ホンダ、6人乗りの新型ハイブリッド車「ジェイド」を発表!
(autoblog、2015年2月12日)
ホンダ ロー&ワイドな乗用ミニバン「JADE(ジェイド)」を発表
(同、2015年2月13日)
ライバルは「プリウスα」!3列シートを備えたハイブリッド専用モデル「ホンダ ジェイド」/渡辺陽一郎 (1/3)
(オートックワン、2015年2月12日)
【ホンダ ジェイド 発表】先代 オデッセイ と ストリーム 統合した新ミニバン
(ゆめ痛 -NEWS ALERT-、同日)
本田技研工業は、新型ミニバン「ジェイド(DAA-FR4)」を、12日木曜日に発表し、13日金曜日に発売しました。
・6人乗りの新型乗用車「JADE(ジェイド)」を発売
(本田技研工業ニュースリリース、2015年2月12日)
・製品情報
(同、2015年1月8日先行公開、同年2月13日本公開)
モデルチェンジしたオデッセイが、エリシオンと統合されてオデッセイらしさを失ってしまいました。
それに代わる、低車高ミニバンです。
そして、ホンダによるハイブリッド専用車種の、第三弾です(第一弾:ヴェゼル、第二弾:グレイス)。
今の車はグローバル化や居住性や安全性などを理由に大型化する一方であり、しかし道路や駐車場などのインフラストラクチュアは旧来のまま。
当然、狭い道路は走れず、機械式立体駐車場にも入りません。
今度のジェイドは、初代~四代目オデッセイや
ストリームといった低車高ミニバンの跡を受け継ぎつつ、そんな需要に応える車として、待望されていました。

2年前に発表された
コンセプトカーや、先だって発売されていた中国仕様「
東風本田汽車 傑徳」は、中々にスタイリッシュ。
オデッセイほどマイルドヤンキー向けでなく、ストリームよりも高級感があります。
(個人的にはスペックにはあまり関心がないのですが)後輪ダブルウィッシュボーンサスペンションというのも、往年のオデッセイを受け継ぎます。
案の定3ナンバーサイズになりましたが、これは中国仕様が先に出来上がっていたので止むを得ませんし、日本国内においても
フィットシャトルハイブリッドとの同士討ちを避ける意味合いもあるでしょう。
より小型が欲しければフリードハイブリッドもありますしね。
しかしいざ蓋を開けてみれば、些か微妙だったようです。
・ホンダ新型ジェイド 価格予想やスペックなど軽くまとめてみた
(くるまン。、2015年1月17日)
・ホンダの新型ミニバン「ジェイド(JADE)」まとめ 価格や性能比較など
(車ライフ速報、2015年2月2日)
・ホンダ ジェイド ハイブリッドの3列目シートは、もはやポルシェ911のリアシートより狭くて使いモノにならない
(サイ速、2015年3月4日)
その構造は、色々と無理をしているのが見て取れます。
しかもその殆どは、なぜこうしたのか理解に苦しむもの。

6人乗りしか設定がなく、しかも2列目は左右とも固定式肘掛があって独立した、豪奢なキャプテンシート。
足元を広く取ろうと後部へスライドさせると、タイアハウスを避けるため、中央寄りへ下がる。そのせいで余計窮屈になります。
またそれによる弊害として、3列目への乗り降りや移動が、かなり難儀しそうです。
その3列目といえば、只でさえアクセスしにくそうな上に、扁平で座り心地が悪そう。
大人6人乗りを謳っていながら、その実明らかな補助席です。

僕は数年前に初代オデッセイに乗せてもらったことがありますが、あちらは2列目同士の空間は開いており、1列目にもセンターコンソールもない分、見た目によらず広く感じました。
故に、ジェイドの車内空間も、自ずと想像が付いてしまいます。
日本ではミニバンがなぜ売れるのか、それも多人数乗車可能であればあるほどなぜ売れるのか……それを踏まえれば、本来の姿と思われる5人乗り仕様が導入されなかった理由や、むしろ大人6人乗りであると銘打たなければならない理由は、自ずと想像が付きます。
しかし多人数乗車を求めるのは子育て世代であり、そういう家庭は子供の世話が即座にできるような構造の車を求めるはず。
こんなに3列目へのアクセスが不便であれば、チャイルドシートに収まる幼児の世話が、果たして容易に出来るでしょうか。
そういう家庭は、大人6人が本当の意味で快適に乗れ、天井が高く、スライドドアの、別のミニバン(それこそ現行オデッセイとか)を求めそうです。

低い全高の中で広い車室内を実現するために、センタートンネルのない内装にせざるを得ず、そのためにFFのみであって4WDは無し。
更に、リチウムイオンバッテリーはセンターコンソール内に収め、燃料タンクは2列目シートの真下。ホンダのお家芸「センタータンクレイアウト」ではありません。
かなり無理を感じる構造です。
3列目シートの着座位置が高いのは、タイアハウスを避けるためであろうことは、想像が付きます。
しかもダブルウィッシュボーンサスペンションのせいで、後輪足回りは構造が複雑になる上に場所を取るので、尚更シート位置を嵩上げするしかない。
そのせいで左右や足元は窮屈で天井も低くなったのですが、中国仕様ではそれを逆手に取って補助席とし、そもそもデッドスペースとなった足元へ燃料タンクを配することで、デメリットを相殺していました。
合理的な設計です。
しかし日本仕様は、燃料タンクの位置を変えただけで(どういった理由で変えたのかは不明)、3列目シートの問題は据え置き。
3列目シートの存在意義に、益々疑問符が投げかけられます。
リチウムイオンバッテリーも、特殊な位置に配したせいで、熱対策にはかなり苦慮した模様。
しかも、本来ならセンターコンソールとして小物入れとなるはずだった場所を、犠牲にした結果でもあります。
にも拘わらず、それほどまでの無理をしておきながら、コストが嵩んで車両本体価格は跳ね上がり、折角これで培った技術を他車種へ水平展開することは難しいとも。
本末転倒。
ジェイド(翡翠)という名に反して、オーソドックスな白や黒や銀が中心であり、コンセプトカーと中国仕様にはあった緑色がないのも、残念な点。
ジェイドは主力を中国市場に据えた車であり、日本市場はあくまでおまけです。
そもそも初お披露目が「
上海国际汽车展2013(第15回 上海国際モーターショー 2013)」だったことからも、それは明らかです。
「仮想敵は、
トヨタ自動車 プリウスα」というのも、後付けっぽく聞こえます。
恐らく、当初は中国専売車として1.8Lガソリンエンジン仕様のみで開発を進め、1.5Lハイブリッド仕様の予定などなかったのでしょう。
しかし、新型オデッセイが普通のミニバンになったことを憂うファンが多く、又ホンダとしても、空白となった低車高ミニバンの穴を埋める存在が、急遽必要になった。
斯くして日本でも販売することが決まったものの、しかし日本ではハイブリッドでないと売れない。以前と同じ轍を踏まない為にも、オンリーワンの付加価値は必要。
折しもホンダでは、丁度ハイブリッド展開の真っ最中。
個人的な見解ですが、そんな事情により無理矢理ハイブリッド化したから、これだけの無理が生じたのではないでしょうか。
考えは分かるのですが、そのせいで、中国仕様の完成度の高さが、全て裏目に出ています。
まさに“角を矯(た)めて牛を殺す”です。
「大人6人乗り低車高ミニバン」というより、「都合により6人乗れるが、基本的には大人4人乗りの、ステーションワゴン型MPV」と割り切ったほうが、色々と余裕が生まれたのではないかと思います。
現に中国仕様は、明らかにそう見えるだけに。
まあ確かに、今は少子高齢化の時代。
都心部や県庁所在地のタワーマンションの立体駐車場に入るサイズで、基本的に3~4人の核家族が大きな荷物と共に乗り、祖父母や友人知人などたまに6人乗る。
そういう使い方であれば、理に叶っていると言えます。
それに、
トヨタ自動車 ウィッシュ、
日産自動車 プレサージュに牙城を崩されたとは言っても、本来この分野はホンダが切り拓いたもの。
旧オデッセイやストリームの跡を受け継ぐものとして、期待もしています。