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1994年式インプレッサWRX感想文 - インプレッサWRX
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ノイマイヤー
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スバル / インプレッサWRX
WRX (1994年) -
- レビュー日:2026年2月1日
- 乗車人数:2人
- 使用目的:その他
おすすめ度: 5
- 満足している点
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1.(当時の)世界レベルの圧倒的な速さ
2.タイヤを選ばぬ絶対的操縦安定性
3.高車速でも目立たぬ風切り音
4.普段使いできる実用席なパッケージ
5.シャシ勝ちによるコンフォートな乗り心地 - 不満な点
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1.運転するなら一段高い倫理観が必要(速すぎる)
2.変速機の繊細さ(ガラスのミッション)
3.整備性(水平対向の宿命)
4.燃費(踏んでしまう)
5.運転感覚が麻痺してしまう(安定しすぎる) - 総評
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スバルらしさとは何だろうか。最近の人にとっては「アイサイト」かもしれないが、40代以上の世代や車好きにとっては水平対向E/G、シンメトリカルAWDを連想する人が多いはずだ。
終戦後、中島飛行機から富士重工に社名が代わり平和産業に転換した際、彼らはラビットスクーターやモノコック構造のバスボディを作りつつも、当時の厳しい規格の中でも持ち前の技術力で大人が四人乗れて、箱根も超えられる本格的な軽乗用車をヒットさせて普及させるなどして日本の自動車業界に独自の地位を築いた。

国民の所得が右肩上がりで増え続け、大衆クラスの自動車の価格が、自動車普及の目安となる年収の1.4倍に達した昭和41年ごろ、「マイカー」が一気に普及し始めた時代、ダットサン・サニーやカローラ1100に並んで軽自動車のベストセラーであるスバルブランドから「スバル1000」が発売された。
競合が手慣れた直列E/GのFR方式を採用していたのに対してスバル1000は室内が広く採れ、悪路走破性に優れる前輪駆動を採用し、低重心でコンパクトな水平対向E/Gを採用した。
「マイカー」という夢を叶える商品らしく豪華絢爛なクロームメッキで使われた競合を尻目にスバル1000はクリーンなスタイルでまとめた。一方、独自性ある機構を採用することで一クラス上のロングホイールべースや広大なトランクを備え、技術が暮らしを豊かにするポリシーを表現した実用的なセダンを目指した。スバル1000は独特の機構を持ったマニアックな車だったが、一定の支持を集めスバルff-1など名前を変えながら生産が続けられた。

1971年にデビューしたレオーネは大衆車クラスの中核セダンとしての役割を引き継いだ。整備性の改善や流行を取り入れ、1970年代的なエグ味が色濃いのが特徴だ。クリーンと言うよりデコラティブであり富士重工なりに売れる商品を目指した結果だった。1979年のニューレオーネや1984年のオールニューレオーネになると、カローラやサニーではなく、ブルーバードやコロナやカペラなどをターゲットにした位置づけに変化した。このとき、サッシュレスドアやAWD、ツーリングワゴン、水平対向ターボなどスバルらしさに繋がるキーテクノロジーを身に付けていった。

富士重工にとって転機になったのは1989年発売のレガシィである。大いなる伝承物を意味するレガシィはRVブームの中で全くの新商品としてデビューしたこともあって旧来のヒエラルキーに縛られない豊かさを持った車であると認知された。レジャーブームの中にあっては荷物が積めるワゴンボディやキャンプ場やスキー場に気軽に行ける走破性を持った車として日本国民(主語がデカイ)にツーリングワゴン=スバル・レガシィという意識を植え付けることに成功した。元々生真面目なスバルは技術偏重で高コスト体質だった上、北米での失敗もあり経営が苦しかったが、国内市場がレガシィにプレミアムを感じたことによって富士重工は再び息を吹き返した。
レガシィの成功の結果、富士重工は少しだけ困ったことになる。レオーネの置き換えとしてレガシィを企画するも既にレガシィはちょっとしたプレミアムカー的な立ち位置が手に入りそうでジャスティとレガシィの間が空いてしまったが、レオーネをいつまでも併売するわけにもいかない。
1989年、富士重工は「新しい時代性と高品位を感じさせるアーバンセダン」をテーマにレオーネ後継となる企画を開始した。レガシィがヒットしたがゆえに、ミニ・レガシィを作っても需要を食い合うだけだ。企画初期では直4を横置きする案も検討されたというが、最終的には水平対向E/Gを縦に置いた富士重工らしい伝統的な4ドアセダンと、積載性よりもカジュアルさを重視した5ドアスポーツワゴンという姿に落ち着いた。
セダンの想定ユーザー(ペルソナ)は32歳の夫婦で子供2人。小田急沿線のマンションに住む。平日は妻が運転しており、自尊心と良い意味の見栄を心に秘めている―のだそうだ。当時はバブル崩壊で都心のマンションの値崩れが起きたため、価格重視層が一時的に都心回帰する流れがあった一方で小田急沿線のマンションには周辺環境の良さを重視する中堅以上のサラリーマン層が多く住んだとされる。
新型車は富士重工の車であるがゆえに高性能へのこだわりや独自性を持たざるを得ない宿命にあるので、大衆車クラスでありながら普通の車に飽き足らない層をこのペルソナに投影したのだろう。このペルソナでは平日の主たる運転者は妻とされているが、女性ドライバーも重視しているのがインプレッサの特徴だった。走行性能も低速トルクを鍛え、実用領域(具体的に40km/hから80km/hへの加速)を大切にした。
販売店の声として「レオーネは乗ってもらうまでが大変。いくら性能が良くても乗って走らなきゃ分からない。それは結婚してから良さが分かる人みたいなものだ。結婚したくなるような魅力が必要」というものがあった。ターゲットに販売店に来てもらえるスタイリッシュさも求められていたのだ。

こうして1992年に発売されたインプレッサは1.5L/1.6LのFFと1.6L/1.8LのAWDが搭載され、副変速機やエアサスまで選べるという90年代らしいワイドバリエーションの頂点に君臨するのは今回試乗したWRXだ。
WRXはWRCに勝つために2.0L水平対向ターボを4輪で駆動する最強のセダンである。私がそもそもWRXとは・・・・などと講釈を垂れずとも、世界中の人がこの車の素晴らしさを知っているのではないか。
そんな偉大なAWDスポーツモデルなので身構えて乗り込んだ。実際に走ってみると、とにかく安全に速い。扱いやすい小型車枠でありながらスポーツカー顔負けの走りをする4ドアセダンの凄みを感じさせる。上手に言えないがそれはサーキットより峠が似合う。いいおじさんになった今、無邪気にコーナリングとターボの加速を楽しむよりも、速く走れれば走れるほど自制心との戦いになった。

高性能な車は安全である、という方便は分別のある大人にのみ適用されるのであり、20年前の私が乗ればきっと引き際が分からず、何処かに刺さっていただろう。走行性能に関して私が文句をつける余地はほぼ無い。もう少しラフなシフトも受け入れて欲しいと思うこともあるが、高性能車には高度な運転技術が必要なのは当たり前なのだと思い直した。思い出補正というか価値観形成期のモデルだったという面を差し引いても、1994年にこれほどまでの走りを見せる車は稀有だ。
11月に行われたインプレッサWRXの運転体験はトヨタ博物館のJDM展というタイミングにぴったりの試乗となった。WRCで戦えるほどの戦闘力の車を限定生産するならまだしもカタログモデルとして量産し、街中でそれなりに見かけるほど普及していたという事実は日本らしい現象である。高機能・高性能なものを小型化して量産するのは当時の日本のお家芸であったからだ。

260psという現代のスポーツモデルでは物足りない出力でもシートに背中が押しつけられるような加速を見せ、ステアリングさえ切れば安全に曲がってしまう。しまいに自分は運転が上手いと勘違いしてしまいそうになる。WRXの性能は普段使い切れない。90年代の峠マンガのような世界で夜に目を三角にして走らせるような場面でようやくという感じだろう。速い車だからこそミスをしてクラッシュに至れば大怪我で済むんだろうかという疑問が湧く。そういうヒリヒリした恐れをスパイスに次のコーナーに挑むという感じになる。多少のラフな操作やミスは車側がカバーしてくれ、速く走れるが徐々にエスカレートすれば何処かで限界を超えてしまうだろう。だからこそ、この車には自制心が必要なのだ。
現代のスバルらしさは先進安全かも知れないが、20年前のスバルらしさはWRCの結果に裏付けされた高出力AWDによるハイレベルな走りだった。この車はその意味でとてもスバルらしい車だった。オーナーには深く感謝したい。

- デザイン
- 5
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デザインテーマは水鳥が飛ぶシルエットをモチーフにしているという。小さな頭から細長い首があり、その後に大きいマス(胴体)がある。これを前進感あるフォルムと後席ヘッドクリアランスに充てつつ、スポーティな表現に使っている。

フードは水平対向らしくあくまで低く、そしてキャビンは大きく見せている。ドアフレームのないサッシュレスドアのメリットを活かして面一感があり連続して大きなグラスエリアを採った。ハードトップの一般的手法はサッシュレスドアを使って乗降性を維持しながらルーフを下げることに役立てるのとは異なるアプローチだ。

フロントマスクはカローラの様な親しみやすさを持った異形ヘッドライトが特徴で「キリッとした」と「かわいい」の中間にある様なバランスだ。WRXは冷却性を考えたグリルだが冷却性能に余裕のある標準モデルは中央部のみ小さく空いたグリルレスライクな意匠を採用。ツルンとした表情は独自性があったら、この時代では少々目立ちすぎたようで後に普通のグリルに改められている。
WRXは大径フォグランプや真四角のロアグリルによって性能と機能を表現し、標準仕様と差別されている。アルミフードには冷却ダクトと熱気抜きのスリットが設けられているが後者は裏側に蓋が着いていてダミーになっている。ユーザーが好みであとから加工することもできるが、現代のGRスープラなどがダミーダクトを設定する遙か前から
こう言った施策をしれっと採用しているあたりも富士重工の本気を感じさせる。

サイドビューは前下り・後上がりのウェッジシェイプそのものだがバンパー見切りを繋ぐプレスラインと前後ホイールのブリスターフェンダーとドアハンドル上のラインを繋ぐラインで水平基調のテイストを視覚的に追加してバランスを取っている。上記対策によってウエッジシェイプの割にはRrタイヤが小さく見えないのが良い。(当時としては大径の16インチだが)
サイドプロテクションモールやツートーンカラーで表現する事例もあるが、インプレッサは恐らく軽さを追求してプレスラインを使っている。ドアしたには黒樹脂製のサイドマッドガードが装着されているが、小石によるヒットを目立たない様にするだけでなくラリーカーらしい適度なリフトアップ感を演出できているのも興味深い。

リアビューは空力を意識したハイデッキスタイルだが、ショルダーを面取りして腰高に見えないように配慮している。ヘッドライトと似たテイストとの異形タイプの左右リアコンビランプの間はワイド感を強調したくてガーニッシュで繋ぎたくなりがちなのだが、インプレッサは敢えてそれをあらずツルンとしたパネル面を見せているが、ここでもプレスラインをリアコンビランプ上辺と同じ高さに引く事で視覚的バランスを採った。WRXのロゴが縦長なのはグラフィックデザイン的要素もあるがトランクの分厚さを緩和したかったのかも知れない。いずれにせよ良いデザインだ。

現代の「エモーショナル」追求のためにプレス技術者や板金塗装業者泣かせのヘンテコなキャラクターラインを入れる車が多い中で初代インプレッサはスッキリ・プレーンで硬質な印象を与えておりそれが競合する大衆セダン群との差別化に役立っている。
要素を減らす意味では、モールの代わりにプレスラインを使い、マッドガードでブラックアウト効果を使い、サッシュレスドアも(フレームやW/Sなど)要素を減らすのに使っている。また、ウインドシールドガラスからルーフサイド、リアガラス両端のモールを一体化する事でスッキリした視覚効果を与えているが、大形一体モールは型投資が大きく、意匠のためにしっかりお金を使っているところは高ポイントだ。

インテリアは塊感のある骨太な造りを目指したという。時代性を感じるソフトパッドも使いながら曲面的なドライバーオリエンテッドな機能を損なわないようになっている。座面の真正面にステアリングが正しく配置され、その奥には4眼スピードメーターが置かれる。左から燃料系・速度計・回転計・水温計の順で特に面白くも無い配列だがその代わり、ステアリング被りもなく、フォントも読みやすく機能としてはこれ以上無いレベルだ。だからこそ、富士重工に限らず各社が類似した配置例が増え後年になって回転計と速度計の径を変えてみたり、自発光式メーターに移行するなどメーターの持つ視覚的楽しさと実用性の両立を模索するようになった。インプレッサWRXはベース車同様にグリーンの優しい透過照明で見易く運転を邪魔しない。


センタークラスターは当時としては採用例が少ない3連ダイヤル式ヒーコンパネルが特徴だ。手探り操作性に優れていたが、当時はレバー式が主流だったが。インパネの一等地にヒーコンパネルがあると、オーディオをその下部エリアに置かざる得なくなる。これではオーディオ操作のために視線を動かす必要があることを理由に最上段はラジオ等のオーディオにしている車種が多い。カーマルチメディアが普及した現代だと一等地は大きな液晶パネルである事が当たり前になっている事を考えると興味深い違いだ。インプレッサWRXには1DINサイズのADDZESTブランドのAM/FMチューナーとカセットが楽しめるほか、CDやMDのほかポップアップ式のカーナビゲーションも選べる。現代では盗難され易い問題やデザイン的な制約になっている事もあり2DINオーディオは廃れてしまったが、当時のオーディオシステムアップのニーズが高かった時代性を考えてまとまった空き地が確保できるこの位置に決めたのだろう。
シートは当時まだ新しい技術だったフィット感や乗り心地に有利なモールドフォーム(発泡後切り出すのはスラブフォーム)を採用したという。表皮も伸びやすい表皮を使ってインパネデザインにも通じる有機的なフォルムも実現した。
★は5つ。少年時代の刷り込みもあるが文句なしにカッコイイ。「かっこ悪いことこそがスバルデザイン」なんてフォローする必要が無いくらいだ。個人的にはセダンのイメージを残しながら、実用性を高めたスポーツワゴンも相当良い線を行っていると思う。インテリアは好みというほどのことはないが、ステアリングが正面にあり、小径ステアリングでもメーターに被らず、各種スイッチが押しやすい点は十分評価できる。きっと真面目な人が機能性を考えて必要な要件として提示し、それをデザイナー達が守ったのだろう。インプレッサの場合はそれでいい。 - 走行性能
- 5
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まさかこの車に乗る機会があるとは思わなかった。
インプレッサWRXの実力は世界中の誰もが認めており、熱心なファンも多くいるが既に私から遠いところにある様な車に思えた(いや、今もそうだ)。
この車に対する理解度はプレイステーションのグランツーリスモで勝ちまくれる凄い車、とか漫画に出てくる―と言った中学生レベルのままだった。

助手席にすら乗ったことがなかったインプレッサWRX。ベルトラインから上はガラスしかないサッシュレスドアのお陰で、ドアフレームが顔面をかすめずに運転席に乗り込める。縫い目が少なく曲面的な純正バケットシートが身体に密着する。この他、ナルディ製ステアリングやシフトノブなど運転操作を行う多くの部品はスポーツカーらしい
手に馴染む様にいいものが奢られている。
逆にそれ以外は標準的なCセグメントセダンの内装レベルである。刺激的なカーボンパターンのガーニッシュや赤い照明などこれ見よがしな加飾がないところがスバルらしい。
ちなみに試乗車のナルディにはエンボス文字でSUBARUの刻印があるが、カタログを見るとNARDIと違う刻印になっている。オーナーに確認したところ、初期型にはSUBARUの刻印があり、260ps版の試乗車にはNARDIと刻印されるはずなのだが初代オーナーのこだわりなのか用品設定のあるSUBARU刻印版(5.1万円)が着いているというのだ!スバリスト恐るべし。

ドラポジは自然だ。インフォテインメントやらP/F共通化やらそういう制約から解き放たれたコックピットは心地よい。シートバックを少し立て気味のポジションに合わせた。ちゃんと運転席側に寄せられたパーキングブレーキレバーを解除して少し癖のあるクラッチに右脚の全神経を注ぎ発進を試みる。調べてみるとクラッチは一般的なMT車と異なるプルタイプを採用している。レバー比を大きく取れるので操作力が低減できる。ハイパワー車なのに踏力が軽いのはこのお陰なのだろう。
ステアリングを大きく右に切り店舗から車道に出た。32年も昔の車だが段差を超えてもミシリとも言わないし突き上げ感も無い。1速のまま緩やかにアクセルを踏むとグッーーーっと加速し、大きな交差点を左折する。
横断歩道前で徐行し、再び1速でアクセルを踏み込んだ。ジェット旅客機のような加速だ。今までの経験上、走る・曲がる・止まるのレベルの高さをこんなに短時間で「わからせ」られたのは初めてではないだろうか。
・・・もちろん1ブロック走っただけで試乗を終えられるはずもなくインプレッサWRXを山間部へ連れ出した。
(乗り心地項へ続く) - 乗り心地
- 5
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(走行性能項の続き)

長い直線の登り坂で加速性能を試したが、7000rpmまで息の長い加速が続き、変速しても再び同じような勢いで加速が続く。何速でも何キロからでも速い。最新のBEVだとか現行のスポーツ系ターボ車のパフォーマンスよりも落ちるのだろうが、
インプレッサWRXはロケットのように感じられて空気抵抗を無視するかのような加速力に魅せられる。調子に乗ったシフトチェンジをして「ガリッ」とミッションを鳴かせてしまった。シンクロが弱いガラスのミッションという評判は漫画の通りだった。余裕のありすぎる加速力を使って一気に加速してクラッチを切り、優しくギアを切り替えてミッションを労らねばならない。
いつしかまるで箱根ターンパイクのような高速コーナーが続く区間に差し掛かってもインプレッサWRXはスイスイとクリアしていく。90年代の車らしく、油圧式PSは信頼の置けるステアリングフィールで引っかかり感だとかカクカクとON-OFFする感じとは全く無縁で連続的なステアリング操作が気持ちよく、ステアリングインフォメーションが分かり易い。路面との摩擦感が手に伝わってくるかのような安心感がある。私もフルタイムAWD車に乗っているのでこの安心感は初めてではないのだが、私のフルタイムAWD車と比べて2倍の最高出力を誇るインプレッサWRXは高車速域で安心感が続く。

3速に落として高速コーナーに挑む。ねっとりと地面に貼り付いたままコーナーをクリアした。余りにも安定しているので次は意地悪く次のコーナー途中でアクセルをパンと抜いてみたが、挙動は乱れず敢えて端の継ぎ目でアクセルをラフに踏み込んでもそのラインはステアリングが向いている方からズレない。サスがガチガチに固められていないこともありコーナリングでそれなりにロールは感じるが挙動は全く恐怖感がない。正しく前輪に少し荷重を乗せてから操舵すればしっかりノーズがインを向き、姿勢が安定してきたらアクセル踏み込む準備をして出口で加速させていくような丁寧な走りを心がければとにかく速い。今回の試乗ではタイトコーナーは走らなかったが、自然と笑みがこぼれてくる走りだった。

この走りは低重心なシンメトリカルAWDのお陰と言いたくもなるが、素人ながらボディ剛性の高さを感じた。というのも比較的負荷をかけても角のあるショックを感じなかったからだ。私が読んだことのある試乗記だと、ボディ剛性があまり良くないといった指摘を目にしたことがあったが、恐らく相当な熟練者がハードな走りを試すことで馬脚を現したのだろう。私はまだまだその域に達しないので、むしろ安心感のあるボディとすら感じてしまった。ボディ剛性に関しては、一体型のサイドアウタ(継ぎ目が減る=剛性上がる)やステアリングサポートビームの採用によって剛性を高めつつ、アルミ製フードやロアアームなど軽量化に取り組んでいる。



真っ暗で他に誰も居ないPAに車を停めた。私自身のクールダウンを兼ねた休憩である。しばらくオーナー達と感想を語り合いながらドロドロした排気音を味わってからトイレに行き高揚した気持ちを冷ました。
帰路はルートを変えた。合流車線でぐーっと加速させる。敢えて長いトンネルを窓を開けてE/G音を楽しんだが本当に病みつきになりそうだ。後から私のカローラが追走してくるのだが、つい引き離して豆粒にしてしまう。イカンイカン、としばらく待ってあげても再び豆粒にしてしまうのだから罪深い。

カローラ級のボディサイズに格上のセリカGT-FOURよりもハイパワー(5ps程度だが)なE/Gが搭載されてしまっているのだから、それはもう恐ろしく速い。パワーウェイトレシオがカローラ比で1/2なので普段私が楽しむ加速とは大違いで、自分の愛車を何回も豆粒にしてしまった。

感心したのは高車速域でもドアガラスから吸い出される感覚が予兆も含めてないことである。サッシュレスドアの泣き所は高速域での吸い出されである。風が速く流れていくことでドアガラスが車外側へ吸い出され、風切り音が増大する事やカタカタ、キシキシと音を出すのが普通だと思っていたが、インプレッサWRXは驚異のドアガラス把持力を誇るようで一切不安な気持ちにさせることはない。このあたりはレオーネの頃からサッシュレスドアを採用してきた富士重工のノウハウの賜と技術者のプライドなのだろう。
ちなみに計算上、100km/h時のE/G回転数は3000rpm程度。いわゆるコンパクトカー的なギア比だがハイパワーを考えると、相当駆動力を重視している事が分かる。
長いトンネルの出口のコーナーに備えて減速したが高車速域からのブレーキもコントローラブルで信頼できる剛性感だった。
こんな風にインプレッサWRXの内容はWRCに勝つために生まれた純スポーツカーである。しかし、WRXは競技ベース車のRAが存在することから、速さと快適性を合わせ持ち、さらに大人4人が乗れる実用性も有している。私がインプレッサWRXに対して物足りないという感覚を持つには相当の訓練を積まねばならない。

普段はカローラGTで十二分に運転を楽しんでいる私もインプレッサWRXになると2レベル高い運転ができた事に驚いた。ドライバーが同じなので明らかにインプレッサWRXの性能のお陰である。カローラの2倍にもなる高出力を遺憾なく発揮できたのはAWDだからだ。4つのタイヤを的確にグリップさせ、ドライバーの意志を伝えるというのは頭では分かるが、まさかこんなに速くて安定しているとは。
このポテンシャルを持ったE/Gを使ってプレミアムな方向性に仕上げたのがレガシィでピュアスポーツを向いているのがインプレッサWRXであると実感した。
最終的に降りるのが嫌だ、もっと乗っていたい!と思ったものの、人を待たせていたので車を停めた。
タイヤを見て驚いた。「YH DNA ECOS」を履いていたのだ(笑)。

てっきりもっとハイグリップなスポーツタイヤを履いているものだと思っていたのだが、まさに弘法筆を選ばずといった感じでパワーに見合ったコーナリング性能を有していた。タイトコーナーが連続するワインディングを攻めていくと違うかも知れないが、中高速コーナーが続く今回のようなコースでは充分だった。
インプレッサWRXの速さの虜になると、もっと速く、もっとうまく走らせたいという意欲が入道雲のようにムクムクとわいてくる。そしてあまりにもイージーに高速コーナリングをこなしていると、いつしか感覚が麻痺してコーナーで刺さってしまうんじゃないかと心配になってくる。

さすがにこの走りを知ってしまうと5★をつけなければならない。乗り心地・操縦性も5★だ。走る場所を選ばない5ナンバーサイズであることも高く評価したい。 - 積載性
- 3
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ドアを開け乗り込む際、ドアフレームがないので乗降しやすい。運転席はヘッドクリアランスは座面から990mmと充分な値で試乗時に記したとおりドラポジも自然だ。余程大柄な人で無い限り、狭くはないが特別広くもない普通の居住空間だと感じるだろう。

後席はこのクラスでは余裕は無いのだがインプレッサの後席は座面から931mmと前席ほどではないが広い。座高が高い私が着座しても頭上には隙間が残る。エクステリアデザインの特徴として後にマスを残した事が後席の存外な居住性に貢献していた。膝前も決して余裕は無いが、大人4人を過不足無く運べるキャパシティはある。
ハードトップセダンの標準車はシートバックを倒すことができて荷室を拡大できるが、WRXは専用シートのためそこまでは望めない。恐らくシートバックの背後にXブレースが着いているのかもしれない。それでもラゲージは、バンパー上から開口部があり、ゴルフバッグが4つ積めるという広大さでVDA法によれば353Lだという。これだけあれば週末の買い出しや年末年始の帰省など大荷物を積めそうだ。
このほか90年代の車らしく、灰皿とシガーライターが一等地にある他、カップホルダーの様な気の利いた装備も増えてきた。これならハイレベルなスポーツドライブができるだけでなく、ファミリーカーとしても使える。

さて、インプレッサWRXは本格的な性能を持った全天候型スポーツカーでありながら、居住性が充分で積載性も悪くなく実用性に優れている点は競合するランサーエボリューションと共に特筆すべき美点と言えるのではないだろうか。
★をつけるなら平均的なセダン並の3、スポーツカーとしてなら4は余裕を持って与えられる。 - 価格
- 5
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試乗した1994年式WRXの価格は249.8万円。260psの4輪駆動スポーツがこの価格だ。安すぎると思ったが、240psだった1992年デビュー時の価格を調べると229.8万円。
最も安い1.5L_FFモデルで112.9万円(参考:AE100_XEは115.3万円)に対して、AWDが23万円程度。500ccの排気量アップを50万円と見積もればターボ代は43.9万円となる。ターボ係数1.7を乗じると、インプレッサWRXは自然吸気3400cc相当のパフォーマンスとなる。排気量1400cc分の性能向上が43.9万円で手に入るなら、それはダンピング価格なんじゃないか?さえ感じてしまう。
量産効果でより良いものをより安く、という哲学が常識だった当時の日本らしい値付けであり現代の「できる限り現金で買えないように高く売り、その価値が持続するように量も追わない」という方針とは相当違うので今を生きるものにとっては異常なほど安い価格設定に感じてしまった。
手元に1994年7月の月刊自家用車別冊があるので一部を抜粋したい。
94年1月~3月の販売台数は9112台。平均して3000台は売れているようだ。値引き目標は22万円でリセールバリューはC、納車期間は2~3週間とのこと。
この当時のWRXの価格は247.5万円。7月登録の条件で計算して諸費用込みの総額282.5万円という支払い例が提示されていた。ここに値引きとディーラーオプションを足し合わせても300万円程度で購入できそうな見通しだ。やはり安いと感じてしまう。
現代の貨幣価値と揃えるには大卒初任給で比較すると1994年(19.2万円)、2019年(21.3万円)となるので1.11倍程度と想定される。それでも249.8万円が2019年換算で274.8万円、消費税10%税込でも302.3万円だ。どう考えても安いだろう。今のインプレッサだと2.0LのST(301.4万円)に相当する。

★をつけるなら5だろう。パフォーマンスを考えれば充分安い。
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