
最近症状がぶり返してきて、一昨夜も薬を飲んでも寝付けませんでした。
なので、深夜に起きてプリンを食べ、録画していた歌番組での
水樹奈々さんの歌を聞いたのですが、それでも駄目。
ふと、未見だった、10日21:00放映の
NHKスペシャル『激動 トヨタピラミッド』の録画を視聴しました。
まあ、そのせいで、余計眠れなくなってしまったのですがね…。
エガちゃんにすれば良かったかな。
以前から分かっていた事ではありますが、こうして改めて見ると、やっぱり重いですね。
別名「トヨタ方式」と呼ばれる、製造業において顕著な
護送船団方式。
「寄らば大樹の影」と呼ばれて日本人らしい精神構造の表れだとして批判される機会も多かったのですが、でも大企業の傘の下にあるからこそ仕事が保障され、それに伴い生活も保障され、日本中、いや世界中の人々に安くて高品質の車をコンスタントに提供できる仕組みでもありました。
しかし最近では、
急激すぎる国際化、際限なく厳化する価格競争、リーマン・ショック、円高、増税、デフレスパイラル、海外への人材流出、アメリカでのプリウスバッシング、欧州信用不安(欧州債務危機)、そして東日本大震災……それらに振り回されて、従来のモデルケースが通用しなくなっています。
番組で公開したサプライヤー(下請け業者)向け内部資料によれば、
トヨタ自動車は
フォルクスヴァーゲンには負け、
日産自動車には後塵を拝し、
ヒョンデ・モーターにも追い詰められつつあると、トヨタ自身が認めていました。
せめて対等に戦う為には、品質を向上させ、しかし値段は安くするという、相反する要素を現実にしなければならない。そしてその為には最低でも、人件費の高い国内での生産を諦め、海外へ生産拠点を移転しなければならない。
その結果、産業の空洞化が起こり、活路を見出せなくなった下請け企業や人材は日本を捨て、そんな企業や人材を新興国が買収するので、益々空洞化に拍車が掛かっていく。
趣旨も分野も違うので番組では取り上げられませんでしたが、あまつさえ最近では、技術だけでなく、日本人らしい繊細な「おもてなしの心」までもマニュアル化して売り飛ばしてしまった。これ以上、日本は何を武器に戦えば良いのでしょう。
企業買収が当たり前の欧州メーカーは、とうの昔に現地設計・現地生産・現地法人化が進んでいます。ミニは今やドイツ車だし、
ボルボ・カーズは母国スウェーデンを離れてアメリカメーカーになったり中国メーカーになったりと忙しく、
ジャギュヮー・カーズに至ってはもはやインドのメーカーですからね。
それに比べて日本は遥かに遅れを取っているとの、番組での指摘でした。
契約こそが全てである欧米先進諸国では、当たり前のように買収したりされたりを繰り返しているうちに、際限のないデフレスパイラルに陥り、産業は空洞化し、それを補う為に増税に次ぐ増税、失業率は3~4割にまで膨れ上がり、毎日のようにデモや暴動が起きている。それを反面教師とし、できるだけ国内雇用を守りたいとの思いから、ぎりぎりまで国内生産に拘ってくれていたのかも知れません(好意的な見方かも知れませんが)。
ですがそれももう限界。
サプライヤー向けセミナーに参加した下請け業者の社長さん方は、インタヴューで異口同音に「
(日本に)残るも地獄、(海外に)出るも地獄」と零していたのが印象的でした。
そして晴れて現地工場の買収に成功しても、今度はそこの労働組合から交渉を持ち込まれる。従業員全員に退職金を払い、その上で全員再雇用してお祝い金を払い、且つベースアップしろと。
完全に足元を見られています。
しかしそれに応じればコストにもろに反映され、しかし親会社である一次サプライヤーからは「もっともっとコストカットとリストラを進めないなら、お前のとこの製品は二度と買わないよ」と釘を刺されている。
現在トヨタでは、国内雇用を守るためと称し、300万台国内生産死守を宣言しています。
ですがその実態は、日本を捨てて新興国に活路を見出したサプライヤーによって支えられ、国内雇用は新技術開発試験でのみ、厳選に厳選を重ねられた新卒のエリートのホワイトカラーといった極々一部にのみ、辛うじて需要があるのみ。
その影では、倒産に追い込まれた下請け業者や、仕事を失った職人たちが、それこそ星の数ほどいる。
倒産した三次サプライヤーの社長さんは、解体され廃墟となった工場跡で、「もう下請けは懲り懲りだ。気持ちを切り替えて、明日からハローワークに通う日々だ」と静かに笑っていました。
「世界のトヨタ」の看板を掲げている以上、一旦築き上げたトヨタピラミッドを崩壊させる事は許されません。
そのピラミッドがあるからこそ、トヨタの重役だけでなく、末端の、田舎にある家族経営の小さな小さな町工場で、安い給料でも文句一つ言わずに働く、名もないおじさんおばさんたちの生活が保障されるのですから。
ですが世の中の変化はあまりに急激。それに対応する為に、国内のピラミッドは痩せ細り、反比例して海外のピラミッドは肥え太っていく。
しかしそれとて、将来状況が一変して、その国のピラミッドを解体してより人件費の安い別の国に築く事になったとしたら…。その時が来たら、現地の人々から「日本人は我が国を滅茶苦茶にするだけしておいて、アフターケアもせずに去っていった。私達に残されたのは焼け野原だけだ」と怨まれるのでしょうか。
一年間密着取材されていた、二次サプライヤー・野口製作所の社長さんが言っていました。
「松下幸之助式の『全員経営』は理想だけど、現実はそうはいかない。変化が早すぎるんですよ…」
番組の最後では、紆余曲折あったフィリピンの工場の買収に無事漕ぎ着け、インタヴューにも笑顔を見せていました。
しかしその顔は、どこか強張っており、心なしか目も潤んでいるようでした。正直、安堵や会心から生まれた笑顔には、到底見えませんでした。
僕にはその笑顔が、野口製作所を始めとしたサプライヤーたちや、国内トヨタピラミッド、日本の製造業、いや日本の全ての産業の末路を暗示しているように見えて、やるせなくなりました。
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Posted at
2012/06/17 13:25:36