
「テラスハウス」という番組に出演していた女子プロレスラーさんが亡くなったそうだ。詳報は出ていないが自ら死を選んだと思われる状況らしい。その番組を見たことがなかったので、複数の記事やサイトを見てみたが、若者達数名のルームシェア生活に密着して、その様子をスタジオ出演者のトークを交えて放送する番組のようだ。
一つ言えるのは、テレビカメラが入っている時点、被写体が「撮られていること」を意識している時点で、それはノンフィクションではあり得ない。テレビカメラの前で素の自分を自然にさらけ出せる人はいないと思うからだ。つまり、件の番組はフィクションであり、一般的なテレビドラマと一緒のカテゴリーに入るものだと思う。
今回亡くなった方は、番組中の振る舞いについてSNSでかなりひどい攻撃を受けていたという。換言すれば、本人とは必ずしも同一ではない「演じた人格」に対して攻撃を受けていたということなのかも知れない。有名な連続テレビ小説「おしん」で、主人公のおしんをいびり倒す姑を演じた女優さんについて、NHKに「佐賀県のイメージダウンになる!」という抗議電話が殺到したとか、ロケ先で石を投げられたなんていう話があった。また、先日話題にした「ウルトラマン80」でも、主人公を厳しく叱責する女性教頭を演じた女優さんが、親戚の子供に嫌われてしまったと嘆いていたという話もあったっけ。何時の時代でも、現実と虚構の区別ができない人っていうのは一定数存在するものらしい。
ただ、当時と全く違っているのはインターネット、SNSの過剰なまでの発達だろう。昔は番組に対する意見要望を伝える手段は電話か葉書くらいしかなかった。それだって検閲があっただろうから、伝えたい人にきちんと届いていたとは限らない。しかし、現在はだれもが気軽に書き込みできる機器やアプリが溢れている。現に私のような何の資格も権威もなく、たいした見識ももたない人間が、このように好き勝手なことを書いているわけだから。
自分の首を絞めるようなことを書いてしまうが、インターネットも免許制にした方がいいのかも知れない。少なくとも過剰な匿名性を保障するべきではないのではないか。自分の意見に責任をもった上で発信したい人は匿名でなくてもするだろう。責任をもてない、もちたがらないような人の意見はたいした価値をもたないものがほとんどだろうから、無くなったからといって大きな損失にはなるまい。
また、SNS関係の問題が発生すると、すぐにしたり顔で「学校教育でしっかりとリテラシー教育をすべきだ!」とか言い出す自称有識者がいるんだけどさ、「未成年に機器を買い与え、ネット環境を整えてやっているのは誰か」ってこと、なぜかみんなスルーなんだよね。親の責任で指導、管理するのが第一義だと思うんだけど違うのかな。「私は素人だから、リテラシーとか何とか難しいことは分からない。」と逃げを打つ人も多そうだけど、そもそも「自分が管理・制御できないものを子供に気軽に与えるんじゃないよ!」って思うんだけど…暴論ですかね?
最後に…今回の件についてはSNSで誹謗中傷を行っていた連中の責任を問うのと同時に、ドラマ性を追求して視聴者の感情をあおり立てるような番組制作をしたテレビ局の責任も問うべきだと思う。ルームシェアしている若者達には詳細な台本はなかったらしいが、制作現場やスタジオがそうであるとは思えない。炎上することも織り込み済み、むしろ炎上することで人々の話題に上ることを期待していたと考えられる。謂わば、限りなく“故意犯”に近い輩だと思うから。
Posted at 2020/05/24 15:54:30 | |
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