• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

器≪Utsuwa≫のブログ一覧

2010年10月28日 イイね!

この記事は、本日の食事とおやつについて書いています。

このお話を読んで、3年前に他界した母のことを思い出しました。

若い頃は母親を連れてドライブなんてとても照れくさくてできなかったけど、20代も半ばになった頃からかな。
日常の様々な事象への考え方、世の中のこと、特に個における義理とか筋論について、いつの間にか自分が彼女に対して諭す役割を演じることが多くなっていったその頃から・・・
私には自分の母親という人に対して、自然と労ったり、護ったりしてあげなければ、という気持ちが強くなっていったような気がします。
その頃は、季節が変わる度、自分自身が一人旅のなかで見つけた色々な光景を見せてあげたくて、ちょこちょこあちらこちらへ連れて行ってあげたものでした。


さて、私の母は腎臓癌を源発とした多転移で亡くなったのですが、発病してから亡くなるまでの初めの1年半ほど、自宅での療養期間がありました。
当時父も膵臓癌と右足の骨折で同時に療養期間にあり、私は二人を同時に在宅で看ていました。

褥瘡防止のため介護ベッドで寝返りを打たせ、夜中には譫妄で騒ぐ彼女の手を握り、そして幼子に接するように語りかけ、抱え上げてポータブルトイレに移し、オムツを替え、温かく湿らせたタオルで身体を拭き、介護食を口に運んであげていた、ある冬の日曜日の午後。



「どらいぶにいきたい」


珍しく調子が良かったのでしょうか?脳への放射線治療ですっかり幼児退行した彼女は、拙い言葉で私に語りかけました。
電話で医師に許可を求めたところ、“もう長くはないのだから、目一杯親孝行してあげなさい”とのこと。

ステージア(当時)のリアシートを倒し、敷き布団と掛け布団を用意。四肢が浮腫んだ母を抱き上げて、冷たい薄曇りの冬空の下、枯葉舞うなかを私は車庫に向かいました。
病にやせ細り、軽くなったはずの母の身体は、力が入らないためか思ったよりずっと重かったこと、今もこの腕に記憶として残ってます。
寒風で冷たくなった彼女の手は、それでも弱々しく私が羽織っていたコートの袖を掴んでいました。
彼女の半ば虚ろな目は、それでもどこか笑っているようで、私という一人息子をじっと見つめていてくれました。

エンジンをかけ、私は車を静かに都市高速に運びました。
静かに、ゆっくり加速してトンネルに入ると、もう、はばかることなく涙が溢れて溢れて、後ろで横たわる彼女に気づかれまいと、声を殺して、男泣きに泣きました。


これが最後の母との“どらいぶ”。

都市高速から連絡する有料道路のパーキングエリアまで、たった数十分の“どらいぶ”。
車を止めても母は起き上がることもなく、静かに窓の外、数十年を共に過ごした名古屋の街を覆う曇り空を、ただじっと見つめているだけでした。



「もうかえる」


彼女はぽつりとそう言うと、私が買ってきた温かいココアを節だらけの手でそっと受け取り、そのまま目を閉じると、いつの間にか静かに寝息を立てていました。

家を出てから何一つ会話をすることもありませんでしたが、車を車庫に入れ、苦労して彼女をおんぶするとまた涙が溢れて溢れて、玄関までの階段が曇ってとても見づらかったものでした。
その階段の一段一段を踏みしめていると、抱え上げたときは命を名残惜しむかのようにあれだけ重く感じられた母の身体が一転、今度はあまりに軽くられ、それが彼女に残された時間の短さを知らせてくるようでした。

雪雲が濃い灰色にかかる藍色の夕暮れのなか、吐く息も白く、しかし背中にだけは幾分か彼女の温もりを感じられたのが切なくて切なくて、出迎えたしばわんこに触れるでもなく、私は家に戻りました。

これが私と母の、小一時間にも満たない、最後の“どらいぶ”でした。

後日の話ですが、母はあのドライブの話、訪れるヘルパーさん、ケアマネさん、訪問看護師さんやお医者様に自慢気に話していたそうです。
その母も、年が明けて2月の小春日和の日には、近くの総合病院に入院、その後命果てるまで出てくることはありませんでした。


たはむれに 母を背負ひて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず   石川啄木


男ってのは、いつか母親を背負わねばならないときが来ます。
その時には、残された時間のために万感の思いを伝えてあげられたら、いいですね。

【追伸】
皆さん沢山のイイね!ありがとう。
私がまだ幼い頃、冬の寒い夜には、母が布団の中で私を温めてくれました。
そのとき歌ってくれた子守歌、題も知らない歌ですが・・・記しておきます。

ねむの花 眠った
坊や ねんねしな
ふくろうが 鳴いている
向こうのお山も 眠った

お母さん、ありがとう・・・。


あ・・・別にマザコンじゃないですよ。
Posted at 2010/10/28 16:16:15 | コメント(7) | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

「5年乗ったスピトリRSから乗り換えた。旅先でどうしてもダートを見ると心がときめくからだ。林道レベルならモタードはオフも走れる。問題はタイヤだが、純正のスーパーコルサSPはナラシ終了時に坊主になってるはず。次はスコーピオントレイルあたりにしたい。だが情報が大陸に漏れるのは必至。」
何シテル?   09/19 00:51
平成30年2月現在、 【四輪】 家車…モデル末期、叩き売りのアウディA4 AllroadQuattro。 使用用途は主に近所のスーパーへの買出し、...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2010/10 >>

     12
345 6789
1011 12 13 141516
17 1819 202122 23
242526 27 2829 30
31      

リンク・クリップ

【衆議院選挙2017】候補者を選ぼう 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2017/10/06 12:43:04
【加筆改訂】備忘録~麻生談話~ 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2017/09/23 15:56:06
【ちょこばさんエントリによせて】叙事詩〝裸の王様〟 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2017/02/10 17:08:04

愛車一覧

ハスクバーナ 701 Enduro RX-0 Unicorn (ハスクバーナ 701 Enduro)
2017年3月11日―今日という日に敢て、2月14日に我が家にやってきたこの車両について ...
トライアンフ スピードトリプル RS 天使のブ・・もといDWG262ツヴァルケ (トライアンフ スピードトリプル RS)
キャスター角22度9分、トレール91.3mm。 ホイールベース1445mm、装備重量19 ...
アウディ A4オールロード クワトロ ヒゲクジラ (アウディ A4オールロード クワトロ)
2020年6月5日、走行48000キロ、5年間保有の後叩き売り…良い車なんだけどねえ…ま ...
シボレー コルベット クーペ ネオ・ジオング (シボレー コルベット クーペ)
2019年6月某日、売却。 中秋あたりからの山岳エリアでは路面温度も下がり、立ち上がりで ...

過去のブログ

2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2020年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2017年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2011年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2010年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation