先日「
SKYACTIV-DRIVEの課題」と題したブログを書いたら、なんと久々に投稿日の内にアクセスが1,200超(*_*)。イイね♪も60以上付いて、知見に富む方々からもコメントを頂くに至りました。
そのコメントのやり取りをするにつけ、ちょっと嫌な予感がしたので慌てて補足(汗)。
SKYACTIV-DRIVEは確かに従来のトランスミッションの常識に照らすとギヤ比が特異ですが、そこ
だけに着目して「設計がおかしい」とか「構造的な制約」といった憶測を生むのは、ボクとしては本意ではありません(^_^;)。
なぜそういった特異なギヤ比設計となっているのか?ボクの知る限りの情報を組み合わせて説明しますが、一部憶測も含まれます。そして最後に、前回のブログを書いた意図についても補足したいと思います。
先ず、マツダのSKYACTIVは「
従来の常識に捉われず、クルマ
全体を一から見直す」取り組みであることを改めて明記しておきます。
この表はマツダがSKYACTIV-DRIVEを開発するにあたりトルコンATをベースに理想のトランスミッションを目指したと説明した際に使ったものです。その実現に向けたアプローチはロックアップ領域の大幅な拡大であり、具体的な手法として「小型トーラス内蔵フルレンジロックアップクラッチ」を新たに開発したのですが、もうひとつの特徴的なアプローチに1速ギヤのローレシオ化があります。ロックアップクラッチの容量を増やす一方でトルコンを小型化し、早期(7km/h程度)にロックアップするためのアイディアですが、マツダの技術者は「VWのDSG(DCT)にヒントを得た」とコメントしていました。
確かに従来のトルコンATは、トルコンの滑りが利用できるために1速のギヤ比はMTに比べてハイレシオでした。トルコンを使いながら1速がMTよりも低いというのは真に従来の常識を覆す手法ですが、実際このお陰で一瞬のクリープの後にはロックアップされ、以後はダイレクトな駆動が可能となっています。
しかし6速という限られたギヤ段数において1速のギヤ比を下げてしまうと、トップギヤを十分なハイレシオにしてしまえば各ギヤのステップ比がワイドになってしまいます。ステップ比を詰めればトップギヤのレシオが低過ぎるという問題になります。
一方、高圧縮ガソリン/低圧縮ディーゼルのSKYACTIVエンジンは低中速のトルクを強化することによってダウンスピーディングを実現する(低回転を使う)ことが高効率化の柱です。
ここからはボクの憶測ですが、この「強力な低中速トルクを活かして出来るだけ低回転を常用させたい」エンジン開発部門と、ロックアップ領域を格段に広げるために1速をローレシオ化したトランスミッション開発部門との間で、マツダはどうブレークスルーするか随分悩んだと思います。
勿論、多段化というのは有効な解決策のひとつです。しかし生産性やコスト、ミッションのサイズや重量等を総合的に勘案すると、小型軽量な6速の優位性は捨てがたかった。この点は
先日のブログでも紹介している記事でのマツダ技術者のコメント(2010年当時)があります。
「
DCTなどでは7速や8速も珍しくなくなっている。ステップATで6速というのはどうなの?
素朴な疑問に対する答えは、6速ではプラネタリーギアが3、クラッチが2、ブレーキが3のところを、7~8速だとそれぞれを増やす必要があり、長く大きくなることから横置きFF用としては重量増も含め、今のところこれ以上の多段化は考えられない、とのこと。」
結局SKYACTIV-DRIVEは6速で市販されましたが、ボクの勝手な想像では、この6速化の背中を押したのは、実はマツダのエンジン屋ではなかったのか?発進ギヤの1速を下げ、それに引っ張られて加速ギヤの2速、3速もある程度クロスして下げざるを得ない。一方で巡航ギヤの6速は上げたい。5速も同様。結果として3速と5速の中間に4速を置くと、その守備範囲の広さが懸念材料になる。
「大丈夫。SKYACTIVエンジンなら、そのギヤ比でも十分に性能が出せる。6速で行こう!」
つまり、SKYACTIV-G/SKYACTIV-Dの性能(強力な中低速トルク)があってこそ、7速化に踏み切らずに済んだのではないか?ということです。
では実際に市販されたSKYACTIVの性能はどうなのか?その特異なギヤ比のSKYACTIV-DRIVEにも関わらず、です。
以下はe燃費サイトの2014年2月10日時点の車種別(ミッション別が分る)ランキングです。
先ずは2000ccクラス。
1位のアクセラHEVはCVTですが、SKYACTIV-DRIVEのBLアクセラのセダン、スポーツ、BMアクセラ、GJアテンザが8位~11位まで並んでいます。「なんだ、大したことないじゃん」と思う人は7位から上位のクルマを良く見て下さい。
次に2001~2499ccクラス。
ここはマツダのSKYACTIV-Dが文字通り席巻しています。
そして2500ccクラス。
どうですか?SKYACTIV-DRIVE搭載モデルの燃費性能は
間違い無くクラストップレベルです。
「でも、やっぱりハイブリッドには敵わない」と貴方が思うのであれば、あえてボクはこう言いましょう。
他社は、
ハイブリッドを投入しなければ燃費でSKYACTIVには敵わないんです。(-_-)v
2000ccクラスでSKYACTIV-Gより燃費が良いのはハイブリッドとクリーンディーゼルだけ。
2001~2499ccクラスでもSKYACTIV-Dに対抗出来るのはハイブリッドのみ。
2500ccクラスでも、SKYACTIV-Gがトヨタのハイブリッドに次いで3位です。
これらの事実から、SKYACTIV-DRIVEのギヤ比は確かに従来の常識に照らせば特異かもしれませんが、1台のクルマとしてまとまったSKYACTIVの性能は文句なしにトップクラスであり、これはSKYACTIVという
全体最適を求めたクルマ造りの成果なんです。
じゃぁなんで前回、あんな誤解を招きかねないブログを書いたのか?(^_^;)>ポリポリ
それはひとえに、SKYACTIVのオーナーとして更にマツダ車の性能やブランドイメージを高めるための
改善ポイントを指摘したかっただけなんですね。
要は「ここがダメ」ではなくて「
ここをなんとかすればもっと良くなるんでない?」という話。
それがコメントを見るとどーも「ダメ出し」したように受け止められたようで、ここは反省点ですね(^_^;)。
勿論、SKYACTIV-DRIVEがなぜ6速止まりだったのかは紹介した記事で知っていましたし、性能的には問題無いことは自身で確認も証明もしていますから、マツダが2010年に発信していた通りにこれ以上の多段化を考えていないのであれば、ボクはそれを支持するつもりでした。ところがモーターファン別冊の「アテンザのすべて」で”無理なく7速化が可能な設計になっている”なんて記者が暴露しちゃったもんだから、こっちも方針転換です(笑)。
6速しかないが故にギヤ比が特異なこと、100rpm差で燃費が逆転する現象、アテンザのマイナーチェンジで最終減速比を弄ったこと、BMアクセラも同じ最終減速比にしたこと、それが何を意図したものなのか、ボクは大方、アタリは付いてるんですね。
そこに課題認識があるならば、今は最終減速比しか弄れなくても7速化は喫緊の課題だろうと。
まぁクルマに文句を言う人は数多く居れど、メーカーとしては聞く価値の無い意見なのか、耳を傾けるべき重要な意見か、それはやはり物申す人次第だと思うんですね。
ボクのブログにこうして書いている意見がマツダにどう受け止められているかは勿論、判りませんけれど、少なくともi-DMがほとんど5.0点しか出さないドライバーがどの程度の腕前かは、マツダが一番良く解ってるでしょうし、技術的な話もそう妙チキリンなことは書いていないつもり(^_^;)。