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2020年11月22日 イイね!

アメリカ海軍原子力潜水艦スレッシャーは何故沈没したのか6

アメリカ海軍原子力潜水艦スレッシャーは何故沈没したのか6ここから先は事故報告書を和訳しながら紐解いています。

まずはスレッシャーのおおまかな配置を和訳しました。


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そして、赤い部分で囲ったのが耐圧殻となります。
最大潜水深度は耐圧区画ではなくすべての区画が安全である範囲となります。
圧壊深度とはこの耐圧区画がくしゃくしゃになる深度です。
万一機関室で浸水した場合は乗組員は後部退避球へ、前方で浸水した場合は前方の退避区は逃げれるようになっているのですね。
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前記事で
洋上の支援艦が水中電話で圧縮空気が漏れる音がした、と証言していますが、
この圧縮空気とは水中電話は耐圧区画内、ハーヴェイ艦長とやりとりしていることからCICでやり取りしていたと推測します。
であるならば、その音はどこからしていたか、となると…
後部耐圧殻隔壁ハッチから4Mpaに近い圧力の空気が入り込んできていたと考えるべきでしょう。
最終的にはこのハッチも圧力に耐えきれず吹き飛んだと思います。



僕の業務は設計、加工からリークテストまで一貫して行うため、リークの治具も作ります。
中には0.4MPAでの水中圧力試験なんてのもあるもんですから、圧力のヤバさは身をもって知っています。
大気解放なんかも試験項目にあるもんですから破裂音しますよ。
だから想像できます…
こっわ!!!

さて、調べていくうちにだんだんと詳しくなってしまったんです…
耐圧区画は基本的にどの区画よりも耐圧能力が高いです。
乗員の生存を維持するための空間ですから…
そこに空気が漏れこむことがあるのであれば…
それは艦尾機関室だけにとどまらず前部ソナー室なども既に致命的な浸水に侵されていたと想像するのは難しい事ではありません。
恐らく前方でも破断は生じていたことでしょう。
しかしもうどうしようもありません。

スレッシャーは他の爆発事故と違い
本当に恐怖する事故だったのです…

さて、まだ時系列は9:13分です。
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画像は鉄のくじら館あきしおより。スレッシャーとあきしおは似たサイズです。
僕は一昨年行きましたが写真がどこ行ったか…

09:13
ハーヴェイ艦長は水中通話器で状況を報告する。
(いくつかの言葉は認識可能だが、雑音で聞き取りにくい)
「...小さな問題が発生、上昇角をとり、浮上を試みる」

機関室の浸水で艦は重くなり、恐らく艦尾を下にして沈降を続ける。
再びバラストタンクを空にしようと試みられたが、凍結により失敗。
この時点でスカイラークの士官たちは圧縮空気が漏れる音をスピーカーから聞いた。


最新の事故報告書では、9:09分に初回のブローを行い、約90秒で氷結し失敗します。
次に09時13分、4分後に再ブローをかけますが、これは30秒で氷結し失敗します。


原子炉については09時09分に浸水が始まり09時11分に緊急停止しています。
この時点ではまだバッテリーでの予備推進に切り替われていません。
スレッシャーは全ての動力を失ったことになります。

ここで訂正があります。
スレッシャーの圧壊深度した深度は730ⅿです。
圧壊時刻は09時18分4秒です。
これらの情報はまだwekiにもありません。
これで沈降速度が割り出せました。
09:02 深度330ⅿ
09:18 深度730ⅿ
わずか16分で400ⅿ沈降しました。
最終的な沈降速度は30ⅿ/sに達していたであろうと推測します。(←訂正。30m/Sは計算式のいずれかの係数の算出を誤っていると思います)
(艦内の浸水の量によって沈降速度が加速するため)

これは想像をはるかに上回る速度です。
毎秒0.3Mpaずつ圧力が上昇していく…
凄まじい恐ろしさだと思います。
深度計はすさまじい勢いで回ったことでしょう…
そして最後に耐圧区画は圧壊し全員が…

こうやってしっかりかみ砕いていくとだんだんベールの裏側が見えてきましたね…
怖!!!

これ、想像していたよりはるかに怖いです。

次回こそ圧壊まで進めたいですが、内容が濃すぎてなかなか…
小難しいところはなるべく簡潔にしましたので許してください(´;ω;`)ウゥゥ



以下計算式などの説明になります。


公開されている排水量からしてスレッシャーに使われている鋼材の重さは2237トン程度と推定。
(艦橋を含まないサイズで計算したところ、こちらの計算では船体排水量3400トン、公式では3700トンなので艦橋を含めば計算のつじつまはあうと想定)
ここから水の抵抗を加味すると…
浮力はほぼなくなっていたので抵抗値としての係数は6程度でいいと思います。
(船体に使われている材質の比重をおおむね8程度と仮定)
もっとも、この場合は浮力が失われていくため係数は時間とともに変化するという恐ろしい放物線を描きます。

計算式は、船体幅×船体長さで円筒体積×0.5(左右対称の流線形の為)で船体の体積を算出、艦橋部分の体積を入れれば公表とほぼ同じ値。
次に喫水位置ですが、これについては満載喫水位置での公表しかないため、そうりゅうを参考に算出したところ、無積載喫水は6.5ⅿと推定(試験時喫水)
そこから比重をわりだし試験時の密度は0.59、使用された鋼材の重さは2237トンと推定。
ここにかかる水の抵抗と重力加速度を見て、耐圧区画以外は全て水没として圧壊直前の終末沈降速度を算出したいと思います。
気密室以外の区画が全て水没した際の潜水艦の比重は1.61です。
これで終末沈降速度が割り出せます。
沈降加速度は毎秒3.76ⅿですが、水の流体抵抗があるためこちらから算出しました。
https://toyotanishi-h.aichi-c.ed.jp/education/ssh/r2/2019buturiol2.pdf
沈降速度は最終で毎秒30ⅿ近くに達していたと思われます。(終末速度はおおむね30ⅿ/sとなった)


※本記事での計算は、事故報告書の通りの沈没姿勢に従って割り出しています。
すなわち、沈没時の流体抵抗値は球体型とし、抵抗面積は潜水艦の直径×1.05(0.05は艦橋構造物と潜水舵などの突起による抵抗として加算)しました。
でも超適当ですので大体の目安です。
詳しい方お願いできれば幸いです。


※次回更新は24日となります。
1日1話ずつ、を目指していますがなんせ資料と計算の量が膨大過ぎて追い付きません…
24日分は仕事が忙しいためひょっとしたら中途半端または未更新になってしまうかもしれません💧
なるべく頑張ります。


※訂正とお詫び
鋼材使用量と比重いついてはおおむねあっていると思いますし、沈降加速度についても問題ないと判断しますが、沈降速度について30ⅿ/Sはどう考えても計算ミスがあると思います。
僕の予測ではおおむね6ⅿ/s(時速40㎞弱)程度だと思います。
これは戦艦大和の主砲の沈降速度が約45~60キロだったこと、タイタニックが15㎞~30㎞程度で沈降したことを昔文献で読んだ事が有るので…
考えられるとしたら係数を出すために弾いた数値の圧力係数の単位をキロとメガで取り違えているとか、形状抵抗係数の算出を誤っているとか、あと、逆濁域による沈降速度低下を加味していない(これは忘れてました)とか…
物理エンジンを使わないと厳しい世界になってきました。すみません(11/23日夜10時)
Posted at 2020/11/23 00:30:34 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記
2020年11月22日 イイね!

アメリカ海軍原子力潜水艦スレッシャーは何故沈没したのか5

アメリカ海軍原子力潜水艦スレッシャーは何故沈没したのか5さて、続きになります。
いきなりぶっこみますね(笑)



といいましたが、まずは興味の入り口としてびっくり話!!!
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高圧ジャム生産って
なんと400Mpa程度で行うんですって!!!
これ水深4000ⅿ相当!
ジャムすげえ!!!
アボカドの加工食品もこれくらいやるんですって!!!
凄いですね!!

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さて、記事の補足です。
物は密度が下がると温度も下がります。
密度が上がると温度も上がります。
圧力ではなく、密度です。
例えば、サイコロの中に空気が1000個入っていて10℃だったとします。
ころサイコロのなかに、無理やり1万個の空気を詰め込んだら密度は10倍になります。それぞれ10℃の温度を持っていますから、それが10倍になりますから温度は100度に上がります。

実際には湿度だったりガスの比率だったりするのでこの通りではありませんが、だいたいこんなイメージです。
ターボ車が圧縮空気を冷却するためにラジエターを付ける理由ですね。

さて、ここでは「密度」といいました。
何故かというと、水って加圧しまくっても密度はあんまり上がらないんです。
水自体がいっぱいいっぱいに詰まっているので。
蒸発すると1700倍の体積になります。

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黒部ダムは186メートル、水面高さ170ⅿ、放水口高さ150ⅿ。
となると水深20ⅿ相当、はい正解!
このときの放水の圧力は0.2Mpaですね。
身近になってきたでしょうか?
たった0.2Mpaでもこの威力、4Mpaなんてとてもとても…💧

先の記事の説明ですが、
4Mpaの加圧された海水が0.1Mpaの艦内に入った時、まず拡散が発生します。
圧力が4Mpaから「格納された」0.1Mpaになるのであれば-150度なんてならないです。
問題なのは格納されていない艦内に一気に入り込んでいるため
圧力差が大きすぎる為拡散、ミスト化して蒸発してしまいます。
揮発した際に熱を大きく奪うため一気に放熱します。
しかもやっかいなことに、圧力差による気化なのでもうそんなんどんだけでも下がってしまいます。

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エアコンのコンプレッサーなどはこれとは異なりますが熱移動原理は同じです。
-20度くらいまで冷やしてるんですって。
室外機で加圧→放熱→室内機で密度を下げ冷却→室外へ持っていき加圧→放熱のサイクルです。
圧力差による熱移動を利用している装置としてはほかに冷凍庫などがありますね。

さて、艦内で生じた冷気、
これは一瞬なので温度差はほぼ感じなかったのではないかと思います。
家庭用冷凍庫は-17度ですが、冷気を浴び続けなければ凍傷にならないのと同じだと思います。

勿論すべてが蒸発することはありませんが、圧力差が大きすぎる為ミストとなりその際に
真水は氷結→揮発→体積1700倍=機関室の圧力をあげる→高圧力となり乗員の意識を奪う→浸水処置不能に陥る
塩水は濃度をあげミストとして漂う→原子炉制御基盤に付着→4℃以下のため伝導率も高くショートを引き起こす。
という仮説を立てています。
深海での漏水というのは…
本当に浅い部分(よく映画で描写される感じ)とは違って致命的なんですねΣ(゚д゚lll)


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09:13
ハーヴェイ艦長は水中通話器で状況を報告する。
いくつかの言葉は認識可能だが、雑音で聞き取りにくい
「...小さな問題が発生、上昇角をとり、浮上を試みる」
機関室の浸水で艦は重くなり、恐らく艦尾を下にして沈降を続ける。
再びバラストタンクを空にしようと試みられたが、凍結により失敗。
この時点でスカイラークの士官たちは圧縮空気が漏れる音をスピーカーから聞いた。

とあります。
ここで僕は絶望的な事が発生しているという事に気が付きました。
「圧縮空気が漏れる音を聞いた」

これは恐らく…艦内の機密区画の破壊または耐圧以上の加圧を指していると思われます。
そう思う理由は
①圧縮空気をため込むタンクは内部の空気を排出できなくなったため相当の圧力のまま「氷結した栓」によって気密されている。
②気密された栓が溶けたとしたら「浮上」が可能になるが不能のまま沈没、圧壊に至る
ということを指摘します。

arasunjuanの沈没事故の調査結果では、
ブロー用圧縮空気タンクは無傷だったとあります。
実際にかかっている内圧を考えればそれはごく当然の事だったりもします。


となると、考えられるのは…
隔離した機密扉の耐圧を上回る圧力が指令室外部に既にかかっていた、となります。
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これは…
機関室、いえ指令室よりも後ろ側では致死レベルの超高圧になっていたと推測されます。
圧壊まで残り3分の出来事です
いったんここで区切ります。
次回はこの時に指令室外部はどうなっていたか、を掘り下げてみたいと思います。
Posted at 2020/11/22 17:39:33 | コメント(2) | トラックバック(0) | 日記

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