007便のボイスレコーダーを分析をするにあたり、参考としたのは柳田邦男氏の「撃墜」、1985年に発生した日航機123便墜落事故ボイスレコーダー音声、ウィキペディアに載っていた007便フライトレコーダーなどを参考としています。
以下項目別に自分なりのポイントをまとめてみました。
・空白の10秒間
007便ボイスレコーダーの訳には載せていませんが、爆発があった26:02の前後10秒間に中華航空312便と東京通信局の交信が入っています。内容は007便の事件と直接の関係が無いので訳しませんでしたが、この312便の交信が入っているため、爆発前後007便のコクピットの10秒間の音声が残されていません。この10秒間に何か会話があった可能性はありますが、今となっては確認出来ません。
・ランディングギア(降着装置)
爆発直後2回「ランディングギア!」(降着装置)と叫んでいます。これは上空を飛行中は無論ランディングギアは使用していませんので、「降着装置格納部分をチェックしてくれ」と言う意味だと思います。日航123便でもトラブル発生時に機長が最初の段階で「ギア見て!ギア!」と叫んでいます。航空会社を問わず、上空を飛行中爆発のトラブルがあった場合、最初に降着装置格納部を疑うのは旅客機パイロットの共通した認識のようです。
・高度上昇について
レコーダーの文章を翻訳していて、一番悩んだのが、26:22と26:24と26:38の3度「高度上昇中!」(Altitude is going up)と叫んでいる点です。当初、27:46に録音が停止したのは、機体が海に墜落した事によって停止したのだと思っていました。
007便は高度35,000フィート(約10,500㍍)を飛行中攻撃されたので、1分44秒で海に落ちたとすると、ミサイル攻撃により真逆さまで墜落した事になります。「警告!緊急降下中!」(Atenntion emergency descent)のオートアナウンスも流れていたので、ミサイル着弾と同時に機体が墜落状態となったと考えていたのですが、それに対して「高度上昇中!」を3度も叫ぶ以上、機体が上昇状態にあったと考えるのが自然です。矛盾する内容に悩んでいましたが、ある時ウィキペディアの大韓航空機撃墜事件の解説を見ていたら、007便のミサイル被弾時のフライトレコーダーのデータが小さいながらも載っているではありませんか。このフライトデーターとボイスレコーダーの内容をつきあわせてみました。謎が解けました。
007便はミサイル被弾後40数秒上昇しており26:50には高度38,000フィートになっていました。その後高度は下がり始めましたが、録音の途絶えた27:46頃でも高度33000フィートを記録していました。つまり、007便はミサイル攻撃で一時的に上昇し、その後高度が低下し、爆発から1分44秒後コクピットのマイクとボイスレコーダを結ぶコードが切断されるような損傷が発生し、録音が途切れた後も007便は10分程飛び続けて、38:00頃海面に墜落したようです。(ウィキペディアには27:44までのフライトレコードしか載っていなかったのでそれ以降は推測ですが)「警告!緊急降下中!」のオートアナウンスは機体に異常が発生した際に自動で放送される物で、機の高度を反映して流される物ではない、そう考えると辻褄が合います。そうすると26:33の「高度落下止められない」(I am not able to drop altitude now unable)と訳したのは問題があると思います。正しくは「高度を落とす事が出来ない」と訳すべきでした。 ミサイル着弾と同時に墜落し始めたという先入観から袋小路に陥っていました。
・機内のアナウンスについて
007便が72年製、123便が74年製である事や同じ747(123は747でもSRと言う国内専用モデルですが)であることから、機内でオートアナウンスで流れた、英語のPut out your cigarette. This is an emergency decent.や日本語の「タバコを消してください ただ今緊急降下中」のメッセージ等は85年の日航機123便の事故に流された物と同じと考えてよいと思います。007便に日本語のアナウンスが流れていたのは意外でした。それだけ日本人が多く利用していた路線だということだったのでしょう。爆発から録音停止までの間、計5回の日本語アナウンスが記録されています。亡くなった28人の日本人乗客は最後の瞬間このアナウンスを聞いていたのかと思うと、胸がつまります。
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2010/09/11 16:19:33