Mazda Technical Review No11 1993 page3
さて、長かったマツダ技報(AZ-1の紹介編)も今回が最終回です。それではどうぞ。
9.ボデー
ボデーは、高い剛性と安全性の確保を追求してスケルトンモノコックフレームとプラスチック外板で構成している。
スケルトンモノコックフレームは、コンピューター解析によって、軽さと強さを高次元で両立させている。外板を全てプラスチック化することで、従来、フロントヘッダ、リヤヘッダといった見栄えの点からスポット溶接が不可能であった部材も閉断面化することができ、1クラス上の曲げ・捩り剛性を確保した。
AZ-1のボデーの特徴の1つは、大断面サイドシルを持つことであり、従来の約2倍の高さである。この大断面サイドシルは、ボデー剛性向上に寄与すると共に、衝突時の安全性確保にも大きく貢献している。
他車にないユニークなものとして、スケルトンモノコックフレームに約70本のボルトで取り付けられるプラスチック外板があげられる。
外板のプラスチック化は、耐錆性、デザインの自由度増大、軽量化、軽衝突時の復元性などのメリットと共に、カスタマ・モービルの可能性も秘めている。
今回、AZ-1の外板には7種類のプラスチックを採用した。
ボンネット、エンジンフード、リヤエンドカバーには耐熱性の優れたSMC材を採用し、フェンダー類はユリア樹脂、ポリウレタン樹脂等で構成している。
10.ガルウィングドア
AZ-1は、屋根にヒンジを持つユニークな開閉機構のガルウィングドアを採用した。
このドアは、低い車高を実現し、かつ乗降性も確保するために採用されたものである。
低車高、乗降性確保のみならず、ボデー剛性と安全性を高めるための大断面サイドシルが可能となり、スタイリング的にもファッショナブルでありAZ-1の大きな特徴にもなった。
ドア開閉時に必要なスペースは、車両の最外側から320mm(片側)と、通常のドアよりも小さく、輻輳した都市内での使用にも適している。
またドアを開いた場合の高さは、ゴンドラ式駐車場の利用も可能である。
11.安全性
AZ-1の楽しさは、確かな安全性の上に成り立っている。クイックなステアリングは、車の進路を速やかに変えられることで、より高い危険回避力を備えている。このアクティブセーフティのみならず、パッシブセーフティとして以下の安全構造を採用している。
まず、リヤミッドシップレイアウト&2シータとすることにより、キャビンの前後に十分なクラッシャブルゾーンを確保した。
また、BピラーとCピラーを構成するフレームを近接配置としたうえで、高い強度をもたらす三角構造にし、その上部をリヤヘッダと結合することにより、ロールバーとしての機能を持たせた。
側面からの衝撃には、大断面サイドシルと、ドア内部のサイドインパクトバーとの相乗効果により、コクピット内の乗員を保護する構造としている。
その他AZ-1には、ハイマウントストップランプ、コラプシブルステアリング、安全合わせガラス、難燃性内装材、ロールオーバーバルブ付フューエルタンク、4輪アンチロックブレーキシステム(メーカーオプション)などの種々の安全装備を設定した。
12.環境問題への取り組み
オールプラスチック外板というユニークな構造を採用したのに伴い、100g以上の樹脂部品全てに材質表示記号を入れて分別回収を容易にしている。また、外板は全てボルトアップのため、分解が容易というメリットもある。
内装トリムをはじめとするインテリア素材は、リサイクルが可能な熱可塑性樹脂を多用している。
さらに、シートのウレタンパッドの発泡剤からは、オゾンに有害なフロンガスを追放し、ブレーキやエンジンのガスケットからはアスベストの使用を廃止するなど、きめ細かな対応を行っている。
13.生産設備
AZ-1は、ガルウィングドアの組み付け、プラスチック外板の組み付けなど従来の車両構造とは異なっているため、広島市にある(株)クラタの矢野新設工場にて組み立てを行っている。
この専用工場は次の特徴を持っている。
(1)入念な生産方式
少量生産を前提に、タクトも10分と長くし、プラスチック外板を人間の手で1台1台取り付けるなど、手作りに近い入念な生産方式である。
(2)F-BACSの導入
(株)クラタが新開発した全自動スポット溶接が可能な車体組み立てラインF-BACS(FLEXIBLE-BODY ASSEMBLY CAR SYSTEM)によってスポット溶接点数約1500点を100%ロボット化し、ボデー精度を向上している。
14.おわりに
以上、AZ-1の開発コンセプトと商品概要を紹介した。AZ-1がめざした明解な個性と割り切りの思想が、多くのお客様の共感を呼び、車創りの一つの方向性を示すものと理解されることを願ってやまない。
これも、AZ-1商品化にあたり、社内外で関係された方々のご尽力の賜物であり、紙面を借りて深く感謝の意を表したい。
以上マツダ技報No11 p43-45までを抜粋。
ロードスターの主査である平井さんがこのAZ-1の主査をした事により、今日熱狂的なAZ-1マニアを生んだと思われます。
主査になったその日にコストを下げ、オーバーハングの重量を減らす為リトラクタブルライトを中止し、『 明解な個性と割り切りの思想 』を追求した車創りは間違いなく車創りの方向性を標したと思います!(もちろん賛否両論はありますが……)
マツダ技報には他にも、AZ-1のデザイン、ボデー、シャーシーについての記載がありました。
こちらに関しても後日紹介したいと思います!
☆☆☆☆☆☆ AZ-1生誕20周年ミーティング ☆☆☆☆☆☆
2012年10月7日、広島県安芸郡府中町マツダ本社内にて開催
詳しくは下記のリンクへ!
Posted at 2012/06/07 23:26:41 | |
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