【逃げられない】
私は株なんてやらない。自分の会社の未来も見えないのに、他人の会社の将来性に投資するなんて怖くて出来ない。
だから直接関係はないのだが、それでも言いたい。
〝経済と安全保障〟をテーマにしている身として、何より金融資本主義という現実に晒されている世界に住むひとりの人間として、トランプノミクスなんて言葉に躍らされてる市場を見ていると、怖い。
世の中の殆どの現役世代の人たちは、産業資本主義のなかに生きているけれど、それが市場経済、いいや資本主義経済に内包されている以上、〝お金〟の動きから逃れることはできない。
そのお金の動き、そしてそれが生む価値を、その国の実体経済活動や財政事情を飛び越えて価値付けしまうのが、金融資本主義だ。
デフレでモノが有り余っていて、市場自体が成長鈍化していても、ちょっとした気分で経済成長をしている、という幻に酔うことの恐ろしさ。
実態に相反して、貨幣価値が下がったり(インフレ)、経済活動が活性化している(株価上昇)という幻想を抱かせる…それが金融資本主義、という名の麻薬の怖さだ。
金融資本主義…それは情報技術の発達を駆使し、人の心をバーチャルな数字という檻のなかに取り込み、決して逃げることを許さない。
地球の重力のなかでは( `ハ´)はじめ新興国の経済が停滞し、人類が増えすぎた人口を宇宙に棄民するようなスペースノイド政策が実行されたわけではないというのに、そして大きな戦争が起きているわけでもないのに…金融資本主義はあたかも市場が拡張を続けている、という幻想を、指導者から市民にまで見せ続けている。
広大な海原となる新たな市場が生まれているわけでも、人類を革新に導くイノベーションが為されたわけでもないのに、人は未だ〝成長〟という名の幻想から抜け出し得ないでいる。
それは40年前のあの頃よりたちが悪く、グローバル化し、さらに為替を巻き込んで多方面にわたり、かつあらゆる国民国家の、あらゆる階層の人々の生活に、今日も影響を与え続けている。
【トランプ・バブル】
『何シテル?』とかで散々書いてきたが、改めて何度も言う。
現在をバブル視してもよい。
NYダウが19000ドルを超え、ドル円為替が111円。
〝トランプノミクスへの期待〟と、人は言う。
嘘だ。
何故なら、トランプはまだ〝何もしていない〟ではないか?
何より選挙戦のなかで、或いは著書の中で、或いはツィッターのなかでトランプが述べてきたことについて、多くのストラテジストや政治家、識者たちが検証を行った。
その論理的整合性について、何故市場は考慮しないのか?
まずは今回の為替…1ドル111円。これは〝何を以って〟生まれたというのか!?
そこに万人を納得させるだけの、根拠や理由はあるのか!?
確かにアメリカが利上げを実施し、同時に財政の崖を自ら落ちようとしない限り、10年1兆ドル財政政政策はドル高要因だ。
しかし(トランプ言うところの)10年6兆ドル減税は、税収不足が財政悪化を招くからドル安要因になる。
そして、TPP未決やNAFTA離脱はじめ保護主義は経済規模の縮小を意味しているから、ドル安要因はさらに増える。
軍拡についてもそうだ。米国内で装備を拡充するなら(財政政策の一環として)当初はドル高につながるが、その先の維持や人的資源へのコストを考えたら、これもドル安要因だ。
ことトランプ大統領下のアメリカ国内について言えば、(来年も四半期ごとに続くとして)利上や財政政策を斟酌するとしても、先行きの為替見通しはどう考えてもドル安なのだ。
財政政策でアメリカの内需株や金融株、インフラ株は上がっても、現在の為替は、トランプノミクスが生む単なる仇花に過ぎない。ヘッジファンドの仕掛けとしか思えない。
先行きをクールに見れないドル高、円安。
短期投資として見ても、あまりに危険だ。
【もっと危ない日経平均】
日本にしてもそうだ。
日本のGDPは500兆。そのうち内需は6割といわれるが、実は国内で作られたモノの最終消費市場の多くは外需。
そして外需のうち20兆は対米輸出。他にも在米現地法人から直接供給される財の生産性は80兆。
つまり、日本は100兆もの生産価値をアメリカに頼っている。
この現実に立脚してトランプノミクスが日本に与える影響を考えてみるとよい。
保護主義を志向するトランプノミクス、TPP発効は最早現実味に乏しく、頼みの綱だったASEAN経済共同体は(ヴェトナムやフィリピンを例に挙げるまでもなく)( `ハ´)に舵を切り始めている。
市場は確実にブロック化し、小さくなっていく。
さらに(前述のように)構造的ドル安要因は目白押し。
国際会計基準においては、10円の円高は1.8兆の利益圧縮を生む。
輸出競争力も失われる。
少子高齢化と( `ハ´)インバウンド消費規制で内需が萎むなか、(短期的にではあるが)目白押しの円高要因。
10ヶ月ぶりの11000円突破は、トランプノミクスを歓迎しているだけ。
それは〝説得力をもって〟国内株価を押し上げる要因になるとは、私には到底思えない。
日本の生産市場はその近未来環境上、どう考えても、円高、デフレ、(更に加えるなら)製造業三重苦から逃れられない。
このなかでどうして、日経平均がこのような勢いで上がる!?
このバブルのツケを払うのは、投資とは無関係の市井の人たちなんだぞ!?
【金融危機のリスク】
トランプノミクス金融規制緩和の恩恵?だから金融株が上がる?
阿呆!トランプはアメリカを再び、リーマンショックの危機に晒すかも知れないんだぞ!?
ドット・フランク法…私はオバマを無能呼ばわりしても来たが、こいつを評価するに数少ないネタとして、この法案の提唱を外すことはできない。
それを…アメリカの金融機関が投機的マネーに手を出すにつき、折角規制をかけたというのに、トランプは再びこれを撤廃する、と言ってるんだ。
確かに金融株は上がるが、それは禁断の蜜に触れる危機が内包されていることに、何故気づかん!?
現在の事態は、異常だ。
株は勿論、劣後債やリスクオン志向のETFなんて、絶対にやっちゃだめだ。
聞いてるか?GPIF!
お前らが運用しているカネは、俺らが払った社会保障費だぞ!?
【勘ぐり】
ただし、である。
(アメリカにおいて、と言う条件付ではあるが)株高は兎も角、今回のドル高…いいや〝円安〟については、上述を呑み込んで尚、という理に適う材料がある。
考えると恐ろしいが、それはこれまで幾度か述べてきたこと。
すなわち日本の財政規律破綻…少子化による税収不足と高齢化による社会保障費の増大、これ等が生むであろうデフォルトへの懸念。
すなわち、少子化が生む生産年齢人口の漸次減少と後期高齢者人口の加速度的増加…このふたつが生む日本国内市場の大幅な縮小すなわち国力低下。
そして、アメリカのモンロー化が生む、極東から南シナ海に至るアジアでの( `ハ´)覇権活動の大規模展開、シーレーンの危機。
今回の円安、こんな思惑が市場の裏にあるとしたら、恐ろしい。
【包括的危機】
2016年11月23日現在に限っていえば、トランプは5つの大きな危険性を世界に示している。
対内的には3つ
・アメリカ財政規律の歪み→米国債の信用不安がくすぶり、各国バランスシートの安全性が低下
・国内の分裂→ますます内向きな政策に走る恐れ
・自身成長の礎を自己否定→これからどうやって市場を維持する?
対外的には
・保護主義→対外依存経済国の成長鈍化と社会不安増大
・モンロー化→東アジアや中東の安全保障脆弱化。日本にとってこれは、『戦後レジームからの脱却』にはよい機会かもしれない。私もその点にのみおいては嬉しい。
今回の〝変革〟は、あまりに性急に過ぎる。あまりに感情的に過ぎる。
日本が〝自立〟するにしても、もっとゆっくりやって欲しいものだ。
【追伸】
今日のごはんは肉じゃが。
【11/24 12:17P.M.追記】
で、いつまでこんな乱痴気が続くかというと、日本は短くて多分FOMC12月利上げ発表、長くて来年春先まで。一番確率高いのは、2月上旬アメリカ予算教書発表までかな?
ホンネとしては、12月で一旦リスクオンの狂気に水が差され、皆冷静になって・・・欲しいw 上記のような理由で〝何かおかしくね?〟と。
FOMCは12月のFF利上げは0.25程度にして、1月は据え置いて3月まで様子見するだろう。
この間に新たなFOMCメンバーが着任するだろうが、新政権発足直後でしかも議会は保守党安定だから、おそらくハト派多数。
トランプの財政政策期待効果やQ2の雇用統計、消費者物価指数などの動向で、もしかしたら3月はFF上昇0.5以上に持っていくかもしれない…が、面子も面子、最近のアメ公のバカっぷり考えたらこれは長続きしないと思う。
(おそらくこうなるが)トランプ就任以後ずっと減税してインフラ投資しても、効果は限定的で、思ったより需給ギャップは開かないだろう。
理由は、アメリカが〝移民の国〟で、マイノリティの人口構成がこれからどんどん増えるからだ。
現在のアメリカにおける民族的マイノリティの比率は40%。2044年には50%を超える。そもそも白人没落層を支持基盤に持つトランプ政権の誕生そのものが、奇跡なのだ。
『皮肉なことに、いまやヒスパニック以外の白人は、他のどの人種よりも、人口増加を移民に頼っている(ケン・ジョンソン:ニューハンプシャー大教授)』
(へんな言い方だが)メジャーとなるマイノリティの消費を高めないと、アメリカという市場は成長しないどころか、もたない。
マイノリティを抑圧すればするほど、アメリカは富の源泉を失うのだ。
一方で高齢化の進むトランプ支持層の生活は、消費低迷で思ったより改善されないことが明らかになる。トランプが〝Buy American〟運動を展開したとしても、労働コストにプッシュされて価格が上がりながら、保護政策で品質は大して向上しない普通のアメリカ品を、アメリカの消費者は好んで買うのかねえ?
需給ギャップが改善されず、いずれ2017年末までに、利上げはまた止まる。減税も継続だろうしね。
そしたら2018年内はドル高一転ドル安方向が定着する。
それを考えたら、これ以上バブルに乗るのは、自らの〝高転び〟宣言をするようなものだ。
いかん、なんか株屋みたいな言い回しになってきたな。
言っとくが、私は証券屋でも金融業界の人でもない。
さて、その先は見えないが、(こと安全保障が安泰であったとしても)日本は、いずれPoint of No-Returnを迎える。
2021年あたりに騒がれ始めて、2022年くらいに〝ある事〟が顕実化すると思うよ。
どんとはれ。