デザイナーの矜持は？

今年の東京モーターショーのニッサンブースで新型キャラバンを見たとき、
僕はかなりたまげた。二度見した。
第一印象「これ、ハイエースじゃん」
詳細を見ていけば違う。
でも全体のフォルム、醸し出す雰囲気はハイエースと酷似している。
ライバル会社のしかもライバル車種。
これでいいのだろうか？　と思った。

デザイナーは、
グラフィックにしろ、プロダクトにしろ、インテリアにしろ、ファッションにしろ、
自分の生み出したデザインについて、
「他の何かに似ている」と言われるのを最大の屈辱と感じる人種だと思っていた。
でも、どうやらそれは違うようだ。

元アウディのシニアデザイナー兼デザインマネージャーを務めた和田智氏は、
2代目A6をデザインした。
その最大のアピールポイントとなったのはあの「シングルフレームグリル」だ。
当時、社内でもあのバカでかく見えるグリルに反対する声も多かったという。

でも、ふたを開けてみればどうだ。
VWパサート、プジョー5008をはじめ、
極東の日本でもムーブ、スイフトスポーツ、RVR、ランサー、
そしてあのレクサスLSもアッパーグリルとロアグリルをひとつの枠で囲んで、
その中にバンパーを渡すという、まったく同じではないにしろ、
シングルフレームグリルの手法が伝播している。
フォロワーが現れれば現れるほど、アウディへの、和田氏への評価はあがり、
フォロワーへは「また真似しやがったな」と、僕は軽蔑のまなざしを向ける。

売れるデザインなら、真似と思われてもいいのか。
それともデザイナーが誇りを持ってデザインしても、
お偉いさんが
「それじゃダメだ。A6のグリルみたいにしろ」
「ハイエースを参考にしろ」
と命令するのだろうか。
その辺のところ、どうなのか聞いてみたい。