バルブタイミング研究と失敗

　低回転向け、高回転向けなど、４サイクルエンジンの特性を決定づける要因は様々あるが、中でも代表的な要素はカムのプロフィールだろう。
純正のカムは通常色々なシチュエーションに対応するために割合中低速を重視したカム形状だが、自分の場合は街乗りや燃費性能、乗りやすさは重視しないので不都合だ。

　JBエンジンには２種類のカム形状があり、単純にNAとターボで（X4やDETも問わず）分かれているらしい。
NAは吸気が遅れていて、排気は早く作用角もわずかに広い。
現状JBELが乗っているのでこのハイカム側がついているのだが、もっと高回転を伸ばす方法があればより嬉しい。
もちろんお金を出せばハイカムを削ってもらうこともできるが、その前に一つの可能性を試すことにした。
バルブタイミングの変更だ。

可変バルブタイミング機構つきエンジンでは、高回転領域では吸気カムを遅角する。
吸気が遅角すると、吸気行程中ピストンが下死点を過ぎても吸気バルブが開いたままとなるが、高回転時は吸入混合気が高速に流れているので下死点通過後も慣性力で燃焼室に入ってくることが期待できる。
　カムの作用角を増減するには直打式エンジンの場合はカムを加工するほかないが、中心角の変更はさほど難しい話ではない。
特にJBの場合、吸気カムを遅らせるのはとても簡単だ。
ハイメカツインカムのギヤを歯ひとつズラして組めばよいのだ。

カムギヤの歯数は40枚で、カムはクランク２回転に対して１回転するので、カムギアが一枚ずれると720°/40=18°だけカムの中心角がずれることになる。
計算上は図の通り。
JLカムはELより7°進角しているから、JLカムを18°遅角することでELの11°遅角と同様の結果を得られる。
正直かなり大きなズレだが、やるだけやってみよう。
なお吸気カムでカム角センサを駆動するので、遅角に合わせて点火時期を進めてもとに戻す必要がある。

まずELカムの遅角。
エンジンは始動するが、スローが極端に低い。
1200rpmぐらいまで回せばアイドリングできるが、細かくフラフラする。
3000～4000rpmに明らかなトルクの谷。
高回転になっても盛り上がるトルクはなく、アフターファイアが多い。
どうやら遅角しすぎて混合気を吹き戻してしまい、リッチすぎる状態になるようだ。
アトキンソンサイクルに近いのかもしれない。

JLカムの遅角
スローはまだ低いままだが、ELカムよりはまだマシ。
細かいアイドリングのフラつきは残る。
EL遅角に比べると普通に動く印象で、中間域の極端なトルクの谷はない。
だが、7000、8000と回していってもトルクがはっきりあると感じる領域はなかった。
4スロで吸気管が極端に短いので、この回転数程度では流速が上がらないのかもしれない。

２パターンを試してからEL純正回帰。
当然、アイドリングは安定する。
5000あたりから7000くらいまではっきりとしたトルクがある。
8000までは続かないが、やはり純正状態がもっとも具合がよかった。

結局、純正状態がイチバンだということに落ち着いてしまった。
もしかすると、吸排気もきちんと高回転向けに作り直せばJL遅角の方はうまく機能してくれることもあるかもしれない