ダイハツ ムーヴ

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2025年式ムーブRS感想文 - ムーヴ

レンタカー

2025年式ムーブRS感想文

おすすめ度: 3

満足している点

1.やり過ぎてないRS
2.市街地での乗り心地
3.進化したEPB協調エコアイドル
4.許容レベルの高速性能
5.ボディのしっかり感
6. 存外な燃費
不満な点
1.ベストを追求する姿勢を失ったこと
2.インナーミラー位置
3.Sレンジへの変速にボタン操作が必要
4.他社に似てしまったエクステリア
5. 退化したインナーミラーとベルトアンカー
6. ロードノイズ
総評
「♪んむーぼぉぅん」のCMでお馴染みの新型ムーヴはダイハツが約3年ぶりに発売する新型車だ。
認証不正が発覚し、品質確保のための総点検や認証再受験で社内がぐちゃぐちゃになる中、発表直前だった開発が最終段階にあり発売を待つだけだったムーヴはコールドスリープさせられてしまう。

2025年6月についに発売となった新型ムーヴは
「今の私にジャストフィット 毎日頼れる堅実スライドドアワゴン」をコンセプトに設定した。



1995年の誕生以来、スズキワゴンRと共にハイトワゴン(全高1600mm前後)市場を牽引し「普通車顔負けの軽」というキャラクターの中心的役割を担ってきた。特に1998年にデビューした新規格の2代目は新規格によるサイズアップをユーティリティアップに最大限活用し、軽規格のワゴンとしての立ち位置を明確化していく。

進化の過程で4気筒を積んだり、「裏ムーヴ」を謳った過激なローダウンカスタムや、癒やし系ムーヴ・ラテ、前席優先のムーヴ・コンテなどの派生車を産みながら発展してきた。



この流れを変えたのはダイハツ自らが生み出したタントである。スーパーハイトと呼ばれる1700mmを超える全高により子供が車内で立ったまま着替えが出来るほどの室内空間を得た。2代目タント以降はセンターピラーレスの大開口スライドドアを特徴とする現代のフォーマットが完成した。

ホンダがN-BOXで殴り込みをかけ、スズキと三つ巴の戦いを繰り広げる中で、ムーヴやN-WGNやワゴンRなどのハイトワゴン群はスーパーハイトの影に隠れた存在として浮上できない状況が続いていた。

「背が高けりゃ高いほど好きなんだろ?」と言わんばかりにスーパーハイトより背の高いウェイクを出したところ、CMはめちゃくちゃ面白かったのに思いのほかヒットせず販売を終了しており、
スーパーハイトというサイズ感が絶妙なバランスの上に成り立った現代の黄金律である事を物語っている。

スーパーハイトには子供を載せ、室内で立たせたり、後席を畳んで自転車を積んだりと生活の道具としての機能を磨いた機能重視の立ち位置があるが、現代のハイトワゴンは後席よりもむしろ前席を優先したベーシックなパーソナルカー的な立ち位置が相応しくなった。



ハイトワゴンは例えば燃費を磨いたり、内外装を磨いたりして新規需要を開拓してきたが縮退傾向は変わらなかった。この流れに一石を投じたのはダイハツが2016年に発売した「ムーヴ・キャンバス」である。キャンバスはムーヴをベースに可愛さ全開のキャラで新境地を開拓した。ツートーンカラーの塗り分け位置や丸いエンブレムはどうしても西ドイツのあのバスを想起してしまうのだが、両側スライドドアである事も大きな特徴だった。全高は1655mmとスーパーハイトよりも低めてあり、後席には人を乗せると言うよりも引き出し式のラク置きボックスを使えばスライドドアを開けて荷物をサッと簡単に置くことができた。キャンバス自体は女性のカワイイものが欲しいというニーズと、自動車を共有する親世代の便利な車が欲しいというニーズを合体させたもので従来ならミラココアのようなファッション性重視のモデルとムーヴのような実用性のあるハイトワゴンを掛け合わせた車だ。

アルトスライドスリムを除くとekワゴンが片側スライドドアで貨客兼用モデル以外として初めてスライドドアを軽乗用車に持ち込んだ。以後、スライドドアはスーパーハイトワゴンと組み合わされて急速に市場を席巻するのだがいつしか「スライドドアでなければ車では無い」という程のスライドドアへの支持が決定的になっていく。

人々がスライドドアの便利さを知ってしまった以上、従来型ヒンジドアであるがゆえに選ばれない状況が散見されるとメーカーとしてはいつまでも見て見ぬ振りをする事ができなくなっている。ダイハツの調査によれば2024年時点でスライドドア車のシェアは6割である。





話を新型ムーヴに戻そう。新型ムーヴもヒンジ式ではなくスライド式に改めた。先行するキャンバスがシェアが傾向のムーヴと同等の車高でありながらも、ハイトワゴンの世界にもスライドドア(時代のトレンド)を持ち込むことで再び選ばれるようになった。コストが、とかサイドレールが露出して美しくないなどのネガティブな面を一旦脇に置いた甲斐があったというものだ。個人的には驚いたがダイハツにとっては横開きバックドアを立て開きに改めた時のようなものでサラリと変えてしまった。



さて、ムーヴのメインターゲットは中高年である。先代ムーヴで人生経験を積み、過剰さのない丁度いい車にまとめようとしている。軽自動車全体の中で5割がスーパーハイトであるが、残る3~4割は未だにハイトが占めているので決して軽視できない。

元々セダン系と比較して広さを売りにしていたが、現代におけるハイトワゴンが提供する広さは「当たり前の広さ」となった。ローダウンカスタムがあるわけでもなく、特別豪華な内外装でもないので少々つまらないと感じる人もいるかも知れないが、それはキリッとした端正な佇まいとも言える。そこにダイハツが持つ新世代DNGAプラットフォームを適用し、走りがグッとアップデートされている。燃費性能と確保したまま走行性能を底上げした。

広い意味でムーヴの中で女性を中心とした需要にキャンバスを、シニアを中心とした実用重視の需要にムーヴを据えた役割分担になった。ムーヴはあくまでも実用の道具という観点で使い道のない目新しい飛び道具よりも、使い方がイメージしやすい装備に限られている。例えばスライドドアの予約ロックやウェルカムオープン機能などスライドドアを活かした装備やスーパーUVカットガラスや先進安全機能である。

3代目ムーヴではレーダークルーズコントロールを採用するなど時代の最先端を行っていた時代もあるのだが、軽自動車は高速道路のロングツーリングより生活道路を走るケースが多いことをよくわかっていて車線変更時の後続車の存在を知らせるBSMのライン装着は省かれてディーラーオプション扱いになっている。ムーヴはあくまでも過剰にはならず、程々を選ぶ。その狙いは車両価格を安く抑えるためである。ターゲット層は男女ともにムーヴを乗り継ぐようなロイヤルユーザが多いので、軽自動車が安かった時代をよく知っている。だからこその堅実な仕様設定なのだ。



個人的にはRSグレードがおすすめ。自然吸気で選ぶなら割高なGではなく、Xで十分。ただしナビが非常に高価なのでディスプレイオーディオで割安に済ませるのがいいだろう。久々のFMCという事手伝って出だしは好調で、徐々に街で見かけるようになってきた。課題は「軽のナンバーワンを目指すためにベストを尽くし、いいものを世に出そうという姿勢」が退化したようにも思える事だ。
しかし、意外に良い走りを見せるのは程よく肩の力が抜けているからなのかも知れない。
デザイン
2
他車の軽に少し寄せすぎた。ムーヴのDNAをもっと感じさせてほしかった。
走行性能
4
●積極的にムーヴを選ぶ価値がある動的性能
試乗車はスカイブルーメタリックのRSである。パッと見た感じエグイとかエモーショナルに思わせない正統派のエクステリアデザインと明るいボディカラーが清々しい。ドアハンドルはシルバーのみ。昔ならメッキ仕様があったのだろうがそこは用品に任せ、標準装着品は原価を考えて癖のないシルバーに統一されている。



色にこだわる人のために2トーンカラーのみボディ同色カラーに塗られたドアハンドルが着く。また、アナザースタイルPKGを選択すればダークカラーのコーディネートになる際にドアハンドルも濃色になる。特にダーク系のカラーとのマッチングが良い。




ムーヴらしいかと言われると、顔つきがPレットSWに似ていたり、Aピラーからの流れが感じられないとか、縦型リアコンビにもう少し縦の要素が欲しいとかクオーター形状がN産そっくりという点で疑問符が付くものの、嫌で仕方ない、ということにはならないジェネリックなエクステリアだ。



乗り込むと、専用のI/Pが奢られていて視線が集まりそうな上部は他車との共通点は見いだせないが、センターコンソールの配置はバッチリ合わせ込んでいる。

ドラポジを合わせれば極端に何処かが合わないという感じではないが、メーターがシートリフターを下げ気味にした方がしっくりきた。アップライトに座るとステアリングコラムも上げたくなるのだが、チルト軸が手前過ぎてトラックのようにステアリングが上を向いてしまうのは残念。また非防眩のインナーミラーの鏡面位置がドライバーに近すぎる感がある。ウインドシールドガラスの視界に差し障りがあるなと感じるあたり、Aピラーを寝かせてルーフ前端位置が後退したものの、タント系と部品を共用しているネガが出ているのではないか。本来はテレスコやアジャスタブルベルトアンカーなど普通車だと50年前から標準装備されているような部品はいい加減に標準化すべきだと思う。



E/Gを始動するとKFターボがアイドリングを始める。現行タントでKFのNAとターボを経験済だが、アイドルで助手席シートがふなっしーのように振動しているほかは音がこもったりせず充分許容レベルにある。

インパネシフトをDに入れようとしたが、手首の角度的にもう少しパネルを水平に近づけてくれないと厳しい。最近のダイハツはこのシフトレバーに統一しているようだが、コラム式に戻してコンテのようなガングリップタイプの方がありがたい。

発進はスムースで出足の良さに多少演出感があれども、軽ターボに期待する加速ができる。トルクに余裕があるからか、回転を先に挙げてから変速するような挙動は極力見せずに速度を上げていくのは新鮮だ。



ムーブの基本は「親切な車」であり、ステアリング操舵方向の表示や見易いバックガイドモニターなど運転支援装備は標準装備で、パノラミックビューモニターやIPA(インテリジェントパーキングアシスト)などをオプションで選ぶこともできる。日常の道具としての機能はユーザーが特に重視しているのでこうした装備は特に喜ばれるだろう。




市街地から郊外のカントリーロードを目指すのだが、当面は速度域の低いストップアンドゴーの繰り返しだ。信号待ちでは、停止直前にE/Gが切れるのだが過去のモデルで気になった制動力の変化がほとんど分からなくなったことと、EPBのHOLD機能との連携で停止後足を離しても再始動しない点を高く評価したい。(ただしHOLD時の再発進時の飛び出し感は新しい課題である)

走行中、E/Gは静かで3000rpmも回せば流れをリードでき、痛痒感がない。アクセルオフで少々CVTベルトの高い音が聞こえるが微かなので10年後の私には聞こえるかどうか(笑)

郊外に差し掛かり、交通状況が良化してきた。アップダウンはあるが急カーブなどはない気持ちいいカントリーロードだ。ターボゆえに動力性能は充分あるが、それよりも速度管理がし易い点は強調したい。以前乗ったタントでは40km/hと決めてもその速度を維持することが非常に困難なドラビリの悪さがあったが、ムーヴはアクセルの微妙な調整を受け付けてくれてつい期待してしまう。



橋の継ぎ目を乗り越えてもワナワナと上屋が震えたり、ステアリングがブルブルと揺れることがないのでボディがしっかりしているのかなと感じる。そうか、センターピラーがあって開口が小さいと車体がしっかりするんだな、と理解できた。

良い感じで前を走る元気な中型トラックに着いていく形での中速域のコーナリングはコントローラブルで驚いた。新車だからダイハツ経年車で顕著なカクカクEPSではないにせよ、ロールが自然で期待以上の動きを見せてくれた。RSグレード専用のサスチューンはエアロダウンカスタムとかそういう過激な方向性ではなく、安心感のある本流の軽自動車として当たり前の挙動を見せてくれる。

ところでステアリングにはPWRボタンが着いている。押すとCVTの変速特性やスロットル特性が変わって力強い走りができる。絶対的な最高出力が変わるわけではないので、普段から床までアクセルが踏める人には無用の長物なのだが、一般の軽ユーザーの中にはアクセルを深く踏み込むと騒がしいことを気にして踏まない人やアクセルを深く踏む事自体を躊躇する人も居るらしい。そこでPWRボタンを押すとアクセルのツキが良くなり(早開き制御)、ちょっと踏むだけで登り坂でもグイグイ登ってくれる。前述の通りそれは元々の実力の範囲内なのだが。

PWRなんぞいらん!と思う私でも良いなと思ったのは下り坂でPWRを押すとE/G回転が落ちにくくなって回転を維持してくれることだ。それがエンジンブレーキとして使え、CVTでありがちな下り坂で増速して怖い思いをするリスクを回避してくれるのだ。その意味でもう少しエンブレが効くようにしてくれるとベターなのにな、と少し惜しいと思った。というのも、強いエンブレを効かせるためにシフトレバーでSやBレンジを選べば良いのだがこれが全く使いにくい。前述の通り一般的なAT車のシフトレバーが垂直に立った位置に配置されているので、人間工学的にDからSにシフトするだけでもノブを押す必要がある。

「共用化で部品種類削減すれば型費・段替え・部品棚・修理用の補給品保管コストなど諸々が不要になる」「搭載関係も流用できて開発工数も削減できる、なによりも量産効果で単価が安くなる」
「SやBレンジなんて使わないから操作しづらい体制でもいいでしょ」

こういう議論があったのかは知らないが、毎回ホームポジションに戻る鬱陶しいウインカーレバーと同じくらいシフトノブが鬱陶しい。Sレンジを昔のO/Dオフスイッチのような位置に置いてくれれば済むのだが、これも部品点数が増えてしまうのだろう。

(乗り心地項へ続く)
乗り心地
3
(走行性能項からの続き)

●普通に走れば峠バイパス越えも高速道路も心配なし



カントリー路を抜けて国道の峠越えルートへ向かった。太古の昔より交通の難所として知られたこの峠は高度成長期にあっても大正時代のトンネルがそのまま使われていたような場所だったが、1970年代から1990年代にかけてに大規模な峠バイパス工事が実施されて東西の幹線となるも、近隣の高速道路網の発達で少々寂しい風景が並ぶ場所になっている。

ムーヴは長い登り坂を苦にせず息の長い加速を続けていく。右カーブを抜けるがパーシャルスロットルのままクリアしていく。橋の継ぎ目での揺れの収まりが早く上質感のあるハンドリングだ。市街地で突き上げを感じるシーンがあったが、ここでは丁度良い。長いトンネルを抜けると隣県だ。

良いところでUターンし、再びトンネルを目指す。上り線は下りより交通量が多いが、この加速性能なら充分思い通りに合流できる。トンネルを抜けると右カーブを経て下りながら峠を下る。登りで想像以上に素直なハンドリングを思い出しながら車速が上がっていく。右へ左へコーナーをクリアしていくが、Rのきついコーナーで少々オーバースピード気味で進入してしまい前輪がキツそうな場面があった。常用域+αまではしっかり作り込んであり期待値が高まってしまっていたが、絶対的な限界はそう高くない。もちろん無理は禁物だが、感心したのはその領域でも最低限のコントロール性はしっかり残してあり、ずるずるとコースアウトするような事は無い。ちょっとしたミスの領域でも何とか車側でなんとかしようという良心は感じられた。そもそもエコピアで無茶すんな!という話だが。

峠を下りきったのでそのままICから高速道路を走らせる。0-100km/h加速は13秒フラット程度、3秒で40km/h、5秒で60km/h、8秒で80km/hまで加速するが、そこからは加速が鈍る。

とはいえ、NAとの違いがハッキリと感じられる加速性能だ。自分で記録したデータを振り返ってみると、同一ユニットのタントより0.7秒速く、NAの某リッターカーよりも3秒速いが、過去のムーヴコンテカスタムRSとは同等の走りだ。基本的に6000rpmに回転を貼りつけて一気に車速を上げていく走り方が速い。高速道路の合流では迷わずアクセルをベタ踏みする事で安全に合流できて何ら問題を感じない。



近年開通した新しい高速道路を走らせた。80km/h以上ではピラーからの風切り音やドアからの吸い出され音が聞こえ始めるのだが許せないレベルではない。また、E/Gからの音は効果的に対策されている点は好ましい。100kn/hでは状況に応じて2500rpm~3000rpm程度の回転数で走らせる。さすがに登録車よりはローギアードであるが、ターボは動力に余裕があるだけで無く吸排気音の脈動成分がカットされる事で静粛性に寄与する。ターボ的なキーン音は聞こえないので軽にプラスαの豊かさを提供してくれる。

また、CVTの泣き所である高速走行での伝達効率はハイギア時にクルーズ用のギアで直接駆動することで効率低下を防ぐD-CVTがターボのみ設定があるので、高速道路の利用頻度が高い人がターボを選びがちなのでD-CVT採用はリーズナブルだ。



何だかんだ言っても64psの軽自動車なので120km/h制限の高速道路で、平日昼間の追い越し車線を堂々と走るような速さは無いものの、走行車線メインの走りなら十二分に任せられる動力性能がある。

高速道路の前半は山岳部を通るルートで風が強いが横風安定性が良いことにも触れたい。セミキャブと較べればFFのタントの横風安定性は良かったが、同じように背が高すぎないムーヴは軽スーパーハイトワゴンよりも優れる。背が低い方が横風を受けにくく、ロールを抑える事以外に乗り心地方向に性能を割り振れて走りがマトモになりやすい。前方投影面積が小さくなることから走行抵抗が減り高速燃費も有利になるのだから、小学生を立って着替えさせたいとか、26吋の自転車を積みたいとか、どうしてもスーパーハイトじゃないと困る事情が無い限り、ハイトワゴンの方が自動車としてはマトモになる。かといって往年のソニカやオプティのように背の低さを生かした俊敏な走りと引き換えにタイトなキャビンを受け入れる必要がない点がハイトワゴンの良さである。

運転席に1時間以上座っていても腰が痛くなることもなく、過度に疲れることがないが、アスファルトが荒れている区間を走らせた時に「ゴー」というロードノイズが気になった。路面変化に弱く、良路から粗面路に移行すると途端にうるさくなるものだから弱点に気付きやすい。ここまで印象が良かっただけに残念ではあるものの、奮発してプレミアムコンフォートタイヤを履かせてみたいなと思わせるだけの総合的な力はあるのでは無いかと感じた。



最後に後席に座って試乗した。近年の軽自動車はスーパーハイトの仁義なき戦いに巻き込まれる形で無意味なレッグスペース競争が常態化し、座面長を長めにとって後方に低く座らせて見かけの広さをアピールすることが当たり前になって久しい。シートを低く配置することで折りたたみ時のデッキの低さを確保することができるからだ。一方でヒールヒップ段差が小さいとフロアに足の裏をぺたんとつけて座るためには膝を立ててやる必要がある。その際に膝裏がシートから浮いてしまい、尻に体重が集中するために疲れやすくなる。

一方脚を伸ばせばレッグスペースがあるものの、結局フロアに足の裏をおかねばならないから、足とすねのなす角度が広くなって、つま先立ちのようになって疲れる。ムーヴもその傾向から脱していないが、しばらく乗っているうちに体重によってクッションが潰れて沈み、大腿部の支持が増えてくるという面白い結果になった。



ちなみに、乗り心地に関してリアモーストは最悪だ。Rrタイヤ直上なのだから突き上げが酷くなるのは自然の摂理だ。ここは狭いと感じない範囲でシートを前にスライドさせるのが良い。ピッチング中心(およそ前後輪の中央部)に近づいた方が良いに決まっている。また、前席優先なのか走行中の透過音は大きく前席とは明らかに劣るレベル感だった。ドライバーと会話する時に聞こえにくくなることも仕方ないレベルなので、乗り心地の件と合わせてシートスライド活用でなるべく前に座ることをお薦めしたい。ダイハツをフォローしておくと、シートベルトがリアモーストでも肩ベルトが身体から外れない配置は素晴らしい。これができていない車は意外と多い。

動力性能は個人的に必要充分であり、逆に過剰なほどの力強さもない。適切と言えるレベルにあるので3、そこからドラビリの良さを加点して4としたい。

乗り心地や静粛性は軽自動車としては良いレベルで3.5だ。ロードノイズと後席(リアモースト)の乗り心地の悪さ故0.5減じた。
積載性
3
これ以上は贅沢というレベルで十分な広さを確保するも、パッケージングはまだやれる。止まっているだけならコンテの方が心地よい。
燃費
3
ハイトワゴンが産まれた1990年代の軽自動車市場では現代ほど燃費性能にこだわる時代ではなく、それよりも実績のある従来技術で作られていたので、車高が高く空気抵抗が大きいハイトワゴンの燃費が良いはずが無い。



1995年、3速ATで16.4km/L(10・15モード)だったが2010年には27km/L(10・15モード)にまで進化し、2012年には29km/L(JC08モード)、2014年には31km/L(JC08モード)にまで達した。これは2010年代の燃費ブームによる技術開発の成果ではあるが、実際の走行による燃費計測方式になった2020年頃には26.4km/L(JC08モード)は20.7km/L(WLTCモード)に数値上は落ち込んだ。

ただし、それまでのモード燃費は実燃費との乖離が高く、その乖離は低燃費を謳うモデルであるほど大きかった。

2025年発売の新型では22.6km/L(WLTCモード)へと向上した。面白いのは併記されているJC08モード燃費は25.3km/Lと先代より悪化していた。過去の(いまも?)燃費開発がいかにモード燃費だけにフォーカスしたカタログ値を彩るための対策に終始しているかが伺われる。

ところで試乗したターボ車の場合、21.5km/L(WLTCモード)である。試乗中も136kmを走りきり燃費計は20.0km/Lを示していた。特に燃費運転に徹したわけではなくてもカタログ値に近い結果が出ているのは生活に根ざした燃費性能は大したものだ。誤差が1割あったとしても実燃費は18km/L、燃料タンクは30Lなので5L余裕を残して25L×18km/L=450kmもの航続距離を誇る。

BEVの航続距離の悪さを考えたら充分納得感のある性能であると私は思う。
価格
3
ムーヴのグレード展開はエントリーグレードのL、最量販のX、上級のGとターボ付き最上級のRSという4グレード構成だ。

無駄のないグレード展開ではあるが、エアロダウンカスタムもないし、SUVテイスト満載のZ4の様なグレードもない。与えられた役割が極めて明確な4グレードに絞られている。



現代においてはカワイイのが欲しければキャンバスがあるし、SUVテイストを取るならタフトもタントファンクロスもある。幅広いグレード展開の代わりに基本コンポーネントを共用する別車種がスタンバイしている。

ムーヴは価格競争力にも気を配っているという。目の肥えた顧客には高すぎる設定はバレてしまう。歴代ムーヴの価格レンジを表現したのが下記の図である。



時代が進むに従って右肩上がりに価格帯が上昇していくのだが2025年FMCの価格のアップ幅は歴代の傾向より大きく、値上げは否めない。2025年の「標準自然吸気上級(=G)」のプロット位置はカスタム・ターボ最上級に近い価格帯にある。ダイハツもそれを気にしたのか、赤丸のプロットにある最量販(=X)を歴代の自然吸気最上級のトレンドラインに乗せてきた。この偶然の一致には驚いたが、妥当な価格帯(リッターカーと近い価格)に選択肢がなければならないというニーズに従った設定のように感じる。

最廉価は135万円と歴代では最も高い。先進安全装備は先代にも設定があったが、スライドドアやLEDライトが備わるなど装備アップも含みながらそれなりの値上げを行っている。ただ、キャンバス(157.3万円~)やタント(148.5万円~)よりは確実に安い。

最上級RSは、ターボの他に専用チューンのシャシなどの専用装備が多いが歴代最高額の189万円である。Gと比べると15吋ホイールやスポーティサスペンション、両側パワースライドドア、レーダークルコンなどがついてGの18.2万円高であればターボの価格はほぼ無料とも言える

もし、私が購入するなら?というシミュレーションを行った。グレードはRS、ボディカラーはスカイブルーメタリックでアナザースタイルPKG、コンフォータブルパック、ディーラーオプションでブラインドスポットモニター、エントリーナビ+ドラレコ、ETC2.0、コーティングなどを選択。



本体189.8万円、MOP7.7万円、DOP45.2万円支払総額は約247.6万円となった。流石にデミオよりは安かったが、もはやこういう価格帯なのだ。

ヒエラルキー上、タントより下であるがゆえに価格はタントよりは安い。キャビン容積で言えばムーヴの方が狭いが故かも知れないが、私のようにこの車高に対して走行性能の良さを感じてしまう私のような者には有り難い価格設定であると言える。

タントの広さがどうしても必要でない限り、背の低いムーヴの方がお薦めだ。助手席側のセンターピラーが追加されて走りがグッとマトモになる。その中でもRSを勧めたい。予算重視ならX。ヒンジドアアレルギーの人でもムーヴが選べるようになったのは朗報だが、一方でスライドドアアレルギーの好事家はどうしたらいいのか・・・・。

価格は★3。社内のヒエラルキーの中ではそうなるよね、という価格帯。
故障経験
●その他、気付いたこと

①ルーフパネルの凹凸模様
この手のワゴンタイプの大抵設定のあるルーフ部の凹凸模様(ビード)がムーヴにはない。ルーフに荷物を直接積むような場合に形状剛性を与え、簡単に凹ませないための模様なのだが、ムーヴにはない。



ホンダマニアならアクティの波板パネル(≒N VANの波板形状)を思い出すかも知れないが、ああいう波板形状は断面二次モーメントが上がって変形に強くなる。

タントやN BOX、スペーシアなどルーフの面積が広い車にはどうしても必要になるのかも知れない。室内スペースを広くしようとするとルーフそのものに曲率を与えることはできない。だから断面が平べったくなり、面剛性が弱くなる。

実際の車両には骨が入っていて積雪や荷物の重みに耐えられるようになっているが、あの凹凸模様の目的はそれだけではないらしい。

昔、某博物館で聞いてきた話としてこのルーフの模様、実はプレス成形機でプレスする際に大きく、平べったい薄板形状なので持ち運びする時にボニョンと折れ曲がって壊れてしまうのでそうならないように模様をつけて強度を持たせているらしいのだ。いまは極限まで生産時間を短くするために最近はロボットによる自動化も行われているだろうから、凄い速さで搬送するためにはより一層形状をつけてやる必要があるんじゃ無いだろうか。

ムーヴはムーヴらしいデザインのためにAピラーを斜めに倒しているのでルーフが短い。インナーミラーが近すぎたり、AピラーとA'ピラーの間が狭くて見にくい弊害もあるが、ルーフが短くなったことはムーヴにとって有利だ。また、ウインドシールドガラス上部が丸くなっていてここも曲率が小さいのでビードをつけなくても済んだのかも知れない。

②ホイールハウスの石
今回の試乗車は運良くカーシェアで見つけたのだが、借りた瞬間に目に入ったのがこれ。



Rrタイヤのすぐ前のスペース。どうもRrタイヤが跳ね上げた石が溜まってしまうらしい。砂は恐らく雨水と一緒に流れるが質量のある石はそのまま溜まってしまうようだ。私が昔所有していたヴィッツも似た構造をしていて時々溜まった石を捨てていた。走行中の振動で路面に落ちてしまったら、あたかも憎き飛び石の原材料を供給しているようなものだ。

車種によってはこのスペースが無いものもあるがそのあたりの理由はまだ分かっていない。

ところで、ホイールハウスとサイドアウターパネルの合わせ目のエッジがシーラー処理されていないのが気になった。錆やすい部位なので合わせ目の隙間を埋めたくなる。厚ぼったくなることを恐れて塗らないのか上塗り塗装の塗膜で充分だと考えているのか。

手前味噌だが、プログレにはこの隙間をカバーする部品が取付けられており、流石コロナサイズのセルシオ。恐れ入った。


③ドアストッパゴムとくっ付いた水抜き穴塞ぎ
NV性能を上げるアイテムとして外からの音の侵入を防ぐプラグ(栓)があるが、ムーヴにはドアを強く閉めた際のクッションと統合された専用品がついていた。確かにクッションも水抜き穴も用途からすればドアの後端に設定したい部品だ。それを統合して一つの部品にしてしまうメリットは部品点数増加くらいしか思い当たらない。他社と共通化して流用することを考えていると思うのでダイハツの車はクッションと水抜き穴は同じ関係で配置されているのかも知れない。



ところで、この手のプラグは新車装着されているので、後から購入して自分の車に取付けたいと考える人もいると思うが、確かに騒音源である路面に近い穴を塞ぐことでNV性能向上は期待できたとしても、水が抜けないことによる弊害にも注意したい。

何を隠そう、私もRAV4にプラグを取付けてみた。ある雨上がりの日、走行中にチャプチャプと嫌な音が聞こえて来るでは無いか。ドアを開けてプラグを外すと大量の水が抜けた。というのも、ドアの内側はドアガラスの隙間から入る砂やゴミが侵入してあまりキレイではない。そこに大雨の水が流れ込んだことで穴を完全に塞いでしまった。プラグも水が抜けるように作っていたものの元々の穴径よりも小さくなっているので上手く水が流れなくなっていたようだ。新しい車にプラグをつけて効果があるのはベルトラインの水切りゴムが隙間無く塞がれていてドアの内部にゴミが溜まりにくい場合に限られるだろう。NVの為に下を塞いだところで上から音が室内に入ってくるのなら馬鹿馬鹿しい。それなりの覚悟?のある車で無ければ効果を体感するのは難しいのではないだろうか。

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