
のっけから話がそれてナンですが、エヴァンゲリオンってアニメ、あれあまり好きじゃないんですよ。
まだあまり馴染んでない人に聞かれることに「酒強そうですね」「○ッ○○強そうですね」と並んで、「エヴァとか好きそうですね」ってのがあるんですけど、「あれは嫌いです」って答えてます。
松本零士とか、ちばてつやとか、アツイ漫画に慣れ親しんでいたので、あのアニメのラストの内的心象の描写は、なにもしないままに負けてしまった人間の諦めと慰めの世界にしか見えないんですよ。
最近新しく始まったのは展開がまたちょっと違うみたいですけどね。
やはり男はいざというときは戦わねばいかん、と思います。なんにたいして戦うかはまたアレですが。
太平洋戦争中、比島に派遣されたものの、肺病で部隊を追われた田村一等兵は野戦病院へ向かうが、食料をもたない彼は相手にされず。その野戦病院も米軍の砲撃を受け、部隊は潰走し、田村一等兵はひとり野火の立ちあがる比島の原野を彷徨う。
食料を得る過程で、比島の女を一人射殺するが、その後、銃を川に沈める。無辜の人を殺した慚愧ではなく、「余計なことをしたな」と思い、兵士の魂の銃を手放す。
彷徨し、このまま死ぬのだな、と思っていたところ、別部隊と出くわし、合流する。友軍の待つ沿岸まで撤退するという作戦が、再び田村一等兵を日本陸軍の兵士という立場に戻し、それが彼の目標となる。
しかし、沿岸は米軍にすでに封鎖されており、集結した日本兵はふたたび潰走する。
そこで見た世界は…。
同じ南方の日本兵でも、小野田さんや横井さんがひとりで30年も戦ってた、ということが頭にあったため、読みながら部隊をはぐれれば兵隊を捨て彷徨し、合流すれば敗走する一兵士となる、そして再び目的を失いひとり彷徨する彼を「なさけねー兵隊だな」と思ってました。この主人公には自分の意思がないのか?
しかし米軍の砲撃を逃れ逃げ込んだ、無数の日本兵が飢えて死んでゆく密林で、彼は戦う。
もはや日本、祖国のための戦いでもない、軍属のための戦いでもない。
そして彼は戦時中に二人の人間を殺す。無辜の比島の女ともう一人、人を殺す。
他の作家の言葉を借りれば比島の見知らぬ土地で、無数の同朋が虫けらのように死に、腐ってゆく姿は「異常な体験」でしかなかった。
その異常な世界で、誰もが小野田さんや横井さんのように強い兵士だったわけではない。
一切を失った人間に最後に残された矜持のための戦いを、彼はした。
その彼が内地に帰り、野火が立ちあがる比島の原野をひとり彷徨することに憧憬し、人間との関係性を捨てたとしても、それは無理もない。彼の戦いは内向する彼自身との戦いになったのだから…。
Posted at 2011/11/27 17:52:12 | |
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