2009年05月22日
止める・呼ぶ・待つ
「止める・呼ぶ・待つ」という言葉をご存知だろうか。
異常を顕在化させ、不良を流出させないためのルールで、
いわゆるトヨタ生産方式では、一般的な考え方である。
わずかな異常でも、それを見つけた作業者はラインを止め、
管理・監督者を呼び、判断してもらうまで待つということ。
逆に、作業者に「ラインを止めるな」というルールを課すと、
生産性は維持されても、不良が後工程に流れる可能性が高まる。
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モノづくりの品質を決めているプロセスには 大きく二つがある。
一つは、試作や評価を繰り返して、設計図面を確定させたり、
図面通りのモノが作れる製造・検査の条件を決めることによって、
目論見通りの品質とコストで量産できる段取りを整えること。
もう一つは、その条件に基づいた量産プロセスを運営する中で、
不良を排除したり、不良が起こらないようフィードバックすること。
私の中では、前者を設計品質、後者を製造品質と考えていて、
工程設計・生産準備プロセスは前者、購買プロセスは後者に入る。
先の「止める・呼ぶ・待つ」は、製造品質を維持するために、
製造現場で不具合を埋もれさせず、顕在化させる仕組みである。
直列に繋がった量産ラインを止めるのは、簡単なことではない。
トヨタ生産方式で、仕掛在庫や工程間在庫が極小化されると、
ある工程を止めることが、前後の全ての工程の停止を意味する。
全工程の何十・何百人という作業者の仕事を止めるとなれば、
たとえ1分間ラインを止めるだけでも、その損失は少なくない。
しかし、作業者や管理者がラインを止めることを躊躇してしまえば、
製造品質は危うくなる。だから「止める・呼ぶ・待つ」が必要になる。
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クルマのボディについたほんの小さな傷を見つけた時に、
瞬時の判断で、生産ラインを止めるボタンを押せるかどうか。
生産計画に遅れが生じており、残業の恐れがあるとしたら、
このまま見過せば早く帰れるし、問題は起きないかもしれない。
逆に、たまたま1台についていた傷を顕在化させることで、
残る何百台にも傷を付けかねない要素を排除できるかもしれない。
このような現場のプロセスがうまく回っていることが、
製造品質・設計品質改善のPDCAを成立させることにつながる。
欧州車に乗っていると、設計上の目論見性能は素晴らしいのだが、
小さな不具合や不安定さでは、日本車に負けている部分がある。
その要因の中には「止める・呼ぶ・待つ」の効果もあるのではないか。
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Posted at
2009/05/22 04:55:31
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