日経ものづくりの電気自動車特集に続いて、
今度は、
自動車革命というテレビ番組を見た。
エンジンからモーターへの転換を産業革命に擬え、
自動車産業の構造転換を捉えたNHKの報道番組だ。
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中国では今、13万円の電気自動車が街を走り始めている。
中国の法規制上、運転免許や ナンバープレートは不要で、
性能や安全性についてのルールもない領域での製品。
これまで自動車を買えなかった層からも 手が届く製品。
電気自動車が創る市場は、ガソリン車が拓けなかったもの。
山東省の農家から 三年で 成長した企業が、
鉛蓄電池とモーターを組み合わせたフレームの上に、
樹脂を削ったボディを被せて、電気自動車をリリース。
世界の工場となった中国では、部品を安く入手できるため、
小さな企業が、続々と新しい自動車市場に参入している。
動力が、エンジンからモーター駆動に変わることによって、
構造がシンプルになり、PCのように 参入障壁が低くなった。
クルマがコンポーネント産業に変わりそうな予感が見える中国で、
電気自動車が続々と生まれ、さらに欧州にも出て行こうとしている。
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上海のモーターショーの会場を訪れた日産自動車の幹部。
航続距離300kmを謳った
BYDの電気自動車
e6を注視。
巨額の開発投資で、電気自動車リーフの量産準備を進める日産。
そのリーフですら航続距離は160km。スペック上はBYDに負けている。
日産の技術担当・山下副社長が、BYD社を訪問するシーン。
自動車に進出して6年の元電池メーカーの敷地内で e6に試乗する。
試乗前に「車重2000kgはクルマではない」と語っていた山下副社長。
ホイルスピンしながら急発進し、BYDの構内をスムーズに走り出した。
試乗後のコメント曰く、「クルマとしての完成度は高くないが、
よく走り、静か、スムーズな加速で、EV特有の良さがある。」とのこと。
日産幹部が一目置いたBYDのe6は 今年末に市場に投入される。
対するリーフのリリースは再来年で、e6よりも一年以上も後になる。
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中国政府は、電気自動車普及で 13のモデル都市を設定し、
充電ステーション設置や、毎年1000台の公用車需要をつくる。
リチウムイオン電池と永久磁石モーターに使われるのがレアメタル。
レアメタルに強い中国の資源事情が、電気自動車を後押しする。
「中国政府は、電気自動車産業を視野に 2001年から施策を打ち、
この分野で 競争力ある企業を育てている」と科学技術相がコメント。
シリコンバレの企業・投資家も、国家戦略的な動きをチャンスとし、
電気自動車による産業革命の中で、イニシアティブを握ろうとしている。
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インドからは、REVA社が発売した電気自動車が 欧州で存在感を示す。
欧州進出6年。ロンドンでは 渋滞税が後押しし、販売1000台を超えた。
自らのショールームを持たず、一回1500円の手間賃を払うことで、
自社製品ユーザーの協力を得て、新規顧客の試乗を受け入れてもらう。
そのREVAの社長の発言が、番組の後半で、印象的に響いた。
曰く「既存自動車とは技術が違う。既存メーカーに勝ち目は無い。」
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簡単な構造ゆえ、自動車以外の分野からも参入・開発が進んでいるが、
他方、既存の自動車製品の延長として開発された電気自動車もある。
コピー生産で自動車技術を身に付け、周辺産業を成長させた中国は、
既存自動車の市場だけでなく、電気自動車の潜在市場も手中に持ち、
さらにレアメタルという武器を持ち、自動車の産業革命の一角を担う。
日本の自動車メーカーは、エンジン車で磨いたモノづくりのプロセスを、
よりシンプルで多様性を秘めた電気自動車に、うまく活かせるのか。
欧州の自動車メーカーは、確固たる設計思想と官能性能の高さを、
電気自動車という新デバイスを得て、うまく昇華させることができるのか。
電気自動車を取り巻く自動車産業の変化は、ますますおもしろくなりそう。