初めての経験

レジにいると店の奥の方からパートさんが叫んでる。「救急車！！」

何事？と一瞬躊躇してがすぐに119番に電話する。電話の子機を持ったままパートさんの声がした方へ走ると70代の女性が両手を前に伸ばして（キョンシーみたいなポーズ）痙攣して倒れている。旦那さんが介抱している。

消防署「火事ですか？救急ですか？」

私「救急です。女性が一人倒れています。痙攣してます。」

消防署「場所はどちらですか？」

私「金沢市〇〇町△丁目◇-◼️です。（店名）です。」

消防署「性別は？何才ですか？」

私「60〜70代の女性です」

消防署「意識はありますか？呼びかけに応えますか？」

私「いいえ」

消防署「息はしてますか？」

私「あっ。痙攣がだんだん治まってきて…息してるかな？口から泡を吹いてます。」

旦那さんと二人で手首の脈をみるけどわからない。

私「脈があるかわかりません」

消防署「心臓マッサージはできますか？」

なんかの講義の時になんとなくやり方は聞いた事があるけどほとんどぶっつけ本番だけどやるしかない。

私「できます」

消防署「もう救急車が向かってますから心臓マッサージを続けてください。救急隊が到着したら現場まで誘導してあげてください」

私「わかりました」

私が心臓マッサージをするので電話機はパートさんに渡して指示を聴き続けてもらう。みぞおち辺りを三回押して一呼吸置いて三回押して…を繰り返す。（このやり方があってたのかどうか知らない）

時々倒れた奥さんが何か呻いている。私が胸を押すと息を吐いてまた吸い込んでいるのが分かる。呼びかけには反応しない。最初は目を開いたままだったのが閉じた。身体は力が抜けてぐったりしてきた。

時々パートさんが「店長！心臓マッサージ続けてくださいって！」と消防署からの指示を伝えてくる。

お客さんも手伝ってくれる。旦那さんが頭を持っていたけどお客さんが変わってくれた。その間に旦那さんには家族へ電話してもらった。（今思えばアゴをあげて気道を開けて確保すべきだった）

旦那さんが言うには奥さんは今朝からめまいがしていたらしい。ただこれまで癲癇の既往歴はないとのこと。

しかし、後ろへバタンと倒れたので頭を打っている。

救急車が来るのはとても早い。それは承知しているけど心臓マッサージ続けていると長く感じた。

マッサージに合わせて呼吸しているのは分かっていたので続けるしかない。

ようやく救急隊が来て彼女を引き渡す。

救急車に乗せられてからしばらく店の前に救急車は止まったまま。たぶん搬送先を探していたんだろう。

救急隊の隊員からこの夫婦の車を置いていく旨を伝えられて救急車はやがて走っていった。

…

人生で救急車を呼んだのはこれで4度目くらいだと思うが患者が意識不明な状態は初めてだった。そんな人に心臓マッサージするのも初めてだった。

ずっとマッサージを続けるのは疲れたけど意外と自分自身は冷静だった。ただ彼女の息が止まってしまうのは怖かった。

電話してすぐに救急車が来てくれるこの世の中、インフラは素晴らしいものだと思った。

今は店のパートさん達と彼女がどうなったか心配しています。



…その日の夕方。

旦那さんが再来店されました。無事、救急車の中で意識を取り戻したとのこと。念の為、2〜3日入院されるそうです。

どうやらめまいで倒れてその時に後頭部を打った影響で脳しんとうを起こされた様子。

やれやれ！本当に無事でよかった、よかった。