
画像は、元内閣府現外資ストラテジストの友人とのやりとり。
黒田さん、財政のためと思ったのか、或いはアメリカを説得したかったのか…真意は解らないけど、あの一言はマズいわ。
曰く「(国債引受と異次元緩和について)平成31年度ごろに検討し、議論しているのは間違いない」
現状の、財政ファイナンスという異常事態或いは日銀資産の肥大化と利上げ時のショック、引受手不安だらけの長期国債残高考えたら、日本財政の破綻を防ぐためにも、退路を絶ちたい気持ちはよくわかる。
これ以上傷口を開きたくない親心も、よく分かる。
しかし、今は言っちゃいけない。
アメリカ発の全世界保護主義化、関税報復合戦という外的要因。
少子高齢化で内需や成長の期待薄、生産性の低さを助長する働き方改革、進まぬダウンサイジングという内部構造。
世界にはびこる格差、シナだけに頼らざるを得ない実体経済、そのシナのキンペー独裁合法化と帝国主義。
2月からの恐怖指数急上昇、株や債券の同時波乱、そして円高やスイスフラン高は、この具現。
こんな潮流考えたら、今は“出口について”言及すべきではない。
確かに言ったことは遅過ぎただけで、中身は正しい。
しかし、言うタイミングが間違い過ぎている。
今、“出口を語る”ことは、“堕ちる方向”に変わり始めた経済に、引導を渡しかねない。
昨年までと違い、保護主義化する経済の流れは、世界に対して逆風だらけだ。
洗濯機、太陽光パネルはどうでもいい。が、鉄鋼、アルミ、そして自動車…此等に制裁関税かけるのは、アンタの同盟国…アンタの国になくてはならない同盟国の、その経済を弱体化させる…判ってるのか!?不動産屋のクソ親父!
日本企業の実体経済は良いように見えるが、それは海外からの収益頼み、というのが現実。
当然、円高になれば貿易収支の価値は落ちるし、輸出にも不利。
国の対外資産価値も圧縮されるから、相対的に純資産は目減りする。それは長期国債の価値にも連動、金利は跳ね上がる。それに逆らい続けたイールドカーブのフラット化は、緩和出口時には実質金利の極端なスティープ化へと逆作用し、国債価値下落ショックをさらに大きくする。
日銀本体やGPIFといった安定した買い手を失った株式市場も当然、荒れる。
現在、世界の危機が円高を呼び、企業収益の目減りは、賃上げを抑制する。
そして消費税増税が消費を更に減退させ、それは税収を目減りさせ、肥大化する社会保障への対応力を更に減殺する。
そして来年…今回の黒田発言で、“来年”とせざるを得なくなった、その“出口”に立てば、おそらく目に見えるのは、借金の山。
引受手のいない国債の山、買い手のいなくなった株式市場。
そこに至れば政府は、企業収益を支えるため、国民経済を守るため、ケインズ政策をさらに連発する。
予算には更なる国債増発や、将来性を担保できない財政投融資が使用され、財政規律は歪みに歪み、中身のない投資は増税で賄われるだろう。
もう、めちゃくちゃである。
そんなふうに、“出口"はリスクだらけだと言うことが分かっているのに、なぜ今…世界の資産が動揺しまくっているこのタイミングで、“その時”を語るのか?
バブルが弾けつつある、このタイミングで。
黒田さん、今回の談話は、5年に及ぶあなたの輝かしい実績を、すべて消してしまうかもしれませんよ?
【追記】
友人は言う。
「イールドカーブコントロールでも通貨供給量は調整できる(=利回りが国債価格を上下して、しかも価値下落を防ぐ)」
「だから黒田さんは、国債買入れ減らしても通貨供給を続け得る、と自信満々」
私も指摘。
「政府債務がGDP の倍以上というなか、高齢化で納税者が少なくなり、社会保障が高騰するのが明らかで、しかもさしたるイノベーションもなく、少子化で将来市場が明らかに先細りなのが我が国」
「それなのに長期金利が上昇せず、利回りゼロでも国債が価値を保ち得ること、株価がバブル後最高値を示すことができたのは、ひとえに中央銀行の財政ファイナンスとETF購入、そしてイールドカーブ指値してくれてるおかげ」
「つまり、すべては日銀がいてくれるから実現できている芝居」
友人「今回は日銀が手を引くことが、期限付きで明言されたようなもの」
「日銀が出口の扉に近づけば、まず株が売られ、続いて長期金利が上がる(=国債の価格が下がる)」
「そうなった時こそが深刻」
私「今、アメリカの株·国債やハイイールド債·通貨が下がって、相対的に円が買われている(=円高)のは、日銀が国債を買うことで、日本の価値を保証してくれているから」
「この身元保証人がその立場を放棄したとき、日本経済はひとり歩きできるだろうか?」
友人「かなり危ないでしょうね」
ホント、今の国際情勢下で出口の扉を開くなら、来年、かなり危ないな。
政府はその時には、ヘリコプターマネー…コンソール債出すんだろうが、それは寧ろ、円の価値を徹底的に貶めることになる。
通貨安、社会保障費のための増税…可処分所得はいよいよ圧縮されるところへの、働き方改革での収入減。
一時のインフレの後、有効需要は失われ、市場は再びデフレに。
これを経済の世界では、スタグフレーションという。
これへの経済対策では、最早ポリシー·ミックスは無理。既に市中の国債在庫は少なく、買い手もいない。だから金利以外の金融政策は期待できない。財政出動は民間の資産を担保に発動されるだろうが、それは矢継ぎ早の増税によって償還される。
ここから先は、モノローグ。
真面目に、市中の国債在庫が5%を切る来年の秋までには、円高のうちに貯金の半分を、スイスフラン、ノルウェークローネ、米ドルやユーロ、豪ドルなんかに分散して持つべきだと思う。
たとえその貯金が100万円であっても、そこから数年後…円の下落に対してはその分、価値は2倍で上昇するのだから。