JNCAPの仕分け結果を聞いて血圧が1万まで上昇した。今回の仕分けに参加したメンバーを呪ったね。12人の仕分け人の中でJNCAPの価値を認めなかった人が5人もいたからだ。WEBサイトのレスポンスで書いているように安全は水と同じでタダ」と思っているのかしら。
ところでJNCAPは80年代から情報公開が進んでいたアメリカのNCAPを導入したもので、日本と同じ時期に欧州ではユーロNCAPが始まった。こうした各国の味安全情報公開が進んだことで、日米欧の自動車の安全性が急速に高まった。NCAPは基本的には各国の安全基準よりも厳しきく、実際にクルマを抜き打ちでテスト評価してきたからだ。
日本は当初前面衝突が法規と同じフルラップ(ただし速度は法規50Km/hでJNCAP55Km/h)であったが、当時の事故対策センターにたいして私とトヨタの大阪部長(当時の安全技術担当)はメルセデス(インゴ・カリーナ副社長)の力を借りて、オフセット衝突の重要性を執拗に唱えていた。そしてその甲斐あってついにオフセットが施行され、軽自動車も含めて一気に日本車の安全性が高まったのだ。
その結果、衝突対応ボディ・エアバッグ・ベルトテンショナーなどが軽自動車にも普及でき、交通事故の死亡者数は政府の思惑通り著しく減少した。90年ごろには約1.2万人の年間死者数が2009年には5千人まで減らすことができたのだ。
たしかに、いまのJNCAPは無駄もある。多くのクルマの実力が六星を取ることができれば、テスト法を見直すことも重要だ。しかも交通事故の実態は年々変化するので現実の事故実態にそくしたテスト法を加えるべきなのだ。しかし財源も限られている。
JNCAPではこうした事故実態の変化を受けて、最近では歩行者保護や前面衝突の後席の乗員の保護性能の評価が加わり、それなりの効果を得ているようだ。例えば、今年のスバルレガシィがもっとも安全なクルマとしてグランプリを受賞した理由は「歩行者保護と後席の乗員保護性能」が優れていたからだ。
しかし、このように新しいテストを追加するとどんどんコストが増加する。JNCAPがつねにコスト意識を持って事業にあたっていたかと言えば無駄も多い。私はツイッターでも呟いたがフルラップ50Km/hは保安基準のデータを公開すればJNCAPから省けると考えている。
読者の中にはより高い速度でテストするJNCAPのフルラップは必要と思われるが、もともとフルラップは拘束装置の性能評価が目的であり、エアバッグやベルトテンショナーなどの効果を評価するには適しているが、すでに多くの自動車は優れた拘束装置の開発に成功し、20年前から実施されてきたフルラップの役割はおわったと思っている。 その証拠に欧州法規とユーロNCAPではフルラップはいっさい評価されていない。つまり、フルラップテストそのものが80年代のアメリカ車に採用されてきたテスト法であり時代遅れの感があるのだ。
また、より高速でのフルラップテストはダミー人形の胸と頭部のGを中心に評価するので、ややもすると柔らかいボディのほうが良い成績が得られやすい。とにかくフルラップを廃止しコスト削減にJNCAPは務めるべきである。
また、問題なのはJNCAPの事業の広報PR活動に関してどんな団体が小冊子などの業務を委託しているがを仕分けるべきなのである。 しかし、JNCAPが事実的な日本メーカーの開発目標となっていることは否めないので、この事業の廃止は日本車の安全技術が停滞することを意味している。仕分け人の方々は工学的な知識が必要なら私の著書を参考にしてほしい。
NHKブックス「クルマ安全学のすすめ」清水和夫著
ブログ一覧 |
クルマの安全 | 日記
Posted at
2010/04/29 06:34:10