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とにかく

僕達の挑戦は終ったんだ


パドックに止まったしたスターレットの運転席に座りながら、僕はただ呆然とそれだけを考えていた

５月１３日

山室山ダートウェイ

ＤＩＴダートトライアル全中部学生選手権大会

朝３時に部室を出発し、一路三重を目指す

インテＲのステアリングを握りながらバックミラーに目をやる

後部座席には疲れきって寝ている後輩の顔

皆、徹夜で整備をしていた

勝って楽にさせてやるからな

と思いながら、アクセルを踏む右足に力をこめる


津を過ぎたあたりで空が明るくなり出した

決戦の朝

６時

予定より１時間早く会場についた僕達

完璧だ

ゲートオープン

積車からスターレットをおろして、エンジンをかける

軽やかにアイドリングするスターレット

完熟歩行をすませ、コースのイメージを創る

高速コーナーのおおい味付けだ

大丈夫

得意なコースだ

そして

競技が開始された

当日のターゲットタイムは１分２０秒前後

ゼッケンナンバー３２番

第１走者の先輩がスタートをした

無事に帰ってきて、タイムは１分２５秒

パワーがありすぎて踏み切れない！！

だけど、午後に向けて確かな手ごたえをつかんだとインプレッションした

しかし

やはり事件は起こった

水温計の針がＨの位置に近い

おかしい！

ファンが回っていない！

とにかく第二走者まで時間がない

あまり回さないでくださいとだけ伝えラジエターに水をかけコースに出す

スタート時、マフラーからは、少し嫌な白煙が出ていた・・・

なんとか帰ってきたスターレット

自分の番まであと少ししかない！

とにかくファンを直結して回しっぱなしにするしかない！

皆突然の事態にも的確に動き、なんとか直結した

水温計は通常に戻ってはいた

車に乗り込み、ヘルメットをかぶり、グローブをし、４点式のベルト静かにをしめる。

みんなの声援を後ろにし、一人スターティンググリッドへ

考えることはただひとつ

勝つ

３、２、１・・・

カウントが始まる

タコメーターを４０００に張り付かせ待つ・・・

スタートッ！！！

１速で駆け上る

２速にいれゆるい左をでて、３速へ

また左コーナー

２速に落とし、スライドしながら３速へ

不思議と冷静で、ブーストメーターのチェックまで出来るくらいだった

下りのギャラリーコーナーにカウンターを当てっぱなしではいる

コースわきに後輩の笑顔が見えた

次のヘアピン

２速でブレーキング

軽くリアを出しながらクリップで１速

立ち上がって７０００回転で２速へ

気持ちブーストのかかりが悪い

不安だった

右の急なのぼりのあと１速にダウン


ここまでだった


ガクンと失速するスターレット

ボンネットから白煙が上がった

後ろも白煙で見えなかった

そのまま惰性でコースを走りきり

ゴールへ

皆が走ってきた

ゴールし、停車した瞬間エンジンはストップした

この一ヶ月間あったことが走馬灯のように頭をめぐる

仲間に押されて、パドックに戻ってきた


とにかく

僕達の挑戦は終ったんだ


それだけだった

受け入れがたい現実を受け止めるのは非常に難しく、しかし受け入れる事が重要だった

オイルまみれになったエンジンルーム

実況が無責任に叫ぶ

皆声がでない

必死に回復を試みても

とにかく認めるしかなかった

終ったんだ

とにかく、皆に謝った

つらい現実だった

後のリザルトを見ても、完走してれば絶対勝てていた

しかしレースに　たら、れば　はない

これが現実なんだ


ただ、皆をひっぱっる人間として落ち込んでばかりはいられずカラ元気で後輩達に指示をだす

辛かった

でも

やるしかなかった


帰り道

後輩が言った

「結果自体は残念ですけど、今回の大会でチームワークが上がったって僕は思いますよ。いいじゃないですか、また来年がんばりましょうよ！」

僕は

そうだな。

とだけ言って、後の言葉を心の中にしまった

残念

とか

悔しい

とか

そんな簡単な言葉では言い表せない複雑な気持ちが僕をそうさせた