スバルの代名詞・水平対向エンジンについて!メリットデメリットも解説

2018年10月23日

車のエンジン

今やスバルの代名詞ともなっているのが、水平対向エンジンです。自動車用の水平対向エンジンを製造しているのはスバルとポルシェの2社のみとなります。このように少数派のエンジンですが、使われるのにはそれなりのメリットが存在します。そして使っていないメーカーが存在するのはデメリットもあるからなのです。水平対向エンジンの構造、そしてメリット、デメリットを考察します。

この記事のPOINT
水平対向エンジンはカール・ベンツによって発明された
特徴は上から見た時にピストンが向かい合って配置されていること
メリットは振動の少なさ、デメリットは横幅の大きさによる制限の多さ

クルマの父が発明した水平対向エンジン

水平対向エンジンを発明したのは、自動車を発明したあのカール・ベンツといわれています。カール・ベンツは1879年にエンジンの特許、1886年に自動車の特許を取得しています。ベンツが水平対向エンジンの特許を取得したのは自動車の特許取得から10年後の1896年です。

水平対向エンジンの最大の特徴は、エンジンを真上から見たときに2つのピストンが向かいあうように配置されていることです。クランクシャフトにはコネクティングロッドを介してピストンが接続されています。そのクランクシャフトとコネクティングロッドが接続される部分をクランクピンと呼びます。水平対向エンジンの場合は1-2番、3-4番、4-5番というように向かい合うピストンが対となっています。この対の部分のクランクの角度は必ず180度の位置で配置されます。ですので、対になったピストンは同じ動きをします。片方が上死点ならもう片方も上死点です。180度の位相で180度開いたシリンダー配置のためです。

一方、同じ180度開いたシリンダー配置でも向かい合う2つのピストンがクランクピンを共有する方式もあります。クランクピンを共有するのはV型エンジンと言われます。通常は90度や60度のバンク角を用いますが、なかには180度のバンク角(つまり水平対向と同じ配置)を使うこともあります。この場合、向かい合う2つのピストンに位相差はなく、それを180度に左右振り分けるので、対のエンジンの動きは180度ずれて片方が上死点ならもう片方が下死点となります。ですので、水平対向エンジンと180度V型エンジンは似て非なるものです。

メリットは振動を打ち消す動きと低重心

向かい合う一対だけを見て見ましょう。右側ピストンが下がる(つまり左に向かっている)ときは、左側ピストンも下がる(つまり右に向かっている)ので、クランクピンにかかる力が打ち消し合うため振動が出にくいというメリットがあります。そしてそのレイアウト上の特徴からエンジンの重心高を下げられるというメリットもあります。また、直列エンジンでは片側が吸気、片側が排気となるので左右重量バランスが取りづらいのですが、水平対向エンジンは左右が対称となるので、左右の重量バランスは取りやすくなります。

デメリットは制限の多いこと

スバル車

水平対向エンジンのデメリットは制限の多さと言えます。たとえばエンジンのストロークを伸ばそうとした場合、水平対向は左右どちらも伸ばさないとなりません。クルマのボディ幅には制限があるので、むやみにストロークを伸ばすことができず、エンジンのロングストローク化が難しいのです。ショートストロークビッグボアの高回転型ハイパワーエンジンは作りやすいのですが、現代のように燃費重視のハイトルクエンジンは難しくなります。

また同様に左右に大きく開くエンジンレイアウトとなるため、点火プラグにアクセスするのも大変な作業でメンテナンス面での手間もかかることが多くなっています。直列エンジンやV型エンジンでは、クルマにエンジンを載せたままでシリンダーヘッドカバーを外すことができますが、水平対向エンジンの場合はスペース的な余裕の面などの問題で、エンジンを下ろさないとならないことが多いのが実情です。

こうした制約の多い水平対向エンジンですが、水平対向エンジンでなければできない左右シンメトリーレイアウトや、低重心化が得られるために、スバルやポルシェでは使い続けられているのです。

諸星陽一
  • 諸星陽一
  • 日本自動車ジャーナリスト協会(外部リンク)
  • 自動車ジャーナリストとして専門誌やライフ誌での執筆活動をはじめ、安全運転のインストラクターも務める。1992年~99年まで富士スピードウェイにてRX-7のレースに参戦。セルフメンテナンス記事も得意分野。福祉車両の数少ない専門家の一人でもある。

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