
今回紹介するカタログはいすゞの3代目ジェミニです。
この3代目ジェミニは1990年に5年ぶりのフルモデルチェンジで登場し、先代の大ヒットを受けて開発費不足で長寿になりがちないすゞの乗用車としては珍しく通常の間隔でのフルモデルチェンジとなりました。
ボディタイプは4ドアセダン・2ドアクーペ・3ドアハッチバックと歴代モデルで最も充実したバリエーションとなりました。2ドアクーペと3ドアハッチバックはセダンよりも遅れて登場しています。
開発にあたっては親会社のGMの意向が強く反映され、北米において新ブランドのジオにおいてストームとして販売することを主幹に開発されました。
そのためかグリルレスでかなり丸みを帯びたアクの強いデザインとなり、日本人の好み(メッキギラギラで高級感のあるもの)とは大きくずれたものとなり先代の大ヒットから一転して販売不振となってしまいました…
CMは先代同様のカーアクションのCMでしたが、先代が街の遊撃手というキャッチコピーでクラシックに合わせて踊るような優雅なCMだったのに対し、3代目では才なクルマというキャッチコピーでカップルに見せて話すCMだったのですが、何かずれている感じがしますね…先代のCMがCM史に残る程に素晴らしく偉大過ぎたのもありますが…
一方で北米でのジオ・ストームは元々アメリカ人好みのデザインであったことや湾岸戦争による原油高から小型車の需要が伸びたこともあり人気車種となりました。なおストームは日本のジェミニとは異なるデザインで、姉妹車のPAネロはこれを日本に導入してヤナセで販売したものとなります。しかし日本ではPAネロも好みの違いから販売不振になってしまいました。
1991年にはピアッツァが10年ぶりにフルモデルチェンジしましたが、本来ソアラやプレリュードクラスのクーペだったはずが、これも大衆車のジェミニクーペの顔を変えただけの姉妹車となってしまいました。まあ今見ると結構カッコイイのですがもちろんこれも売れませんでした。そりゃ元がジェミニと同じクルマなのに200万以上もした訳ですから…
これらの販売不振によって1991年10月期決算において大幅な経常赤字となってしまい、翌年になってマイナーチェンジでグリル付きの顔に変更して日本人好みの顔にするなど改良を行いましたが好転はしませんでした。
その結果1992年10月期決算においても再び大幅な経常赤字を記録したことによって、ビッグホーンなどのSUVとお得意のトラック・バスといった商用車に絞ることになりジェミニやピアッツァといった乗用車からの撤退が決定してしまいました…
そのためこの3代目が最後のいすゞ自社製のジェミニとなり、4代目・5代目はホンダからドマーニのOEMを受けることになります…
この撤退には赤字によるものだけでなく、「
GMの下請けのようなクルマ造りには意味がない」「
ウチのメインはあくまでトラック」といった
悪い意味でいかにもいすゞらしい現場の声もあったからだと言われています。
その後結果的に国内ではSUVからも撤退し今や大型車専門メーカーになってしまいましたね…いすゞという会社自体は「いすゞのトラック~」の曲で有名なCMのおかげで知っていても、乗用車も作っていたことは知らない人も多いことでしょう…
一応海外ではピックアップのD-MAXをベースにしたMU-XやパンサーといったSUVがあり、完全にいすゞ乗用車の系譜が途絶えた訳では無いんですよね…
モーターショーにはたまにこれらが展示されていますし…限定でもいいので日本に入れて欲しいものです…

コンセプトです。当時のCMにも使われた才なクルマというキャッチコピーですが、何かちょっと違う気がしますね…先代の街の遊撃手というキャッチコピーと比べるとやっぱりインパクトに欠けてしまいます…

イメージ画像です。当時流行りのグリルレスデザインでしたが、どれも失敗に終わりましたね…しかしメーカーの乗用車撤退まで追い込んだジェミニはその中でも一番大きな失敗例だったかもしれないです…後でマイナーチェンジでグリル付きになりましたがどう見ても無理矢理感が強かったですし…

イメージ画像です。フロントとは異なりリアは先代を丸くさせたようなデザインですね。当時いすゞのロゴは現行のロゴに変わる過渡期であったため、このトランクリッドガーニッシュのロゴのみ現行ロゴですが、それ以外はまだ旧ロゴのままでした。
これは同年マイナーチェンジしたエルフも同様でフロントガーニッシュのロゴのみ現行ロゴになっていました。

イメージ画像です。もう30年も前のデザインとは思えない程斬新なデザインですね。このデザインはカプセルシェイプと呼ばれるそうで、Wikipediaによるとこれによって銘打った一体型ボディ構造を持ち、強度重視で厚い鉄板を使用したため、当時の1,600ccクラス車としては車重は重い部類に入るそうです。

イメージ画像です。

またまたイメージ画像です。バブル期の車種らしくひたすらイメージ画像を載せたページが多く凝っていますね。

インテリアのページです。エクステリアとは異なりインテリアは先代のイメージをだいぶ引き続いでいますね。メーター周りに配されたサテライトスイッチは80年代~90年代初頭のいすゞ車に共通していましたね。
ピアッツァに始まりジェミニやエルフ、さらには大型トラックの810や路線バスのキュービックに至るまでこのサテライトスイッチが装備されていました。

インテリアのページです。先代のニューテックシートをさらに進化させたファニチャーシートと呼ばれる独特な形状のシートが特徴です。人間工学に基づいて少し固めの座り心地らしいです。また前後部別のハイトアジャスターを装備していました。

メカニズムのページです。1500ccガソリンの4XC1型と1700ccディーゼルの4EE1型を設定しています。4XC1型は先代の2代目ジェミニから搭載されるようになったエンジンで、アスカで初登場したX系エンジンの1.5L版となります。GMグループ共通設計でシボレーやオペルなどの車種との共通部品が多いらしいです。
4EE1型は2代目ジェミニの1500ccディーゼルの4EC1型をサイズアップしたもので、いすゞの乗用車撤退後もファミリアのディーゼル車用エンジンとしてマツダに供給されたり、同じGMグループのオペル用に供給されていたため比較的近年まで生産していました。ただしこのディーゼル車の4速AT車は凄く燃費が悪かったらしいです…
またサスペンションには「ニシボリック・サスペンション」と呼ばれる4WŞ機構付きのサスペンションを使用していました。
変な名前…と思うかもしれませんが、、、西堀さんが開発したサスペンションだからニシボリック・サスペンションと言うんですよね…マジで。
これは当時流行りだった4WS(四輪操舵)の一つにはなるのですが、他社と大きく違う点として電子制御を使うことなく、サスペンション自体の構造で四輪を動かそうとしていたことが特徴で、いすゞはこれをナチュラル4WSと呼んでいました。
しかしこれによって動きの制御が難しく、だいぶオーバーステアになってしまったそうです…

メカニズムとインテリアのページです。トランスミッションは4速ATと5速MTが設定され、先代にあったAMTのNAVI-5の設定はありません。ATは当時流行りの電子制御式ではなく油圧式となっており、これは単純にコスト削減のためと言われています。
カプセルシェイプと呼ばれるフォルムは包み込むような丸いフォルムとなっており、クラスを超えたクオリティを表現したとされています。

グレード一覧です。C/C・C/C-L・C/C-Xの3種類となります。ジェミニと言えばイルムシャーやハンドリング・バイ・ロータスといったスポーティグレードが有名ですがこれらは別冊となっていました(中の人は持っていないので今回は紹介出来ません…)。
先代にあった最上級グレードのG/Gや商用グレードのT/Tはこの時点ではまだ無く、後に追加されます。

装備です。オプションでサンルーフやアルミホイールも設定されていました。またこの年にクラリオンがアゼストブランドをスタートさせたためか、オーディオにはアゼスト・クラリオンの2ブランドが混在しています。

ディーラーオプションと装備一覧、スポーティグレードの紹介です。イルムシャーとその最強版のイルムシャーR、ハンドリング・バイ・ロータスの3種類がありました。
これらには標準車に無いテンロク(1600CC)の4XE1型とそのターボ版となる4XE1-T型が搭載されていました。

スポーティグレードの紹介を開く主要諸元となります。

裏表紙です。