ヴィッツGRMNが納車されて5ヶ月が経過し、あらためてこの車について考えてみます。

まずは「ヴィッツGRMN専用ターボエンジンについて」
この車といったらまず気になるのがターボ化されたエンジンだと思います。車名にも“ターボ”って
入っていますし。
そのエンジンですが、いたってノーマルな量産型1NZ-FEエンジン(109ps)にターボを後付けした
152psのエンジン。この数値だけ見ると「おっ!速そう」っていう意見と、「ライバルの欧州車や
コルトVerRとかはもっともっとパワーあるぞ!」っていう意見が出てくると思います。僕は後者の
方でした。
実際サーキット含め体感した感想としては、“速い”とまでは言えず、“よく走る”が適切な言葉かと。
3000~4000rpmにグワッとくるトルクがあるのですが、それを過ぎてしまえば大排気量NA車のような
自然な加速に変わります。もちろん加速はしているのですが、「あれ?さっきの凄い勢いはどこ
いった?」ってツッコミたくなりますし、他の人に試乗させても同じような意見が多いです。
こう感じる原因としては、歴代ターボに比べて最大トルクが1キロもアップしているのにもかかわらず
最大馬力が2馬力アップにとどまっています。そうなれば最大トルクが出る回転域ではパワフル
なのに、最大馬力が出る回転域では勢いがなくなると感じるのも納得できます。
ではなぜこんなセッティングかという話ですが、ご存知の方も多いですが1NZ-FEエンジンはパワー
アップに対するキャパがあまりありません。
GRMN Vitz Turbo Conceptでは180馬力を予定していましたが、残念ながら180馬力付近で
1NZのコンロッドがへし折れます。きっと開発中にも何本も折ってきたことでしょう。
じゃあ170馬力なら大丈夫か?って話になりますが、ハードな使い方をすれば折れます。
じゃあ160馬力は?市販車だからもうちょっと安全マージンを。っていうので152馬力に落ち着いた
のかと。3000~4000rpmの勢いが続けばきっと170馬力は超えてそうな感じなのですけどね。
そういうこともあり、高回転まで回し切るストレートでの伸びはそんなに良くありません。
フィットやマーチ等の“回せるNA車”とのストレート勝負では大したアドバンテージはなし。
じわりじわりと近づいて追い抜くことはできますが、ターボでごぼう抜きみたいなことはできません。
じゃあターボが活かせるシチュエーションっていうと、コーナー脱出時の低い回転からの
スタートダッシュ。
トルクはNAとは比較にならないので、グッと前に出られます。が、ヘリカルLSD+VSCだと
トラクションにもそこまで余裕がないので、機械式LSDの高回転ベタ踏み立ち上がりには敵わず。
あえてシフトダウンせずにトルクを使って、他車がシフトアップしているスキに車速を乗せる
のがマルかな?
今のところ峠のようなステージでは走らせたことはありませんので、なんとなくイメージですが
サーキットよりそっちの方のステージの方が楽しいのでは?と感じます。
誰とも競わず、限界を極めるわけでもなく、シフトダウン、シフトアップで忙しい運転でもなく、
できる限りギヤポジションは保持したままでワインディングロードをトルクで走らせる。
そんな使い方の方がしっくりきそうです。
それでも「もっとサーキットをパワフルに走らせたい!」って方には強化コンロッドや強化ピストン
がTRD(海外?)からも出ています。
「最初から組んで欲しかった」っていうのが正直な意見ですが、開発者曰く「コストの兼ね合いが…」
でもコストコストって言っていたら、周りを見渡せばもっと面倒で、もっとマニアックな車が
お買い得に売っていますよ?と。
トヨタは平凡な車を大量生産でコストを下げて儲けるのは得意ですが、こういったものは全然ダメ。
GRMNに限らず、ヴィッツRSでも「きっちり(金は)取ってやるからな」と言わんばかりの割高設定。
1.5L+5MTには変わりはないのに値上がりでどんどんマイナー車まっしぐら。
コストを抑えつつ面倒な車を作る手法をそろそろ考える必要があるのでは?と思います。
ちなみによく言われるアクセルのレスポンスですが、あらためてNAのG'sに乗ってみたところ、
「レスポンス悪いな」と感じたので、GRMNで多少改善されているようです。
レスポンスが良い部類には程遠いですが、ヒール&トゥ含め慣れたらなんとかなってます。
スロコンを付けても、あれってスロットルをコントロールしているのではなく、アクセル信号を
操作しているだけなので反応速度は上がらないようです。

そして、「C56型5速マニュアルトランスミッション」
こちらもベースはRSと同じでありつつ、クイックシフトと強化エンジンマウント類によって
かなりカッチリとしたフィーリングになっています。
最初は「すごく重い!」という印象が強いのですが、慣れてしまえばかなり快感な
シフトフィールであると思います。これに慣れてからというもの、これ以上に好きなシフト
フィールの車になかなか出会えず。
惜しいのはシフト(縦)方向は気持ち良いのに、セレクト(横)方向のセッティングがいまいち。
左方向のストロークと、右方向のストロークが違い、右側だけ超クイックで5速か3速かわかり
づらいです。
ニュートラルのポジションも新車時では若干左寄り。なので余計5速が3速に感じました。
僕の車は力技で真ん中にしてありますが。
この辺の詰めも完璧だったら、C56ミッション最終完成形と言っても差支えないでしょう。
ギヤ比に関してですが、RSと変わりはありませんが、タイヤ外径が少しだけ大きいので実質少し
だけハイギヤード化されています。
高速を走ればもっとハイギヤード化して欲しいですし、ミニサーキットではローギヤード化して欲しい
っと欲を言えばキリがないですが、5速ミッションとしてはバランスの良い際どいセッティングかなと
思います。スターレットから基本同じミッションなのでGRMN全く関係ありませんが(笑)
後付けできないものなのを分かっていて強いて言えばリバースのシンクロが無いこと。
前進直後にリバースに入れると、ギャーーー!270万円の車なのにすごい萎えます。
ワンテンポ遅くしてゆっくりリバースに入れても、ギャン!という安っぽい音が出てしまいます。
とまぁ僕が感じたことを素直に書いてみました。
評論家でもないですし、感じ方も人それぞれなので話半分に聞いといて下さい。