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2020年04月30日 イイね!

ラリードラテク座談会 どう乗りこなすマーチR!?

ラリードラテク座談会
どう乗りこなすマーチR!?


出席者 1989年

島田親吾
 昭和28年12月7日生まれのO型
'87年W栄光の全日本ラリー選手権Aクラス
チャンピオン。昨シーズンからBクラスに
ステップアップし、サニーVR、マーチRと
乗り換えて全日本選手権ラリー戦う。
アグレッシブな走りには定評がある。

大桃千明
 昭和28年3月25日生まれのA型
こ存じ''Fドリのももさん''スバル1300で
ラリーを初めて以来、今日までひたすら
FF車を乗り継ぐFFマイスター。その日秘技
「左足ブレーキング」を駆使した自然流の
ドライビングは芸術的ともいえよう。

岩下英一
 昭和40年4月28日生まれのA型。
ベテランドライバーの多い全日本戦に、
久々に登場した期待のヤングライオン。
荒けずりにも見える豪快なドライビング
ながら、SSでは常にトップタイムを叩きだす。
モントレー88ではマーチRでデビューウィンを
飾った。

岩槻幸治郎
 昭和35年6月5日生まれのA型。
関東ラリーを中心に活躍している
若手ドライバー。昨シーズンの
関東ラリー戦Aクラスポイントランキング
2位。今シーズンはBクラスにステップアップ
し、B.C地区の地方戦シリーズをマーチRで戦う。


モータースポーツの世界では、強い(=速い)
クルマが好まれる。例えば、ラリーのBクラスでの
マーチR。昨シーズンまではサニー、ミラージュ、
ジェミニと群雄割拠だったが、シーズン終盤で
マーチRが、その圧倒的な強さを見せるやいなや
今シーズンは一気にその台数は増え、全日本選手権
では、過半数を占めるようになった。
 この''マーチRシンドローム''、もちろん全日本選手権
ばかりでなく地方選手権、ローカルイベントにも広がりつつ
あるようだが、さて、そうなると右も左もマーチR。
ライバルはマーチRのドライバーとなるわけで、クルマの
性能が同じだけに今度はドライバーのテクニックが
大きくモノを言ってくるわけだ。そこで肝心の
ドライビングについてだが、オヤッ?見覚えのある
4人が何やらドライビング談義の真っ最中。マーチR
シンドローム張本人の大桃千明、島田親吾、岩下英一の
3選手と地区選手権戦でいち早くマーチRを上位入賞させた
岩槻幸治郎選手のドライビング談義から、そのマル秘
テクニックを盗んじゃエ!

マーチRは挙動の激しいクルマだ!

大桃 「どう走らせるかいう前に、まず、そのクルマの
特性を理解しておく必要があると思うんだ。速く走るため
には、そのクルマの長所を生かして短所をカバーする
ドライビングが要求されるわけだからね。その点で
マーチRってどんなクルマだと思う?僕は、とにかく
挙動の激しいクルマだと思う。もっとも、まだ新しい
クルマだけにサスペンションをはじめとして、
セッティングが煮詰まっていないということもあるんだけど・・・・」

島田 「でも、基本的にやっぱり挙動が激しいほうの部類にはいる
クルマだね。なんてったって、リッターカーの小さなボディに
パワフルなエンジンを積んで絶対スピードが上がっているんだから、
当然と言えば当然。それだけコントロールもシビアになってくるし、
ドライバーのテクニックの差が出やすいクルマじゃないかナ」

岩下 「僕なんか練習で同じコースを何回か走っても、
そのたびごとに走り方が変わっちゃうもんね(笑)。
自分のイメージどうりにいく時もあれば、いかない時もある。
そういう意味じゃあ、コントロールの難しいクルマですね」

外部の影響を受けやすいので注意

島田 「サイズが小さいクルマだけに、外的な影響を
受けやすいからね。例えば、路面が荒れた所なんか
ギャップで飛ばされてリアが思った以上に流れたり、
ドライバーの予想外の動きする時がある。それを
なんとかコントロールしていくわけなんだけれど、
予想外の動きだからなかなか難しいよね」

岩下 「サスペンションの性格でもあるみたいね。
特に、リアの接地があまり良くないようで、
コーナリング中に浮き上がれるような感じでそこから
スパッと流れちゃう。だからリアを滑らせて走ろうと
してもなかなか一定してスムースに走ってくれない」

大桃 「ただ、車重が軽いから慣性重量も少ない点は
良いよね。重いクルマだと、アッと思った時には
コースアウトしちゃうけ、軽いから姿勢は乱れても
なんとかコントロールできて道の上にいられる(笑)。
限界付近のコントロールは効くね」

ステアリングは重いゾ!体を鍛えろ

若槻 「それからこのクルマの特徴のひとつとして
ステアリングが重いというのがありますね。僕なんか
ヒイヒイ言っちゃう(笑)」

島田 「それはあるね。Bクラス車中でパワーステアリングが
付いていないのは、このクルマぐらいだからね。コース状況にも
よるけど、僕の場合は全開で走ると4kmぐらいが限度かナ。
切り込みに関しては、もともと重たいものだと思って切り込めば
いいし、コーナーの手前で姿勢変化をして、切り込み量を少なく
すればいい。それより大変なのは、戻しのほうさ!
 リアを粘らせて走ると切り込み量は多くなるし、滑らせて
走るにしてもカウンターステアなんかを当てた場合は戻しが
必要になる。まあ、4輪ドリフトでステア量を極力少なく
するというのが理想だけど、なかなか思うように動いて
くれないクルマだからコーナーの立ち上がりでタイヤを
直進状態にしようとすると、戻しのスピードを早く
しなければならないから、これが結構キツイわけ。
ゴールのCPで、息ができないぐらいゼイゼイいって
死んじゃうんじゃないかと思った時もあった(笑)」

岩下 「僕は、だいぶ慣れましたよ。10kmぐらいは
イケるかな、フン、フン!」

大桃 「それって、年齢の差なんじゃないの?(笑)
でも、それ以上スピードは上げられないし、
このあたりは速く走らせるための重要なポイントの
ひとつになるかもしれないね。
知り合いのマーチRのドライバーが、
ステアリング径を36Φから38Φに
変えて操作力を小さくしたら、キロ当たり数秒も
縮まったなんていう話も聞いている。
 要は体を慣らすことだろうね。僕が昔スバルで
走っていた時にはもちろんパワステなんか
なかったわけだけど、まったく不満なく回せた。
だから、例えばノンターボのEP71スターレットに
リミテッドスリップデフを付けて乗っている人が
マーチRに乗り変えてもあまり違和感はないと思うよ」

若槻 「でも、やっぱりあの速さはサイコー!すね。
Aクラスのマーチから乗り換えたせいもあるけど、
上りでもヒイヒイ言いながら一生懸命走れるのが楽しい」

スピードアップによる
操作の遅れに要注意!

大桃 「同じマーチでもノーマルアスピレーションの
マーチとはかなり違う?」

若槻 「もともとクイックに動くクルマだから基本的には
同じですけどね。ただ、スピードが高いぶん動きも激しいので、
各操作を今までのタイミングでやっているとどうしても
遅れがちになっちゃいますね。サニーあたりと比べると、
どうなんですか?」

島田 「基本的な特性が違うから、かなり違うね。そう、
言ってみれば電卓とソロバンの違いかナ。サニーは
バランスが良くてコントロールしやすいクルマだから、
誰が乗っても攻められるし攻めればそれなりのタイムは
出る。それに対してマーチRは、サニー以上の速さは
確実にあるんだけどコントロールがシビアだからうまく
走らせないとミスしたりして思うようにタイムは出ない。
そういう点では、今のところセッティングが十分に
煮詰まっていないせいあるけどコントロールの狭いクルマだね。
でも、うまく走らせればソロバンと同じでとてつもないタイムも
出せるヨ(笑)」

岩下 「昨シーズン、僕はローカルイベントでファミリアで
走っていたんですけど、これに比べてもそうですね。もっとも、
4WDとFFの違いはあるんだけど、ファミリアは、わりと
ゴマカシが効くのに対してマーチRはわりと効かない。
雑に走るとダメですね」

 というわけで、ウーン、なんとなくマーチの基本特性と
いうのが見えてきた。要は、今までのSSのタイムから
わかるようにとにかくバカっ速い!ただ速いけど挙動が
クイックでコントロールが難しいというのが、マーチRの
大きな特徴。でも『かん馬、これを名馬なり』という諺も
ある。ジャジャ馬ほど名馬になる素質があるというわけだが、
マーチR場合はまさにコレ。乗りこなすことができれば、
とてつもない名馬になる。さて、その乗りこなし術だが・・・・。

立ち上がりで
ステアリングが直進状態が理想

島田 「ところでサ、みんなはどうやって走らせてる?
同じクルマと言ってもドライバーのタイプによって違って
くると思うけど・・・・」

大桃 「僕はどちらかというとクルマなりに走るタイプなんだけど、
その走らせ方だとあまりタイムが出なかった。ステアリングを
切り込んで走るケースが多いわけだけどコーナーを舵角を
あてたまま立ち上がるとあまりスムース走らないみたいね。
 理想としては立ち上がりでステアリングがまっすぐに
なっていることだと思う。そのためには、コーナーの手前で
ある程度姿勢を作っておくことが必要なんだけど、マーチRの
場合は挙動がクイックだから大きなアクションを与えすぎると
姿勢変化が激しくなりすぎちゃう。だから、例えば中・高速コーナー
なんかはステアリングをスパッと切るとリアが急激に出るから、
ジワッと切り込んで極力リアをオーバースライドさせないように
走ってる。
 リアのスライドは、カウンターが必要なほど多くさせないで
ステアリングを常にインに切っていける状態。そして、
コーナーではできるだけ早くパワーオンするという走りを
目指しているんだけどね、なかなかうまく決まらない(笑)」

若槻 「コーナーの立ち上がりでパワーをかけるていくと、
パワーアンダーになりません?」

大桃 「コースの状況によってはなるね。そういう時は、
左足ブレーキを使っている。パワーオンしたまま左足で
ブレーキを踏む意味は、フロントタイヤロックさせないとか
いろいろあるわけだけど、特に滑りやすい状況だとそれに
よってふに荷重をかけるという意味で有効だと思うよ。
場合によっては、コーナリング中にパワーオンしながらも
常に左足は軽くブレーキペダルを踏んでるとこともある」

岩下 「僕も最近は左足ブレーキを使うようにしてる。
もっとも練習の時はできるけど、まだ本番でとっさの場合に
自然に左足を使えるようにはなっていませんけどね(笑)。
 それは今後の課題として、僕のとしては基本的には思い切り
滑らせて豪快に走りたいと思ってる。トレッドやホイールベースの
サイズが小さいことや、まだセッティングが十分に
煮詰まっていないこともあって特に路面が悪いところでは
なかなかスムースに動いてくれてないのが現状。その点では
自分のイメージどおり走りができていないわけですけど、
極力滑らせて走るように心がけています。
 例えばタイトコーナーなんかはクリッピングポイントを
奥に取り、リヤの滑りの早さを逆に利用して一気に姿勢を
変えるような走りですね。コーナーの立ち上がりでは
パワーオンで自然にアウトへはらむようにして、コース幅を
目一杯使うようにいます。ハイスピードなコーナーも基本的には
同じでカウンターステアも結構使うんですけど、ただ、あまり
スライド量を大きく取りすぎるとタイムダウンになってしまう。
挙動が激しいクルマなんで、このあたりのコントロールが
難しいところなんですけど、今シーズンは無駄なスライドを
無くすように心がけて走って見ようと思っています。
 もう少しトレッドやホイールベースのサイズが大きければ
挙動も安定するだろうし、イメージしている走り方がスムースに
できそうなんですけどね(笑)」

若槻 「なあるほど!僕の場合は、みなさんほどマーチRを
乗り込んでいないしスノーイベントの2戦しか走っていないので
まだわからない部分が多いんですけど。、基本的には
Aクラスのマーチと同じかナと思っているんです。つまり、
いかにロスなく前に進ませるかということで、確かにパワーは
格段にあるわけだけどそれを有効に使わなきゃ意味ないですからね。
だから、S字コーナーなんかは極力無駄なスライドは
させないようにして直線的に走ろうとしています。上りも
そうかナ?ただ、下りに関しては「進入いのち~!」という
感じですね(笑)。下りだとカウンターステアを当てても
それほどロスにならないと思うし、とにかく進入速度を
高く取って何とかコントロールしながらコーナリング
スピードを上げるようにしています。いいんですかネ、
これで?(笑)」

島田 「いいんじゃない、上位に入賞できたんだから・・・・(笑)。
まあ、みんな少しづつ走り方は違うようだけど、基本的には
いかにスムースに速くコーナーを立ち上がるかという点では
同じだと思う。それにはコーナーの立ち上がりでステアリングを
極力まっすぐな状態にしておきたいわけだけれど、そうするまでの
プロセスにそれぞれ少しづつ違いますがあるんじゃないかナ。
 なにしろ、マーチRは軽量なボディに低速度域からトルクフルな
エンジンで、その立ち上がり加速が強力な武器だからね。
ターマックでの話だけど、0~100mだか0~400mだかが
ギャランより速いって言うじゃない。まあ、バイク的な
感覚でBクラスではもちろん圧倒的なわけだし、その加速力を
生かさないテはない。
 ただ、問題はいかに高いコーナリングスピードを維持したまま、
しかもロスなくスムースに立ち上がれる態勢につなげられるかという
プロセスで、これが英一クンの言うようにスピードに対しての
クルマサイズ的な問題などもあって挙動がシビアだから
難しいわけだよね。
 ステアリングさえ直進状態になっていれば、立ち上がりなんて
楽勝!まあ、スノーロードなど極端のホイールスピンしやすい
状況じゃあアクセルコントロールや左足ブレーキも必要かも
しれないけど、アクセルさえ踏んでいればスーパーチャージャーと
ターボがグングン引っ張ってくれるから簡単だ。要はどうやって
そこまでもっていくかで、僕の場合あんまりパターンていうのが
ない。その場その場で、コーナーや路面の状況によってどういうのが
速そうかナって行きあたりバッタリで考えて
走っちゃう。アバウトでしょ(笑)。
 だから滑らせて行く時もグリップさせていく時もあるわけだけど、
基本的にはステアリングの切り込み量を少なくしたいから、リアを
滑らせているかナ。ただカウンターステアは極力使わない程度の
滑りに抑えている。ステアリングは直進状態か常にインに少し
切った状態で、リアがコーナーのRに合わせて滑っているのが
理想でこういう状況がスライドによるロスも少ないし、早めに
アクセルを開けられるような気がする。
 いずれにしても僕としては、下りでもハイスピードなコーナーでも
カウンターステアが必要な時はオーバースピードかスライドアングルを
付けすぎているのか、どちらにしても失敗だと思ってる」

早めのシフトアップで
ホイールスピンをコントロール

若槻 「同じマーチRでも、
やっぱりみなさん個性があると言うのか
少しづつ走らせ方が違うみたいですね。
でも、例えばマーチRならこその走り方てのもあるんでしょ?
コーナーの立ち上がりで、ほかのクルマよりホイールスピンの
量が多いような気がするんですけど、以前、島田さんは
シフトアップを早めにするって言ってた」

島田 「サスペンションのセッティングがもっと決まれば
トランクションも良くなってホイールスピンの量は減ると
思うけどね。ただ、現状を考えると、立ち上がりでの
ホイールスピンはタイムロスになるからシフトアップで
それを抑えている。
 アクセルコントロールで抑えても良いんだけど、
立ち上がりでアクセルを緩めるのってなんとなくイヤじゃない(笑)。
マーチRの場合、ミッションのギヤ比がクロスしているから
エンジン回転数の落ち込みが少ないしスーパーチャージャーで
低回転域のトルクが使えるから、僕はほかのクルマより
早めのシフトアップでホイールスピンをコントロールしている。
でもコースや路面の状況にもよると思うけどね」

大桃 「ウン、上りがきつくてどうしてもエンジン回転数が
落ちちゃうようだったり、スノーロードなどの極端に
μの低い路面でシフトアップしてもホイールスピンが続く
ような場合はやっぱりアクセルでコントロールするのが
有効だろうね」

岩槻 「ノックバックって言うんですか?ブレーキングした時に
一発目にスコッとなってヒヤッとすることがありますね」

岩下 「あれは走行中にシリンダーのピストンを
押し広げちゃってるのが原因らしいですけど、
僕はブレーキングの前に軽く左足でブレーキを蹴っ飛ばす。
こうするとピストンが正常な位置に戻るのかノックバックも
起こらないで、スムースで的確なブレーキングができますよ」

大桃 「そういうのも、ほかのクルマには無いマーチRならこそでは
の特徴だよね。それって慣れちゃえばたいした問題には
ならないじゃない。それよりもやっぱりどう走ればマーチRの
ポテンシャルを100%引き出すことができるかというのが、
大きな課題だと思う。
 もちろん、セッティング面でもまだ十分に煮詰まっていない部分は
あるんだけど、僕なんかまだ80%ぐらいしか走れていないもんね。
みんなはどう?」

岩下 「僕も80%ぐらいかなナ」

島田 「僕は70%」

若槻 「とすると、僕なんか50%~60%というところですね(笑)」

大桃 「いずれにしても、まだまだ自分の思いどおりには
操れていないというのが現状だよね。それでも、マーチRは
ライバルたちを圧倒できるポテンシャル持っているし、
僕はこれからセッティングを煮詰めていくという面でも
乗りこなすという点でもすごく楽しみなクルマだと思っている」

岩下 「マーチRをねじふせて、自分のイメージどおりに
走れたらきっと楽しいでしょうね」

島田 「まあ、基本的に乗りこなすのはなかなか
難しいけど、反面、このクルマを自分の思いどおりにコントロール
できるようになればどんなクルマに乗っても速く走れるテクニックが
身に付けられる気がするナ。
 そういう意味で自分のレベルアップという面からしても
乗りこなしがいのあるクルマと言えるだろうね」

引き出せポテンシャル

 とっ、いうわけで4人のドライビング談義はまだまだ
続くが、それにしてもライバル車を圧倒するスピードを
見せつけながらまだまだそのポテンシャルを100%は
引き出せていないとのこと。やはりマーチRの
ポテンシャルは並々ならぬもののようだ。
 そうなると群れから抜け出すためには誰がいち早く
乗りこなし、その実力を100%引き出せるかと
いうことになるわけだがマーチRはなかなかの
ジャジャ馬。それをジャジャ馬のまま終わらすか
乗りこなして名馬にするかそれはドライバーのキミ次第だ!


↓★次章、マーチRを乗りこなせ!鈴木流FFドライビングテクニック★↓
Posted at 2020/04/30 21:05:38 | コメント(3) | トラックバック(0) | 日産マーチスーパーターボ | クルマ
2020年04月28日 イイね!

マーチRサスペンションセッティング講座

◆マーチRサスペンションセッティング講座◆
トップチューナー、高崎正博責任指導!


 いよいよ、89年ラリーシーズンが始まった。
すでに、実戦に参加した人、シリーズ戦がまだ
始まっていないため、手ぐすね引いてシーズンインを
待っている人など様々だと思う。どちらにしても、
考えることは同じで、今年こそライバルに勝ちたい、
それだけではないだろうか。とくにBクラス選手に
とっては、というより、Bクラス最速とさえいわれている
マーチRを手に入れた選手にとっては、早くライバルを
破りたくて、ウズウズしているのではないだろうか。
 しかし、ちょっと待ってくれ。マーチRのセッティングは
完璧だろうか。いかんせん、クセの強いクルマだ。
全日本レベルのドライバーでさえも、まだマシーンに
乗せられている、というドライバーが多い。自分なりに
ドライビング出来なければ、いかにハイポテンシャルな
マーチRといえども、宝の持ち腐れになりかねない。
そこで、マーチRといえばNRS(日産ラリーサービス)。
全日本戦に島田親吾、大桃千明、有輪芳明の合計3クルー
ものマーチRをエントリーさせているのだ。その
NRSの代表、高崎正博氏にマーチRのセッティングに
ついて聞いてみよう。

マーチRは圧倒的なパワーと
軽量ボディが最大の魅力だ!

 まず、細やかなセッティングに入る前にそもそも
マーチRとは、どんなクルマなんだろうか。スタンダード
の特性、強さの秘密について聞いてみた。
「マーチRは基本的にマーチNA(自然吸気)シャーシー設計は
そのままに、スーパーチャージャーとターボチャージャーで
パワーを上げたクルマです。だからパワーと軽量ボディで
走るクルマなんです。だからパワー特性はあまり変えたくない。
いい換えると、ラリーチューンにおいて補強のために、車両
重量を増やしたくない」
 おっしゃるとおりで740kgの軽量ボディと
最高出力110PS/6400rpm,、最大トルク13.3kg-m/4800rpmという
パワーユニットは圧倒的なアドバンテージがあるライバルとされる
ジェミニと比べてもパワーウエイトレシオで0.31kg/ps(6.73対7.04)、
トルクウエイトレシオではじつに10.8kg/kg-m(55.6対66.4)
もの差がある。それもマキシム性能の発生回転数は低いのだ。
まさに、ラリー向きの性能を持って生まれたエンジンといえるだろう。
 それに加えて、クロスミッションが標準装着されているのも
見逃せない。ブルーバードSSS-Rなどのそれと比較しても1速から
クロスしているため、よりラリーに適したギヤ比といえるだろう。
ただ半面、シャシーに基本設計がNAマーチと同じということで、
ホイールベース、トレッドなどが、パワーに見合っているかと
いうと多少疑問が残ってしまう。従って、パワー&トルクと軽量
ボディで走るクルマといえるわけだ。そういえば、以前に
高崎氏自身も、
「バランスがいいサニーVRかジャジャ馬的な魅力のマーチRか」
 と日産のラリー専用Bクラスマシンを位置づけいたことがあった。
従って、ライバルであるBクラスの主力マシンと比べると、
ジャジャ馬。クルマの動きが速く、機敏というメリットがある反面、
安定性にデメリットも出る。ただ、ドライバーの話を総合すると
テールが流れ出してからは、意外に抑えるの簡単だという。
相対的にトランクションが強く、前に出る力が強いため、流れが
止められるのではないかというのだ。また外的な要因、荒れた
路面などで、ギャップなどの影響を受けやすいという弱点もある。
 このあたりの弱点をセッティングでどう消して、長所を
伸ばして行くかがポイントだ。

スタンダードレベルでも
高い戦闘力を持つ

 ただ、マーチRの場合、ご存知のようにスタンダード
レベルでも、サスペンション系などかなりラリーを意識した
パーツが組み込まれている。サスペンションに関しては、
スプリングがフロント2.8kg/mm、リアは非線径で
1.0~1.8kg/mm。リアスダビライザーはΦ22mmに交換されている。
ダンパーに関しても、減衰値を通常の市販車より高めているのだ。
「スタンダードの場合、ラリーユースといっても一般に販売してる
クルマのセッティングということですから、乗り心地をどうしても
スポイル出来ないということがあります。その上で悪路をハードに
走行するユースが考えに入っている。従って、トランクションや
コーナリング性能を重視するというより、悪路走破性を重視している
と考えていいでしょう。ですがブレーキのサイズアップや
エキゾーストパイプの強化などパワーアップしたことによる改良、
NAマーチ出たトラブル個所の改良などが施されている。それだけ、
メーカーが本気で作ったクルマだといえるのではないでしょうか」
 と高崎氏はいう。従って、初心者レベルでどうしても
セッティングする資金がない場合には、スタンダードレベルでも
十分な戦闘力があるといえるだろう。だが、高崎正博の言葉に
あるようにスタンダードレベルでは、一般用のチューニングも
考えの中に入っている。ドライバーのレベルが上がってくれば、
全然物足りなさが出てくるだろう。そうなると、セッティング、
チューニングが必要だ。だだ、マーチRの場合、基本的に現段階
ではNISMOが設定しているスポーツオプションがあるだけ。
従って、トップドライバーでなければ、セッティングの幅は狭い。
「スタンダード場合、前にもいったとおりでいくらラリー専用と
いっても一般ユースを捨てられない。いわば大きなワク組みなんですよ。
その中にNISMOのスポーツオプションという、本当の意味ラリーユースに
絞った小さなワクがあるわけです。さらに、われわれチューニングショップ
のように、気になるところを修正した、より小さなワクがある。
こう考えるとわかりやすいと思いますが当社でもダンパーを開発して
5~6月頃販売できると思います。」

NISMOパーツを使用するのが
セッティングの基本

 セッティングを詰める上で、よりスペシャルに
進歩していくわけで、最初はより広範なドライバーに
合わせた、乗り易さを追及したNISMOパーツの方が、
マシーンに慣れる意味でも適しているといえるだろう。
ただNISMOオプションの性能が低いかというとそうでもない。
「うちの島田も、大桃も昨年はNISMOオプションを使った
セッティングをしていました。それであれだけの成績を
残したのですから、十分性能は高いといえるでしょう。
ただ、少し気になるところがある。よりよくなるはずだと
いうことで、スペシャルパーツを開発するのです」
 ということなのだ。それでは、NISMOスポーツオプションとは、
どんな性格付けをされているのだろうか。ちなみに、スプリング
は、フロントが2.2~2.5kg/mm、リヤが1.4~2.2kg/mm。
当然ダンパーのセッティングも、よりハードになっているのだ。
各ピストン速度域での減衰値が、よりラリーユースを考えた
セッティングになっているともいえるだろう。
「NISMOは、スタンダードのフロントスプリングが線径の
スプリングを使用しているのに対して非線径の
スプリングを使用している。リヤは同じ非線径でも
スプリングレートが0.4kg/mm大きいですね。スタンダードの
セッティングは悪路走破性を重視している。それを残しながら
なおかつタイムを稼ぎたい人。そういったラリースト向きと
いえるでしょう。」
 ということで、スタンダードで物足りなくなったドライバーの
ため、スタンダードの特性を残しつつ、さらに剛性を出している
セッティングだ。
「これは、ショックアブソーバーとの兼ね合いで、
一概に言えないんですが、フロントスプリングが、2.8kg/mmの
線径から2.2~2.5kg/mの非線径変更されている。NISMOオプション
の方はトランクションに繋がるフロントの接地性を上げたいがために、
非線径にしているんです。それにリヤを会わせていると考えていいと
思います。ステアリングレスポンスやフロントの入りやすさ向上
するなら、むしろスタンダードの方が適した数値なんです。
ですけれども、初期荷重時点の路面に対するタイヤの追従性を
考えると、NISMOオプションの方がいいんです。つまり
クルマというのはロールし終わってから動きだすものです。
従って、NISMOオプションの場合、ステアリングを
切り出してからの反応はほんの少し遅れるはずです。
その分タイヤの追従性がよくトランクションが強い。
リヤはその反応が遅れる分流れ出しやすいようにして、
接地性を稼いでトータルでレスポンスを上げようという
セッティングになってるわけですよ」
 ということで、よりタイムを追及したセッティングと
いえるかもしれない。スタンダードの場合、どうしても
コーナーの立ち上がりなどで、タイヤの空転が起こると
聞いたことがある。そのあたりを改良したのだ。ただ、
これでもまだ物足りないというドライバーもいるはずだ。
そこで、各ショップのスペシャルというわけだが、これは、
それぞれにテストしなければ、本当のところはわからないだろう。
そこで、発売前のNRSスペシャルダンパーについて聞いてみた。

NRSオリジナルダンパーは、
耐久力を大幅にアップさせている

「厚木自動車と共同開発で、スプリングは、NISMOオプションに
合わせてセッティングしてあります。まず第一に、熱変化に
対する減衰力の変化量を、少なくしたいう要望があります。
例えば、2kmのSSは同じ減衰値でも5kmになると減衰値が
落ちてくるということがないようにしたい。このため外径を
ф50mmにして容量をアップしてあります。またロッド径も
Φ20mmに上げ、曲げ応力を上げている。熱変化に対しては
厚木自動車が開発したダンパーオイルも採用しました。
これは、従来のオイルより、熱変化に対する粘度変化が
極端に少ない。減衰力特性は、より接地性があがるように、
ピストン速度の初期を上げて、高速域は逆に低い数値に
なっています。このほか、廉価版として外径をΦ45mmに
した量産品の販売もします」
 NRSのほかにもカルソニックラリーチームのIRS
(岩下ラリーサービス)でも、スペシャルダンパーの販売を
予定している。さらに、フロントのスタビライザーは、
マーチスーパーターボが発表されてから、流用出来ることに
なった。もちろん、取り付け用の穴は、マーチRにもあいている。
今シーズン中盤にはセッティングの幅も広がるだろう。ただ、
フロントスタビライザーについては、
「フロントスタビライザーを装着することによって最低地上高が
125mm(スーパーターボ)になってしまうんです。だからマーチRには
付いてこなかった。その分も、スプリングのセッティングに含めて
考えているんです。それにスタビをフロントに装着することによって、
細かい凹凸路での接地性が悪くなる場合がある。今後、煮詰まって
来れば考えますが現状では考えに入れていない」
 と高崎氏はいう。

フロント回りの補強は、
サスセッティングの大前提

 さて、以上で基本的なセッティングの傾向はわかったと思う。
そこで、話を一歩進めよう。ステア特性の話に入って行きたい。
軽量ボディのマーチの場合、ブッシュのセッティングでかなり
ステア特性を変化させることが出来るのだ。ただ、当然これは
2次的な要素で、基本的なセッティングが出来ていないとわけが
わからなくなる。
「基本的なセッティングが出来てなければ、ブッシュによる
セッティングをしても無意味です。多分こうなるだろうと
予測して交換しても、後でおかしいな~と、また交換しなおす
結果になります。モータースポーツいうのはただでさえお金が
かかるんです。遠回りして余計なお金を使う必要はないでしょう。
だから、最初に多少お金がかかっても基本線だけはしっかりと
セッティングしておいた方がいい」
 仲間にもしょっちゅう同じようなパーツを交換してる人って
いるのではないかな。そういう人に限って、いつも金欠病に
かかっているのだ。そうではなくてお金がかかるのは
しょうがないとして、適材適所に効果的にかけることが
大切なのだ。では基本線について先に説明していただこう。
「まず、補強です。長持ちさせる意味でも、フードブリッジ
(バルクヘッド)フロントピラーの接合点。ストラットハウスと
ロワーアームの取り付け部は補強しておいたほうがいい。
補強はここの部分だけで十分です。それにFIA公認タイプの
プレスバーが入ったロールバーも装着したほうがいいですね。
これだけでかなりボディ剛性が上がります。ボディがしっかり
していないとサスペンション適性に動いてくれませんからね。
さらに、エンジンマウント、ストラットアッパー、スプリング
シートのブッシュ類は、強化品に交換したほうがいい。とくに
エンジンマウントは交換しないとサスセッティングがわかり
にくくなってしまう。サスペンション本来の動きフルに発揮
させるためにも必要ですね。ここまでやって、あとは出来れば
NISMOオプションのスプリング、ダンパーに換えておいた
ほうがベターです。」
 あとでNISMOオプション品を装着する場合には、装着したあとに
再度セッティングが変わってしまうことがあるので、最初から
取り付けて慣れてしまったほうがいいというわけだ。高崎氏も、
「初心者にはこのセッティング、上級者にはこのセッティングと
いう考えはせずに、最初にある線までセッティングして、それに
慣れるほうがお金もかからないし、効率がいいですよ」
 という。ここまでセッティングすればかなりマシンの
完成度は上がる。まあ、昨年までNRSワークスのセッティングと
同じだから、上級ラリーでも十分戦えるだろう。

ブッシュ交換の前に自分で徹底的なに
ステア特性をつかめ!

 そして問題のブッシュによるステアリング特性の
セッティングだ。余談になるが、マーチRの場合、
イニシャル時のホイールアライメントは、フロントだけ
調整出来て、トーインを1~2mm付けておいたほうが
いいそうだ。フロントがよりシャープ動くという。また、
ブッシュによるセッティングはスタンダードでも
行われている。リヤアッパーリンクのほうがロワーリンクより
ゴム高度が高い。なぜかというと、アッパーリンクはリヤタイヤの
横方向の動きを受け持ち、ロワーリンクは前後方向の動きを
受け持っている。アッパーリンクのブッシュを硬くすることに
よって、相対的にアッパーリンクの動きが規制され、ロワー
リンクの動きが大きくなる。いい変えると、ロワーリンクブッシュは
縮みやすく、そのためにアッパーリンクの動きにロワーリンクが
引きずられる。従って、フロントタイヤの切れ方向と同位相に
動くわけだ。結果的にリヤが粘るようなセッティングになっている。
それでは、高崎氏に説明してもらおう。
「ブッシュを利用する場合、最初から予測しないで自分で徹底的に
特性をつかんでから手を付けることが大切です。それを前提として、
気に入れなければタイヤの空気圧を調整することによって、
どこがどう気に入らないのか的確につかむことです。」
 まず最初にタイヤの空気圧を上げたり、下げたりして
特性をつかむこと。タイヤの空気圧を調整するのは一番お金や
手間がかからずに、それでいて効果的なセッティング方法だ。
ちなみにNRSワークスカーは、タイヤが前後とも175/70R13。
空気圧はフロント2.0、リヤ1.7~1.9kg/cm2にセットしてある
そうだ。
「それでどこがまず気に入らないか。0.2kg/cm2づつ調整して、
データを取っておく。厳密にいえば外気温によってタイヤの
温度変化が違いますが、そこまで厳密に考える必要はないでしょう。
設定を冷間時に統一しておけばいいことですからね。例えば、
フロントの内圧を0.2kg/mm2上げたときに感じがよくなった
というのでしたら、その人は、フロントの入り具合が
気に入らなかったんです。またリアタイヤの内圧を0.2kg/mm
下げることで感じがよくなったら、リア流れ出しがその人の
フィーリングに対して遅かったということ。その辺の特性を
徹底的にテストすること。それで、しばらく乗ってみて
自分のフィーリングが間違いないことを確認してから、
ブッシュをいじったほうがいいいでしょうね。」
 という方法を取れば、無駄なお金かけずに、自分に
合ったセッティングが出来るはずだ。ブッシュによって、
どうステア特性が変わるかは別表の通りだ。NISMO
オプションで、それぞれに強化品設定されているのだが、
フロントのトランスバースリンクにはK=1200kg、1500kgの
2種。リアのアッパーリンクのはK=600kg、750kgの2種が
用意されている。トランスバースリンクは、どちらのタイプを
使っても基本特性は同じで、強いタイプのほうが傾向が
強く出る。アッパーリンクは、弱い方は特性はスタンダードと
極端に変化せず、強いタイプを入れるとリアタイヤが4WSの
同位相と同様にコンプライアンスするためリアの粘りが増す。
つまりアンダーステアになるわけだ。ただ、リアの粘りと
いうのは粘れば粘るほど、ブレイクしたときの速度が速い。
それを考慮すること。間違ってもオーバーステアと勘違い
しないように。また、リアに関してはアッパーもロワーも
互換性があるし、ボディ側、アクスル側のどちらかを交換
する中間のセッティングも考えられる。かなりセッティングの
幅は広いのだ。
 以上のように、簡単だが、マーチのセッティングについて
高崎氏に聞いてみた。ただ、ここで説明したことはあくまでも
参考だ、ということを忘れずに。机上論理ばかり先行しては、
絶対に速くなれない。セッティングも同じ。ここで説明したような
傾向がある。それを頭に入れて、自分のフィールを大切にして
テストうぃ繰り返せば、好みのセッティングに仕上がるはずだ。
もし、ならなかったら?そのときには、信頼出来るショップか
高崎氏のところに行けばいいだろう。

 


↓★次章、ラリードラテク座談会 どう乗りこなすマーチR!?★↓

Posted at 2020/04/28 20:17:20 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日産マーチスーパーターボ | クルマ
2020年04月27日 イイね!

マーチR/スーパーターボのポテンシャルをジムカーナで徹底分析!

マーチR/スーパーターボのポテンシャルを
ジムカーナで徹底分析!

【小さな心臓のタフネスガイ、
比類なきハイレスポンス、
勝利のために生まれたスーパーマシン!】


 もうすでにラリーやダートトライアルでは実績を
残しているだけに、マーチRの強烈さは充分印象に
残っているだろうが、実際どこがどうして、
どれだけ速いのかとなると意外に気がつかなかった
ことがあったりする。何故、ターボ+スーパーチャージャー
があれだけのパワーを引き出すのか?そんな具合に
マーチRのポテンシャルをもう一度おさらいしてみよう。
そして戦闘力が全く未知数のジムカーナにあえて挑む
マーチRをその可能性を問いながらのインプレッションを、
その可能性を問いながらのインプレッションを比較して
行うことにした。テスターは木下隆之選手にお願いしよう。

【ターボとスーパーチャージャーにの足し算は、
1+1=2ではない!】

 現在のモータースポーツにおいてターボチャージャーの
存在は、もう無視できないものとなってしまった。
エンジン本体にそれを装着することによって、出力は
それこそ数倍に引き上げることも可能なこの羽根は'魔法の'
という形容詞がつけられるほど画期的なものなのだ。
とにかくパワーの大小がものを言うモータースポーツの
分野では、その恩恵は非常にありがたい。今さらここで
語る必要もないほどターボの威力は読者ほぼ全員が
味わっているはずだ。
 しかし高回転で効果的に高出力の得やすい
ターボチャージャーにも、デメリットがある。
排気圧力を利用することによって、強制的に
混合気を送り込むターボには、その構造から
低回転でのトルクが絞り出しにくい、という
欠点を合わせもっているのだ。
 常に高回転のキープしやすいレースではターボの
メリットは生かされ、ピークパワーを最大限に発揮
できるというものの、しかしダートトライアル、
ジムカーナ、ラリー等、時として低回転走行を強いられる
競技においてそのデメリットが更に露見することもあるのだ。
 その一方、ターボチャージャーと対比されるのが
スーパーチャージャーだ。ターボが排気の圧力を利用して
いるのに対してスーパーチャージャーはエンジンの回転を
利用し、メカニカル的にタービンを回すシステムである。
それゆえ、エンジンが活動してさえいれば、それこそ
アイドリングから有効パワーが発揮できるというワケだ。
 つまりターボチャージャーとは正反対の特性を示すのである。
低回転からのトルクは圧倒的にターボを凌ぐ。当然アクセルに
対するレスポンスも優れている。
唯一欠点とされているのは、メカニカルロス。特に高回転域では
そのロスは大きく、エンジンの高回転には不向き、とされている
のである。
 となれば、だ。このターボとスーパーチャージャーは凸凹。
これを組み合わせることによってお互いの欠点をおぎない、
戦闘力の高いマシンが完成できるのではないだろうか。
こう想像できるワケである。
 これを実現したのがスーパーチャージャーとターボを
ドッキングさせたマーチR。
 今回の特集として俎上にあげたマシンである。

レースから一般フィールドへ、その心臓はハンパじゃない!

モータースポーツを強く意識したコンペティションモデル

スーパーチャージャーとターボで武装されたマーチの登場は、
87年と88年に市販化に先だって行われた、
『リトルダイナマイトカップ』であった。筑波と富士で行われた
このレースはニスモが製作したリトルダイナマイト仕様で行われる
というもの。
 車名こそ違え、ここで使われたマーチは、まぎれもなく
スーパーターボの先行開発車。のちに登場したマーチRの実戦
テスト車であったのだ。最速タイムは1分11秒台(筑波サーキット)
であったと記憶している。たかだか1リッターに満たないマシンの
タイムとして立派なものである。
 それから時をずらして登場したのが、マーチのラリー実戦向き
仕様車''R''である。RはブルーバードSSS-R同様に
モータースポーツを強く意識したコンペティションモデルである。
軽量化を随所に施し、競技に参加するユーザーのために造られた
モデルなのだ。その徹底ぶりはすさまじい。
 特に注目されるのは、排気量を987ccから930ccへと下げている
ことである。従来からマーチに搭載されているMA10Sユニットは
水冷OHC直4。ボアが68mm、ストローク68mmのスクエアエンジンで
あった。Rに搭載されているものはMA09ERT。ボアを66mmにして
総排気量を57cc落としているのである。
 このサイズダウンは一般コースでは僅かなものかもしれない。
しかしことモータースポーツおいては、極めて重要な意味を
持つのである。
 ご存知ターボ換算係数は1.7。従来の987ccの過給器付きは、
換算によって1677.9ccになる。一方、Rの930ccは1.7をかけても
1581cc。つまり1600cc以下におさまるわけだ。
 通常1600ccを境に、クラス分けされることが多いため、
この1600を越えるか収まるかの違いは大きいのである。具体的には、
ラリーの場合、1600を超えてしまうと敵は強い。VR-4であり
ブルーバードであるのだ。しかし1600以下。つまりBクラスで
あれば、CR-X、シビック、EPターボ等がライバルとして浮上
してくる。リッターターボが闘う相手としては、当然Bクラス
しかないわけであるのだ。このBクラスに加わるために、
排気量まで下げてきたニッサンの意気込みはすさまじい。
わざわざ別のブロックを製作するのには膨大な手間が
かかるハズだ。それをあえて行なったところに、
マーチRにかせられた勝つことへの使命が感じられ、
ここまで徹底した裏には勝利の確信があるはずなのだ。
 ターボチャージャー、スーパーチャージャー、そして
軽量ボディ。''より速く''を最大唯一の課題とする
コンペティションの世界でこのメカニズムは三種の神器。
道具は揃った。マーチのポテンシャルは期待が高まる。

【'R''と''スーパーターボ''をジムカーナでチェック!】

 それでは実際にマーチのポテンシャルチェックに移ろう。
テスト車両はRのジムカーナ仕様。そしてノーマルの
スーパーターボである。スーパーターボは競技モデルと
してではなく、ストリートバージョンとして最大の性能を
持たせたものである。したがって純粋に性能だけを求めた
Rは、重量やメカニズムの点で異なるところがある。
 この2台の相違点をふまえた上で、マーチ本来の
ポテンシャルが理解できれば、と思う次第である。
 スーパーターボとRは前記のように、MA0ERTエンジンを
搭載する。Bクラス枠に収まるようにキャパシティダウン
されたユニットにスーパーチャージャーとターボをドッキング
させたものだ。最大出力は110PS/6400rpm、最大トルク
13.3kgm/4800rpmを発生する。スペック上データかわりはない。

「2000rpmからでもアクセルに忠実に目覚めてくれる」

当然ながら、ターボとスーパーチャージャーは、それぞれが
異なった回転域を担当するようにセッティングされているよう
である。具体的には4000rpmまではスーパーチャージャーの
守備範囲でごくわずかな回転域、それこそ2000rpm付近からでも、
アクセルに忠実に目覚めてくれるのは嬉しい。
 パワーソースがターボに移行するのは4000rpm付近のようだ。
この移り変わりはメーターで過給圧の上昇を確認しなくても
わかるほど、明確なもの。4000rpmを越えるとさらにパワーが
盛り上がり、強烈なダッシュ開始するのだ。上限は7000rpm
あたり、実戦で使えるのはおそらくこのあたりだと思われる。
 パワー特性は2つの過給器が、その作動をスイッチする点、
つまり3500rpmから4000rpm付近でいったん加速が鈍るものだ。
だが全体的にはトルクフルでモータースポーツユースを
前提にすれば問題はないだろう。
 ただし高回転のパンチ力はライバルと比較して強力とは
言えないようだ。この域ではスーパーチャージャーは
ほとんど機能していない。それゆえレスポンスを含めた
フィーリングは、まったくターボに依存していることに
なる。いくら回転のドロップしやすいジムカーナと言えども、
ターボゾーンは最大の出力を誇るところだからもう少しパンチ
が欲しい気がする。''R''は超クロスミッション採用している。
これも競技では大きなアドバンテージになる。特に1速を2速は
クロスしており、回転のつながりは申し分がないようだ。
 スーパーターボはごく標準的なギヤ比だがこれと比較すると
スピードの乗りは格段によいはずである。スピードが上がれば
上がるほど、差は大きくなるから、ジムカーナかダートトライアル
より、ラリーなどで生かされるかもしれない。

それはまさにリトルダイナマイト、
乗りこなせスーパーマシン!

 このスーパーチャージャーの低回転トルクの
太さと、クロスギヤ比の組み合わせは面白い走り方も
可能にしてくれた。たとえばパイロンによる180度ターン。
2速で侵入サイドを引く。そのまま2速で立ち上がる。
そんな芸当も可能なのだ。フルターンでこれが生かされるか
否かは別としてそれほどフレキシブルな走行もできることの
証明でもある。
 足回りに関するスーパーターボとRの決定的な違いは、
フロントスタビライザーの有無である。
 テストに使用したジムカーナ仕様車は、足回りをチューニング
している。ショックアブソーバーは、フロントにビシュタイン、
リヤにニスモ製ラリー用が装着されていた。サスペンションは
フロント2.8kg-m/cm2、リヤ1.0~1.8m/cm2である。
 操縦性のチューニングは、ブッシュ類にもおよんでいた。タイヤ
はダンロップフォーミュラD76Jの185-R14である。
 比較用に持ち込んだスーパーターボはノーマルだ。そのため、
スタビライザーの効果のほどを的確に知るには、他のファクター
が異なりすぎたが、絶対論として感じたことを記すことにしようと
する。
 マーチR・ジムカーナ仕様車は減衰力を高め、荷重移動を
マイルドなものとしているようだ。ロールスピードや量を
抑える方法でセットされ、そのためハードなコーナリングで
強い横Gをかけても、特に大きく破綻をきたすことはない。
思いきってコーナーに侵入することができる。
 しかし、その姿勢が安定しているかと言えば別だ。
ステアリングの操作とスピード加減によって、意外とあっけなく
インリフトをするのだ。この手のFF車では、よく見かける光景
だが、けっして誉められた姿勢とはいえないのだ。
 これがフロントスタビライザー装着されていないためだとは、
ストレートに言い切れないが、フロントのロール制御を
させることによってある程度は抑えられるだろう。
 基本的なコーナリング特性はアンダーステア。ステアリング
応答性も、かためられた足の効果で悪くはない。パワーアンダー
もほど良く抑えられている。(FF、ビックパワーの割には)。
ピーキー他のターボモデルでは、突然の出力アップ強い
アンダーパワーに見舞われることがあるが、中回転域で
すでにトルクが太いマーチではパワーの変化をある程度
予測することができる。そのためアクセルワークは容易な
部類に入るだろう。
 ビスカスLSDの利きも悪くはない。以前サーキットで
マーチのN1仕様をテストした時には、LSDの容量に
不足を感じた。しかし今回のテストでは、負荷の問題か、
不満はなかった。
 わずかな時間の試乗ではあったが、マーチRのポテンシャルの
高さは理解できた。最大の武器は中速トルクであり、
それを生かすクロスミッションである。
 残念ながらサスペンション関係にライバルとのアドバンテージは
見つけられなかった。しかし、それをおぎなって余りある動力性能を
確認することができた。コースレイアウト次第によっては
恐ろしいタイムをたたき出すことができるに違いない。
しかし乗り方を覚えた時にはチャンピオンの座につく
実力を持つ。ともあれ気になるマシンの登場だ。


↓★次章、マーチRサスペンションセッティング講座★↓
Posted at 2020/04/27 20:28:59 | コメント(1) | 日産マーチスーパーターボ | クルマ
2020年04月27日 イイね!

序文、日産マーチR/スーパーターボ特集。

◆序文◆

ツインチャージセンセーション

マーチR/スーパーターボ特集



 リッターカーで大排気量マシンをブッチぎる!
そんな夢のような話を本当にしてしまうのがNISSANの
超兵器マシン、マーチR&スーパーターボなのだ。
 その秘密は、日本初のツインチャージャー
(ターボ+スーパーチャージャー)を装着した
MA09ERTエンジンだ。最高出力110PS/6400rpm。
最大トルク13.3kgm/4800rpmのパワースペックは、
軽量な740kg(マーチR)のボディを、アッという間に
高速度ゾーンまで引っぱってしまう!
パワーウエイトレシオは、なんと驚異的な
6.72kg/PS!まさに現代のリトルモンスターと
呼ぶにふさわしい。
 実はこのエンジン、昨年までサーキットで
大活躍していたリトル・ダイナマイトカップの
マーチに搭載されていた物とほとんど同じなのだ。
言うなれば、メーカーが作ったスーパーカーだ。
 現在、ラリーのBクラスにおいて、全日本戦は
言うに及ば、ローカルイベントに至るまでが、
このマーチR一色染まりつつある。それだけ
高い戦闘力を持っている一つの証拠だ。
 今回の特集では、そのマーチR・スーパーターボ
のすべてを明らかにしたつもりだ。キミもこれを
読んで異次元のパワーゾーンにフルブーストしてくれ!


↓★次章、マーチR/スーパーターボの
ポテンシャルをジムカーナで徹底分析!★↓
Posted at 2020/04/27 16:01:21 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日産マーチスーパーターボ | クルマ
2020年04月25日 イイね!

マーチスーパーターボ白のパーツレビュー/整備手帳更新。2020年4月25日投稿。

マーチスーパーターボ白のパーツレビュー/整備手帳更新。2020年4月25日投稿。2020年4月25日投稿。










マーチスーパーターボ白の
パーツレビューと整備手帳を更新しました。

だだしタブレットのカメラ暫定画像なので少々見づらくなっています。
現在、ネットカフェなどが休業要請でデジカメよりの
画像投稿ができなくなっています。
しばらくはこれで我慢してください。(汗)





Posted at 2020/04/25 17:17:16 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日産マーチスーパーターボ | クルマ

プロフィール

「大したことではありませんがここでお知らせです。2024年3月10日投稿。 http://cvw.jp/b/139692/47583774/
何シテル?   03/10 21:23
Welcome!! To a Double Charge Club. ,board to hold by WEB text translation in...
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