
『交渉の為に隣国から使者が来て、もしその者が有能ならば何一つ与えず返せ。
交渉の為に隣国から使者が来て、もしその者が無能ならば大いに与え、歓待せよ。
そうすれば、隣国では無能な者が重用され、有能な者が失脚する。
そしてやがては滅ぶ』
『六韜』(りくとう=シナの兵法書)より
【はじめに】
このお話は、実は5月の9日にゲラ稿の前半はあがっていたのだ。
しかし、その後本業多忙でそのまま放置、今日に至ってしまった。
従って、以下『【田中均講演会】2.講演会要約と突っ込み ①前半について』の分は5月9日現在のお話としてお読みいただき、『②後半について』以後は5月20日現在にて記述されたものとご理解いただけたら幸いである。
ちなみに急いで書いたので、修辞が散文的になってしまったり、脈絡がつかなくなったりしているところもあるかもしれない。
その点について、お許しいただけたら幸いである。
シナの楊潔篪前外交部長との会談のために中国滞在を延長した、川口順子参院環境委員長が、参院環境委員会を流会させたため、引責解任されるという。
『尖閣諸島をめぐっての日中間の緊張の高まり、及び23日の国会議員による靖国神社参拝などから、(シナの外交関係シンクタンク幹部との)一連の会談において、このテーマが大きなウエイトを占めることは容易に想像されました。
日本人が一人もいない状況で、本件に関し中国側が偏った意見を提起する事態を避けることが我が国の国益であり、
また、中国の外交政策決定当事者であり旧知の楊潔篪国務委員及び外交政策に関し政権に提言をする立場のシンクタンク幹部と本件に関し直接に十分な議論・反論を行い、現在対話がほぼ途絶えている状態の中国側に対し、我が国の考え方を伝えるとともに理解を慫慂することも国益上必須と考えました。
(議院運営委員会決定に背いたこと・委員会を流会させたことについて陳謝したうえで)
しかしながら、我が国の政治家として主権と領土を守る国益に背中を向けることができなかったことが、
今回の私の行動の理由であったことについて、ご理解いただきたいと考える次第です。』(以上、川口順子ブログより)
・・・これで解任か。
今回の川口氏の行動は、環境委員長よりも“一国会議員として”の自身を自覚した上での行動であり、その意味では議運委からの糾弾は避けられないとしても、解任すべきものではなかろう。
勿論、“会期中の海外渡航”を慎むというのは公のルールであり、これを遵守せねば会が成り立たぬ、そのためには責任をとってもらう・・・というのは正論ではある。
しかし、今回の渡航については、それが“楊潔篪による招聘”でありまた、“日本人が一人もいない状況”で“日本の国益を損なう会談”が展開されるのはたまったものではない。
繰り返すが、川口氏は元外相という立場を持つ国会議員である。
国会議員は、“日本の国益”のために行動することを生業としている。
そして、今回は“日本の国益”と“安全保障”に絡む重大なテーマをもった会合が開かれることになったのだ。
川口氏がこれに臨むことと、環境委員会を流会させたこととのどちらに重きを置くべきか。
言うまでもなかろう。
これが民間企業であったら・・・とつくづく思う。
今回の解任決議につき、野党はすべて賛成に回るという。ねじれ状態の参院では、これは間違いなく決議されるであろう。
・・・情けない。
民主や社民はともかく、旧たち日グループは何をしているのか!?
平沼先生、片山先生、石原先生、中山先生・・・あなた方だけでも、“国益”を考えていただけないものか?
まあ、次の参院選、決まったな。
今回はこの川口氏との因縁も浅からぬ、小泉政権時の外務審議官であった田中均の講演会に関するレポートを綴らせていただく。
【田中均講演会】
・・・田中均なる人物については、前章『【号外】売国奴の生声を聞いてくる』を参照して欲しい。
ここでは、5月8日夕刻に名古屋市内で開催された後援会につき、その内容を要約したうえで、いくつかの突っ込みどころを紹介したいと思う。
1.講演会記録
①開催日
平成25年5月8日 18:00~19:30
②開催地
日本特殊窯業市民会館(旧 名古屋市民会館)
③主催者
株式会社中日新聞社
④テーマ
変貌する世界と日本の戦略
⑤概要
前半をパクス・アメリカーナ時代の終焉から多極化への移行、そして新興
国が台頭するに至るまでの歴史説明に費やし、後半は東アジアの今後を予
想しつつ、そのなかで日本が進むべき方向につき、田中の持論を展開する、 という形で展開された。
2.講演会要約と突っ込み
①前半について
東西冷戦構造の終焉から多極化、経済のグローバル化と噴出する民族問題などについては、特に今更ここで詳述する必要もないと思われる。
近現代の政治経済史について知りたい方は、まずは自ら学ぶ自助努力をしてくれ。私達もそうしてきたのだから。特に記憶力の弱さでは定評のある私にしても、重商主義以降の政治経済史については、無い頭を絞って勉強をしたものなのだ。
・・・以上を踏まえて講演の前半は、
A.東西体制の終焉が、資本と労働の移動をグローバル化させた。
B.結果、西側先進国で移民・マイノリティを擁護するポピュリズムが台頭
C.ポピュリズムの結果、社会保障費が増大・社会不安問題が顕在化
D.結果欧州ではポピュリズムが衰退、内向き化。
E.アメリカもイラン核問題で権威失墜・財政問題も重要課題になり、内向き化
F.世界は多極化へ
G.新興国内貧富の差の拡大と社会不安が、グローバル経済の不安要因となる
といった内容に集約されていた。
まあ、これらについては間違った内容ではなかった。
特に新しい発見もなかったし、知っていることのおさらいができたのは良い収穫であった。
しかし、それでも気になった点は2つほどある。ここではそれを突っ込ませていただく。
第一に
“おーい、リーマンショックと欧州危機、金融資本主義のもつリスク”について何にも述べてないぞ!”ということがひとつ。
アメリカはじめ西欧諸国衰退の決定打は、やはりグローバル金融資本主義の問題と“流動性の罠”に対する無策に尽きる、と思うのだが・・・これについては田中は全く述べなかった。
田中、ひょっとして、経済問題は苦手か?
第二には
田中が『環境問題絡みの先進国と新興国の対立、新興国のルールなき暴走は、解決できない』と言い切ったこと、である。
・・・いや、これらを放置するからPM2.5とか毒入り餃子とか、ガンダムはウリナラ起源とか、チベットやモンゴル問題とか、アフリカの植民地化とか、コーポレートランドとかいった、
“経済>民主主義とか文化とかナショナリズムとか民族主義”
の問題が顕在化してくると思うのだが・・・
“せめて理想でいいから、解決のための国家の枠組みを超えた共通のルールづくりと、それに関連する罰則規定を設けるべき”、くらいは言ってくれ。
まあ、前半はこんなところか。
問題は後半であった。
②後半について
A.東アジアの歴史
a.19世紀からの欧米列強によるシナとインドシナへの植民進出
b.日本は岩倉遣外使節団を皮切りにアジア安定のため富国強兵化
c.日清戦争とニダー半島の併合
d.日本の敗戦とサンフランシスコ講和条約
e.パクス・アメリカーナによる日本の繁栄
・・・といったところか。これについては私の私見的要約なので、田中がこのままの言葉を用いているわけではない。
で、ここでの突っ込み。
第一に、欧米列強によるアジアの植民地化と資本主義に内在する拡張性の解説がない。従って、なぜ日清・日露・2つの大戦が起こったのか、という説明がない。
つまり、極めて教科書的なことを述べているだけなので、聴衆は“日本が太平洋戦争を起こした事情”を知らされぬまま、“日本は悪い国”の意識を植え付けられる。
歴史に“もし”、はタブーだが、では日本がもしも大東亜共栄圏を叫ばなかったら、東アジアがどうなっていたのか、などは全く語られなかった。
オマエ、本当に外交のプロだったのか?
第二に、これは上記からの流れであるが、田中はニダー半島の併合につき、ハッキリと“植民地化”と言った。日本によるハングル文字の教育やインフラ整備、農業改革など、半島人の文明化貢献についてはまったく述べていない。
第三に、李承晩ラインのことは全く言わない。これで聴衆は本当に、“侵略国家日本”という捏造を信じたまま、それを疑うことなく講演を聴き続けることになってしまった。
…どう考えても、ワザと真実を語ろうとしてないのがわかる。
B.靖国について
・・・呆れた。ここで本当に離席しようかと思ったほどだ。
a.21世紀に入り、シナとは政冷経熱の時代がはじまる
b.日本にとって、シナは最も大切な市場となった
c.しかし、シナは日本より欧米を向き始めた
d.これ以上日本はシナを刺激すべきではない。その意味では、尖閣衝突の船長を解放したのは賢明であった
…“ハァ?”である。
シナという国を、マーケットとして見るか中華思想原理主義国と見るか、これは立場によって変わるのであるが、田中は外務省の人間だったはず。そもそも安全保障に関わる問題であれば、マーケットなど以ての外、経済を制してでも“国民の生命と財産”を第一に考えるべきであろう。
国家の安全保障よりも市場が大切…コイツの発想は、ただの商売人レベルである。
C.アメリカの変節
a.アメリカの拡張的移民政策が、マイノリティ出身の大統領を生んだ
b.アメリカにおいて、シナとニダーの影響力は大きい
c.河野談話や村山談話を貫かないと、日本はアメリカに見捨てられる
…安全保障と経済的繁栄を両立させるために、日本はどうすべきか?、アメリカにおいても日本人の影響力を高めるためには何をすべきか?、何ができるのか?これについても全く語ってない。また、吉田清治とミズポのことも全く触れていない。
“オマエは国家が大事なのか、シナという市場が大事なのか、どっちなんだ!?”
D.日本のとるべき道
a.東アジアでの相互依存体制の構築
b.歴史認識を蒸し返すな
…田中よ、麻生先生がシナどころかニダーまですっとばして、ASEANとの相互互助会議に臨んだ理由を考えたことはあるか?“自由と繁栄の弧”は、相互依存経済による安全保障を目的としているのだ。日本を敵視する連中と相互依存組んで、日本人や日本の資本を“人質”にするのは愚策中の愚策だ。
E.シナの時限爆弾
a.環境問題・経済空洞化・貧困・社会保障コストの劇的拡大・内部不満
b.ネットの力による民主化を待て
c.シナの民主化勢力と経済協力体制をつくれ
d.ルールでシナの覇権主義を封じ込めよ
e.代替エネルギー政策を東アジア全体で推進せよ
f.時間をかけて、ゆっくりとシナを変えていくことが肝要
…だから、内部のガス抜きごときのために自国安全保障を脅かされてる状態なのに、その相手に媚びてどうするよ!?シナの民主化を待ってたら、日本はモンゴルやチベットと同じになっちまうぞ!?
人民解放軍の影響力が、共産党さえ脅かしてるんだぞ?
資本と技術にしろ、移転したらそのまま接収するかパクるか、下手すると人質化されるリスクも現実的だ、ということは、フジタの社員人質事件でわかってるだろうが?
シナを変える!?・・・その前に、白樺も、列島線も、沖縄も、メタンハイドレードもなくなってるぞ!?
日本が取るべき道は、チャイナリスクを共有する親日国家群との相互依存体制を構築することではないのか?
コイツ、自分が何を言ってるのかわかってるのか?理解不能、理解不能。
F.北ニダーについて
a.刈り上げデヴの影響力低い
b.言うこと聞かない軍の台頭に、シナがブチ切れかけてる
c.シナはいずれ、北ニダーを見放す
d.崩壊すると、難民爆弾25万人が日本へ
e.拉致問題などで刺激するより、融和策をとれ。
…融和策ってのは、拉致被害者よりも“対話で民主化”することが優先することか?
オマエ、外交って本当にわかってる!?
G.安倍内閣について
a.TPPによる農業面での規制改革が大切
b.平和憲法維持し、アジアに迷惑をかけたことを忘れてはならない
c.歴史の解釈を変えてはならない
…問題外ですな。TPPによる農業の解放及び自主的発展については賛成だが、平和憲法と歴史解釈って…オイオイ、憲法はそもそも自主憲法ではないし、現状の歴史認識については捏造と偏見の塊じゃないか?
どっちも、日本の国益を“損ねている”し、“正統性”すら全く無いものだぞ!?
③田中均という人物
コイツは、近現代史の事象を述るだけだ。然して、近現代史とは“経済”が母体となって(戦争含め)外交や安全保障が展開された時代である。
“商売”は語るが経済を語らず、経済の必然として生まれた帝国主義の本質を語らず、ただの結果ばかりを語る。
もしかしたら、市場経済、いや、資本主義とは何か、ということがコイツはまったくわかっていないのではないか?
だから、経済からみた外交ではなく、“商売としての外交”のレベルでしか世界を見れないのだ。
それとコイツの頭の中は“戦後レジーム”のまんまで凍結されている。
今のコイツは外交のプロ“だった”人間であり、現役ではないのだ。ならばせめて“本当のこと”を知らしめ、日本の“正統性”を語るにはどうすれば良いのか、くらい語れよ。
まあ、ガチガチのお花畑では、無理か。
領土問題、民主や社民はじめお花畑共の存在そのものに内在する危険性…謝罪と賠償、偏向報道に対して、私達がなぜ怒っているのかなどについて、根っこを政治の、社会の、経済の歴史から捉えて考えないと、ポイントが国益の合理性から外れて、単なる感情論になってしまう。それではダメなのだ。
堂々と理論武装し、より正しい選択をするためにも、私達にはまず、判断の土台について学ぶことが必要だ。
最後に、コイツの行った言葉が忘れられない。
曰く、“外交に不可能はない”
…国が滅んでも、か?
【田中均ネタ、もひとつ】
『自業自得!? 米政府高官に罵倒された田中均の落日』
(週刊現代:2002年11月30日号より)
『11月9日、都内のホテルで日米韓3カ国の外務省局長級政策調整会合が行われた。田中氏、米国務省のケリー国務次官補、そして韓国の李泰植外交通商省次官補らが出席し、対北朝鮮政策が協議された。
ここで、ケリー氏の隣に座ったリチャード・ローレス米国防総省次官補(対アジア・太平洋安全保障担当)が、田中氏を罵倒したのだ。
(中略)
ローレス氏がヒートアップしたのは、ケリー氏が核開発を認めた北朝鮮への重油供給をストップする意向を示したのに対して、田中氏が難民問題を引き合いに出して反論してからのことだ。
「いいか、難民と言うが日本にどうやって来る? 北朝鮮から日本に来る船はどこにある?油は北朝鮮のどこにある? 知っているなら教えて欲しい。そんなものは北朝鮮にはもうない」
という発言を皮切りにローレス氏が持論をまくし立てると、田中氏はしはらく沈黙してしまった。その後、呟くような声でこう答えた。
「しかし、わが国には拉致問題があり……」
ローレス氏はこのとき、田中氏の言葉を遮って次のようにブチ切れた。
「現体制が変わらない限り、拉致問題は解決しない。解決には体制を変えることが最も早い方法だ。そのためには現体制を延命させる支援など一切すべきでない。これ以上、朝鮮銀行系金融機関に公的資金を投入することも、新潟で行っている貿易もすくにストップする必要がある」
一方、詰め寄られた田中氏は、これまでの議論でストレスが溜まっていたのか、
「それは内政干渉だ」と声を荒らげた。
が、ローレス氏は田中氏を一蹴するがごとく、こう罵倒した。
「内政干渉ではない。ミスター田中、あなたはいったい何を守ろうとしているのか? 日本の金融機関から北朝鮮にカネが流れていることは国際的に明らかだ。そのカネで北朝鮮は何をしている? テロリストを支援し、核開発をしているではないか。内政干渉? 冗談じゃない!あなたが行おうとしていることこそ、国際的なルール違反だ。しかも、重大な違反だ」
まさに自業自得。アメリカの後ろ盾すら失った田中氏の「落日」は明らかだ。』
・・・私が講演を聴いた男は、こんな人物だった。
【おわりに】
『第一は、忍耐と寛容をもってすれば、人間の敵意といえども溶解できるなどと、思ってはならない。第二は、報酬や援助を与えれば、敵対関係すらも好転させうると、思ってはいけない。
謙譲の美徳をもってすれば相手の尊大さに勝てると信ずる者は、誤りを犯すはめにおちいる。』(マキャベリ『政略論』)
【参考】
もしこのお話を機に、重商主義王制国家の時代から近現代まで、政治経済の歴史について学んでみたい、という方がおられたら、プリベンター“wind”としては、以下の文献をご一読されることをお薦めする。
私がオススメする文献は・・・
文明論的見地から学ぶなら高坂正堯先生の『文明が衰亡するとき』
国際関係論から学ぶなら中西輝政先生『なぜ国家は衰亡するのか』
社会学経済学的見地からなら佐伯啓思先生の『「欲望」と資本主義』
といった京大学派の先生達が綴られたやつだ。
他にグローバル化についてなら、水谷研治先生や飯田経夫先生、日下公人先生、といった巨匠の文献もよい。
外国人ならドラッカー『ポスト資本主義社会』、ハンティントン『文明の衝突』、リカードォの『比較優位論』、ポーターの『国の競争優位』もよいかもしれない。
・・・以上レポート終わり。