熊本地震 応急危険度判定について
熊本を中心とした地震によって被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
『応急危険度判定について』
熊本を中心とした地震の被害での応急危険度判定において、「危険」と判断された建築物が1万2千棟を超えたそうです。
(現時点において。 今後さらに増えるだろうと予測されます。)
私は応急危険度判定士です。※最下記参照
この判定のことをまったく知らない方のために、応急危険度判定マニュアルに基づき、この応急危険度判定についての概略を少し述べさせてください。
応急危険度判定とは、地震により被災した建築物において、その後の余震等による危険性を速やかに判定し、被災建築物の恒久的復旧に至るまでの間の使用にあたっての情報提供をすることにより、二次的災害を防止することを目的としています。
この判定は大きく分けると、被害(破壊)の小さい順からA・B・Cの三段階に分けられ、それぞれ、
「調査済 INSPECTED」(緑色)、「要注意 LIMITED ENTRY」(黄色)、「危険 UNSAFE」(赤色)、と表示するステッカーを、建物の所有者・使用者のみならず、第三者にも知らしめるため出入口等の認識しやすい場所に貼り付けて行きます。
一見すると、被害が軽そうに見える建物でも、「危険 UNSAFE」のステッカーが貼られている建物もあります。
その建物の所有者・使用者の方々は、「立ち入ることができないのか?」「できることなら住みたい」等の「不満や不安、要望」等を訴えている方々もおられます。
そのような建物の場合でも、一見すると大丈夫そうに見えても、たとえば基礎等その他が専門家から見ると危険とみなされる損壊を被っている場合等もあります。
あらゆる部分からの総合的な判断です。
被災された方々の上記のようなお気持ちは痛いほど分かります。
技術的な見地からの勧告としての表示ですが、二次的被害を抑えるための苦渋の措置でもあります。
どうか、ご理解とご協力をお願いいたします。
また、この応急危険度判定は、建築技術の専門的見地による「応急的な調査、及び情報提供等」の対応です。
したがって、被災による損害額の査定、被災建築物の「恒久的使用の可否」の判定、その他の目的で行われるものではありません。
被災建築物の恒久的使用の可否や復旧に向けての構造的補強の要否の判断のためには、さらに
「被災度区分判定基準」が適応されます。
※下記は、日本建築防災協会が「被災度区分判定基準」等に関して示すものです。
(日本建築防災協会サイトから引用)
参考にしてください。
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○震災復旧の手順
第1段階(発災直後の時期):応急危険度判定(余震等に対する安全性の調査)
第2段階(やや混乱の落ち着いた時期):被災度区分判定(被災度の調査および復旧の要否の判定)
第3段階(安定時期):復旧計画および復旧工事
※被災度区分判定及び復旧計画等の作成には一定の費用がかかります。
○被災度区分判定とは
地震により被災した建築物を対象に、建築構造技術者がその建築物の内部に立ち入り、当該建築物の沈下、傾斜および構造躯体などの損傷状況を調査することにより、その被災の程度を軽微、小破、中破、大破などと区分するとともに、地震動の強さなどを考慮し、復旧の要否とその程度を判定して「震災復旧」につなげることをいう。
○被災度区分判定の主な対象
応急危険度判定により主として構造躯体の被害が原因で「危険」あるいは「要注意」と判定された建築物、あるいはその他の技術的判断などによりそれらと同程度以上の被害が生じていると判断される建築物が考えられるが、これら以外すなはち「調査済」と判定された建築物についても何らかの被害があるのであれば、所有者が引き続き使用するに際し、原則として「被災度区分判定」を実施する必要がある。
これは「応急危険度判定」が外観調査を主体とした地震直後における短時間の調査結果に基づいており、後に充分な時間をかけて被害調査が行われた場合には判定結果が異なることが考えられるためである。
○被災度区分判定の重要性
被災した建築物を被災度区分判定し、適切に復旧し継続使用することは、住民が旧来の住宅に住み続けることができる利点のみならず地域コミュニティーの確保につながり、また行政による仮設住宅の建設や廃材処理等の負担軽減にもつながります。
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一日も早い、復旧・復興をお祈り申し上げます。
(注)なお、タイトル画像はNHKニュースWEBの画像を参照させていただきました。
参照元ニュースサイト: 下記URL
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160501/k10010505391000.html
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※応急危険度判定士とは
建築士法の規定に基づく建築士であること、且つ、判定士の養成を目的とした講習会を修了している者です。
判定は被災した市町村に設置された災害対策本部からの要請によって実施されます。
その際、応急危険度判定士は、ボランティアとして建築物の被災状況の応急危険度判定を行います。
Posted at 2016/05/01 15:50:14 | |
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