【はじめに】
経済ネタ、やはり嫁にはまったく受けないw
彼女は、安いからといってイ○ンとかでは絶対に買わない、ある意味ハイエク経済学(※1)の実践者でもあるのだが、そのような日常行動を文書化したのを見ると〝眠くなる〟らしい。
経済ってのは私たちド素人が国益に直接かかわることの出来る行為なんだが、やっぱりダメかなあ。
ま、私としては、(以前某氏も仰ってたが)ブログ化する、というのは自分の考えを整理するために行ってる行為だから、嫁ウケはどうでもいいのだけど…無料でジャスミンティー(※2)飲ませてるようなものだし、家計負担は減っているw
※1…グローバル経済を優先せず、同じ法制度や文化の下での自由競争を唱えた。今日のブロック化経済の先駆者である。価格がすべての経済を規定する、という考え方(社会主義経済)も断固として否定した。
安いからといって嫁がイ○ンで買わないのは、「何処で作ってるかわからんものを食いたいか?」だそうだ。正論である。
※2…『
ワタシラシク イチニチヲオエタイ』…〝私らしくwww〟 スイーツ(糞藁)臭満艦盛の亡国歌である。ちな、ウチの嫁は尾崎亜美は勿論、平松愛里とか竹内まりやとかが大嫌いである。
【二人三脚となった日銀と政府】
1.日銀の独立性
日本銀行法第3条の第1項には、以下のような条文がある。
・『日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない』
・『日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない』
そもそも日銀含め中央銀行には、
〝物価を安定させる〟
〝通貨価値を安定させる〟
〝その国の信用秩序の維持〟
という大義がある。
それとは反対に、民主主義制度下における政府というものは、ともすれば景気浮揚のために金融緩和に走りたがる。
金融緩和は短期的な政策としては有効だが、中長期的に展開するとデメリットが多い。例えば、度重なる金融緩和は恒常的な物価の上昇をもたらす。
緩和が常態化すると…
・国内的には〝この先もずっと売買価格は上がり続ける〟と思い込むようになる。それはバブルとなり、〝働いても働いても買えない〟という悪循環が起こる。
・さらに、貿易相手国を中心に世界中からは〝あの国は為替操作をして輸出を奨励している〟と認識され、〝どうせこの先もこの国は緩和を続けて通貨価値を落とし続けるだろうから、今、代金決済にこの国のお金を貰うと損だ〟と思われる。
結果その通貨に対する信認だけでなく、その国そのものにが愛想をつかされる。 そうなれば取引をしてもらえなくなるし、その国の通貨は価値を失い、大暴落する。そうなれば国内的にはハイパーインフレの到来である。
で、このような政府の〝愚民政策〟を止揚するために存在するのが中央銀行であり、彼等は政府の〝お目付け役〟兼〝引止め役〟の御旗をもっている。これを担保しているのが、〝中央銀行の独立性〟である。
日本でも1997年に成立した新日本銀行法の下で,政府(大蔵大臣:当時呼称)の日本銀行に対する命令権や総裁解任権の廃止等,日銀の独立性強化が図られている。
ところで、今年の10月から( `ハ´)が、人民元のSDRバスケット(※1)入りをIMF(※2)に認めさせているが、上記理由から先進国において人民元はまったく相手にされていない。
何故( `ハ´)が相手にされないかと言うと、人民銀行が北京政府のつまり共産党の傀儡であるため、上記独立性を有していないからだ。
人民銀行が北京の傀儡であるということは、( `ハ´)は国内景気対策のために自由に為替操作ができることを担保できている、ということだ。これでフェアーな自由競争など出来るワケがない。だからまともな国であればあるほど、人民元など信用しない。
仕方なく( `ハ´)は途上国相手にAIIB(※3)をつくった。
※1…IMF加盟国の特別引出権。ドル・ポンド・円・ユーロ・人民元(10月から)で構成する通貨バスケットを自由利用可能通貨とし、1ドル単位で毎日、相対的な通貨価値を決める。IMF加盟国はこれらを決済通貨として融資を受けたりするわけだが、基本通貨バスケット内の通貨は公明正大で透明性が高く、為替安定に貢献できるよう当該国の信認が高いことが要件とされる。
※2…ブレトン・ウッズ体制下でつくられた、加盟国相手の貸し出し基金。ドルの力の象徴。
※3…アジアインフラ銀行。事実上、( `ハ´)の植民地代金決済銀行。パキスタンとかバングラデシュとか、( `ハ´)の目の上のタンコブたるインドを包囲するための一帯一路構想実現のために作った。投資先には「港を作って貿易で豊かにするアル!」とか「道路を整備して中央アジアに大動脈を作り、共に栄えようアル!」とか甘言を弄しているが、投資したら自分の国の不動産会社と海運会社で牛耳るのが見え見えである。
2.日銀の独立性に不安
上記のように中央銀行の独立性というものは、その国の通貨価値だけでなく国際的な信用までをも担保する、大変重要なテーゼである。
しかし、それがここへ来て揺らいでいる。
例えば、
前章【7月29日の反省】で、私は日銀の政策の規模の小ささを指摘した。
しかしそれは、単に量の問題だけではない。
本章において指摘したいのは、もっと深刻なことだ。
7月29日、日銀が行った緩和は、ETFの買い増し2.7兆円のみ。
日銀は〝デフレ脱却〟のための金融政策は、何かしたか?
他には〝何もしていない〟
角度を変えてみると、これは株価のPKO(※1)ではないか?と思えてくる。
投資家から見たら、日銀の目標が〝株価目標〟になってしまったかのように見えたことだろう。
諸外国経済相から見たら、政策実現のための経済浮揚という政府の戦略に、日銀が踊らされているかのように見えはしないか?
投資家は喜ぶだろうが、為政者から見たら、日銀は政府の言いなり…つまり、
〝日銀の独立性は何処へ行った?〟
ということになる。
前章で述べた、ヘリコプターマネーだってそうだ。
8月2日の黒田麻生会談。
ここで政府と日銀は、超長期40年国債の発行と、その引受けを約定した。
さすがに直接引受けにはしなかったが、これ、事実上の政府圧力ではないか?
これによって、日銀の独立性に疑問符がついただけでなく、日本は財政信用を著しく損なったことになりはしないか?
折から8月10日には、財務省が〝政府借金が1053兆4676億円になった(※2)〟と発表した。
そこへ〝政府主導〟で、本質的には永久債たる〝ヘリコプターマネー〟。
前述のように8月3日、報道発表と同時に長期金利はハネ上がった。
利払いが膨らむ、ということは、国債の資産価値はタコ足化した、ということだ。
それは市場において、国債の信認がぐらつくことを意味する。
ヘリコプターマネーが発動し、円の信用失墜が常態化すると、市場は円=日本経済そのものの持つ潜在的回復力を信じなくなる。
「日本の政府は景気が悪くなったら国債を発行し、日銀にヘリコプターマネーをばら撒かせれば済む、と思っている」
市場がそういう認識を持ったら、日本経済に投資する者はいなくなる。
そのとき、日本では円売り、国債含む公債売り、株や社債の売りが嵐のように吹き荒れ、上海のオフショア市場(※3)が大崩壊した1月と同じ…いや、それ以上のことが起きるだろう。
スタグフレーション(※4)が猛威を振るい、購買力を失った企業や家計をインフレが直撃する。だが、それを救済する力は政府には既になく、社会不安が一気に現実化する。
だから〝日銀の独立性〟は、取り繕ってでも確保し、たとえ緩和の本質がヘリコプターマネーであっても、政府や日銀はこれを〝違う!〟と力説しなきゃならない。
前章で述べた〝国債金利の上限設定〟や〝40年超長期債買入〟は、質のうえではヘリコプターマネーだが、政府や日銀が決してそのような言い回しをしないのは、このような理由があるからだ。
そこへ、ノブテルの阿呆が…!!
「政府と日銀が一体となって (ฅ`ω´ฅ)キリッ!」
…これじゃ、シナと同じじゃねえかよ (-”-;A
※1…プライスキープオペレーション。国による民間企業の株価操作。
※2…例の〝対外純資産〟とか〝95%は国内消化〟というまやかしに対する謎解きは第5章でする。現実には、財政破綻はしないが、間違いなく日本の経済は財政レベルから危機的状況に陥っている。
※3…ある人が海外投資を行うとき、その運用や投資に対するルールや課税方法などが、その人の住む国内のそれではなく、投資先の国の基準で適用される市場のこと。パナマ文書で有名になったケイマン諸島や香港市場などが有名である。
※4…インフレ下での景気悪化。
3.疑心暗鬼
「政府と日銀が一体となって云々」
吐いちゃいけないこの台詞を吐く方も吐く方だが、では、そもそも何でこんな台詞が出るのだろうか?
それは、日銀のCPI(※1)目標管理への認識の甘さに、政府が業を煮やしていることの表れではないか?
日銀は7月29日、2017年度のCPI伸び率を1.7%と予想発表した。それでも目標の2%達成は「2017年度中」。
一方、政府の発表は1.4%。
どっちも現状(6月は前年比0.5%低下)考えたら「無理だろ?」ってところだが、『もはや2%目標と歩調をあわせた数値とは言い難い。(8月2日付 日経)』
で、業を煮やした政府が、日銀に圧力をかけた、と。
曰く「俺の言うことを聞け!」と。
で、出てきたのが前章
『2016年夏、ポリシー・ミックス、その裏に見える危機 ~第三章 第一の矢=金融政策~ 【まだ終わりじゃない~まとめにかえて~】』で述べた、金融政策の〝量〟から〝質〟への転換。
再々になるが具体的には
・(永久債=超長期債買って)ヘリコプターマネーやれ!
・国債購入の年度計画打ち出せ!
・長期金利に天井設けろ!
ってやつだと思う。
もうね、「一体」どころか「強制」だわ。
黒田総裁、何か弱みでも握られてるのか?
それとも政府と日銀は、最後の機会として〝なりふり構わず(※2)〟となっているのか?
上記3つの金融政策どれかやったら、日銀の独立性は有名無実化したと思ってもいいと思う。
それは日本への信認が揺らぐことにつながり、国債金利が跳ね上ったら要注意だ。
※1…消費者物価指数。家庭で買ってるもので生鮮食品以外全ての値段がどれくらい上がってるか下がってるかを示す。
※2…日本周辺の事態を考えたら、おそらく此方だと思う。そのために
前々エントリー『警告』を綴った。
【そもそも国債は大丈夫か?】
政府がそして日銀が、いいやそれらを包括する日本と言う国が〝なりふり構わず〟の状態にあるとしたら、それは〝一時的には〟私も同感だ。
最終章で私の真意を明らかにするが、私の思想の根底には、ハイエク(※1)の〝秩序ある自由〟と、佐伯啓思(※2)の〝フロンティア経済〟を両立させた、〝経済による安全保障〟がある。
経済は、それがミクロであろうとマクロであろうと、自国を破壊してはならないし、寧ろ積極的に戦略的に、〝国家を守る〟ものでなくてはならない。
しかし、〝一時的な対処療法〟を〝根治療法〟と履き違えれば、それは国家を破壊してしまう。
首を毒蜘蛛に噛まれた患者の傷口をナイフで切り裂いても、毒は吸い出せても命の危機が去ることない。切り裂いた傷口が大きければ、寧ろ失血死のおそれが出てくる。
ここでは、現在展開されている金融政策が常態化した場合の危険性について述べる。
※1…Friedrich August von Hayek 器《Utsuwa》が専攻したレギュラシオン経済思想の大元。市場は文化や民族性によって異なるのであり、そこで生まれた夫々の秩序が法を作る。世界はそのような多様性を崩してはならない、という考え方。
※2…資本主義の本質は無限の拡張であり、もし拡張の場がなくなればそれを創り出しつつ発達するものである。人間は目標との距離があるからこそ努力するものであり、その実現こそが幸福の最大追求である、という考え。
1.国債買入の岐路
2013年4月からの日銀による〝異次元の〟金融緩和。
3年4ヶ月にわたる日銀の国債買受オペレーションで、ついに7月末時点では、日銀国債保有残高は380兆円を超えた。前年比で33%の増加…これは市場にある全国債の34%を日銀が買受したことを意味する。
黒田総裁就任時点、日銀の国債保有残高比率は13%だったのだから、この3年半で日銀は2.6倍の国債を買い受けたことになる。ちなみに、同じく大規模緩和を行ってきたアメリカやECBでさえ、中央銀行の自国債保有比率は10数パーセントだ。このままでいくと、2018年には日銀の国債保有比率は50%を超える。
↓対GDP比で表しても、日銀の国債保有率は〝異常〟だ。
返せるんか!?コレ。
細切れで返せば良い、とかいうバカがいるが、こんなん利払いだけでも大変だし、細切れだって重ねて積もればとんでもない年払い額だ。
私は前章『
2016年夏、ポリシー・ミックス、その裏に見える危機 ~第三章 第一の矢=金融政策~ まだ終わりじゃない~まとめにかえて~』にて、「国債の3分の2はなお市場にあり、限界に達しているとは考えていない」との黒田総裁の言葉を紹介した。
また日銀は、8月24日には25年債を2000億円買入、8月26日には、物価連動債(※1)も購入した。
本気度は変わらない、とのアピールであるが、こんなの国、というか〝政府が返せない〟のは当たり前のハナシで、そんな不良債権度満々の債券、日銀はいつまで買う気になってるんだろうか?
というか、民間企業である市中の機関投資家や金融機関は、こんな時限爆弾を買う気になるのか?
これも前章で述べたが、8月2日、市中銀行による国債の買入が不調に終わった。
7月29日の金融政策決定会合発表での、〝日銀国債買入増額なし〟、の報を受けた市中銀行が、政府からの国債の引受けを渋ったのだ。
彼等は、日銀の国債買入〝鈍化〟を危惧して、つまり「国債については〝安定顧客〟たる日銀がいよいよ〝テーパリング〟に入ったのではないか?」と危惧し、国債価値の下落を心配するようになり、国債の在庫削減=即ち〝買わない〟に入ったのだ。
財政問題満艦飾である日本政府、ここが発行する日本国債の価値の低さ。
普通なら市場はこれを求めはしない。
しかし、中央銀行である日本銀行がこれを〝買い取り保証〟しているからこそ、市場は安心して〝買う決断を下す〟ことが出来る。
しかし、もし日銀の〝買い取り保証〟に疑念が生じてしまったら?
結果、前章で述べたように10年債長期金利が〝たった1日で0.1%〟も急上昇した。
また、あまりマスコミが採り上げなかったためか大きな騒ぎにはならなかったが、この空気に追い討ちをかけるような報道もある。
『三井住友フィナンシャルグループは13年3月末の26.2兆円から14年3月末で13.8兆円まで減らした(三井住友銀行単体ベース)。金額にして 12.4兆円、実に約5割の減少だ。一方、みずほフィナンシャルグループは8.8兆円(みずほ銀行とみずほ信託銀行の2行合算ベース)、三菱UFJフィナ ンシャル・グループは8.1兆円(三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行の2行合算ベース)減らした。(2014年5月16日付 東洋経済)』
『三菱UFJ銀、国債離れ 入札の特別資格返上へ
国債の安定消化を支えてきたメガバンクの「国債離れ」は、市場から大量の国債を買い上げてお金の量を増やしてきた日銀の異次元緩和に影を落とす。(中略)
銀行はかつて国債の最大の買い手として安定消化を支えたが、いまや国債を購入するメリットは薄い。利回りの低さに加え、金利がひとたび上昇すれば多額の含み損を抱えるリスクもあるためだ。(中略)
だが民間の担い手が減れば、中長期的な国債の安定消化には影が差す。(6月8日付日経) 』
『国債入札には同資格がなくても参加することはできる。ただ、日本銀行による異次元緩和やマイナス金利政策の導入の下で、落札利回りは10年物までマイナス化しており、償還まで新発債を保有すれば損失が発生する運用環境となっている。(6月8日付Bloomberg)』
上記だけでなく、今や国債を買わないどころか、〝手放す〟流れさえ形成され始めている。
前章で私は、日銀内の(一部の)当座口座にマイナス金利が適用されたことを述べた。
この〝一部〟ってのは、額面でいうと10兆円くらい、あまりにも少ないレベルだ。
しかしこれに〝アベ政治を許さない〟マスコミが食らいつき、まるで〝日銀内の全ての口座にマイナス金利がかられけた〟かのように誇大放送をした。
結果、金融セクターの株が大きく値を下げた。
そして、日本経済の将来への不安から、長期10年国債の利回りもマイナスになった。
私はマイナス金利についてはそれなりに評価しているが、前章でこれが銀行収益を圧迫する、という暗黒面も述べた。
各銀行は現在、マスゴミのマイナス金利報道の誘導で、株価が低迷している。
(一部とはいえ)利回りがマイナスになってしまった、つまり〝持っていれば持っているだけ、評価の上がらない国債価値を金利が食っていく〟ことに加え、市場が金融株を避けてしまった。
各銀行は自社株対策として、国債を手放し始めている。
特に9月の中間決算、3月の期末決算時においては、この流れは顕著になるだろう。
確かにこれは、〝日銀が買い受ける〟という保証がある限りにおいては、マイナス金利政策の狙い通りではあるのだが…日銀は、いつまでこれを実行してくれるのか?
※1…物価が上がると元金がレバレッジされ、下がると価値が下がる。
※2…現在このプライマリディーラー資格を有する金融機関は、三菱東京UFJ銀行除いて21社。このディーラー資格を有する金融機関は、国債入札の際に発行予定額の4%以上の応札が義務付けられているが、そのかわり財務省の役人と直接、今後の金融政策などについて話すことができる、というメリットもある。
ちな、市場での国債消化の9割近くが、このPD制度によって担保されていた。
蛇足ではあるが、この資格を返上したのはMUFGのなかでは銀行だけであり、モルスタ一派は依然資格保持者だ。にもかかわらず、市場がこれだけ反応するってことは…(お察しください)
2. 国債の買い手不足=供給過剰
現在日銀は生存のジレンマにある。
〝独立性〟を取って〝中央銀行の信認〟を保つか?
それとも、国債を買い続けて〝日本の財政を担保〟するか?
前者を取れば、日本国債のリスクを回避することで、日銀そのものの破綻を何とか防げる。が、(日銀の撤退で)買い手が激減した日本の国債価値は暴落する。それは日本の財政を破壊する。
後者を取れば、(市場からリスク過多と見られ)日銀の信認は失墜し、決済通貨としての円は価値を失っていく。それはつまるところ超円安を意味し、日本の名目借金は減るが、国内には超インフレの嵐が来る。
どちらを取っても、日本の経済は壊滅する。
進むも地獄、戻るも地獄。
それが日銀の置かれた立場。
それでは、ダメージを少なくするためにはどうすればいいか?
それはズバリ、〝先延ばし〟だ。
経済が壊滅する、という最悪の事態におけるダメージが発生することを少しでも先延ばしして、国内にその〝備え〟をさせる。
戦略的な意義としては、これが最善だろう。
それにはやはり日銀は、国債を買い続けるしかない。
それが日銀自らをして、国債の〝不良債権化〟を先延ばしすることになる。
しかし、〝その日〟はいつか必ずやってくる。
これも前章内で指摘したが、私の試算では、現状年間80兆の買入ペースが100兆になっても、日銀は国債を2018年の秋くらいまでは買受できる。
だが、その先は…恐ろしい。
日銀が国債を買受せず、(当然ではあるが)市中金融機関これに習った場合…つまり〝国債デフレ〟が生じたとき、経済はどうなるか?
ちょっと参考になる国内事例がある。
ご存知だろうか?
実はそう遠くない過去に、日本は〝国債の消化不良(※1)〟を起こしかけた、という事実を。
2002年9月20日のことだ。
日本の国債は、入札に際して発行提示額を割り込んだことがある。
そこに至った経緯を以下に述べる。
諸氏には是非、これまで説明した現在の金融政策の状況を思い浮かべながら読み進めて欲しい。
2002年9月18日、日銀の速水総裁は、折からの金融システム安定化に向けて、日銀による大規模な、単独株直接買いを発表した。
その結果、市場は不安になった。
・株というリスクの高い資産を日銀が買うということは、好景気のときは日銀の資本価値を増やすことも可能だが、不景気になればこれは逆作用をもたらす。
・もしそうなれば、日銀の資産内容は一気に悪化し、それが日本銀行券つまりお札の価値を落とす。
・そうなると日本という国から国内外に支払われるお金に対する信認が低下する。
・当然お札の発行母体である日銀への与信が低下し、決済通貨としての円を求める動きが減退していく。
・結果日銀の資産内容は更に悪化し、保有する国債にも悪影響を及ぼす。
この不安が、国債を含めた政府系債券価格の値崩れを引き起こした。
政府が提示した入札額面を、市場は受け入れられなかったのだ。
それは円安を呼び起こした。8月に入り市場で日銀の単独株買入が報道され始めると、対米ドルでそれまで117円台だった日本円はジリジリと値を下げ、123円台に到達した。たった2週間で円は6円も下がったのだ。
株価は日銀の買入と円安を受けて殆ど影響を受けなかったが、それでも発表前は9200円台だったのが発表翌日には9600円へ、そして一週間も経たないうちに9100円へと乱高下した。
深刻だったのは債券だった。
速水総裁発表直後、債券先物は1999年6月11日以来のストップ安をつけた。これを受けて日本証券取引所は、この時から中期国債先物と超長期国債先物取引を休止、超長期先物についてはこの後、2014年の4月まで取引が再開されることはなかった。
ちょっとした日銀の動きと、金融資本主義の生む市場の空気が、日本という国の価値を簡単に貶めたよい実例である。
この事態を収めたのが、〝ある方法〟だ。
それは即ち、〝国債引き受けシンジケート団(※2)〟による国債引き受け。
国債引き受けシンジケート団、この存在により、このとき日本政府は救われたのだ。
もしこの機関が存在していなかったら、国債は本当に〝札割れ〟をし、国債デフレのもと日本の長期金利はなし崩しに上昇し、円は暴落して、看過できないインフレが起きていたかもしれなかったのだ。
シンジケート団様様である。
駄菓子菓子、2016年8月現在、〝リスク覚悟で〟日本の国債を引き受けることができるのは、日本銀行だけだ。
実は、国債引き受けシンジケート団は、2006年を以って解散している。
※1…これを国債消化の未達という。政府が発行した国債が市場で売れ残ること。その場合、当然国際価格は暴落して、相対的に長期金利が暴騰する。
※2…国債を引き受けるため、民間金融機関が資金を出し合ってつくった共済組合みたいなもの。シンジケート、というとなんか悪いことをしている集団のイメージがあるが、このように正義の味方みたいな組織もある。
3.国債の品不足=買いたくとも買えない
商品の効用(=価値の満足度)が高く需要も多い場合、市場流通量が枯渇気味になれば、その価格は上がる。
しかし記述のように、少子高齢化で構造的な市場縮小傾向が決定的で将来を悲観しされ、かつ財政規律がボロボロの日本政府を頭に置く日本国債の価値は、相当低い。
そのような〝商品〟は、流通量が減っても価格は上がらない。寧ろ市場は別の商品に目を向け、そちらを買おうとする。そうなると、その商品の価格は更に下落する。これを経済学では〝価格の需要弾力性〟という。
市中銀行、という〝市場のプレーヤー〟から見放されたら、日本国債の価格は〝堕ちる〟。
自由競争下の市場プレーヤーは、買いたくないものは買わないし、より価値のあるものに投資する。
日本の国債を〝直接買い受け〟しているのは、この市場プレーヤーだ。
そして彼等は、日本国債の〝商品性〟に魅力を感じて投資をしているのではない。日銀と言う〝中央銀行〟が〝買受を約束してくれる〟というリスクヘッジがあるからこそ、彼等は国債の買受を続けている。
そのリスクヘッジがない場合、日本国債を購入する価値はあるのだろうか?
一方、日本国債の内容がどうであろうと、それを〝無条件〟で買受できるのは日銀だけだ。
その日銀が今、ジレンマに陥っている。
日本を救うか?、それともコンプライアンスに従うか?
そして日銀は、(短期的かつ対処療法的にではあるが)日本を救う道を選んだ。
ところがそこへ、もうひとつの問題が訪れつつある。
それは政府や日銀に内包される問題ではない。
市場の問題だ。
リーマン・ショック後の金融資本主義下において、中央銀行が協調的に国債を買い続けるインフレ政策は、市場の通貨供給量を増やし、購買力を底上げし、デフレを破壊する。〝対処療法的に〟経済を下支えする、という意味では、これは正しい。
しかし、なかなかインフレターゲットが達成できないからといって、国債を買って、買って、買いまくったらどうなるか?
当然、国債の市場での〝流動性が枯渇〟する可能性が出てくる。
その場合もやはり、市場に〝日銀の国債買取が終わる〟という悲観論が渦巻き、緩和の終焉が株価を押し下げ、成長を下降させていくだろう。
・元手の国債が市場で枯渇気味となれば、緩和は最早不可能。お金はより成長期待の大きい市場を求め、企業はじめ資本は海外へ出て行ってしまう。所謂キャピタル・フライトだ。賃金は上がらなくなり、国内企業の設備投資も停滞する。
・政府は財政政策の財源を失い、少子高齢化でもともと先細りの内需は、更に荒れ野と化していく。この時点で失業率がどんどん伸びていく。
・発行済み国債や公債、政府系機関債の償還や利払いの財源がなくなる。借金を返すための債券発行が滞るなか、政府は超長期というごまかし文句を捨てて、〝正真正銘の〟ヘリコプターマネーを日銀に刷らせる。
・或いは緩和で流したマネーを逆流させようとして、緊縮財政となり、社会保障も縮小される。そして課税を徹底的に強化する。消費税など20%クラスになるかもしれない。日銀は金利を上げて金融機関に貸し渋りをする。運転資金不足で倒産が増える。
・或いは自棄糞で、政府は更に国債を発行するかもしれない。目的もなく、金融緩和のためにw
いずれ策を講じても、国債の価値は下落し、相対的に金利は上がり、インフレが止まらなくなる。行き着く先はデノミで徳政令か、或いは衆愚政策を続けて財政破綻か…。
このままでは、金融資本主義に依拠したままでは、日本経済は自滅していく。
上記 『1.国債買入の岐路』で述べた、『急上昇する国債利回りとボラティリティ』などは、この予感が生んだ産物だ。
これも前出したが、国債の増発ペースが現状のままで、かつ日銀の買受が年間80兆円のままの場合、市中で日本国債の流動性が何とか確保できるのは、2018年の秋くらいまでだ。
その頃には、日本の金融政策は段階的に、市中と対話を重ねながら、根源的な見直しをはからねばならなくなるだろう。
上記のようなカタストロフを迎えないようにするためにも…!!
【マイナス金利が効かない!?】
私がマイナス金利を評価していることは、既に述べた。
しかし、マイナス金利の〝心太効果〟は蓋然性を持ったものではない。
それは、企業や家計が〝押し出された心太マネー〟を市場へ流通させず、〝手元へ置いてしまう〟ことで起きる、もうひとつの〝流動性の罠〟が考えられるからだ。
大口の預金について銀行に置いておいても、マイナス金利が手数料の上乗せを呼び、金額が目減りする。
だが、家計では政府に対する不信感や将来の不安から箪笥預金が増えるだけ。 企業では少子高齢化で縮小する日本市場に成長性を見出せず、投資は海外へ向かう。
いずれもキャッシュに流動性をあたえない=国内の投資や消費にカネが回らない。
これがマイナス金利が効果を出さないメカニズムだ。
ま、現在の日本、実はこれが既に起きてるんだけどね。
更にはバーゼル条項を適用されて資本規制を受けている金融機関は、もっと守りに入る可能性が高い。
現に彼等は、マイナス金利を適用された本年1月29日以降の国債売渡金当座口座(※1)からは資金を移動させたものの、そのお金をそのまま日銀内の別の当座預金口座に移動させているのだ。
流動性の罠を解決するためのマイナス金利が、実は流動性の罠を呼び込んでいる、という皮肉。
マイナス金利は銀行口座預金に流動性を与えることは出来るが、このレベルになるともう、手の施しようがない。
日本のDFPの60%以上は内需で構成されているというのに、それが自らの意思で硬直してしまっている。
これを動かすこと、つまり内需マネーに流動性を持たせるには、社会の不安や政治的な危機を払拭するか、政府が需要を創造すべく財政政策を発動〝し続ける〟しかない。
しかし、社会不安や政治的な危機を解決するには、この国の政治はあまりに突破力を欠きすぎている。何でもかんでもリベラル重視で八方美人を繰り返し、嘘だらけの歴史に謝罪を続け、敵性国家には通貨スワップという追い銭を払い、領海内にミサイル落とされても遺憾の意を発するだけ、日本人よりも外国人を優遇する政治文化を改めるに、あと何年かかるだろう?
その前に市場は日本を見限ることだろう。
嗚呼、ドゥテルテの親父(※2)やスシおばちゃん(※2)の有言実行力が羨ましい。
そして残った最後の手は、ポリシー・ミックス。
マイナス金利と、財政政策の復活だ。
内需を喚起するための財政政策。
次章で詳述するが、これが最後の手となる。
野党の経済音痴共は〝旧い自民党の復活〟などとほざくが、日本に残された手はもう、これしかない。
確かにこれは短期的な対処療法であり、財政規律の更なる悪化という深刻な副作用も連れてくるだろう。何より(次章で綴るが)〝売国〟という亡国リスク要素がてんこ盛りである。
しかしもう、内需を喚起するには、これくらいしか手はないのだ。
このまま現金を溜め込むだけでは、年金や保険の積み立てもままならない。
このままでは、社会保障セクターの債務履行にも影響が出てくるだろう。
日本企業は、国民は、自己防衛という近視眼に酔って、自分で自分の首を締めていることに気がついていない。
今は将来のためにこそ、お金を使わなきゃならんというのに!!!!
※1…実は日銀において各金融機関が設けた当座口座のうち、額面で言えば1割に満たない金額にしかマイナス金利は適用されていない。それ以外の口座の金利は〝0%<1%〟だ。
※2…フィリピンの大統領。麻薬DQNの親玉に向かって「お前を、殺す」と言うわ、1ヶ月で麻薬犯罪者400人を射殺するわ、トドメに「人権ガー!」と文句たれてきた国連に向けて「なら国連辞めるわ」上等をきった。
※3…( `ハ´)の違法漁船を片っ端から爆破するインドネシアのおばちゃん。一応海洋大臣である。
【その男、山本幸三】
さて、ここまで、金融政策―異次元緩和につき、日銀にスポットを当ててその危険性を述べてきた。
諸氏には、
・日銀=円の信認がぐらつき始めたこと
・日銀の独立性が揺らいでいること
・これ以上の緩和には限界があること
・それを感じた日銀が、〝量から質へ〟政策転換したこと
・しかしそれは、さらに日銀や政府の信任を失いかねないリスクを内在させていること
・そのリスクが顕在化すれば、日本経済が崩壊すること
・日本の復活には内需の喚起が不可欠であること
・そのためにはもう、マイナス金利の拡大とポリシー・ミックスしか残っていないこと
などをお判りいただけていたら嬉しい。
ここで強調しておきたいのは、単純な金融〝緩和〟政策には限界がある、ということだ。
それは〝流動性の罠〟。
日銀自身が方向性を変えたように、この課題を乗り越えないと、緩和の効果は出ない。
しかし、である。
参院選後の第3次安倍内閣で、安倍総理は地方創生・規制改革担当相にある男を任命した。
山本幸三。
東日本大震災復興財源を、国債の日銀直接引受(!)で確保させようとした『筋金入りのリフレ派(Bloomberg)』
アベノミクスを成功させる会、会長。
異端の旧大蔵族。
地方創生担当としては、遊休農地の買い上げと大規模営農への集約を提言したり、インバウンド観光と消費を奨励したり、育児を家族から社会へ委譲させることで女性の社会進出を奨励したり、と、まるで
竹中平蔵を思わせる発言が多々見受けられる人物だ。
更には、流動性の罠から脱出するための〝質的〟政策転換を行う黒田総裁に対し、「日銀の伏魔殿に侵されつつある」と発言したり、或いは6月の消費税延期に対して否定的な意見を述べたり。
私はこの男、とにかく問題が多すぎると見ている。
最早、単なる〝量的〟緩和では、流動性の罠を強化するだけだ。
それなのにこの男、未だに国債買入の拡大と規制緩和だけで、インフレターゲットの達成が可能と見ているようだ。
これは国益にはならない。
山本幸三…この男の言動には注意が必要だ。
【パンドラの希望】
ほぼ手詰まり感の見えてきた金融政策。
ただ、まだ可能性はある、と私は見ている。
ひとつだけパンドラの箱があるとすればそれは、安倍総裁の総裁任期満了が延長される、という報だ。
安倍総理にしても、経済崩壊を覚悟しつつの総裁任期延長など、絶対に受け入れはしないだろう。
となると、考えられることはふたつ。
ひとつは、リフレ経済論者の主張を信じ続けて心中すること。
いまひとつは、必ず日本経済を復活させたうえで増税と緊縮財政を進め、〝日本を取り戻す〟確信があること。
パンドラの箱…
ラプラスの箱(※)の持つ可能性は、勿論後者にある。
後者については、総理がどのような戦略をお持ちなのか、不遜の身では量りかねる。だが総理には何らかの、起死回生の一手がおありなのかもしれない。
私は、それをこそ信じたい。
※…起動戦士ガンダムU.C.(ユニコーン) episode1より
「人間だけが神をもつ。現在(いま)を超える可能性という、内なる神を!」
「私のたった一つの望み…可能性の獣、希望の象徴。父さん…母さん、ごめん。俺は…行くよ!」
胸熱シーンである。
第四章 おわり