Mazda Technical Review No11 1993 p53-55
AZ-1のボデーの紹介も今回が最後です。最も注目のガルウィングドアについての開発レポートになります。意外と知らないダンパーについても記載されています。それではどうぞ。
4.ガルウィングドアの開発
4.1 ガルウィングドア採用の狙い
ガルウィングドアは、
①低重心を実現する精悍なウェッジシェイプ&ローシルエット
②高剛性ボデー及び高い安全性確保の為の大断面サイドシルの採用
という条件下で乗降性を確保する為に採用したものである。
これにより斬新な個性を売り物としたAZ-1の大きなセールスポイントとなった。
4.2 ガルウィングドア基本構成
ガルウィングドア回りの主要構成部品は前後のヒンジ、ラッチ、2本のステーダンパ及びウェザーストリップから構成される(図11)。
ヒンジはドアが上下に開閉する様ルーフ部へ前後一列に配置した。
扇動部にはテフロンブッシュを採用して防錆やドア開閉耐久性能を向上させ、スムースなドア開閉フィーリングを実現した。
ラッチは、ドア下端中央部に配置した。
ステーダンパは乗降時邪魔にならない様前後ピラー上部へ配し、夏場・冬場での操作に影響のない様に配慮してフリクションを設定した。
ウェザーストリップはシール性能と乗降時の干渉プロテクターを両立させる為キャビン側にレイアウトする構造とした。
4.3 ガルウィングドアの開閉寸法
ガルウィングドアの開閉寸法は、図12に示す様にドア開閉時地上から1700mm、開閉時の張り出し量を車両最外側から320mmとしてゴンドラ式パーキングでの駐車を可能とした。
4.4 重点開発項目
(1)シール性能
ガルウィングドア回りのウェザーストリップは
①ウェッジシェイプ&ローシルエットデザイン
②居住空間の確保
③ドア剛性(断面)の確保
から限られたスペース内でシール性能を満足する構造の選定が必要であった。
その為ウェザーストリップの取付部構造は図13の様な構造を採用した。
このタイプは、ウェザーストリップの取付部からの水侵入に対して不利である為ウェザーストリップ内部へシーラントを注入する構造を採用した。更に当部へ多量の雨水が流れ込むことを防ぐ為にドア外周モールにレインレール効果を持たせたリップを設定した。
(2)ダンパー性能
ステーダンパーは一般的に
①夏場ドア閉時に操作力が重くなる。
②冬場ドア開時に操作力が重くなる。
という相反する問題点を持っている。
ステーダンパーレイアウトでは、寒冷下でドアが落下しない様安全面に最重点を置きステーダンパのオフセット角度等に工夫をし相反する条件を両立させた(図14)。
(3)安全性
①側突対応
ガルウィングドア内部にサイドインパクトバーを設定することで高い安全性を確保している(図15)。
②脱出性
ガルウィングドアは転覆時ドアが開かないという配慮すべき問題点がある。
AZ-1は、実車にて転覆試験を行ないフロント・バックウィンドウガラス及びドアガラスが破損することを確認した上で転覆時室内から脱出可能な空間を確保できるようにした。
5.おわりに
以上、AZ-1で採用した3つの目玉技術について紹介した。
これらは、AZ-1のコンセプトを実現するうえで重要な役割を果たしたものと確信する。
今回の開発で得たノウハウは非常に多い。今後、これらの技術にさらに磨きをかけ、次期開発車に展開していきたい。
最後に、当技術の開発・商品化に御協力をいただいた社内外の関係各位に、紙面を借りて厚くお礼申し上げます。
ガルウィングドアの開発には今までになかった苦労があったようですね。ウェザーストリップのシールにもいろいろ工夫があるんですね。ドアの外周モールにレインレール効果を持たせるリップなんてついていたんですね。戻ってきたら確認しなきゃ。
また、転覆時にドアが開かないという問題は、開発時実車を数人で転覆させ検証したんですね。
転覆時、リアウィンドウを割って脱出。あるいはドアが少しでも開けば(ラッチが開けば)ドアを押すとドアフレームが曲がってそこから脱出できるようになっているようです。
以前ダートトライアルの練習をしていた時、砂煙で前が見えなくなり側溝に落ちて横転した事があります。フロントガラスが割れて砂塵が車内に入り何にも見えず、4点式シートベルトでコ・ドライバーと2人でしばらく逆さまになったままぶら下がっていました。(キルスイッチですぐに電気は遮断。火災が起きていないか焦げ臭いにおいがしないか、お互い痛い所はないか2人で声を出して確認)
砂塵が落ち着いて車内が(ヘルメットをかぶっていた為)見えるようになってから、二人とも怪我もないことを確認して、ベルトを外してゴロンと(もちろん割れたガラスで怪我をしない様に確認して)車の天井に降り脱出を試みます。側溝に横転してはまってしまった為、左右ドアが開かず割れたフロントガラスから車外に出ました。
クルマでひっくり返ると意外と気が動転してドアが開かないだけでパニックになってしまうことがあると思いますから、車両が停止したら深呼吸して気を落ち着かせるのもいいかもしれません。2人以上乗員がいたら声を出して確認するのもいいですね。
私が冷静に脱出できたのは更にそれ以前、冬の北海道で凍結路面にスリップしてスピンしながら道路わきの畑に横転しながら落ちた経験があったからです。
(その時はカメラマンの親友が運転していて私は助手席)
その時の動転プリったらなかったですね(^^ゞ
真冬の北海道で吹雪の真夜中。あたりに光なく真っ暗闇。ちょっぴり『死』がちらついてビビりました(汗
横転は突然やって来ます!
皆さんもAZ-1で転覆した時の脱出のイメージトレーニングしておくと、いざと言う時冷静に行動できるかもしれません。
AZ-1では全く大丈夫だと思いますが、窓が開いている時に横転すると窓から手を出して骨折するケースが多いので、(この為、サーキット走行時は運転席側の窓を開けて走ってはいけない)横転時はハンドルから手を離さないようにするのが良いかもしれません。
まぁそんな目に合わないに越したことはありませんがアクシデントには備えておきましょう!
☆☆☆☆☆☆ AZ-1生誕20周年ミーティング ☆☆☆☆☆☆
2012年10月7日、広島県安芸郡府中町マツダ本社内にて開催
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