前回の続き
12月30日(水) 9日目
3時半に一度目が覚めました。
まだ早すぎるので再び就寝。
朝4時半に起床。
どうやら空はきれいに晴れているようです。
フロントに行き、チェックアウトを済ませてから車に荷物を放り込み、早速出発します。
まだ暗い時間にポリスを通過したからか、今回は行き先を尋ねられました。
「エルチャルテン」
と、答えると「行ってよし」の合図が出たので。町の外へと車を進めます。
今日は東に向かって走っているので、やはり正面から太陽が昇ってくるようです。
と、言うことは・・・
後方にはこんな光景が広がっていて、気になって気になってしかたがありません。
しかし、そうも言っていられないので、バックミラーをちらちら見ながら東に向かって走っていきます。
エルカラファテを出発してから約30分、ルータ40との合流地点に到着しました。
パイネに行くときはここをまっすぐ通過したのですが、本日はここ(星印)で左折して北上します。
エルチャルテンまでは残り185km。
トレッキング前のドライブとしてはちょうど良い距離です。
遠くのアンデスの山々が赤く輝いています。
すばらしいアルペングリューエンで感激します。
お、私が大好きなルータ40の看板じゃないですか。
これで2つ目です。
あの真ん中に白っぽくぴょこっと飛び出しているのがフィッツロイなんだろうなぁ。
この距離なので豆粒大ですが、標高3405mあります。
今日、山の近くに居た人はラッキーですね。
なんせ、フィッツロイの麓のエルチャルテンの「チャルテン」って、先住民の言葉で「煙を吐く山」、つまりいつもガスを被っている山って意味ですから。
と、言うわけで私もなんとしてでも山が見えているうちにエルチャルテンに到着したいわけです。
日が昇ってきました。
この看板は日本では見たことが無いですね~。
デザインからして風が強く吹く場所であることはよくわかります。
ちなみに、真正面に見えているのがフィッツロイです。
カメラのマークが出ているということは、ルックアウトポイントなのでしょう。
少し進んだところに駐車スペースがあったので、入ってみます。
なるほど、湖越しにアンデスの山々を望むわけですね。
ちょうど良いので、ここでサンドイッチの朝飯を食べることにします。
カメラに望遠レンズをつけて覗くと、フィッツロイがはっきりと見えてきました。
そっか、こちらを見るためのルックアウトポイントですね。
周囲に同じ高さの山が無いこともありますが、フィッツロイは異彩を放って鎮座しています。
近づくとどんな感じになるのか楽しみです。
まるで看板の端に当たって曲がったかのようなカーブの看板
実際のカーブはこんな感じなので、直角カーブってわけではないです。
お、40号線に入って初のすれ違いです。
こちらのルータ40はいろいろと表情を変えていくので、走っていて常に新しい発見があります。
その昔はこのあたりはすべて未舗装区間だったらしいのですが(旅行代理店で飛行機を取るのに計画を話したら迷うし未舗装だからレンタカーはお勧めしないって言われましたし)、実際は迷うことなんてまずありえないですし(パイネ方面は多少可能性あり)、こんなに走りやすいので、エルカラファテをベースにロスグラシアレスの氷河とエルチャルテンに出かけるパターンならレンタカーはけっこうお勧めです。
って、まだエルチャルテンまで走っていないから勧めるの早いですね。
道端に居たグアナコが突然飛び出すそぶりをしたのでちょっと驚きました。
看板は「鹿」飛び出し注意ですが、実際は「グアナコ」飛び出し注意ですね。
グアナコバージョンの看板をぜひ見てみたいものです。
出発してから1時間ちょい、エルチャルテンまでは残り144km。
なぜかここで口をついて出てきた歌は「
ビューティフルサンデー」のサビの部分。
ハァ~、ハァ~、ハァ~、ビュリフォーサァ~ンデ~♪
(ちなみに今日は水曜日なので歌の歌詞はカスリもしてないです)
道端にはこんな感じで、ぽつぽつとグアナコが居ます。
お、なんか直線なのに40km制限なんていう看板が出てきました。
何があるのでしょうか?
何か書いてあるのですが、スペイン語ですので、さっぱり読めません。
そこまで、あと1kmのようです。
ん? これ?
いつも見ているSOSのやつでもないみたいですし、何でしょう?
これは違うか。
ナショナルって書いてあるし、日本で言うところのアメダス(
AMeDAS)か何かですかね?
あぁ、看板の主はこちらですね。
どうやら宿泊施設かレストランか何かがあるみたいです。
オーストラリアのロードハウスみたいなものでしょう。
再びグアナコなんかを横目に見ながら大平原の真っ只中を走って行きます。
そう言えば、パイネに向かうときにはあんなに見かけたウサギがこちらには全然居ないですね。1、2匹見かけたぐらいでしょうか。
え? 突然20km制限?
110kmから一気に20kmとはえらい極端な。
ただ、減速させる理由はわかりませんでした。
実際カーブもそれほどきつくなかったですし。
久しぶりに見た交差点(三叉路)です。
こんど機会があったらこんな道も探検してみたいですね。
本格的な四駆が必要そうですけど。
久しぶりにすれ違った車はバスでした。
お~、これはすごい。
北米の写真で見たような景色です。
北米と言えば、今回の旅ではアメリカ人に会って無いなぁっと急に記憶を辿りはじめます。(もちろんワシントンDCは除きます)
クリスマス休暇を常夏の南米で過ごすアメリカ人が多いはずだから、行く先々でアメリカ人に会うんじゃないかと勝手に予想していたのですが、実際に会う人はほとんどがヨーロッパからの人のような気がします。
考えてみたらイグアスのところに居た北米留学中の日本人とビリヤードを見学していたニューヨークから来た青年、あと、無理やり加えるとすると、乗合バスで一緒になったカナダから来た二人組と言ったところでしょうか。
そっか、イグアスみたいな温かいところならともかく、冬に喜んでこんな寒いところに来ないのか。
勝手に納得。
レストランにキャンプ場
長旅をするときはこんなところにお世話になるのでしょう。
トラックにトラクター(除雪車?)の駐車場。
ん? これは何でしょう?
石を積んで作った人間のようにも見えます。
(調べてみましたが、どこからも情報が出てきませんでしたので、地元民が案山子のように作ったのではないでしょうか?)
お、生活感あふれるトラックです。
牛も居ますし、このあたりは人間が暮らしている感じがします。
再び石の置物。
道路沿いにあるので、やはり道路ができてから置かれたと考える方法が自然ですね。
ホテル ラ・レオナ。
ちなみにルータ40に沿って流れている川はレオナ川です。
フィッツロイが再び左手前方に見えてきました。
さすがエルチャルテン、病院からガソリンスタンドからフル装備です。
昔は何もない小さな村だったらしいですが、フィッツロイの麓へのトレッキングが人気になって、けっこう発展してきているらしいです。
ちなみに、エルチャルテンまでもう少しな気分ですが、実際はまだまだ先です。
そうそう、このSOSポール。
実際、どうなっているのかまったく確認しておりませんでした。
近づいてみると、こんな感じになってます。
ちゃんと夜でも操作できるようにライトまで付いてますね。
なんと親切な。
絵を見れば何をどうすればよいかはすぐにわかるようになっています。
消火栓のボタンをいたずらで押して後で怒られる小学生じゃあるまいし、さすがにこのボタンは押しませんでしたが。
再び人の住んでる気配のしない場所に来ました。
オーストラリアのアウトバックもそうでしたけど、周囲が広く見渡せる大平原なのに人が生活している匂いを感じない場所は、まるで地球じゃない場所に居るような、非現実的な空間に佇んでいるような気分になります。
たぶん、これは私が森林がメインの日本育ちでこういう場所に慣れていないからだと思います。
そういえば、いつの間にやら大分雲が増えてきました。
雨を降らすような雲ではないですが、かなり上層部に山脈と平行に(南北方向に)帯状に広がっています。
何々? シートベルトをしなさいと。
そりゃぁ、高速道路走ってるようなもんですし、頼まれなくてもしてますよ。(笑)
道路脇に居たクルペオギツネ(
Pseudalopex culpaeus)です。
こんな周囲に何も無いところに乗馬のオフィスがあるようです。
ルータ40とエルチャルテンに向かう道との分岐に到着しました。
ルータ40を外れて、州道23号線で一路エルチャルテンを目指します。
残り90kmです。
朝7時を過ぎたこともあり、観光バスや他の車とすれ違うようになりました。
正面にパタゴニアン・アンデスが広がり、気分が一気に高まってきます。
正面の湖はビエドマ湖で、長さ80kmの巨大な湖です。(面積比で琵琶湖の約1.5倍の大きさ)
エルチャルテンまで残り60km、フィッツロイもはっきりと見えるようになってきました。
しかし、だんだん雲の量が増えてきていて、ちょっと焦ります。
まぁ、焦って走ったところで到着時間に大差はないので、なるようにしかならないわけですが。
と思っていたら、またまた正面の雲が切れてきました!
ラッキー! 晴れ間のターンに入ったみたいです。
(きっと、しばらくしたらまた雲の帯が登場するのでしょうけど)
そういえば、写真に写っている青い看板、最初意味がわからなかったのですが、よく見てみると、クラシックカメラのデザインのような気がします。
と、言う事はルックアウトポイントでしょうか?
1km先と表示されていたので、素直に1km進んでみますが、別段景色が変わるわけでもありません。(正面のフィッツロイは相変わらず素晴らしいのですが、その写真は後ほど)
あたりを見渡してみて、これかな? っと、思いカメラに望遠レンズを取り付けます。
ビエドマ湖の向こうにビエドマ氷河が見えています。
ビエドマ湖のエメラルド色からして、この氷河が溶けて出来た湖なのでしょう。
(実際後で調べてみたら主たる水源はそのようでした)
もう、このあたりから先は常にフィッツロイを正面に見ながらのドライブです。
ちなみに、一番高い山がフィッツロイで、その左の鋭く尖がった山がセロトーレ峰です。
緩やかなカーブと、ちょっとしたアップダウンが延々と続き、走っていて幸せな気分になってきます。
そして、ルータ40を離れてから走ること1時間。
標高3404mのフィッツロイが間近に迫ってくるところまでやってきました。
その高さ、その存在感にただただ圧倒されるばかりです。
ここまで近づいたということは、エルチャルテンの町はもう目の前のはずです。
丘を超えた次の瞬間、エルチャルテンの町が見えてきました。
観光拠点として発展してきたと言っても、エルカラファテとは比べものにならない規模の小さな町というか村です。
犬の散歩ならぬ馬の散歩ですかね。
もしかしたら、村の中からだと前衛の山が邪魔してフィッツロイはよく見えないのかもしれません。
さすが観光拠点、いかにも観光客という感じの人がたくさん居ます。
エルチャルテンの村に入りました。
まずはガススタンドを探します。エルチャルテン往復は400km強ですから、ガソリンを入れなくても問題ないはずなのですが、なぜかガソリンメーターが勢い良く下がってきて半分近くまで来ていたので、明後日空港まで急ぐときに余計な心配はしたくないと思い、今のうちに入れておこうと思ったのでした。
ところが、ガススタンドはメインストリート沿いにあるだろうと想像して探しながら走っていたのですが、宿とレストランと貸しアウトドアグッズ屋、たまに土産屋、ネットカフェぐらいしか見当たりません。
車で来る人が少ないからでしょうか?
(普通はバスで来ます)
結局見つけられないまま、村の反対側まで抜けてしまいました。
これは素直に聞くしか無いと思い、村外れのサンドイッチ屋さんで窓を拭いていた若いお姉さんに尋ねてみます。
すると、「私アルバイトなのでわかならいから、中で聞いてみて」と言われたので、言われるがまま店内に入ります。
店内におじさんが居たので、まずはジュースを注文しつつ同じようにガススタンドの場所を尋ねると、今度は英語が通じません。
ガソリーナと言いながら、車に入れるジェスチャーで意志を伝えます。
ただ、まったく話せないわけではなく、ポツポツと英単語で話してくれるので、なんとなく意味はわかります。
曰く、この村のガソリンスタンドのオープン時間は9時半か10時(1時間半後)とのこと。
ありゃりゃ。ちょっと早く到着しすぎましたかね。
気づくと先程の女性アルバイトさんが店内に入ってきて、英語で通訳してくれます。
「ゆっくり走ればエルカラファテまで持つんじゃない? って言ってますよ」
まぁ、それはそうなんですが(笑)
ちなみに、他にガススタンドは無いか尋ねてみると、トレスラゴスという町にあるそうです。場所を聞いてみると、ルータ40まで戻って、エルカラファテと反対方向に向かって30分ほど走ったところにあるとのこと。
片道120kmぐらい。だめじゃん(笑)
とりあえず、ガススタンドの場所だけ聞いておきます。
ちょうどそこへ、他のお客さんが入ってきて、予約していたであろうサンドイッチを受け取ってから店を出ていきました。
どうせガススタンドのオープンまでまだまだ時間があるので、私もサンドイッチを作ってもらうことにしました。
しばらくおじさんがサンドイッチを作るところを見ていたのですが、思いっきり素手で野菜をちぎりながら作っているのを見て、見なければよかったと思いました。
(まぁ、大丈夫なんでしょうけど)
ジュースとサンドイッチの代金(13ペソ 300円)を払って、お礼を言ってから店を出ます。
まずはガススタンドの場所でも確認しておこうかと思い、おじさんに言われたとおりに走って行きますが、なぜか見つけられません。
ちょうどインフォメーションセンターらしき建物があったので、中に入って男性スタッフに再びガススタンドの場所を尋ねてみると、
「向かいにあるよ」
との返事。
え? 向かいにあったっけ?
ちなみにオープン時間を聞いてみると、「もう開いてるんじゃない?」との返事。
なんとびっくり。
ついでに、エルチャルテン付近のトレッキングガイドの小冊子を貰って、お礼を言ってから外に出ます。
なんだ、こんなところにガススタンドがあったんじゃん。(9時ちょいすぎ)
(村の入口、メインストリートの右側から少しだけ奥まったところ、インフォメーションセンターの向かいです。看板などは出ていません)
スタッフが居たのでガソリンを満タンにしてもらい(10リットルちょい)、36ペソ(850円)を支払います。
セロカスティージョよりはぜんぜん安いですね。(エルカラファテならもっと安いんじゃないかと思います)
よし、準備万端。
再び村外れのトレッキング開始ポイントまでやってきました。
ここに車を停めっぱなしにして良いのかどうかわからなかったので、すぐ近くにある先程のサンドイッチ屋さんに入って、お姉さんの通訳でおじさんに確認すると、問題ないよとのこと。
車を停めて、ぼちぼちと準備を開始します。
そして、なんだかんだで10時にようやく出発しました。
まずはフィッツロイの麓にあるポインセノットキャンプ場を目指します。
整備の行き届いたトレッキングルートを登っていきます。
エルチャルテンの町を振り返ったところです。
こんな感じの明るい樹林帯を進んでいきます。
脇を見るとラス・ブエルタス川(もしくはかつての氷河)が作り出した谷が奥へと続いています。
反対側には大きな岩瘤が鎮座しているのを見上げます。
そして、正面にフィッツロイの頭を見ながら進んでいきます。
なかなか楽しい散歩道です。
写真には写していませんが、軽装のトレッカーを追い越したり追い抜かされたり、すれ違ったりしています。
その後も樹林帯を歩いたり、
樹林帯を抜けたところを歩いたりしながら、ゆっくりと標高を稼いでいきます。
正面の山肌の中腹に先行するトレッカーが写っていますが見ますでしょうか?
整備の行き届いていて、本当に歩きやすい道です。
登り始めてから約1時間、なにやら人だかりと看板が見えてきました。
ここで道が分岐するようです。
左がカプリ湖の畔にあるキャンプ場を経由するコースで右は見晴台を経由するコースのようです。どちらを通っても最終的には合流します。
どっちから行こうか迷ったのですが、早めにキャンプ場に着いて、晴れているうちにトレス湖から望むフィッツロイを拝んでおきたかったので(キャンプ場から往復3時間)、行きは距離の短いように見える左側のカプリ湖コースを進むことにしました。
しっかし、なんだろう、この足の上がらなさ。
歩きやすい道なのに、自分が思っているよりもペースが上がらない気がします。
と、言うか足取りが重い感じがします。。
もしかして、早々にシャリバテしたかもと思い、ザックから先程買ったサンドイッチを取り出します。
本当はもうちょっと景色の良いところで食べたかったのですが、背に腹は変えられません。
さらに買ってきたジュースもここで飲みます。
半分食べたところで満腹になったので、残りはザックの中に仕舞い、再び歩き始めます。
左側のコースに進路をとり、樹林帯の中へと入っていきます。
開けた場所でフィッツロイを拝んだあとに、再び樹林帯に入ったところで人工物らしきものが見えてきました。
中間地点のカプリ湖キャンプ場です。
たぶん、写っているのはレンタルテントでしょう。全部同じデザインです。
分岐から20分、カプリ湖に到着しました。
カプリ湖の畔をフィッツロイを眺めながら歩いていきます。
そして、湖を離れ、再び樹林帯の中へと入っていきます。
その後、先程別れた道と合流し、今度は潅木帯を進んで行きます。
この潅木、かなり枝が硬くて腕がひっかき傷(白く跡が付く程度)だらけになります。
その後も開けた場所や潅木帯、樹林帯の中を進んで行きます。
いやぁ、フィッツロイはかっちょいいですね~。
再び枝の固い潅木帯です。
こちらは開けた場所。
そしてフィッツロイ。
フィッツロイ手前の樹林帯にジグザグに登っている道が見えていますが、ポインセノットキャンプ場はあの道の下のほうにあり、トレス湖まではあのジグザグ道を使って往復3時間です。
お、道がここで90度右に曲がるようです。
右に曲がったところに分岐の看板が出ています。
なるほど、遠回りしてエルチャルテンに戻る道はここから入るのですね。
そして、目的地のポインセノットキャンプ場まではあと15分です。
ちょうど軽く便意を感じ始めていたので、ちょうど良かったです。
誰がどう見ても一人しか渡れなさそうな橋。
エルチャルテンを出発してから2時間40分、ポインセノットキャンプ場に到着しました。
けっこう人が居ますね。
まずはトイレを探します。
(管理人さんはどこかのテントに常駐しているらしいですが、ここは無料のキャンプ場です)
無料のキャンプ場とは言え、けっこう設備が整っていそうな印象があったのですが、トイレの方はと言うと、工事現場にあるような「臨時ボットン便所」が一つだけぽつんと置いてあるだけでした。
鍵の操作方法がよくわからず、手間取りながらなんとか鍵をかけます。
(半分壊れかかってました)
ボットン便所の臭いは世界共通なんだなぁと思いながら、準備を開始したところで異変を感じました。
嫌な予感がしていたのですが、おなかを壊してしまったようです。朝食べたサンドイッチか、先ほど食べたサンドイッチのどちらかでしょうか。フィッツロイがよく見えるトレス湖まで一往復したいのに参ったなぁ。
いや、しかし、なんだこの気分の悪さ・・・
下痢はわかるのですが、それに加えて軽く吐き気までします。
こんなボットン便所で吐きたくないと思い、そちらは我慢しておきます。
そして、トイレを出たところで体がフラついていることに気がつきました。
うわ、具合が悪い上に、まともに立ってられない!
しかし、休むと言っても、こんな便所のまん前のティッシュがその辺の転がっている場所は嫌ですし、できればテントの中、人目につかないところで休みたいです。
なぜ具合が悪くてふらついているのかわけもわからないままザックを担ぎ、とにかくテントを張れる場所を求めて文字通り彷徨います。
くまなく探す余裕も無かったので、フィッツロイを見上げられる場所に目星をつけて、ザックからテントを取り出します。
フィッツロイを見られる場所は人気があるらしく、周りには複数のテントと、まったりと談話中のグループが居たのですが、挨拶する余裕もありません。
とにかくテントにポールを突っ込み、ペグを打ち込み、吐きそうになりながらエアマットを膨らませ、そのままテントの中に倒れ込みました。
仰向けに寝るとかえって具合の悪さが倍増するので、横向けにうずくまるような体勢でやり過ごしを試みます。
トレス湖往復どころじゃありません。
どうやらそのまま寝込んでしまったらしく、テントの中が暑いなと感じて2時間後ぐらいに目覚めました。
たしかに日が差してはいるのですが、自分が汗をかいていることに驚き(私は普段から汗をかかないほうなので)、額に手を当てるとかなり熱くなってます。
下痢に倦怠感、吐き気、そして高熱。
食中毒・・・・
食中毒も原因となるウイルスや菌の種類が豊富ですし、よく似た別の病気やウイルスかもしれません。
一つわかっていることは、昔やられた「
腸炎ビブリオ」とは症状が微妙に違うと言うこと。(あれの下痢と腹痛はもっとひどかったので。ただ似ている部分も多いので食中毒と推定しました)
発症したのがキャンプ場で良かったです。
来る途中やトレス湖往復途中でやられていたらもっと酷い目にあっていたでしょう。
(できれば発症はトレッキング開始前が良かった)
水分を取らないと脱水状態になってしまうので、水筒の水と持ってきたコーラをがぶ飲みします。
飲んだ途端、即便意。即トイレ。
やはり、これはかなりの確率で食中毒です。
だとすると、持ってきた止痢薬は何の役にも立ちません。
管理人さんのところに行って「食中毒の薬をください」ってスペイン語で伝えるのは無理でしょうし、出来たとしても正しい薬をもらえるとも限りません。
とにかく自分の体の防衛力を信じてやり過ごすしかありません。
トイレからフラつきながら戻ると、テントから水袋を取り出し、楽しく談笑しているグループの女性に水場の場所を尋ねます。
努めて平静を装って尋ねたのですが、たぶん顔の表情ですぐに察知されたのでしょう、何か言いたげではありましたが、水場の場所(と言っても、目の前に見えている川で汲むのですが)と、行き方を丁寧に教えてくれました。
もし、万が一の状態に陥ったら、彼女らにレスキューを頼まねばなりませんし、ただの食中毒なら、明日ぐらいから徐々に快方に向かうはずです。
この状態で1mも迷いたくはなかったので、言われたとおりに歩いて行きます。
たかが200mぐらいの距離なのですが、とてつもなく遠く感じます。
川で水を汲んでからテントに戻り、水を出来るだけ飲んでから再び横になります。
それからトイレに行ったり、水を飲んだり、横になったりを何度も繰り返します。
まったく改善方向に向かわない体調に焦りを感じますが、自分に出来ることは水を飲むぐらいしかありません。こんなことなら粉末タイプのスポーツ飲料を持ってきておけば良かったです。
いや、あのサンドイッチを食べなければよかったのか、それとも体調の変化の兆しを感じたところで引き返せば良かったのか、、、
どれもこれも今更考えても仕方が無い話です。
18時ごろ体を起こしたところで抑えきれない吐き気に襲われたので、とっさに食料を小分けして入れていたチャック付きのビニール袋を取り出し、そこに戻します。
固形物は一切無く、がぶ飲みしていたコーラと水がそのまま出てきました。
と言うことは、まったく水分補給ができていなかった気がします。
そして、驚いたことに、この嘔吐で一気に気分が楽になりました。
こんなことならとっとと吐いておけばよかったです。(キャンプ場に到着した時以外明確な吐き気がなかったので、無理にでも)
とりあえずレスキューを呼ぶ事態は回避された気がしますが、それでも今の状態で下山は厳しい感じです。
今日の夜一晩休んでどこまで回復するか・・・
アミノバイタルとマルチビタミンを水で流し込み、さらに砂糖を加えた粉末タイプのホットイチゴミルクを飲んで最低限の栄養補給とします。
気分も少し楽になったので、テントから顔を出すと、フィッツロイはガスに覆われていました。
そして、一難去ってまた一難。
トイレに通っているうちにまずは消毒用のアルコールティッシュがなくなり、次にティッシュすら心細くなってきました。
ティッシュなんてたいした重量物じゃないんだから、ジャンジャン予備を持ってきておけば良かったです。
と言うか、今回の旅で唯一トイレットペーパーが完備されていない、そして洋式水洗じゃないトイレがここで、こんなところで下痢に当たったということに運命を感じずにはいられません。
運命と言えば、昨日の夜の絶好調っぷりが自分でも不気味でボイスメモにそんな記録まで残していたのですが、まさかこういうオチだったとは・・・
下痢が治まる気配はまったくありませんが、吐き気の方はほとんど無くなったので、ひとまず寝ることにします。
とにかくおやすみなさい。
明日は多少なりとも回復していますように・・・・
そして夜中の0時頃、肛門様からガスが出ますよという合図で目が覚めました。
マズイ! と、思う間もなく、ガスならぬ、がぶ飲みしていた水分が少し出てしまったのでした・・・
以前の腸炎ビブリオの体験から、
「汝、激しい下痢の時、
パンツを履いたまま、
いかなることがあっても
放屁をしてはならない」
というルールを自分に誓い、今回も忠実に守っていたのですが、寝起きをつかれるとは思っておりませんでした。
日本から遙か彼方南米の地で、男四十にして悲しみで頬をぬらす前に、下痢でパンツを濡らすことになるとは。。。
もう間もなく12月31日、大晦日です。
それはともかく、トイレに行きますか。
飛び出した水分、ズボンまで到達してないといいなぁ。
つづく
0 1 2 出発・移動
3イグアス
4 5 6パイネまで移動
7 8 9 10パイネトレッキング
11 12 13パイネからエルカラファテ
14 15ブエノスアイレスへ
16 帰国