RX-7の開発を振り返って
FDの開発初期段階では、小早川隆治主査から開発体制をタスクフォースチーム方式で進めること、さらにパワートレイン以外の領域のタスクフォースチームリーダーを任せたいとの提案を頂いた。
私自身初代RX-7からシャシーの開発に携わり、マツダスポーツカーの操作安定性を進化させていた自負から、是非とも3代目RX-7で究極の性能にしたいとの思いがあり、務めさせて頂いた。
マツダのスポーツカーは前後重量50:50を理想とし、ステアリング特性ではニュートラルを実現することを基本としてきた。
この理想的な重量配分は車両全体の部品重量をコントロールしなければ実現できないことは明白であり、タスクフォース活動は、最適な開発マネジメント組織であった。
車両全体重量管理に絡むパワーウエイトレシオ5kg/psの実現があった。
この2つの重量開発目標(前後の重量配分とパワーウエイトレシオ)を実現するための取り組みは、目標値ありきで進めなければならないと強く思った。
従来の重量開発は目標性能を実現する既存部品から重量を見積り、目標とのギャップを軽量化アイデアで詰めてゆく作業であったが、私は各部品の目標性能と目標重量を同時に満足する構造、形を創造する設計手順にすべきとメンバーに依頼した。
活動初期には手順に慣れないためメンバーから不満も多く、推進が難航した。
そこで部品の目標達成責任はタスクチームとし、メンバーとして派遣された部門には問わないこととして、目標未達を解消する軽量化アイデアをタスクチーム全員はもとより開発部門全体の知恵を集約する活動を行った。
これが後に「ZERO作戦」と呼んだ活動であり、注力点を変え都合6回にわたり開催し、重量目標を達成することができた。
これもタスクフォース活動の大きな成果の一つである。
おわりに
会社人生において大変幸福なことに1992年6月に小早川主査より後継の主査として指名を頂き、RX-7後期型の開発育成に励むことになった。
その後ロードスターの主査も拝命、マツダのスポーツカーを2車種担当することになり、折しもフォードからのマネジメント参加もある中で、その責任の重圧を乗り越えられたことは、マツダスポーツカーをご支持頂いている多くのファンの皆様の熱いエールの賜物と心より感謝申し上げたい。
RX-7は導入より30年ほどを経ても多くのファンの皆様に愛され、大事にご愛顧を頂き、開発技術者として大変うれしく思っている。
当時を振り返り明確に申し上げられることは、「理論に裏付けられた技術は裏切らない」、「良い商品はいつまでも色あせない」、と思えることである。
低いボンネットデザインの実現の為、フロントサスペンションストロークを限界まで短縮し、操縦安定性、乗り心地が保証できるのか?あれほどまでに悩んだことはなかった。
そして、保証すべき最大入力Gに必要な理論的最低ストロークを守り、設計を進めたことが正しい結果になったのである。
私はこうした魅力あるデザインと優れた技術の融合したFDが、今でも「高性能と魅力あるスタイルを持つスポーツカー」として輝いていることがその証だと思っている。
2015年の東京モーターショーに出品されたRX-VISIONのフロントスタイルを見るにつけ、当時の葛藤が蘇ってくるが、後輩技術者たちの英知と挑戦で、新世代のマツダREスポーツカーを具現化してほしいと願っている。
このRX-VISIONの流麗なスタイルは上級で上質なスポーツカーそのものだと感じた。
マツダやREを支持頂く顧客の皆様には、理想のプロダクトになり得る提案である。
そのフードの長さは優に4ローターREが搭載可能だと思える。
近年のCO2削減の取り組みはどのメーカーも正面から立ち向かうべき課題である。
マツダREはCO2削減可能な水素燃料の燃焼ができることは周知の事実であるが、水素のエネルギー密度に弱点もある。
そこでRX-VISIONの量産型として水素燃料4ローターREとハイブリッドシステムを搭載した、RX-7を凌駕する超プレミアムなスポーツカーを期待したい。
マツダの技術者魂、飽くなき挑戦を実践するこのような夢があることは幸せなことだと思える。
三樹書房 マツダRX-7 FDプロファイル より転載
数回に渡り当ブログで紹介。
一部抜粋転載した『マツダRX-7 FDプロファイル』。
小早川主査や貴島主査が語る数々の開発に関する想い出等、オーナーでなくとも興味深く、愉しく、拝読できるお勧めの本である。
Posted at 2022/02/18 23:09:03 |
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庄助『お知らせ』 | 日記