
【はじめに】
実はこのお話は去る5月29日に書き始め放置プレイ状態にあったものを、“書く書く詐欺”と罵られたため、急遽内容を詰め込んで改訂・リリースしたものである。
従って、内容については日々変転する社会情勢・考証において、些か時期を逸した感が否めない点も多々あると思われる。
また、本文はある業種に就業しておられる諸氏には些か無礼のある表現もあるが、これについては私の本音を赤裸々に綴ったものとして、敢えて遠慮なく綴らせていただいた。
そして本文には何点かYoutubeへのリンクが貼ってあり、これについては是非ご覧いただきたく存ずる。諸氏にはできればタブレットやスマホ、PCでこれをご覧いただきたい。私のようにガラケーしか持っていない諸氏については、今よりすぐに勤め先を早退し、速やかにケータイショップにGo!だ。
以上これら事情につき、諸氏には是非とも御斟酌ご寛恕のうえ、ご覧いただけたら幸いである。
【課題】
先の5月25日のブログ
『ごはん』は読んでいただけただろうか?
そうあの日私は、生計を立てに行く嫁から1000円札を一枚渡された。
そのお金で、夕食の材料を買いに行くつもりだった。
勿論諸氏のご期待通り、“得意料理は冷奴”の辣腕をふるうべく、当初は豚汁とか野菜炒めなどといった“途方もなく制作困難なごはん”を“創る”つもりだった。
調味料、あるはず。
(上越で有機農法を展開している保守派友人からいただいた)お米もあるはず。
お味噌は勿論八丁味噌だ。
余談だが、この友人は“6次産業”と言われるのを嫌っているが、お米作りからお餅、お酒などコメ製品への加工そしてWEB販売してたら、そりゃ“6次産業”そのものだって・・・みなさん、もし奥様が“健康によい有機農法のお米とかお餅”が欲しい、と仰ったら、是非私にメッセをくれ。ともに“クールジャパン”を以て日本のお米を世界に羽ばたかせようではないか!?
【レシピ】
…話を戻そう。
さて、大胆にもこの私が“ごはん”を作る場合…野菜炒めなら、キャベツとか、ベーコンとか、たまねぎとか、ウインナーとか…隠し味に“雪印とろけるチーズ”でも入れてみようか。
豚汁なら、ぶたさん200gほど、にんじん、ジャガイモ(北あかりというのが美味しいらしい)、ゴボウ、大根にうずら玉子…ごはんには、豪勢に山芋などすり下ろしてみようか。
…ごはんへの想いは泉の如くこんこんと湧き出で、尽きることがない。
普段慣れないこと故か、心が躍るのは何故だろうか?
…そんな、20代新婚夫婦のウキウキ気分にも似たトキメキ(はぁと)をひとりで愉しみつつ、私は五月晴れの空の下薫風を切り裂き、近所のピアゴ(ユニーのオシャレバージョン)へ、“世界最高峰のハンドリングマシーン”を走らせた。
…再び余談となってしまうが、エヴォーラSでのお買い物には注意が必要だ。
ポルシェ911に負けず劣らず、いくら荷物が沢山積めるとは言っても、これだけはやってはならない。
それはエヴォーラSに限らず、“ロータスの作るミッドシップカーのトランクには絶対に生モノを入れてはいけない”、ということだ。
なぜなら、エンジンの排熱が簡単に隔壁を浸透するので、例えばトランクに入れた“鯖の切り身”などは、僅か30分くらい山遊びをすると、すぐに劣化して食べられなくなってしまうからだ(実話)。
今は当社を退職(世間ではリストラという)させられた、世界でも屈指の自動車エンジニアたるロジャー・ベッカー御大などは、エヴォーラを設計するにあたり、トランクがあるのに敢えて2+2パッケージを加えた理由についてこう語っている。
曰く「ウチのワイフが近所のスーパーに行き、安心して“パック寿司”を買い、帰りにクリーニング屋さんに立ち寄って帰ってくるには、トランク以外のカーゴスペースが必要だったのさ、Ah-ha!」
…うそです。
【お買い物とデフレと売国奴】
お店に入る。
フランス軍払い下げのミリタリーものを“お買い物バッグ”代わりに肩にひっかけ、私は颯爽と生鮮食品売り場へ向かった。
野菜売り場、お総菜売り場、乾物売り場…
立ち並ぶ色とりどりの商品とPOP、そしてお値段表。
うーむ・・・
いろいろと安売りをしている。
まるだ未だ脱しきれない
デフレの魂がカタチになったようだ…!
…許せん!
こうして生産者から“消費者”に視点を変えてみると、いかに生産者が搾取されているのかがよくわかる、というものだ…!
そもそも“生産者”を“消費者”主体とすることが近代資本主義の基盤であるのに、大凡“生産”に寄与しない“流通”に価格の決定権を与えること、パレート最適を無視した価格の決定を促すことに、デフレの元凶があるのだ。
わかるか、イオン岡田!
やはりここはアベノミクス第3弾として、ジョセフ・シュンペーターの提唱する
“innovation”を流通の現場にも適用すべきだ!
その面では、消費税還元を制した麻生先生のご発言は間違ってはいない!
対して、安倍先生に
“アレ”を提唱させざるを得なかった
自民左派の売国奴共にはそろそろ分裂して“生活の党”あたりにまとまって欲しいものである。
そして維新もいい加減分解し、参院選までには(衆参同日ならもっといいが)創生「日本」をコアとした“新生自民”を展開して欲しいものだが…無理だろうな。
改めて流通業界に言いたい。
いつになったら“生産者=消費者”だと気づくのだ!!
特に生鮮品を除くストックをメーカーに持たせ、伝票を右から左へ回すのみの中間流通業者に存在意義はない!!
いや、待てよ。
もうここまで流通に甘い汁だけ吸わせたのだから、今後メーカー始め生産者は、尚のこと既存の流通販売を相手にしなければいいのだ。
つまり、あらゆるメーカーはじめ生産者が共同出資し、独自の販売小売システムを構築、“生産者共栄圏”を構築してしまえばいいのだ。
そこには中間の卸や問屋は存在せず、従って市場に供給される商品の価格や流通量は、消費者と生産者にとってより最適化できるはずなのだ。
そう、私達は早急に、私達自身の手で“生産者と消費者を直結させるBtoCのシステム”を開発構築しなければならない!
それがサイド共栄圏…
もとい、“生産消費共栄圏”確立の礎(いしずえ)になるのだ!!!!!!
(本節は『機動戦士ガンダムU.C. 第6話 『宇宙と地球と(ほしとそらと)』のある場面をオマージュしたものである…どっかの非韓三原則 構想に似てますな)
…またまた話が逸れてしまった。
いい加減政経ネタと日常ネタを分解せんと、読者の方が混乱してしまう。
まあ、そうは言いつつも、日常と政治と経済は必ず結びついていることは忘れないで欲しいのだ。
本題に戻る前に、もうひとつだけ…TPP反対を隠れ蓑にした、原発反対!の連中が、都議選演説をアジテート妨害している。
みれ(5分7秒あたりから)→
https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=Bww8SYLCXFY
マスゴミが報道しないなか、我々がこういった“感情だけで動く”浅薄な売国奴を糾弾せねば、誰がこの国を子々孫々に誇りを持って伝えていけるというのか!?
【1000円札を握りしめて】
…再び話を戻そう。
消費者と生産者がクロスオーバーする現代資本主義が許した、“流通業の暴走”という矛盾に思いを馳せつつ、私は晩ご飯の材料を求め、店内を彷徨(さまよ)っていた。
余計な事を考えながら流離(さすら)い続けたため、既にここまでに要した時間は30分以上。しかしながら、未だ、ミリタリーお買い物バッグに入っているのは、とろけるチーズとベーコンだけである。
この時点で私の頭のなかでは、今日のお献立は…
“ベーコン入りチーズ隠し味の野菜炒め”
と
“ごはん”
と
“八丁味噌お味噌汁但し具は一切無し”
となっている。
予算残り700円ほど。
次はキャベツとピーマンを買わなくてはいけない。
しかし、広い店内の陳列棚には色とりどりの商品がひしめき合い、しかも休日の午後というのも相まって、混雑は増すばかりである。
何処に何が置いてあるのかわからない。
ごちゃごちゃとした通路のなか、私は彷徨(さまよ)い続ける。
店内の様相に圧倒され、目線をぐるぐると回しつつ、ひたすらキャベツとピーマンを求め、ヨロヨロと流離(さすら)う。
もとより私は人混みが苦手だ。
あの何処よりも愛した横浜の街を捨て、“白い街 名古屋”に移住したのも、南関東の人混み…通勤電車や渋滞、人熱れ(いきれ)でごった返す都心部に慣れることができなかったからだ。
田舎育ちに、群衆はつらい。
ぶつかった主婦の攻撃的な眼差しに刃向かうこともできず、まるで暗闇に迷う幼子のように、私は不安と焦燥に苛(さいな)まれていた。
疲労の色が濃い。
嫁から託された1000円札は、既に掌中で汗にまみれ、ふやけはじめている。
歩き続けたためか、足が痛い。
頭のなかでは
“キャベツ”、“ピーマン”、“キャベツ”、“ピーマン”、“キャベツ”、“ピーマン”…というリズムが、
“TPP反対、原発ヤメロ”なる左翼お花畑のアジ演説(https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=cOQecF0BJJ0 1分25秒あたり)
みたいに鳴り響いている。
…意識が朦朧としてきた。
頭の中では、「ピーマン反対!キャベツはカエレ!ピーマン反対!キャベツはカエレ!ピーマンハンタイ!キャベツハカエレ…!」
これに店内販促のBGMが拍車をかける。
私のピアゴお買い物行動は、まるでタクラマカン砂漠を抜けて大陸を横断する、古(いにしえ)のシルクロード商人を思わせるものとなってきた。
【転章】
最早、正常な精神状態を保つにもままならず、キャベツとピーマンを探すにも諦めの色が濃くなってきた。
ここはもう、“名誉ある転進”を決断すべきか…!
うちひしがれ、“バターン半島死の行軍(言っておくが、
こんな史実はないぞ)”に近い彷徨にピリオドを打とうとした、その時…!!
私の前に、天使が現われた。
…ピアゴのマスコットキャラクター、“ピアッキー”である。
そうだ、この人(?)に訊けばいいのだ!
「スミマセン、きゃべつ ト ぴーまんは何処ニ置いてアリマスカ?」と。
…訊いてみた。
しかし、それは塑像のように何も語ってくれなかった。
もう一度、訊いてみた。
「すみません、キャベツ と ピーマンは何処に置いてありますか?」
「…」
無言である。
「スミマセン…」だめ押しにもう一度訊こうとすると、“彼”は黙って踵(きびす)を返し、歩きはじめた。
まるで、“ついてこい”と言わんばかりにゆっくりと。
時折、私のほうを何度も振り返りつつ…
私は最後の望みを“彼”に託すことにして、重い一歩を踏み出した。
【挫折、そして…】
あれからどのくらい時間が過ぎただろうか?
疲れ果てた足取りで、私はピアッキーのあとを歩いている。
「ピーマン反対!キャベツはカエレ!ピーマン反対!キャベツはカエレ!ピーマンハンタイ!キャベツハカエレ…!」
店内のBGMにのって、頭のなかでは例のフレーズがリフレインを続けている。
私は一縷(いちる)の望みをピアッキーに託し、広い店内のなか、彼(?)のあとを歩き続けている。
最早ついていくのがやっと、ともすれば崩れ落ちそうな疲労に倒れてしまいそうになる。
せっかく“導く者”に巡りあえたというのに…!!!!
僅かに滲み出る口惜しさに、思わず掌中の1000円札を握りしめた。
それはもう、汗と脂でじっとりと湿り、鉛のように重くなってしまっていた。
もうだめか…そう思ったその時。
私の目は、一点に引き寄せられていた。
それは、ここ迄の疲労を
それは、キャベツとピーマンへの思いを
それは、夕ごはんのお献立を…
覆すに余る、素晴しいものだった。
か・・・
かーるおじしゃん!!!!!!!!!!!!!
自らの視線をズームアウトし、私は、私を捉えた者を見つめた。
“それ”は無言のままシャルトリューズ(若草色)のパッケージに張り付き、歓喜の姿で私を誘っていた。
左右に“チーズ味”のパックをふたつも従え、中央には“彼自身”が3Dの魅力的な装いで微笑んでいる。
こ、これが・・・
これがあの、明治スペシャルパック、『
カール&カールおじさん貯金箱』か!?
…この瞬間私は、私が何をすべきなのかを悟ったのだった。
【暴走】
勝手口から飛び込むように、私は家に戻った。
吹き出す汗を拭いもせず。
未だ息も荒い。
頬を紅潮させ、私は“それ”を取り出した。
これほどの興奮は、“
あのとき”以来か。
震える指先、緩む口元。
手に入れた。
…私は“手に入れた”のだ。
胸奥からこみ上げる、この想いは何だ!?
背筋を駆け上がり、後頭部を突き抜けるようなこの魂の震えは、一体何なのだ!?
カールおじしゃん…!
包装のフィルム…最終セーフティを解除し、おじしゃんを床の間の前…畳の上に置く。
何という色彩、何という精緻さ、そして何という存在感…!!
私達が
長年親しんだ、あの“カールおじしゃん”が今、私の目の前に雄々しく佇んでいる…!
しかも、“貯金箱”という豪華な仕様も標準装備だ!
↓お金を入れるところ
↓お金を出すところ
…そうだ、この“お金を出すところ”は、強力な接着剤で留めてしまおう。
手持ちのタバコがなくなり、そして手元のお財布が空であったとき…
ついつい“あ、あのなかにお金があるんだ”、となってしまわないように。
今度の休日には、ロータスのアルミバスタブフレームを留めている、チバガイギー社の接着剤でも買ってくることにしよう。
そして、お金が貯まったら…
今までできなかったことをしよう。
エヴォーラSとリゾート会員権に遣ってしまい、長い間来手つかずのままにしてしまった…家の外壁補修と再塗装をしようか。
ぬこに破壊された寝室の壁紙を取り替えようか。
しばわんこの侵入で汚染された畳を総取り替えしようか。
私がスーパーボールをぶつけ、破いてしまった網戸を新品に取り替えようか?
いずれにしろ、目的は一つ。
ハマーン様に褒めてもらうのだ。

(勿論真の目的は、
ハスクバーナ NUDA900Rを買うことにあるのだが)
ここでお金を貯める決意をし、そして…
気づくとも無しに、私は呟いていた。
「やってやる・・・やってやるぞ!」
【終章】
「何を“やってやる”のだ!?俗物!」
興奮して気がつかなかった。
いつの間にか帰ってきていた嫁が、背後に佇んでいた。
「いや…なかなか“良いもの”を見つけたのでな、今こうして見ているところだ」
…夕ごはんの食材を買い忘れたことなどとうに忘れて、私は自慢げに“カールおじしゃん貯金箱”を見せつけた。
勿論、さわやかに(タバコのヤニで黄色くなった)歯をキラリ!と輝かせて。
「自慢するわけではないが、なかなか手に入らぬ逸品だ」
満面の笑みを浮かべ、私は自らの眼差しで嫁の同意を求めた。
「今日からここにお買い物のおつりを入れ、貯めていけば、10年後には我が家は大金持ちだ…喜んでくれると嬉しい」
嫁の眼前で“カールおじしゃん貯金箱”を軽く振りつつ、私はお褒めの言葉を待った。
ところが!
「恥を知れ!俗物!!!!!!」
嫁が突きつけたのは…
メイド・イン・大陸…。
「私の働きがあればこそ、一人お小遣いを出してやったのに…失望したよ」
…またしても、やってしまった。
(了)