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2016年08月23日 イイね!

2016年夏、ポリシー・ミックス、その裏に見える危機 ~第三章 第一の矢=金融政策~

2016年夏、ポリシー・ミックス、その裏に見える危機 ~第三章 第一の矢=金融政策~













【はじめに】

 何故私が尖閣ネタや売春婦ネタなんかを語らず、ここまで経済ネタに拘るかを書こう。

 正直現実、人間ってのは〝食っくこと>信条とか安全保障〟だ。
 そして〝食ってくことが豊かになれば〟支持率は上がるw
 尤も、現在の日本では〝食ってくこと〟が〝上見てピーチクパーチク囀る〟で実現できると思っちゃってるwww

 

 日本の安全保障?…ナニソレ美味しいの?
 財政規律?…もっとナマポを!年金増やせ!

 景気が悪いのはアベノミクスの失敗だ!アベ政治が悪い!!
  保育園落ちた、日本タヒねw

 そして…ケイキヲヨクシテクダサイ!


  


 しかし考えてみると、この風潮、利用しない手はない。
 国防とか外交とか、或いは財政とかそういうネタは、危機が目に見えて現れなきゃ、争点にはなり辛い。

 しかし現実、〝今そこにあっても関心の向かない危機〟には対処しなきゃならない。それには議会で過半数を取るしかない。
 それには〝生活に近い〟とされる経済政策や福祉政策を〝戦略上の手段〟として、〝よい夢〟を見せ、支持率を上げ、選挙で勝てばいい。
 多少(と言っては語弊があるが)のリスクはいいから、兎に角「景気をよくしてくれ」とか「女性が活躍できる社会マンセー」「パチンコはナマポただひとつの娯楽」とか、パンとサーカス(※)を与えておけば、支持率はよくなるし、選挙にも勝てる。

 逆説的だが、日本が〝自立した美しい国であり続けるには、目の前の経済を何とかしなきゃならない〟のだ。

 だから、ややこしい経済ネタを語ってる。

  前章では、吹いても吹いても火がつかない日本の経済につき、バーナンキが行ったであろう5つ(!)の助言のうち、ポリシー・ミックスとインフレターゲット、そして国債引き受け保持コミットについて綴った。

 改めて本章では、本年9月から年明け早々のうちに発動されるであろう経済政策のうち、〝金融政策〟について綴る。
 

※…古代ローマでは、周辺国征服により富の集中が生んだ富裕層と、(当時の)グローバリゼーション=移民による農奴によって職を追われた無産階級との間に、社会的格差が生じていた。そこで為政者たちは、この問題から市民の目をそらすため、食糧無料配布と娯楽を蔓延させた。今日の愚民政策のルーツであるが、ローマのやつは法制化されたものではなく、ただの風潮だった。一方、今日の左翼国家で行われるこれは法制度のもとで発動しており、ローマのやつより度し難い。
 参考:中国共産党 「日本解放第二期工作要綱」 中央学院大 西内雅教授(故人)昭和47年 西アジア歴訪時入手 より抜粋
 『2-2テレビとラジオ 資本主義国においては「娯楽」であって、政府の人民に対する意志伝達の媒介体ではない。この点に特に留意し、「娯楽」として利用することを主点とすべきである。 』
 嫁→https://minkara.carview.co.jp/userid/712411/blog/20536765/


【7月29日の反省】

 さて、 7月29日の日銀金融政策決定会合(※)。
 コイツがダメだったことは、前第二章『バーナンキの訓示』で述べた。


 ※…『日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の会合のうち、金融政策の運営に関する事項を審議・決定する会合を、金融政策決定会合といいます。(日銀HP)』だそうだ。ま、平たく言うと、公定歩合(国の金利の大元)や通貨発行量など、市場に流すお金の量をどうするか決める大事な会議のことだ。


 1.評価点

 それでも唯一できる点は、ポリシー・ミックスに相応しいタイミングでの発表であったこと、それも市場の予想(※)を覆して、参院選直後に行われたこと、であった。
 このタイミングは、Brexitの爪あとがまだ記憶に生々しい時期、かつリオ五輪で市場の注目が娯楽に走る前、という点で、サプライジングとしてはまあ、評価はできるものであった。


  ※…みんな日銀が動くのは9月だと思っていた。


 2.中途半端

 しかし、中身は決して評価できるものではなかったことは、前章で述べたとおりだ。
 7月29日の金融政策決定会合は、市場の『モットクレロン』を動かすには至らなかったのだ。
 〝黒田バズーカⅢ〟という割りに、大山鳴動して鼠一匹。

 行われたのは、GPIFによるETFの買い増し2.7兆円。
 KKR(※)、地方公務員共済、日本私立学校振興共済、といった日銀子飼いの各機構は動かなかった。

 そしてBrexit被害で資金に苦しむ中小企業救済のための、貸出支援基金への追加注入。
 
 これではあまりに小物臭が強すぎる。
 だから市場は失望し、株が売られ、リスクオフ資産の円が買われた。


 ※…国家公務員共済組合連合会。国家公務員の福利厚生の面倒を見るため、日銀のもとで共済費を資産運用している。


 3.何故こうなったのか?

 小物臭プンプンだった7月緩和。
 では、〝小物〟と称するには、それなりの〝大物〟の存在を市場は期待していた、ということだ。

 ここでは、市場の思惑は何だったのか? 考察してみよう。

 今回は株の買い上げが2.7兆円増しただけ、である。これは市場とのギャップに大きな開きがあった。
 
 市場の思い―それは、以下のようなものではなかったか?
 7月29日の金融政策決定会合、黒田総裁記者会見を見ていた市場関係者の心理状態。
 
 ・国債購入の追加がある筈だ!
 …現在の金融緩和を更に拡大、現状年間80兆円としている日銀の国債引き受け(※1)を年間100兆円に拡大。市場にさらにお金を回す。それは(名目上意図的ではなく)円安を招き、輸出セクターを中心に株価が押し上げられる。それがトリクルダウン(※2)を加速させる。そうすれば(´・ω・`)の成長は底上げされるから、(´・ω・`)を買うのはアリ。

 しかし現実7月29日には、日銀が国債を引き受けることはなかった。

市場は、ヾ(--;)ぉぃぉぃ、となった。

 ・いやいや、ヘリコプターマネー(※3)があるんだろ!?、と思う。
 …だってバーナンキが来て総理にも会ったし、(黒田総裁は否定してたから)直接のヘリマネーばら撒きはないとしても、きっと償還期限なしの新規国債(※4)を今までの国債と等価交換するんじゃない?それで国債買うなら、財政負担もなくなるよね!?
 これなら国債の新規発行じゃないから筋は通るじゃん!?
事実上のヘリマネーだけど、これなら金利負担だけだから、政府は国債増発できるよね?

 


 日銀「んなもんやるわけないわw」
 市場は、( ´・ω) (´・ω・) (・ω・`) (ω・` )となったw

 ・まだだ、まだマイナス金利(※5)の拡大があるかもしれない!、と思う。
 …これなら現実的だろう?と。現状のマイナス0.1%を0.2%にしてやれば、市場にお金は押し出されるはず!預金は投資に回るよね!
 政府の貸出支援基金にもこれが適用されれば、お金借りる会社がもっと増えて、設備投資も頻繁になるよね!

 しかし、これもなかった。
 市場は、(´-д-;`)どよ~~~ん 、となったwww  

 むしろ市場は、以下のやつに嫌気がさした。
 
 ・日銀「Brexit対策の資金供給枠を240億ドルに倍増します(`・ω・´)キリッ!」
 …これは日銀がドルを市場に240億押し出すことになり、実質はドルやポンドに対するマイナス金利の発動だ。勿論ドルとポンドの下落要因になる。
 相対的に海外からの円調達コストは上昇、日本の金融資産を買うために円を調達しようとする海外投資家から見たら、事実上の円の利上げになる。
 
 市場は、絶望した。
 

 これが、7月29日緩和の内実だ。


 ※1…日銀は日銀法で、政府の意のままには動かない、という独立性を課せられている。だから日銀は、金融緩和のために国債を買うのは政府からの直接引受けではなく、政府から市場に流された国債を持っている民間銀行から買い受ける、というスタイルをもつ。
 ここにおいて問題なのは、市場に国債がある限りはいいが、市場の国債がなくなると、日銀はこのタイプの緩和が出来なくなる、ということだ。そうなると政府は国債を市場に強引に買わせるしかなくなるが、これは社会主義国家のシステムであり、市場が政府の言いなりになってしまう、という資本主義経済とは真逆の、経済を通した国民の基本的人権への介入を意味することとなる。( `ハ´)がやってるのはこれだが、おかげで中国の人民元相場はまったく信用されていない。
 ちな、日銀が国債を政府から直接引き受けることは、今度は通貨安競争につながることになるため、これも禁じられている。でも、( `ハ´)は平気でやっている。だから人民元は〝将来( `ハ´)政府の意図で突然価値を失ったりする〟怖さがあり、誰も信用しない。
 
 ※2…金融商品をもっている富裕層が儲かれば、それは投資につながり、投資が活性化すれば企業の成績も上がり、賃金も上がる、という考え方。〝イエ〟社会の日本の中小企業には向いているが、グローバルな視点をもって戦略展開する中大手企業では、投資の儲けは国内だけに向かうわけではないから、効果は限定的である。

 ※3…次節で述べる。 

 ※4…いつ返してもらえるか判らん借金など誰も引き受けんw日銀でもやらんし、そもそも民間が買うわけないだろ!? これやった瞬間、長期金利が大暴騰して国債はタコ足状態になって、一気に円が暴落するわwww

 ※5…次々節で述べる。


 4.背景にある思惑

 たとえそれが逆効果となることが判っていたとしても、7月の小規模緩和、器《Utsuwa》はこれを、主に政府と日銀の〝確信犯〟的行動だと思っている。

 今回の日銀緩和は規模だけでなく、時期的にあまり意味があるとは思えないものだ。先に述べたように私も市場も、黒田バズーカⅢの発動は、9月だと思っていた。

 その理由は、前章『【バーナンキの訓示】1.素早く、かつ大規模なポリシー・ミックス』で述べたように、11月のアメリカ大統領選後、FOMC利上発表にあわせ、大規模補正予算と連携した方が、より巨大なシナジー効果を期待できるからだ。
  
 そのようなことは日銀も政府も、重々承知しているだろう。 

 しかし、それでも敢えて何故7月29日だったのか?

 思うに、これはプロパガンダだ。

 日銀と政府は、2月のG20、そして5月の伊勢志摩サミットで、通貨競争の禁止にコミットしている。
 だから、この時期大きな金融緩和をやるのは早すぎる。サミットが終わってまだ2ヶ月。この時期大規模なポリシー・ミックスを展開すれば、政府は世界中から「サミット合意を反故にするのか!?」との謗りを免れまい。

 だが、あくまで政治命題を〝憲法改正〟に置く安倍政権としては、Brexit後の国内経済混乱(※1)に対し〝希望の出口〟を見せておきたい。それによって支持率を高くキープしておきたい。冒頭にあるように、国民の関心は景気や社会保障なのだ。

 支持率を高くしておくには、9月の補正予算前に、
 〝安倍政権は経済を忘れていませんよ!〟
 とアピールしておきたい。
 投資家にも
 〝バーナンキの言ったポリシー・ミックスを大事にしますよ!〟
 と念押ししておきたい。

 順当な流れであれば、
 ①大規模補正予算を〝成立させ〟中身があることを明示して、
 ②金融政策でフォロー
 …このカタチが普通である。
 中身があることで投資家は方向性を見極めて、そこへ資金を流す。

 でも、この流れは9月にしか出来ない。
 一方政府は、夏枯れ相場(※2)事前に経済指標を短期的にでも良くして、投資家の注目を浴びていたかった。

 日銀としても、4月26日の金融政策決定会合で何もしなかったことで、市場から大顰蹙を買った。今回は、わざわざ政府しかも総理大臣が財政政策構想を発表する、というお膳立てまでできている。

 これで日銀が何もしないとなれば、市場は、
 〝もう(´・ω・`)には金融緩和の余地はない〟
 と愛想を尽かす。
 そうなれば、円高株安は危機的レベルになってしまう。

 だから、日銀も〝渋々〟動いた。但し、お茶を濁す程度には。
 
 政府と日銀の思惑、この二つが、今回の金融政策が小発だった背景にあるのではないか?
 繰り返すが、これは政府と日銀のプロパガンダだ。
 
 何度も言うが、このままでは済まさないはず。

 本命は、9月だ。
 

 ※1…混乱していたのは実は日本だけである。


 ※2…(´・ω・`)のお盆や海外のバカンスで市場関係者が仕事をしないので、投資活動全般が薄くなること


【ヘリコプターマネー】

 いま、キーをタイプしている私の足元では、ぬこがつまらなそうに寝ている。
 嫁は今回の超大作について、「睡眠薬」と称した。

 これだけ一生懸命解説もつけているのに、二人とも「わからん!」という。
 少しは新聞なりネットで調べればいいのに、そういう努力は「したくない」らしい。
 おまけに、昨夜はまたしても>●99999999999○<に噛まれた。じんましんが出た。医者にはアナフィラキシーショックに気をつけるよう言われたが、どこをどうやって気をつければいいかわからん。まったく、踏んだり蹴ったりだ。

 仕方ない。せめてこの超大作を少しでも解りやすくするために、解説をもう少しつけよう。  

 で、ヘリコプターマネーである。これ、ミルトン・フリードマンという経済学者が唱道したのが最初で、バーナンキはその後継者。

 そのバーナンキのブログ『アメリカに残された手立て』から。

 
 ここにヘリコプターマネーについての解説がある。
 『a “helicopter drop” of money is an expansionary fiscal policy—an increase in public spending or a tax cut—financed by a permanent increase in the money stock.』
 即ちヘリコプターマネーとは、財政政策の拡大や公共投資、減税を、通貨供給量の拡大という財源によって担保することだ。
 平たく言うと、政府による投資や減税の財源を、通貨の増発で賄うことだ。
 
 従来の財源償還や利払いは、別の税金や国債発行上塗りでの資金調達で賄ったり、財政投融資(※1)などの措置で代替していたが、ヘリコプターマネーを使うということは、政府の償還負担はなくなることを意味する。

 実践的に言うと、民需による内需が振るわないなら、政府が財政政策でこれを代替し(※2)、その血流たる資金については金融緩和で対処する、というのがヘリコプターマネーの基本構想だと思えばいい。

 ヘリコプターマネーの最終目的は、賃上げ、設備投資などだ。これはマイナス金利と同時発動させることで市場にお金を沢山回してインフレを起こすことを意義としている。
 喩えるなら、便秘のときに更にごはんを大量に食べると、自律神経で胃袋とか腸が強制労働させられ、翌日う○ちが沢山でる、ということと一緒だ。ここでいうごはんがヘリコプターマネー、胃腸の強制労働がマイナス金利、う○ちは市場に回るお金だ。
 ヘリコプターマネーの実例としてはスイスやデンマーク、スウェーデンなどでの実施が挙げられ、投資が活性化されることによる固定資産価値の上昇や、為替の下振れつまり輸出価格競争力の上昇、内需の拡大などが見られている。

 で、市場が期待するところの、現在の日本においてこれを行うとしたら、どういうカタチを採ることになるだろうか?

 前節【7月29日の反省 3.何故こうなったのか?】で触れたが、赤字国債を発行して市場に買わせ、これを日銀が買い上げる、というのは参院選前に安倍総理自らが否定した(※3)。
 というか、これやったら政府はやりたい放題だし、日本は国内外からダメなやつとの烙印を押される。
 曰く「日銀って、政府の都合が悪くなるとカネ刷ってごまかすんだね?(国内銀行、海外)」
 曰く「日銀にカネ入れといたら、全部国債買うのに使われちゃってウチ等の預金なくなっちゃうじゃん?(銀行)」
曰く「そんな国にお金置いといたら、いつ増税でウチ等の資金持ってかれるかわからんね(海外資本)」
 曰く「もうやだこの国。出て行こ!(全員)」

 国債は投売りされるし、円の通貨価値は地に落ちる=ハードカレンシー(※4)としての円の地位はなくなる。そうなればハイパー円安となり、すさまじいインフレになる。特に輸入に頼る食品やエネルギー、各種一次資源(※5)の価格は暴騰する。
 ヤバくなった法人や個人資産家は、円をドルやユーロなど他のハードカレンシーに交換しようとしたり金を買ったりしようとするが、政府は預金封鎖で円の海外流出を不可能にする。
 政府は国債の償還どころか利払いも出来なくなり、財源確保のため増税に次ぐ増税の後、デノミ(※6)をやって債務負担を大幅削減する。最悪徳政令(※7)で借金帳消しにする。
 円建てのあらゆる資産の価値は暴落し、相対的にドルやユーロ、人民元であってもその価値は現在の数百倍になる。
 銀行は次々と倒れ、企業の倒産は続出し、家庭内ではメザシ一匹買うのにも命がけとなる。みんカラ?知るか!!

 こんな政策、とても怖くて出来ない。
 であれば、別の手がある。

 それが前述、
 ・償還義務のない国債、すなわち永久債を
 ・政府が民間金融機関に売りさばき、
 ・これを日銀が買い受け、
 ・かわりに日銀が今まで保有してきた国債を政府が等価で交換する、
 というやつだ。

 これなら国債は政府がその気になる(インフレターゲット達成)まで償還しなくていいし、国債の発行額は変わらないから、政府の実質上の債務負担は一気に軽減され、同時に市場には莫大なお金が供給できる。
 
 と言ってもコレ↑、実質日銀にとってはたまったものではない。
 何せ日銀は、元本保証があるのにいつ返してもらえるかわからない、というイミフな債権を握らせられることになるからだ。
 
 こんなの、ただのごまかしである。
 日銀が買いあげてくれなきゃ、民間銀行だって買うワケがない。
 仮に日銀が引き受けたとしたら、今度は日銀が世界中から白い目で見られる。
 それはやっぱり、円の信認が揺らぐことになる。
 その先にあるものは、円安どころかハイパー円安だ。

 …と思ったら、どうも雲行きが怪しい。

 実は安倍総理が秋の補正予算、つまり『未来への投資』なる財政政策を公式発表したその日、麻生先生が黒田総裁と会ってた。



 そしてこれはメディアは殆ど採り上げてないのだが、ここでとんでもないコミットメントがなされている。

 それは、実質的には〝ヘリコプターマネー〟。
 事実上の〝永久債〟の発行と、その日銀引き受けにつき、具体的な話がなされたらしい。

 事実上の永久債とは、超長期40年国債の発行。
 その金融機関や機関投資家(※8)への売りつけ。
  
 日銀がこれを、買い受けるらしい。
 そして日銀は、今まで持っていた同額の長期10年債以内のもので未だに償還を迎えていないものを、これと交換して政府に返す。

 つまり、事実上の債務延長。
 所謂リスケジューリングだ。
 一般企業なら、対金融機関では倒産危機度が2ランクは上がるし、対一般債務者なら〝不渡り手形〟だ。

 名目上は〝超長期インフラの財源〟らしいが、そもそもコレ、40年後の日本を担保できるのか?
そのときの円の価値は?いやいや、そもそもそのとき日本の借金はどうなってる?
 いや、そのとき世界秩序は安定してるのか?経済はどうなってる?アメリカが破綻して、日本が持ってる米国債が死んでないか?
 後述するが、今から40年後って、2056年だぞ!?
そのとき日本の人口は、出生率が今のままで9000万人ちょっと、多くなっても1億人ちょっとだぞ!? 2.3人にひとりが爺ちゃんや婆ちゃんだぞ!?



 誰が税金納めるんだよ!?
 …移民、やる気満々だなw

 そう思った矢先、長期金利が急上昇(※9)、ワロタ…ワロタ。



 このようにヘリコプターマネーは、次節のマイナス金利よりも問題点の多い政策ではあるが、それについてはアベノミクスの金融政策の問題として、後でまとめて詳述する。本章ではまず、この概念について理解していただきたい。


 ※1…国債の一種であるが、政府が財投債という儲け度外視の債券を自治体や公益法人なんかに買ってもらい、その代金は民間では採算性の見込めない事業に充てられる。事実上政府のなかでお金を貸借しているだけだから、借金の負い目もない。但し、その償還は一般財源すなわち税金で賄われる。

 ※2…これが世間で言うケインズ政策である。それまでのアダム・スミス的利己主義(=セイの法則)、すなわち『神の見えざる手理論』では、1920年代の大恐慌を解決できなかった。
 だからケインズは、マルクス主義的要素を資本主義経済に注入し、政府が公共事業などで有効需要を創出して、減税で購買力をあげれば、経済は活性化し、雇用も増加する、と唱えた。
 ルーズベルトはこれを使ってニューディール政策を発動、農地の減反とか銀行の健全化を推進して供給力を制限しデフレを解決、同時に金本位制の停止を実施してドルの通貨価値を保持した。

 ※3…民進はこれをやろうとした。財政規律なんて考えていない、実に民進らしい発想である。日本を壊す気満々に見えるが、民進上層部にはそのようなリスクさえ理解できる頭はない(断言)。

 ※4…国際決済通貨。多国間の貿易に使う信用をもった通貨のこと。発行国の経済力や安全性、政治的安定性などが担保になっている。サヨクが言うように日本がアメリカの軍事力の傘から抜け出したり、自衛隊がいなくなったりしたら、その時点で円はハードカレンシーではなくなる。

 ※5…自然の中で採取され、加工されていない産出品(コトバンク)。石油とかお米とか、お肉とかお魚とか、ウランとか綿とか麻とか。

 ※6…正式にはデノミネーション。政府が借金を圧縮するために通貨価値を強引に切り下げること。ソ連崩壊時、1000ルーブルは一気に当時の1ルーブルレベルの価値になった。先頃破綻したジンバブエは、通貨価値が一気に一兆分の一に圧縮された。当然物価は一兆倍になった。日本では昭和21年に行っている。

 ※7…借金を合法的に〝なかったことにする〟こと。

 ※8…法人形態で資産運用をしている連中。許認可制である。証券会社や保険会社、ファンドとかがコレに当たる。

 ※9…長期金利が上がる、ということは、相対的に国債の価値が下がる、と言うことを意味する。国の信用度が高い場合、当然国債の市場価格は上昇する。しかし国への信用が損なわれると国債の価値は下がる。価値が下がれば価格も落ちる。相対的に金利は上昇する。金利の支払いには本来、債券の値上がり分が資金源となるが、債券が値下がり市場価格が債券本来のレバレッジを下回ってしまったときは、その債券そのものを資金源とて利回りを捻出しなきゃいけない。いわゆる〝タコ足〟である。それでさらに当該債券の価格は下落する。国債の場合、価格だけでなくて国の信用度や通貨の信用度も落ちる。


【マイナス金利】

 続いてマイナス金利の解説と実践について。


1.マイナス金利の目的

 ご存知のように、本年1月29日の金融政策決定会合で日本にもマイナス金利が導入されることが決定、翌2月16日、これが施行された。
 対象となるのは市中銀行が日銀で保有する当座資産の一部で、そこに預けられた市中銀行の預金金利はマイナス0.1%だ。
 これは、日銀にお金を預けていると〝預けた資金×年利0.1%でお金を取られる〟ということだ。

 政略上の意義を簡単に言うと〝銀行が溜め込んだお金を市場に押し出す〟こと。
 銀行が預入しているお金を逆ザヤにして〝預ければ預けるほど損をする〟環境を作り、預金を引き出させて市場に流させる。これがマイナス金利の真髄だ。

 目的は、〝流動性の罠〟からの解脱。
 流動性の罠ってのは、人はお金を持ったらどうするか、という命題についてのひとつの答えだ。
 人は基本、お金をもらったらあまり遣いたくはない。それは何かモノを買っても、将来それを売り払うとき、その価値は購入時の価値を保ってはいないからだ。
 それでももらったときのお金を投じて人がモノを買うときというのは、そのものを手にしたことによる便利性とか満足度とかが、もらったお金以上の価値をもつことを期待するからだ(これを経済学では効用という)。
 同じく、お金をもらって、もらった以上の価値を生み出すものはもうひとつある。それが金融商品だ。これは価値が下がるものもあるし、上がるものもあるが、基本景気がいいときは株やETFを買えば投資価値は上がるし、景気が悪ければ人は国債や公債を買って少しでも金利を得ようとする。
 しかし、世の中が不景気だったり、特に戦争や財政問題などで社会不安が高まっているときは、人はモノを買わない。金融商品も買わなくなる。
 何故買わないかと言うと〝もしモノや金融商品を買っても、それは買ったときの値段以上で売ることができるのか?〟という猜疑心が、人の心に育つためだ。
 こういうとき、人はお金を使わず、お金の姿のままに銀行に預入する(※)。 
 その場合、いくら低金利でお金を貸してもらえても、資金がいくら市場に供給されても人はそれを借りようとしないし、使いもしない。お金はお金のまま、銀行の預金に預け入れられる。だから金利は上がらないし、あらゆるモノや金融資産の値段も上がらなくなる。
 これが〝流動性の罠〟と呼ばれる現象だ。

 ちな、マイナス金利発動時の日銀当座資産の残高、すなわち〝罠〟に陥っている緩和資金残高は、( `ハ´)ショックや欧州金融危機という国際経済不安を経て、2014年4月の日銀国債80兆円買受以来、2015年度ではなんと200兆円も増加している。
 また2016年2月末では、民間企業の内部留保は対GDP比で世界第1位であり、前年同月比の3倍にもなっている。

 設備投資も振るわず市場も活性化されず、これでは賃金が上がるわけがない。



 このグラフ↑を見てくれ。
 ユーロ圏、アメリカ、日本においては夫々金融緩和をしているし、アメリカについては既にそれは終了している。
 にもかかわらず、内部留保が上がっているのは日本だけだ。

 これは日本が、先述社会不安により〝流動性の罠〟に陥っていることを意味する。社会不安は内需を弱らせる。日本にとって内需とりわけ個人消費は、GDPの6割を占めている。
 ここが(停滞ないし)縮小しているので、実需面では日本の経済は輸出とりわけ海外市場に頼らざるを得ない。
 その海外市場の中核にあった( `ハ´)は死に体である。何とか北米市場相手の輸出セクターが下支えしているが、日本の実需はこれでは片翼をもがれ、かつ残った半身も深手を負って入院していると同様だ。

 こんなボロボロの身体に、お金と言う血液を大量輸血しても、それは傷を癒すために体内で処理されるだけだ。
 動いて働かねば、食欲は生まれないし豊かな生活など望むべくもない。
 つまり、内需が高い経済構造でないと、金融緩和をしてもお金は貯蓄に回るだけなのだ。
 
 流動性の罠を解決する方法は、3つしかない。
 ひとつは、人にお金を使わせない原因たる、社会の不安や政治的な危機を払拭すること。
 ひとつは、政府が需要を創造すべく財政政策を発動すること。

 そしていまひとつが、マイナス金利なのだ。


 ※…そうでない人もいる。その典型例が、ナマポもらってもパチ屋に直行して破産するクズどもだ。他にも〝宵越しの金は持たない〟ことを粋とする、江戸っ子という人種もいるらしい。
 

2.マイナス金利の意味

 ところで前章で、各市中銀行が日銀に売り払った国債の売却代金は、日銀の当座預金に預けられることを書いた。
 諸氏は思うだろう。「なら、日銀の口座じゃなくて自分のところの口座に入れれば良いじゃん?」と。
 ところが、そうはいかないのだ。理由は二つある。

 ひとつは、日銀の口座にお金を置いとかないと、何かのときに政府から示された金融支援が受けられなくなるからだ。
 例えば、バブル崩壊後、北海道拓殖銀行や長銀、日債銀が倒れたとき、国会は金融安定化二法を制定し、政府は破綻した金融機関が当面業務を存続するための資金援助を行ったが、この受け皿は日銀の当座預金だった。また、当時はバーゼル条項(※1)を満たしえない金融機関の合併連衡が続いたが、この合併にかかわる資金は日銀から助成された。当然口座は日銀当座預金を通じて行われた。
 
 ひとつはもっとシンプル。それは、市中銀行の資産運用には国債が使われたり、銀行同士のお金の貸し借りには国債が担保として使われているからだ。従って、市中銀行はその経営活動を続けるためにも、最低限の国債は保有し続けるしかない。そしてその調達には、日銀の当座預金を使うしかない。

 このように、日銀と政府はあの手この手で市中銀行を雁字搦めにしているので、市中銀行は日銀当座預金の引き上げが難しいのだ。
 
 話を戻そう。

  前節では、マイナス金利の目的が〝流動性の罠〟からの脱却にあることを述べた。ここではマイナス金利について、もう少し掘り下げてみる。

 マイナス金利の作用というのは、喩えるなら心太(※2)のてんつき棒のようなものだ。
 
 
 マイナス金利が発動されると、我々の生活は具体的にどうなるのだろうか?
 政府や日銀が想定しているのは、以下のようなものだ。 

 ・クルマとか家のローンの新規契約分の金利が安くなる。
 ・財政政策、特に国土強靭化とかと都市再開発と連動すると、地価が上昇して固定資産評価が上がる。家賃なんかも値上がりする。
 ・国債保有率が高いためにマイナス金利の影響を受けやすい都銀を中心に、市場への貸し出し攻勢が起こる。安い金利では利ざやが少ないから、彼等は個人レベルへの貸し出しを拡大する。
 ・都銀の攻勢に対抗すべく地銀同士が合併し、地銀の信用不安が解消する。これについては先頃の福岡銀行と十八銀行の合併、千葉銀行と武蔵野銀行の連携が記憶に新しい。
 ・企業の設備投資が活性化する。都銀に大口預金を預けていても、マイナス金利での損失補てんとして、都銀での資金移動手数料などが拡大し、それはただでさえ安い預金金利を食いつぶしてしまうほどになる。そうであれば企業は、安い金利で設備投資を行うようになる。
 ・民間設備投資の進行で経済は活性化され、雇用の増加と賃金の上昇が見込まれる。それが消費を拡大し、沈降している内需を活性化させる。

 政府と日銀の目論見は、こんなところだ。


 ※1…国際金融業務を行うすべての銀行には8%の、国内金融のみを行う銀行には4%の自己資本比率(総資産÷自己資本)規制がある。本章ではバーゼルⅡ、すなわち株やETFなどリスク資産比率(リスク資産総額÷自己資本キャッシュ)について述べている。

 ※2…ヘリコプターマネーの節では、う○ちに喩えたが、下品だとの謗りを受けたので〝ところてん〟にした。ウホッ!ちな、私はあの心太をつくる器具が、てんつき
棒と呼ばれていることを知らなかった。


3.マイナス金利への誤解

 で、2月に発動した日本初のマイナス金利だが・・・結果は芳しくはなかった。

 

 マイナス金利導入後数日間、株価は一旦上昇したものの1週間もすれば急降下、対ドル為替にしても一旦円安の後、更なる円高の深みへ。

 ここでは〝市場評価が低かった理由〟について述べることにする。
 
 マイナス金利が市場に逆作用した理由、器《Utsuwa》が推測すると、それは6つある。

 ひとつは、日本にとってマイナス金利と言うのは史上初の試みであり海外でも事例は少なく(ユーロ圏は大成功なんだけどね)、これが発動した直後において市場は〝どうしていいのか判らず〟、とりあえず(根拠不明だが)安全資産たる〝円キャッシュ〟に逃げて様子見を決め込んだこと。これは円高と株安を招く。

 ひとつは、マイナス金利はその性質上、発動後すぐに市中が設備投資需要に応えたり住宅ローン借入増に動く、といった反応にはならないため。これらが動き出すには最低でも一四半期程度の時間がかかる。逆に言うと、直接効果が薄いから、株価上昇は磐石ではなかった。

 いまひとつは、マイナス金利発動は、比較的資金力に乏しい地方銀行を中心に、金融業会の収益性を圧迫することが予見済みだったため。これが株価上昇基調の足を引っ張った。
 金融機関にとっては、自らの資金運用先だった国債の金利がマイナス金利に引っ張られて低下するし、市中に融資するにしても超低金利に拍車をかけた超々低金利で利ざやは薄い。
 しかも前々年の消費税引き上げ、1月の( `ハ´)デフレとアメリカ利上げで冷え込む市場のなか、資金需要は設備投資など積極的なものではなく、運転資金にベクトルが向いていた。前述したマイナス金利の政策メリットとは逆に、資金を貸したくても、需要があるのは与信不足の相手ばかり。とてもホイホイ貸せない。それでは、と更なる資産運用を目指して株式を買えば、バーゼル条項に引っかかる。金融機関のお金が外に出て行くには、障害が多すぎるのだ。

 ここに市場の危惧が輪をかけた。マイナス金利は銀行の収益を圧迫するから、銀行はこれの穴埋めに貸出金利を逆に高くしたり預金金利を下げて利ざやを稼ぐのではないか、従って緩和効果は薄れるのではないか、と市場は勘繰った。さらに株価は下がった。

 さらに銀行ネタ。
 国債の大規模買入、すなわち日銀の緩和が難しくなるのではないか、という市場の思惑が走ったこと。
 市場は思った。そもそも国債を銀行が買わなくなるかもしれない。前述したように、日銀は国債を政府から直接買い付けることはできない。従って、日銀は国債を市中の銀行を通して買うのであるが、市中銀行は売った国債の代金を日銀の当座預金に入れている。そこにマイナス金利がかかっているので、お金を預け入れる=銀行は損をする、となる。
 だから銀行は国債そのものを買いたくなくなる。そうなっては金融緩和は不可能になる。日本は再びデフレに沈降する、市場の懸念が、円安を阻害した。

 そして最後に、日本の経済力そのものの脆弱さが、マイナス金利効果を台無しにしてしまったため。
 年明け1月4日の上海市場サーキットブレイカー(※1)連発は( `ハ´)国策バブル経済が最早最後の断末魔をあげ始めたことを予感させた。これに伴い、世界の工場として資源をザルのように飲み込んでいた( `ハ´)の需要は後退、世界中に資源デフレが広まった。
 一次産品に頼る新興国は発狂寸前になり、宗主国様に多大な貢物をしていた<`∀´ *>が火病を発生させた。
 世界中で経済危機が声高されるようになり、各国中央銀行が政策金利が低下させて、国内の景気を下支えしようとした。特に本年は4回、と言われたアメリカの利上げが当面嘘っぱちになったことが、ドル価値を相対的に低下させた。
 金融政策緩和による日本の円安は、この勢いで木っ端微塵になった。

 いかがだろうか?
 2月に発動したマイナス金利というもの、その政府や日銀が想定した政略をすべて、市場はネガティブに見てしまった。

 マイナス金利の本質は、間接効果だ。言うなれば〝流動性の罠〟を脱するための政略である。日銀の国債引き受けのように、市場にダイレクトに訴えるものではない。

 市場はマイナス金利について冷静に見ることが出来ず、直接効果がないというだけで、ただ気分で動いた。
 情けない限りであるが、これが金融資本主義における〝経済人(※2)〟、現代の〝投資家〟と言われる人たちの行動の本質なのだ。


 ※1…『株式市場や先物取引において価格が一定以上の変動を起こした場合に、強制的に取引を止めるなどの措置をとる制度である。(wiki)』付加するなら、極めて短い一定時間内での変動が対象となる。

 ※2…ベンサムが提唱。経済的合理性、すなわちその行動指針において、儲けがすべてに優先する人たちのこと。ベンサムは、みんなが経済的合理性のもとにエゴを追求すると、これは社会の間で相互補完関係を生み出すので、結果的に文明は進歩する、と言った。クソくらえである。ちな、彼らがよく口にする言葉に〝儲かりまっか?〟がある。
 

4.マイナス金利の今後

 諸氏はご存知だろうか?
 実は世界の富の25%弱は、マイナス金利国によって産出されているという事実を。



 マイナス金利は、ユーロ圏に賃金上昇とGDP成長促進をもたらした。
 デンマークでは、住宅ローンが活況を呈した。

 勿論失敗例もある。
 スウェーデンでは住宅バブルが発生、家計が不動産投資に夢中になって、何か起きたら連鎖的に不良債権が発生するだろう。
 スイスは、欧州危機の傷が癒えぬなか、EUに対抗してマイナス金利を導入した。これが銀行の収益を圧迫し、スイス銀行のCDS(※1)が跳ね上った。コレが更に欧州の金融不安を煽った。

 だが、私は、今後も日本においてはマイナス金利は拡大すると見ている。

 折から、本8月23日、厚生労働省は2016年度の全国最低賃金平均が前年度比25円増、823円となったことを発表した。これは過去最大の引き上げ幅だ。
 マイナス金利効果が顕現し始めた。

 繰り返すが、〝流動性の罠〟から逃げ出すには、3つの方法しかない。
 
 ひとつは、人にお金を使わせない原因たる、社会の不安や政治的な危機を払拭すること。
 ひとつは、政府が需要を創造すべく財政政策を発動すること。

 そしていまひとつが、マイナス金利なのだ。

 それは今後、以下のように展開されるだろう。

 ・第一段階(2016年1月29日~現在)
  日銀はその当座預金の一部、各銀行の預金に0.1%のマイナス金利をかけて、そのお金を金融市場へ押し返し続けている。
  一方、自身の国債買い上げで板の薄くなった国債市場においては、その需要を別の市場、特に公社債やETF、株式などに振り向けようとしている。

 ・第二段階(2016年夏ごろ?)
  次の段階として、日銀はマイナス金利を用いて各銀行の収益を圧迫することで、これら銀行に別の利ざやを発掘させるよう仕向ける。具体的には法人の内部留保預入口座への取り扱い手数料や資金移動手数料を値上げさせる。つまり、最終的に日銀は、内部留保の豊かな法人に対し〝貯蓄をしたら収益に悪影響が出る〟環境をつくる。
  そうなると、法人はお金を使うしかなくなる。例えば、賃上げであるとか、設備投資であるとか、自社株買いなどだ。現に先述賃上げは勿論、自社株買いなどはマイナス金利導入後、すごい勢いで進んでいる。
 
 

 ・第三段階(2016年9月・補正予算成立後)
  補正予算成立に伴う財政政策とのポリシー・ミックスで、マイナス金利は以下のものに向けて展開されるだろう。
  地方インフラの整備、シルバーシティ(※2)の構築に向けて、都市計画が進む。そうなると、新たに土地を買う法人や個人が出てくる。彼等にはマイナス金利のメリットとして、空前の超低金利が提示される。勿論住宅ローンも同様だ。
  それは家具や自動車などの耐久財の購入、すなわち裾野を開くことにつながり、結果として経済全体が活性化する。

  ・・・まあ、無理なんだろうけどね。理由以後の章で明らかにする。
  今後金融政策について、政府や日銀が期待している効果はあまり出ないだろうけど、それでも一時的には市場は活性化する。
  実はコレがみそで、我々はこれを最後のチャンスと見て、ここでケインズ政策の恩恵を大いに享受し、将来に備えるべきだ。
  

 ※1…クレジット・デフォルト・スワップ。貸し倒れに対する保険みたいなもの。

 ※2…じいちゃんやばあちゃんが安心安全に暮らせる街づくり。例えば病院にいくに、僻地でも30分以内に着けられるよう道路や交通網を整備する、など。


5.マイナス金利への私見

 いろいろ批判もあるし市場の反応もよくなかったが、実は私、この政策については結構評価している。

 それは、以下の2点に集約される。

 ひとつは、(´・ω・`)にとっては従来の量的緩和が通用しない、ということを明らかにしたこと。
 先に示したとおり、金融政策において日銀や政府がマイナス金利を採択したすると言うことは、裏返せば、(´・ω・`)と言う国が深刻な社会不安に陥っていることを認めている、ということだ。

 それは経済的なものや社会保障的なものではあるのだが、これが(´・ω・`)にペシミズムを呼び起こしている。
 そしてそれは、『日本経済を維持してきたさまざまなシステムや技術にとどまらず、日本の社会と経済を支えるヒトの問題、たとえば社会における人間関係、価値観、治安意識、社会的ビヘイビアにまで、「船酔い現象」が波及しつつあり、日本は、明らかに過去多くの先進国がたどってきた社会的衰退の初期症状を呈し始めているのである(『国まさに滅びんとす』 中西輝政著 より)』

 そのうえに立脚して、我々は来るべき危機に備えようとしている。
 ペシミズムがあるからこそ、備えはできるのだ。
 既に気がついている人は気がついて行動している。ポピュリストのバラマキには背を向け、テレビの流すサーカスを疑い、やりたくもない勉強を実践の場でも机上でもやり続けている。 意識高い系のウチの嫁は、なんかわからんが難しい資格をとって、困難な時代でも生きていけるように頑張っている。

  マイナス金利が暗に示したものは、日本という国に深刻な不安が立ち込めていて、それを払拭させるために、リーダーたちは経済を活性化させようとしている、ということだ。まだ、希望はある。

 そしていまひとつ、これはマイナス金利の実践的な評価点であるが、それはその性格・・・構造や環境を調整することにある。

 前節で触れたが、本来マイナス金利とは直接大規模緩和につながるものではない。それは〝流動性の罠〟を脱するための政略である。
 であるがゆえに、マイナス金利を展開すると言う行為そのものは、投機筋の干渉を受けようがない、ということだ。投機筋の干渉は、政策の結果を助長したり、或いは結果を不満足なものに止揚するにおいて影響は大きいが、仕組みそのものを歪めたり壊したりすることはできない。
 従って今後彼らが我が国の金融政策の尻馬に乗ろうとしても、それは対処法的な範囲に限定されるだろうし、従って政策対象たるお金の流れそのものの根本的な潮流や環境を変えてしまうことは(量的緩和のときのようには)出来なくなるだろう。

 以上が、私がマイナス金利政策を評価する理由である。

 ところで、おことわりしておくが、経済を評価するにあたっての私の視点は、決して投資家のそれと同じではない。
 仕事柄投資について相談されることもあるが、基本私は金融資本主義が大嫌いな人間だ。どんな分野に投資したらいいか、とか、何をやったら儲かるか、というのは考えるのも嫌いだ。

 私の見地は、あくまで〝国益〟。

 金融政策にしろ財政政策にしろ、ポリシーミックスにしろ、それが直接的だろうが間接的だろうが〝国にとって有益〟ならば、私は評価する。

 逆に、金融資本家や経済人にとって有益であっても、それが国益を損なうようなものであれば、徹底的に批判する。9月に発動する財政政策などは、その最たる例であるが、それは第6章あたりで述べることにする。

 
【秋の金融政策】

 バーナンキが提言したポリシー・ミックス…すなわちインフレターゲットを目標とした、財政政策との共同プロジェクト。
 超長期40年国債発行というカタチで始まったヘリコプター・マネー。
 そしてマイナス金利。
 本年から始まったこれ等の経済政策は、昨年までのものとは明らかに違う。

 それは、我が国の金融政策が、〝量〟から〝質〟へ転換を始めたことで具現化している。
 従来のものが、低金利や量的拡大に拘泥しあとは市場に任せる、といったフリードマン的マネタリズム(※1)に基づいて行われていたのに対し、今年に入ってからの金融政策は、質的に構造的に、明らかに変容している。

 今年に入ってからの金融政策は、量的なものを縮小し、どちらかと言うと
  ・金融政策に使うお金をスムースに確保する方法をつくり
  ・確保したお金が市場にスムースに流れる仕組みをつくり
  ・流したお金が市場で活躍できる環境をつくる
 ことに転換し始めている。

 要は、金融政策を効率的に進めるための普請を行っているのだ。

 中央銀行の協調で量的にはお金は十分供給した。
 しかし、供給したお金は〝流動性の罠〟に嵌っている。

 ならば、お金の流れをよくし、お金が使われやすい環境をつくるのは、当然と言えば当然だろう。

 そして世界は多極化をはじめ、グローバル主義に背を向け始めた。中央銀行の協調は足並みが揃わなくなりつつある。リーマン・ショック後の世界は協調的に歩を進めたが、( `ハ´)経済の崩壊は被害を受けた国と受けていない国の間に格差を生んだ。
 先進国ではグローバル化への反動でナショナリズムが台頭し、あちこちでブロック化が進んでいる。

 時代が変わるなか、金融政策にも変化が現れているのだ。
 (´・ω・`)の金融政策も、量的=協調的なものから質的=内部構造の改革に変わり始めた。
 

(※1)…通貨供給量で景気はどうにでもなる、だから政府は余計なことをするな、規制なんぞ無くなっちまえ、という考え方。福祉、増税、貧富が生じるのは本人の努力結果、という新自由主義思想の元祖。自己責任(by小泉純一郎)、という言葉が代表的。わからんでもないが、この思想を信奉する人たちは、経済数値を重視するあまり、自由主義経済の根底にある〝国民国家の経済は国民のためにある〟という原理を忘れてしまうことがある。だから竹中みたいなクズが取り立てられることになる。


【まだ終わりじゃない~まとめにかえて~】

 今年に入って行われた金融政策は、量のみだ。それも量的緩和を2.7兆円水増ししただけである。
 これで終わるほど、現時点の日本の経済力は強くはない。
 
 私は、経済政策発動は9月、そう述べた。
 11月から来年1月の米大統領選にあわせ、そのシナジー効果を最大限に発揮できる時期にこそ、真の経済政策は動き始めるだろう。
 
 では、(´・ω・`)の金融政策構造が変わるなかで、9月のポリシー・ミックスを受け、新たな金融政策はどのようなものになるのだろうか?

 それはおそらく、〝大規模緩和+金融政策構造改革による流動性の担保〟というカタチで姿を現すと思われる。

 以下、実施される確率の大きそうなものから述べよう。

 1.確立大

 ・<国債の追加購入20兆円、合計年間100兆円の量的拡大>
 …現在市場は、もう日銀には量的緩和を拡大する気はないのではないか?、との懸念が広がっている。それは同時に、市場の国債の板そのものが薄くなっているのではないか、という懸念でもある。
 しかし黒田総裁は「国債の3分の2はなお市場にあり、限界に達しているとは考えていない」と明言している。
 
 


 世界の緩和から見ると、日本はまだまだ余裕があるように見える。
 しかし、↑のなかで最も財政収支状態がダントツで悪いのも(´・ω・`)であるw



 


 現状の買入ペース(80兆円/年)が保持され、政府が赤字国債を追加発行しない(というかしちゃいかんが)としても、市場にはあと2年間、購入できるだけの国債は存在している。
 勿論、先に述べた市中銀行が互いに資金を融資しあう際の担保確保や、万一公的補助を受けることになった場合のための5%を確保することを前提としてだ。

 何より、ここで日銀が追加購入をしなかったら、市場は(´・ω・`)を見放すだろう。  それは4月26日の悪夢(※1)から日銀も十分学んでいるはずである。

 ・<政府関係機関債、地方債、財投債(※2)などの買入増発10兆円/年>



 …これは現状まで手付かず。だからやる余地は十分ある。
 但し、これをやった場合、上記国債買入増額が20兆円から10兆円に減額されるかもしれない。その場合、市場はやはり「日銀にはもうこれ以上国債を買う余力はないんじゃないか」と思って、(´・ω・`)国債の引き受け手がいなくなる恐怖に駆られる。そうなると円・株・債券のトリプル安が起きる可能性が高くなる。
 円は一旦リスク回避で高くなるが、量的拡大が頭打ちになるとの憶測から株が売られ、同時に国債の引受け不足予想から長期金利が上がり、次に円を持つことそのものへのリスクから円が売られる。
 
 ・<マイナス金利を0.2%に拡大>
 …ここへ来てようやくマイナス金利の効果がでてきているので、これは有効と検証されると思う。国債買入と同時発動。


 ※1…年明けから( `ハ´)経済が崩れ落ち、世界的な資源デフレとイタリアの経済危機が報じられるなか、本年4月26日の金融政策決定会合で、日銀は市場の予想を裏切り、何の手も打たなかった。結果株価は17500円から16000円に大暴落した。
 
 ※2…政府系の特殊法人なんかが、自分のところの事業を推進するために発行する債券。これを政府系の保険機構なんかに買ってもらい、奴等は事業資金を入手する。


 2.確率中

 ・<ヘリコプターマネーの発動>
 …バーナンキの提言も受け、とどめに麻生先生と黒田総裁が公式発表したこともあり、事実上のヘリコプターマネー=40年超長期国債の既存国債との交換があるかもしれない。オソロシイ。これ、間違いなく長期金利上昇のネタになるな。
 
 ・<国債買入幅の年度設定発表>
 …日銀が国債の買入幅を年間70兆円から90兆円程度に漸減しつつ、それを中期にわたって行うことを市場にコミットする。当初期待の100兆円よりは減るものの、日銀国債購入が単年度ではなく複数年度にわたって担保されるため、市場は安心感を得る。
 但し、その買入年度が終わるあたりから、今度は日銀の緩和が終了する、という思惑が現実的に斟酌されるので、円高と株安が一気に始まる(※)。また、日銀と言う国債の超大口買受手が一気に撤退するため、(たとえ消費税が10%になっても)長期金利は上昇し、国債は暴落し、将来不安から円が投売りされる。

  
 ※…所謂バーナンキ・ショックの再来である。バーナンキがFRB議長をやっていたアメリカの場合は、政府が市場の状態を省みずにテーパリングを一方的に宣言したため、ドルやポンドといった投資マネーが一気に引き上げられた。特に債務超過状態ではあったものの民間経済が好調だった資源国は、これの煽りをモロに被り、通貨が暴落して深刻な債務危機に陥った。


 3.確率小

 ・<長期金利への天井設定>
 …日銀が長期金利に上限を設けることで、国債の暴落を防ぐ予防措置である。
 日銀が大規模緩和を減速し始めると、国債が市場であぶれ、買い手がいないと価格が下がる。それでも国債はシニア債(※)みたいなものだから一応元本は崩れにくいが、金利は払わなきゃならない。国債のレバレッジが金利を下回ると、金利支払いは国債の元本を削って行われることになり、結果国際価格は下落する。長期国債の天井設定とは、その金利に上限を設けることで、元本を保証する戦術である。
 また、設定した金利を既に超えてしまっているものについては、日銀が優先的に買い上げる。
 これに市場が反応すれば、金利は自動的に安くなるので、金融緩和と同じ効果が出る。
 但し、これも日銀や日本の国債への自由競争原理を否定する所業に変わりはないので、日本に対しての不信感は増大し、海外からの投資が引き上げられる可能性がある。


※…元本割れが一番起き難い債券のこと。反対語は劣後債。



 以上が当面私が思いつく、秋の金融政策である。どれが実行されるかはわからないが、過激なものを除いては、政府日銀はあまりフリーハンドとは言えない。

 ただ、これを以って日銀を攻めることは出来ない。
 何故なら、冒頭で述べたように、経済というものは〝お上に望めばよくなる〟ものではないし、そもそも〝流動性の罠〟にかかってしまっているのは私たち自身に他ならないのだ。
  
 肝心なことは、〝自助努力〟なのだ。
 それには、私たち市場のプレイヤーが〝お金を使う〟ことが一番大切なのだ。
 あ…金を使う、と言っても、〝安けりゃ良い〟なんて考えをしてたら、いつまで経っても日本は復活しないぞ!?

第四章 ~第二の矢=財政政策~に続く
みんなが好きそうなネタは、第5章あたりからだ。
Posted at 2016/08/24 04:23:49 | コメント(0) | トラックバック(0) | 任務 | 暮らし/家族

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