(番外編) 正しい防水コネクター (防水カプラー) の作り方 その1
目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
 初級 |
作業時間 |
30分以内 |
1
世の中、間違っているやり方ばかり! (もちろん正しい記事もありますが…)
そのため、この整備手帳では防水コネクター (防水カプラ※) を自作で作成する場合の手順・注意点をご説明します。
※コネクターを一般に『カプラ、カプラー、カップラ、カップラー』等で呼称する場合がありますが、この記事では呼び方を「コネクター」に統一しています。
また『端子』はできるだけ「ターミナル」に統一しています、
【この整備手帳を作ろうと思ったきっかけ】
ネットやみんカラ内を見ていると、防水コネクターを自作されている事例や案件がそれなりにあるのですが…
『水の侵入を防止するワイヤーシールが入らない・堅い』
と記載されている方が結構いらっしゃいます。
私が作業を行ったときは「そんなことなかったけどな~」と思いながら写真を見ると…
「取り付け方が間違っている」
…のです。
また、某検索サイトの検索結果だと誤った作り方の手順が (入力された検索文字や手順によっては) 最初に表示されたりする場合もあり誤りを広めてしまっている…。
ワイヤーシールの使い方どころか、ターミナルのカシメを正しい工具でおこなっていなかったり…。
これだと誤ったやり方が減るわけないよなぁ~。
正しい作り方でなければ、スムーズに、そして確実なコネクターへの挿入なんてできませんし、それだとそもそも論として防水機能も発揮されません。
それに正しいターミナルのカシメや防水ができていないと電線が抜けて (取れて)しまい、外れた電線の極性によっては電線が車両に触れて・もしくは水が侵入してショート。
それらは車両故障の原因や、最悪の場合は車両火災につながったりします。
その方だけが間違っているのであれば、残念だな~と思いつつもスルーするのですが、それを見て作業した方もそのまま間違っていて…。その次も…。
間違いの連鎖がずっと続いているようなのです。そしてだれも注意・指摘しないので止まることもない。
それって悲しくないですか?
そんな連鎖を少しでも断ち切りたいと思ってこの整備手帳を作成することにしました。
ここでは例として2種類…
①住友電装 090型TS・II(共通)防水/メス端子
②住友電装 025型TS防水/メス端子 … 写真のワイヤーシール (細線 0.2~0.5SQ / AWG24~AWG20 ) を使う場合※
※②だけでいい!…というお急ぎの方は “その2” の6番からが作成の注意点です。
と、各端子 (以後はターミナルと表記する場合あり) 用のワイヤーシールを使用した端子作りを例にご紹介したいと思います。
(この写真は その2 で使い方をご紹介する②住友電装 025型TS防水/メス端子用のワイヤーシールの写真です。)
※使用している写真のほとんどは、他の整備手帳の写真を再利用しているため、この整備手帳とは関係ないメモなどが写り込んでいますが無視してください。 (見づらくなってしまいすみません。)
2
【①住友電装 090型TS・II(共通)防水/メス端子】
(コネクターを購入した auto-epart さんの作業手順画像)
https://auto-eparts.ocnk.net/data/auto-eparts/product/090TSS/090TSSTMa.jpg
この画像がすべて。こちらを見たら、これから書く説明は不要になる気がしますが… (^_^;)
--
まず防水コネクターが使用されている場所ですが防水・防塵対策のために車外で使用されることがほとんどです。
エンジンルーム、各ドア内、バンパー (パンパーカバー) の中、足廻りなどが多いですね。
そのためターミナル側だけではなくてコネクターの合わさる部分もそのような仕様になっています。
さてここからが本題。
まずワイヤーシールの穴にターミナルを取り付けたい電線を通します。
具体的には写真のような向きで…通す方向はワイヤーシールの細くなっている側をターミナルを取り付ける側に向けます。
ワイヤーシールの表面や穴にはワイヤーシール自体をコネクタに通しやすいようオイルが塗ってありますので、できれば頻繁にぺたぺた手で触らない方がよいです。極力作業の時だけ触るのがおすすめです。(もうたくさん触ったよ~っていう方には…後述します。)
ということで、次はコネクターを取り付けます。
3
電線の先の被覆を 4mm ほどむいて、ターミナル (端子) のかしめるところに合わせます。
私は被覆だけがきれいにむける フジ矢 プロテック ワイヤーストリッパ B型 165mm (PP323B-165) で被覆を剥いてます。これだと細線から太線まで自動車で使用する電線の範囲を網羅しているのでとても便利です。sq 表示も AWG 表記もありますので電線のサイズで悩むこともありません。
また紹介したワイヤーストリッパーだと電線の切断もできます。
このワイヤーストリッパーのカッターで切断すると切断面がニッパーのように押し切られていない、スパッとした断面なのできれいですよ。
とはいえ切断は私の場合ほとんどニッパーでやっていますが…。
ニッパー、ワイヤーストリッパー、電工ペンチ…と持ち替えるので手間と作業時間がかかりますけど…。
ちなみにこのターミナルの場合、対応範囲が 0.5〜1.25sq でしたので、0.5sq (AWG20) の配線を使用しています。
つぎは電工ペンチなどで被覆を剥いた電線の部分だけカシメます。
4
電線が抜けないように注意しながらかしめます。(たまに電線が落ち、カラでしめて電線が無いとかやらかします (^^;) )
抜けてしまったらもう一度やり直しです。(このような状態になったターミナルは基本的に再利用はできません。)
カシメ終わったら電線が抜けないか少し引いてみてチェックします。
このときに電線が抜けたら…やり直しです。
こういうときのためにターミナルは予備を多めに買っておくとイイですよ。
余談ですが…
カシメがうまくいかない!といわれる方も多いのですが、その場合は、
①そもそも、道具があっていない。
カシメはペンチやラジオペンチではできません。(ただターミナルをつぶしただけではカシメとはいいません。) 対象に合わせた適切なサイズ選べる (対応している) 電工ベンチが必要です。
電工ベンチ以外で作業を進めると、ターミナルの仕上がりがきれいではありませんし、あるべき形になっていないためコネクター側にスムーズに差し込むことが出来ません。
また細線なのに太線用でやってる場合や、その逆も然り。対象にあった工具で作業をする必要があります。
【参考リンク】
電工ペンチの正しい使い方 - DIY ラボ
https://www.diylabo.jp/basic/basic-22-1.html
※記事内ではギボシ端子で説明されていますがコネクターのターミナルでも考え方は同じです。
②かしめる対象物 (ギボシやターミナル) と道具のかしめる位置 (かしめる場所、サイズ) が合っていない。
③道具の精度が悪い。(道具がボロい)
④力の加減があっていない。
などが考えられます。
---
例えば、0.2sq の細線、025型などの細線用ターミナルなのに普通の電工ペンチでやるときれいなハート型にカシメることはできません。そもそもカシメ穴が合わないじゃないですか。
一応、私は025型は細線用、それ以外は一般的な電工ペンチを使用しています。
悩むのが040型ですね。意外に細線用でもいけたりします。しかしきれいではないです。
細線用はエーモン工業 細線用電工ペンチ (1431) が便利です。道具屋さんの道具が精度が高くてきれいにできるだろう…とあとでエンジニア 精密圧着ペンチ (PA-21) を追加で買ったのですが、かえってエーモン工業の細線用電工ペンチがきれいにできることが多いです。(^^;) なので初めての細線はとりあえずエーモン工業の細線用電工ペンチを買っておくと良いかと思います。(細線用は、もっといいものが無いか…まだ探していたりしますけど…)
(2025/06/20 追記)
他に細線+自動車配線用として TONE (トネ) の CMP-200 と KTC の AD102A があります。KTC のやつは2024年2月に買ってみました。
少し慣れが必要かな?…と感じましたが可もなく不可もなく概ね良好な印象です。
---
それ以外は HOZAN 圧着工具 (P-706) でカシメています。
090型だとターミナルのサイズが割と大きいのでギボシを締めるときと同じ、写真のフジ矢 万能電工ペンチ 240mm (FA106) でかしめています。(HOZAN 圧着工具 (P-706) でもいけます。)
おすすめなのは HOZAN 圧着工具 (P-706) ですね。ターミナルのカシメで025型以外はどのサイズもこれでいけます。
ただ、きれいに出来上がらないこともあるので…今後も道具追求の旅は続いています。
それでもうまくいかないときはカシメの力が強いことも考えられます。
またサイズが大きい穴でカシメた場合、ハート型にならずにぺっちゃんこになる場合もあります。
多少、形がいびつになった場合はサイドからラジオペンチやニードルプライヤーですこし押してあげると形がととのうかと。
形を整えることでコネクターに差し込むときにスムーズに差し込めて、ロックで"カチッ"と音がしたり、その後のリテーナーがスムーズに閉まります。
(ターミナル取付時スムーズに挿入できて "カチッ" と音がすれば、大抵リテーナーはスムーズにしまります。)
もちろん道具があっていれば、形を整えなくてもスムーズです。
5
さて、ここがこの整備手帳の一番大事なところ。ここテストに出ます。 (^_^;)
通常であれば、次は被覆側のカシメを行うだけで良いのですが、今回は防水型なので、先に通しておいたワイヤーシールを写真のように被覆側のカシメの部分にずらし、合わせます。
6
後は通常通りカシメますが、あまりカシメが強い (深い) とワイヤーシールが裂けることがありますので注意してください。
7
そしていよいよコネクターにターミナルを差し込むのですが…
配線色を区別している場合、差し込む場所を間違えないよう確認しながらコネクターに差し込みます。
きれいに差し込むことができた場合ターミナルをロックする音が ”カチッ” と音がします。音は小さいので聞き逃さないように。またキチンとロックがかかると電線を引っ張っても取れません。
また写真4で行うチェックがしっかりできていないとターミナルだけ残って電線が抜けるという事態も。 (^^;)
さて、「ここまでの作業でワイヤーシールをぺたぺた触ったよ~。」という方。
通しやすいようにゴムを犯さないグリスを塗っておくと安心ですし、作業が楽です。
例えば写真では KURE シリコングリースメイト ペーストを塗布しています。(白くなっているところがそうです。)
8
関連パーツレビュー
[PR]Yahoo!ショッピング
タグ
関連コンテンツ( コネクター の関連コンテンツ )
関連整備ピックアップ
関連リンク