リチウムイオンバッテリー 考察
目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
 初級 |
作業時間 |
30分以内 |
1
■トピック
①リチウムイオンバッテリーの特徴
②SHORAIバッテリーをクルマで使用する際の容量
③実測による評価
④各メーカーの紹介
⑤まとめ(軽量化の効果、導入時の注意点)
: 以降追記予定
⑥低温特性、冬場の運用について
⑦経年劣化について
☆ ①リチウムイオンバッテリーの特徴 ☆
■超軽量
既存のレーシングドライバッテリーと比較して、圧倒的に軽い!
今回購入したSHORAI(LFX24) は、1.6kg。
■小型ながら高出力
・鉛バッテリーとの比較
鉛バッテリー(40B19)は、重量8.1kg、容量30Ah、CCA270A。
SHORAI(LFX24) は、重量1.6kg、容量16Ah相当、CCA360A。
・既存のレーシングドライバッテリーと比較
ODYSSEY LB680 重量7.0kg、容量15Ah、CCA280A
SHORAI LFX36 重量2.2kg、容量25Ah相当、CCA540A
■超急速充電
10分の暖機で30%→70%まで充電可能(気温22℃、実測)
鉛バッテリーの10倍の早さで充電可能。
以下、デメリットです。
■ 電圧管理がシビア
リチウムイオンバッテリーは、鉛バッテリーより、電圧管理がシビアでリスクがあります。
※注意点
・放電終止電圧以下(9.2v以下)で放置するとセルが破損します。
また、容量20%(12.8v)以下で放置すると劣化が進行します。
・充電上限電圧(14.8v)を超えて充電するとバッテリーが発熱し、ケースが溶解する可能性があります。
また、セルが破損した状態で充電すると発熱し、ケースが溶解する可能性があります。
※乗らなくても問題ない期間について
バッテリー容量、暗電流により異なります。
目安としては、エアコンレス、オーディオレスのランサーでLFX24の条件で、『乗らなくても問題ない期間は3週間(冬場は10日間)』でした。実測結果は後述の『実測による評価』を参照。
■ 低温に弱い
リチウムイオンバッテリーは、低温時に容量が低下します。
また、低温下にしばらく置くと不活性状態となり、始動性が低下します。
※実測結果は後述の『リチウムイオンバッテリーの低温特性』を参照。
■コストパフォーマンスが悪い
価格は3万〜10万円ほどします。おまけに消耗品、かつ、デリケートなので寿命を全うできるとも限りません。
コストを気にしない人向けのパーツです。
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☆ ②SHORAIをクルマで使用する際の容量 ☆
SHORAIバッテリーは、二輪専用バッテリーです。
容量は二輪を前提としたラインナップになっています。
クルマで使用する際は、用途をレーシングバッテリーとして割り切って使用する事になります。
注意点としては、スペック表の容量は、鉛バッテリーと同列で比較できません。
SHORAIのHPにバイク用の鉛バッテリーとの互換表があるので、それを元に5時間率で考える必要があります。
そうするとLFX24で16Ah、LFX36で25Ah相当になります。
◾︎ 競技車両に求める出力
一昔前の競技車両の場合、CCA200Aあたりの出力でも問題ありませんでしたが、今どきの車両は問題があるかもしれません。
特に4駆では、エボ7辺りから電力不足でECUでエラーがでたり、ACD動作不良の話が出ていた為、CCA200Aではヘタリを考慮するとNG。
経年劣化で出力が低下する事も考慮し、CCA300A以上、LFX21、24あたりが無難です。
◾︎ 使用しない時は毎回キルする
以下の理由から毎回キルした方が良いです。
・常時接続するには容量が足りない。
・キルする事で冬場に不活性化しにくくなる。
・バッテリー残量を意識しなくて良い。
・バッテリー寿命が長くなる。
※常時接続の場合、駐車中、バッテリー残量は減り続け、次回乗車時に満タンになる。このバッテリー残量の振れ幅が大きい程、寿命が縮まる(詳しくは、『放電深度』のキーワードで調べてください)
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☆ ③実測による評価 ☆
◽️製品の仕様
SHORAIバッテリーの定格容量に対する電圧です。
静止電圧が残量20%、12.86v以下で放置すると劣化が進行します。
また、残量0%、9.20v(放電終止電圧)以下で放置するとセルが破損します。
充電電圧の範囲は、13.5v〜14.8v。推奨充電電圧は14.4v。
◽️計測結果
エアコンレス、オーディオレスのナンバー付き競技用ランサーにおけるLFX24の計測結果です。
●レギュレータの仕様、充電電圧の確認
・エンジン始動直後の充電電圧 14.3〜14.4v
・エンジン始動中の最大充電電圧 14.42v(暖機中が一番高い)※
・エンジン始動中、充電完了時の電圧 13.9v
・エンジン始動中の最低電圧 13.62v(強制冷却ファン起動時)
※古い車、回生ブレーキ車では高回転時に最大充電電圧になる場合があるので注意
この製品の充電上限電圧に収まっており、問題ありません。
充電速度ですが、20分〜30分程の走行で満充電になります。ただし過充電防止のチップが内蔵されており、90%チョットで頭打ちとなります。(専用充電器だと100%まで充電できます)
●乗らない期間ごとの電圧降下速度
キルせずに接続したままにして、どの程度の期間持つのかを確認しました。
計測条件は、走行による満充電からスタート。
毎週電圧を計測し、残量20%まで降下したら終了します。
走行による満充電時の電圧は13.4〜13.6v あたりです。
・走行直後 13.55v
・1週間 13.30v
・2週間 13.08v
・3週間 12.85v (残量20%)
結果は、1週間ごとに約0.22〜0.25vほど電圧降下し、3週間で残量20%近くまで低下。
※上記は7月の結果です。リチウムイオンバッテリーの特性として低温ほど容量は低下します。
●乗らなくても問題ない期間
残量20%である12.86vを下回ると性能劣化するとのことなので3週間まで。
ただし、細かい事を言うと、バッテリーの特性上、深い放電を繰り返すとセルの寿命が短くなります。また、100%近い充電状態での保管も寿命を縮めます。
その為、定格容量60%〜90%くらいで運用するのがベストと言われています。残量60%までだと、、1週間ちょっとでしょうか。
結局、毎回キルした方が管理が簡単でバッテリーにも優しいです。。
●エアコン、オーディオありのクルマ(2L)の場合
ランサー比で暗電流は2倍ほどでした。
取り付けて確認していませんが、計算上、1.5週間くらい。
実用的とは言えず、低容量のリチウムイオンバッテリー(LFX24)はおすすめしません。
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☆ ④各メーカーの紹介 ☆
リチウムイオンバッテリー化を検討した際、調べた内容をまとめます。
◽️業界の背景
技術的に発展途上にあり、過去リコールが多発。セルメーカーは倒産、買収が繰り返され、中華資本で生き残っている。その関係で現在、バッテリーセルの製造工場は中国に集約されている。
◽️販売元メーカーと製品の特徴
スターターバッテリーの発売元は、この10年ほどで設立された小さなベンチャー企業ばかりです。
その中で比較的資本が大きいメーカーは以下になります。
これらについては、一流メーカーのセルを採用しており、(使い方を誤らなければ)安心して使えると思います。
・SHORAI (米)
二輪用に的を絞り比較的初期から参入。4メーカー中コスパが1番良い、スペック(重量に対する実容量、CCA、低温特性)はライバルより少し劣る。セルは華BYD製(製造中国)
・ALIANT (伊)
SHORAI比で少しスペックが良い、コスパが悪い。現在モデルチェンジ中(X5Rから先行)。セルは米A123製(製造中国)
・super B (蘭)
モデルチェンジ前のALIANTと同等スペック、コスパが悪い。セルは蘭Lithium Werks(製造中国)
・MEGALiFe (華)
最近参入した資本が大きい台湾企業。二輪用、一般乗用車用、レース用と商品ラインナップが多い。他メーカー同容量比で少し重めだが、コスパが良く、実用性も高い。セルは米A123製(製造中国)
◽️一般乗用車向けのモデル
MEGALiFeから一般乗用車向けの製品が発売されました。
セルはA123 systemsの最新セルを使用、低温にも強い。また、セーフ機能(自動カットオフ&スペアバッテリー)を設けることで、セル破損を防止し実用性を確保。
・参考
型番MV-19、重量4.0kg、CCA550A(スペア+200A)、容量25Ah(スペア+5Ah)、定価43400円(国内安売り店で10%off)、寿命5〜7年。
・MEGALiFeスペック表(メーカー公表値)
https://988c6bd7-13dc-453d-9609-c1f555d03c7b.filesusr.com/ugd/9b02bd_f34fd025d8474a66b0432ca060ab67b5.pdf
・メーカーHP(公開資料)
https://www.megalife-battery.com/media 5
☆ ⑤まとめ ☆
リチウムイオンバッテリーは、軽量、高出力、電圧の安定性、超急速充電、端子を外して保管した際に放電しない点など、レーシングバッテリーとしては最高の特性を持っています。
今後、競技車両では必須のアイテムだと思います。
おすすめは、
一般道を自走したり、快適装備がある車両は、最低、ALIANTのX7R。SHORAI だとLFX36の容量は必要。
快適装備のない競技専用車両は、ALIANTのX5R。SHORAI だと LFX21〜27あたり。
あと、電圧管理が面倒な人、長持ちさせたい人はキルスイッチ必須です。
★軽量化の効果
リチウムイオンバッテリーに交換した一番の理由は、軽さです。
今回、N車両→SA車両化でトータル-30kg軽量化しました。
タイム換算だと、
ジムカーナで助手席に人を乗せた場合、1分コースで+0.6秒ほどタイムダウンします。逆算で考えると-30kgで-0.2秒チョットのタイムアップでしょうか。。
ただ、たとえ-0.2秒の効果でも同じコンディション(車重、タイヤ、コース等)で走る競技車両の場合、操作性の違いは体感可能です。(流石にバッテリー単品では体感できませんが)
あと、、レギュレーション上、軽量化可能な箇所は、トランク をカーボン化-5kg、アルミボンネットをカーボン化-2kg、ブレーキ周りで-2kgくらい。
それにしても、軽量化すればするほど、コスパが悪くなります。。
★導入する際の注意点
◽️保証について
一般乗用車用として販売しているMEGALifeのMVシリーズは鉛バッテリーと同等の保証(SHORAIはメーカー指定の二輪のみ保証)となっていますが、それ以外の製品はレース専用品の為、使用開始後のトラブルについて実質保証なしです。
◽️トラブル防止の最低限のチェック
・事前に取り付けるクルマの最大充電電圧をロガー等で確認し、過充電にならないかチェックしてから導入した方が良いです。
・取り付け後、実際に容量が足りているのか、過放電気味になっていないかを電圧計で測ってチェックした方が良いです。
・セルが破損、劣化してくると、充電時にバッテリー本体が発熱します。たまにエンジン始動直後に異常発熱していないかチェックした方が良いです。(劣化の度合いが確認できます)
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☆ ⑥低温特性と冬場の運用について ☆
◼︎氷点下の始動性と実測値
開幕戦1週間前にバッテリーをSHORAIに戻しました。
もてぎの氷点下の気温の中、始動性を確認しました。
※電圧は車内デジタル電圧計で確認
・2019.2.23 東京出発時
時間 4:30
気温 6℃
電圧 13.2v
※クランキング開始と同時にエンジン始動
・2019.2.24 ツインリンク内ホテルから出発
時間 6:10
気温 -3℃
電圧 12.6v
※始動性は冬場の鉛バッテリーと同等。
前日に使用していれば、氷点下でも始動性に問題なし。
色々な条件で計測した結果を踏まえ、LFX24の低温特性をまとめると。
◼︎氷点下で電圧が下がる
・気温5℃程度なら電圧降下は見られないが、0℃以下で電圧降下が見られる。(放置した時間、気温に比例)
・低温下で放置するとセル内部の内部抵抗がゆっくりと上がっていくが、たとえ氷点下でも前回使用から20時間程度なら鉛バッテリーと変わらないレベルの始動性を保つ。
◼︎5℃以下が続くと不活性化する
前回使用から200時間以上経つと内部抵抗がピークに達し取り出せる電流も小さくなる。(不活性化する)
不活性化する気温の目安は、LFX24で最低気温0℃以下、最高気温5℃以下。
不活性状態を判断するには電圧ではなく、電気が流れている際の電流(内部抵抗値)を計る必要がある。
また、不活性状態で暗電流による電力消費は厳禁!(放電終止電圧に達する速度が早い)
◼︎始動時に活性化が必要
一旦、不活性化すると始動性が極端に落ちます。
その場合、以下のいずれかの方法で活性化させます。
・バッテリーの温度を上げる。(10℃以上で2時間)
・バッテリーに電気を流す。(充電、または、電気を使用する)
ある程度の電力を使用すると2、3分後に内部抵抗値が下がり、取り出せる電流が大きくなる。また、電圧も上がる。(いわゆる活性化の儀式)
例えば、セル5回(始動失敗)→1分待ち→再始動を繰り返せば、2、3回目にはかかる。
バッテリー負荷が心配なら、ライトを点けて60秒待ち(13.2v→12.6vに低下)、消して30秒待ち(13.2vに戻る)、始動、などでも良い。
◼︎容量と低温特性の関係性
ALIANTのX6を試す機会がありましたが、SHORAIより低温特性が高かったです。(不活性化しにくい)
ちなみに容量と低温特性は比例します。
冬場も使用するならLFX36や他メーカーの20Ah程度のモデルにした方が良さそうです。
◼︎まとめ
・LFX24でも前日使っていれば、当日氷点下でも始動は問題なし。(出先の会場で始動困難になることはまず無い)
また都内で日差しがある駐車場や屋内ガレージなら、まず不活性化しない。
・特性上の話として、低容量ほど不活性化しやすい。キルしないと不活性化しやすい。
なので、12月〜2月末くらいは、週一の使用頻度でも使用後に毎回キルした方が良い。
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☆ ⑦経年劣化 ☆
CCA低下率、内部抵抗値、電圧低下率を定期的に計測し、低下率をまとめます。
<2020.01.18 追記>
もうすぐ丸2年になりますが、特に不具合ありません。
2年目からは、バッテリー残量を気にするのが面倒になり、預ける時以外は基本的に毎回キルしています。
各セルの電圧のばらつきも無く、専用充電器によるバランス充電は不要と思われます。
<2021.02.09追記>
ランサーは新品鉛バッテリーに変えて車両売却しました。買い替えたGRヤリスは充電制御車なので当分は純正バッテリーで運用します。
(バッテリー買い替え時に、キル不要な大容量のメガライフに買い替え予定)
<2023.12.03追記>
車両売却後、補充電無しで3年弱放置しました。
久々にバッテリーチェッカーで計測した所、SOCはなんと80%、流石です。
10分ほど充電した状態のバッテリーチェッカーの画像をアップします。
充電直後で電圧が高く、SOHは100%。
1週間放置後、値が落ち着いてから再計測、SOHは82%、まあ、そんなもんでしょうね。(3年使用、3年寝かせて18%ダウン、その間、バッテリー上り等異常は無し)
サーキットオンリーならまだ2、3年は使えそうです。
8
☆ 最後に ☆
廃棄するか悩みましたが、流石に勿体無いのでヤフオクで売却しました。(ジャンク品扱い)
あと、ここに記載の内容は、2017年製造近辺のリチウムイオンバッテリーの考察になります。
(同じショーライバッテリーでも製造時期により仕様や性能が異なると思われるのでそのつもりで見て頂ければと思います)
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