
ここから先は事故報告書を和訳しながら紐解いています。
まずはスレッシャーのおおまかな配置を和訳しました。
そして、赤い部分で囲ったのが耐圧殻となります。
最大潜水深度は耐圧区画ではなくすべての区画が安全である範囲となります。
圧壊深度とはこの耐圧区画がくしゃくしゃになる深度です。
万一機関室で浸水した場合は乗組員は後部退避球へ、前方で浸水した場合は前方の退避区は逃げれるようになっているのですね。

前記事で
洋上の支援艦が水中電話で圧縮空気が漏れる音がした、と証言していますが、
この圧縮空気とは水中電話は耐圧区画内、ハーヴェイ艦長とやりとりしていることからCICでやり取りしていたと推測します。
であるならば、その音はどこからしていたか、となると…
後部耐圧殻隔壁ハッチから4Mpaに近い圧力の空気が入り込んできていたと考えるべきでしょう。
最終的にはこのハッチも圧力に耐えきれず吹き飛んだと思います。
僕の業務は設計、加工からリークテストまで一貫して行うため、リークの治具も作ります。
中には0.4MPAでの水中圧力試験なんてのもあるもんですから、圧力のヤバさは身をもって知っています。
大気解放なんかも試験項目にあるもんですから破裂音しますよ。
だから想像できます…
こっわ!!!
さて、調べていくうちにだんだんと詳しくなってしまったんです…
耐圧区画は基本的にどの区画よりも耐圧能力が高いです。
乗員の生存を維持するための空間ですから…
そこに空気が漏れこむことがあるのであれば…
それは艦尾機関室だけにとどまらず前部ソナー室なども既に致命的な浸水に侵されていたと想像するのは難しい事ではありません。
恐らく前方でも破断は生じていたことでしょう。
しかしもうどうしようもありません。
スレッシャーは他の爆発事故と違い
本当に恐怖する事故だったのです…
さて、まだ時系列は9:13分です。

画像は鉄のくじら館あきしおより。スレッシャーとあきしおは似たサイズです。
僕は一昨年行きましたが写真がどこ行ったか…
09:13
ハーヴェイ艦長は水中通話器で状況を報告する。
(いくつかの言葉は認識可能だが、雑音で聞き取りにくい)
「...小さな問題が発生、上昇角をとり、浮上を試みる」
機関室の浸水で艦は重くなり、恐らく艦尾を下にして沈降を続ける。再びバラストタンクを空にしようと試みられたが、凍結により失敗。
この時点でスカイラークの士官たちは圧縮空気が漏れる音をスピーカーから聞いた。
最新の事故報告書では、9:09分に初回のブローを行い、約90秒で氷結し失敗します。
次に09時13分、4分後に再ブローをかけますが、これは30秒で氷結し失敗します。
原子炉については09時09分に浸水が始まり09時11分に緊急停止しています。
この時点ではまだバッテリーでの予備推進に切り替われていません。
スレッシャーは全ての動力を失ったことになります。
ここで訂正があります。
スレッシャーの圧壊深度した深度は
730ⅿです。
圧壊時刻は09時18分4秒です。
これらの情報はまだwekiにもありません。
これで沈降速度が割り出せました。
09:02 深度330ⅿ
09:18 深度730ⅿ
わずか16分で400ⅿ沈降しました。
最終的な沈降速度は30ⅿ/sに達していたであろうと推測します。(←訂正。30m/Sは計算式のいずれかの係数の算出を誤っていると思います)
(艦内の浸水の量によって沈降速度が加速するため)
これは
想像をはるかに上回る速度です。
毎秒0.3Mpaずつ圧力が上昇していく…
凄まじい恐ろしさだと思います。
深度計はすさまじい勢いで回ったことでしょう…
そして最後に耐圧区画は圧壊し全員が…
こうやってしっかりかみ砕いていくとだんだんベールの裏側が見えてきましたね…
怖!!!
これ、想像していたよりはるかに怖いです。
次回こそ圧壊まで進めたいですが、内容が濃すぎてなかなか…
小難しいところはなるべく簡潔にしましたので許してください(´;ω;`)ウゥゥ
以下計算式などの説明になります。
公開されている排水量からしてスレッシャーに使われている鋼材の重さは2237トン程度と推定。
(艦橋を含まないサイズで計算したところ、こちらの計算では船体排水量3400トン、公式では3700トンなので艦橋を含めば計算のつじつまはあうと想定)
ここから水の抵抗を加味すると…
浮力はほぼなくなっていたので抵抗値としての係数は6程度でいいと思います。
(船体に使われている材質の比重をおおむね8程度と仮定)
もっとも、この場合は浮力が失われていくため係数は時間とともに変化するという恐ろしい放物線を描きます。
計算式は、船体幅×船体長さで円筒体積×0.5(左右対称の流線形の為)で船体の体積を算出、艦橋部分の体積を入れれば公表とほぼ同じ値。
次に喫水位置ですが、これについては満載喫水位置での公表しかないため、そうりゅうを参考に算出したところ、無積載喫水は6.5ⅿと推定(試験時喫水)
そこから比重をわりだし試験時の密度は0.59、使用された鋼材の重さは2237トンと推定。
ここにかかる水の抵抗と重力加速度を見て、耐圧区画以外は全て水没として圧壊直前の終末沈降速度を算出したいと思います。
気密室以外の区画が全て水没した際の潜水艦の比重は1.61です。
これで終末沈降速度が割り出せます。
沈降加速度は毎秒3.76ⅿですが、水の流体抵抗があるためこちらから算出しました。
https://toyotanishi-h.aichi-c.ed.jp/education/ssh/r2/2019buturiol2.pdf
沈降速度は最終で毎秒30ⅿ近くに達していたと思われます。(終末速度はおおむね30ⅿ/sとなった)
※本記事での計算は、事故報告書の通りの沈没姿勢に従って割り出しています。
すなわち、沈没時の流体抵抗値は球体型とし、抵抗面積は潜水艦の直径×1.05(0.05は艦橋構造物と潜水舵などの突起による抵抗として加算)しました。
でも超適当ですので大体の目安です。
詳しい方お願いできれば幸いです。
※次回更新は24日となります。
1日1話ずつ、を目指していますがなんせ資料と計算の量が膨大過ぎて追い付きません…
24日分は仕事が忙しいためひょっとしたら中途半端または未更新になってしまうかもしれません💧
なるべく頑張ります。
※訂正とお詫び
鋼材使用量と比重いついてはおおむねあっていると思いますし、沈降加速度についても問題ないと判断しますが、沈降速度について30ⅿ/Sはどう考えても計算ミスがあると思います。
僕の予測ではおおむね6ⅿ/s(時速40㎞弱)程度だと思います。
これは戦艦大和の主砲の沈降速度が約45~60キロだったこと、タイタニックが15㎞~30㎞程度で沈降したことを昔文献で読んだ事が有るので…
考えられるとしたら係数を出すために弾いた数値の圧力係数の単位をキロとメガで取り違えているとか、形状抵抗係数の算出を誤っているとか、あと、逆濁域による沈降速度低下を加味していない(これは忘れてました)とか…
物理エンジンを使わないと厳しい世界になってきました。すみません(11/23日夜10時)
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2020/11/23 00:30:34