども、鋭い石ころには歯が立たず、サイドがパックリ裂けてしまっていた。
ジメついた地道の上でのチューブ交換だけでも憂鬱だが、湿度が高く汗は吹き出るは、おまけにメマトイは顔の回りを飛び回るはで、泣きながらの作業。
裂けてしまったタイヤには、バッグのポケットに忍ばせておいたパークツールの「タイヤブート」を内側から貼り付け応急処置。用心のつもりで持ち歩いていただけだったのだが、まさか使うことになるとは。持っていて助かった~。
これで走り出せればよかったのだが、実はもう1ラウンド。
タイヤに空気を充填する途中、シューという音がしてチューブのバルブ脇に穴が開いてしまった。
このTOEIにはリムテープを使わず、手製のリムロープを外周に貼り付けているが、バルブ穴はむき出しのまま。リム打ちパンクはなくなったが、チューブ交換の折、これまでも時々、バルブ付近に穴が開いてしまうことがあった。
むき出しのバルブ穴が原因かもと薄々思ってはいたのだが、つい放置してしまっていた。
新品チューブをダメにして、もう予備はない。
最初にバーストしたチューブにパッチを貼り付けたが、これもダメにしたらお手上げなので、タイヤブートの残りを切り抜き、リムのバルブ穴を養生してから装着、今度は無事空気を充填することができた。
気を取り直して走り出すが、ところどころ乗車のしんどい部分もあり、乗って降りてを繰り返し進んで行く。
晴れの予報はどうなったのか、雲は一向に切れる気配がない。
調子が出ないのは空のせいばかりではないようで、先程からどうも右足の納まりが悪い。
足元を見るとトークリップがガタついている。
固定ボルトでも落としてしまったかと、足を着き確認したところ、何とクリストフのアルミクリップがペダル取り付け部分を残し、ポッキリ折れてしまっていた。どうりで足が定まらない訳だ。
最初の峠への登り途中でトラブルが二つも噴出してしまうとは、全く今日は日が悪かったのだろうか。
折れたクリップは残しておいても仕方ないので、つま先部分を外しバッグにしまい、ストラップはまた通すのが面倒で残したまま、何だかだんだん重くなる足で、再びペダルを漕ぎ出した。
山水画のように幽玄な雰囲気は決して悪くはないのだが、やっぱり青い空が見たい。
しばらくろくに走っておらず、体が鈍っているのがひしひしと実感される。
路面が湿っているため、どっかり座って休憩できず、吹き出す汗を立ったまま拭うしかないのも辛いところだ。
途中トラブルのせいで随分時間が掛かってしまったが、ようやく右左口峠到着。
標高860m、道の駅からここまで610m程登って来たことになる。
ここも乾いた場所がなく座って休むことができず、それならと、早々反対へ下ってしまうことにした。
峠の南へ抜けると、ようやく雲が切れてきた。
登り途中でこうした景色が見られていれば、随分励みになるのだが。
国道356号と合流地点。
消防団の建物に自転車を立て掛けさせていただき、やっと座って休憩することができた。
ここまで5km程、途中から舗装路面に変わった走りやすい道を下ってきただけなのにも関わらず、どうも疲労が回復しない。
しんどそうに見えたのだろう。じーてぃーすりー氏より、このまま道の駅に戻ろうかとの提案もあったが、次の大窪鶯宿林道は全線舗装、何より、せっかく来たのにという思いもあり、
いや、いや、大丈夫
と強がり、先へ進むことにした。
しかし6km程東進して大窪鶯宿林道入り口へと差し掛かった際、そのまま進入する余力がなく、持参のお握りを口に入れ座り込んで休憩するうち、知らず知らずのまま居眠りをしてしまい、その様子を見たじーてぃーすりー氏より、とうとうドクターストップが掛かってしまった。(獣医さんだけど)
この日は何故か、休んでも疲労が溜まる一方で回復せず、もうこれ以上は無理せず、お言葉に甘えることにした。
県道36号を西へ下れば、あとは道の駅までほぼ下り基調。
25km程をゆるゆると下り、クルマへ戻る頃にはどうにか溜まった疲労も回復させることができた。
何とか乗れるくらいのこんな未舗装林道は大好物だったんだけどなぁ。
ちょっと自信がなくなってしまった。
〈コース〉
