
経済ネタが終わったらしばらく休憩して、次はEUネタになると思うが、主水さんのところでも取り上げられてたドイツネタ。
一昨日のこと、AFP見てたら
『Germany on Wednesday urged its population to stockpile food and water in case of terrorist or cyber attacks』。
ってのがあった。
以下、AFP日本版より
『ドイツ、冷戦後初の民間防衛計画を導入へ 国民に食料・水備蓄奨励 2016年08月22日 16:09 発信地:ベルリン/ドイツ
ドイツ政府は、東西冷戦の終結後初めてとなる民間防衛計画を今週承認する見通しだ。計画の下、国民は数日分の食糧や飲料水の備蓄などが求められることになる。21日付の地元日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)が報じた。
計画では軍に対する民間の支援を優先事項とし、建築物の防災力強化や医療制度の拡充も図る。24日に政府が承認する見込みという。
FAZが引用した計画の一節では「従来型の防衛を必要とするようなドイツ領土に対する攻撃の可能性は低い」としながらも、「将来的に除外することのできない、存在が脅かされるような展開に対する十分な備えが必要だ」と指摘。また市民に対しては「10日間分の食糧」や、1人当たり1日2リットル程度とみられる「5日分の飲料水」の備蓄が奨励されるとも記している。』―以上、引用終わり
うわっ!
こりゃ、国家レベルのテロでもあるんかいな !? と。
で、急いで伝手を使ってスイスとドイツ本国の<普通のサラリーマン>あて訊いてみた。
そしたら、以下のことがわかった。
ちょっと順を追って説明する。
1989年から1990年にかけて東西ドイツの統一が進んだ頃、東側のポーランドとの国境を従来のオーデル・ナイセ線↓から見直すかどうか、議論が分かれた。
オーデル・ナイセ線と言うのは、戦後のポツダム協定で連合国が強制的に線引きした国境であり、ドイツ国民としては、国境はもっと東に置くべき、という気持ちがあった。
しかしそれはポーランドとの新たな火種になりかねなかった。
新たな国境紛争を配慮して、西ドイツ政府は1989年に防衛綱領を策定、連邦議会で民間防衛基本法としてこれが可決された。
しかしこれは有名無実化した。
東西統一ドイツにおいて、ポーランド国境は従来どおりオーデル・ナイセ線となり、当面の火種はなくなったためだ。
民間防衛綱領は暫く放置プレイされた。
だが、それから12年後の2012年、当初の法律に謳ってあった〝10年後の見直し〟の期日が迫ってきた。
で、それが今回、見直し改訂版『ドイツ、冷戦後初の民間防衛計画を導入へ 国民に食料・水備蓄奨励』として閣議決定された、というワケ。
つまり、
①ドイツ政府が民間防衛綱領について予定通りに事を進めてたのを、
②フランクフルター・アルゲマイネっていう日刊紙がゴシップ扱いして取り上げ、
③これをフランス左翼政権下の反ドイツマンセー通信社たるAFPが世界中に広めた、
というのがオチ。
ご存知のように、民間防衛綱領の見直しをぶち上げた2012年は、シリア難民やクリミア問題といった移民問題は発生しておらず、ギリシア危機やPIGsなどで噴出したアメリカ債権の不良債権問題のほうが大きかったわけで、ドイツの関心もECBの量的緩和や経済対策のほうが大きかった。
でも、一応見直ししなきゃいけない、という法律はある。
それでドイツとしては、〝一応やっとくか〟となった。
だから、今回のこの件に関しては〝テロや戦争の危機感〟から生まれた話ではなく、予定調和をメディアが煽っただけ、ということになる。
これが、私が現地に問い合わせた結果得た情報。
騒いでるのはドイツ国内じゃなくて、ドイツ以外の世界だったのね。
でも、ね。
これ、捉え様によってはドイツの第4帝国化を加速する、という見方も出来る。
それについては、なぜ識者が、ドイツを〝帝国〟と呼ぶのか?、ということから説明しなきゃならない。
ドイツを〝帝国〟と呼ぶ理由。
それは欧州金融危機以後、ドイツが政略的にEU域内、特にフランスやイタリア、ベルギーを金融政策で〝借金漬け〟にして〝傀儡化〟し、政治的に〝ドイツに従うEU〟を作り上げたため。
そして更に経済面でも、ドイツはシェンゲン協定と€をエサに用いてインフレにあえぐルーマニア、旧ユーゴ、スペイン、そして旧ソ連東欧国の労働力を吸い上げ、(ここがミソであるが)ドイツ本国で働く〝奴隷兼人質〟とし、自国の生産性を高め続けている。
ここで稼いだ富が(最大拠出国たるドイツの言いなりの)ECU(欧州中央銀行)に拠出され、さらにそこからの借金で借金を返し続けている、自転車操業状態のEU域内諸国全てを衛星国家にしていく。
つまり、ドイツと言う国は、ユーロ圏の国々からの労働力を使って富を稼ぎ、そのカネでEU圏の国々を言いなりにさせているのだ。
まるで経済ヤ○ザのやり口。
これを帝国と呼ばずして、何という?
当然、これに反発する連中が出てくる。
ドイツ=EUからカネをもらわずとも、アングロサクソン経済を展開できると踏んだイギリスは、Brexitというカタチでドイツから離れた。
ナチス大嫌い、自由主義の祖国たるフランスでは、民族主義の国民戦線が躍進している。
こういった動きは、スウェーデンやスペイン、オーストリア、デンマークなどでも大きなムーブメントになっている。このムーブメントや、ほぼ無制限だった移民によるスンニ派イスラム原理主義、ISの動向は、テロの脅威を更に高めていく。
だから、報道がなくとも水や食糧、日用品の備蓄なんかは当然、市民意識の中では強化されるだろう。オリンピックを前にして訪日客4000万人を唱えるにもかかわらず、新幹線さえ手荷物検査のない日本とは大違いの危機意識だ。
しかし、イギリスは兎も角、ドイツにカネと人質を握られてる国々は、叫ぶことは出来ても当面離脱なんて簡単には出来ない。
離脱したら、ユーロ圏の経済恩恵が受けられなくなり、借金の返済にも支障をきたすからだ。
先日ブログでも書いたが、メシが食えなきゃ生きていけない。
その意味では、今後EUでは、〝ドイツなしでも食っていける〟連中は出て行き、逆にドイツは〝ユーロ圏に居なければ食えない〟国を更にカネで雁字搦めにしていくことだろう。彼等は治安の悪化を危惧はしても、そこから出て行くことはできないのだ。
つまるところ
〝ドイツ第4帝国〟の集約化と、純粋な深化…EUではコレが顕実化していくことだろう。
上記〝加速する〟ってのは、そういう意味。
次からまた経済超大作な。
Posted at 2016/08/26 21:13:07 | |
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