前回の続きになりますが、新型V90をじっくりと見ていきましょう。
(実車を前にして)
まず長く、低く、格好良くなった、というのが第一印象です。特に前輪とAピラーの間と後ろのオーバーハングが長く感じられます。前輪はギリギリまでフロントエンドに持ってきており、思い切って車高を低めたことと相まって、FWDベースでありながら、BMWやEクラスといったRWDベースの高級車にも通ずる流麗なスタイリングといえるのではないでしょうか?
競合車と諸元を比べてみると、全長順に並べてみましたがほぼ同じサイズであることが分かります。幅は一番広いですが長さと高さは3番目で、第一印象は大きく見えましたが、むしろ他車と比較しても小さい方なのが予想外でした。
A6アバント:4,980mm×1,875mm×1,495mm
Eクラスステーションワゴン:4,940mm×1,850mm×1,465mm
V90:4,935mm×1,880mm×1,475mm
5シリーズツーリング:4,915mm×1,860mm×1,490mm
ではV70はどうかと諸元を見てみると、4,815mm×1,890mm×1,545mmと、V90は、確かに全長はより長く、高さはより低く、そして幅は狭くなっています。V70のあの独特のスタイル(全長のわりに横幅が長く、リアゲートが直立している)は、諸元を見てもV90には引き継がれていないことが分かります。
話は逸れますが、そういえば大昔にクルマ評論家が、フロントミッドシップとしてホンダ車に採用された類似の配置が格好良さ優先で特にFWDの場合はトラクションに不安があると酷評していたことを思い出しました。AWDだと関係ないと思いますが、実際あれは的を射た指摘だったのでしょうか?またV90のリアゲートはV70に比べて傾斜が強くなったのも特徴と思われ、これも昔のクルマになりますが、ホンダアコードワゴンCF6/7/CH9/CL2型(1997-2002年)が思い起こされました。
話をV90に戻しますが、傾斜したリアハッチはスタイル上格好良く、ハッチドア開閉にスペースを取らないという利点もありますが、一方、積載能力の面ではマイナス影響が懸念されます。が、ハッチドアを開けてみると長大なオーバーハングを活かして積載スペースは大変広く、実用上まったく問題ないと思われました(私の使い方では過ぎたるものかもしれません)。
(乗り込んでみて)
ここは現愛車ボルボS60との比較ベースで書いていきたいと思います。ある意味で当然といえますが、明るいアイボリー色の革内装やウッドトリムと相まって、高級車感が溢れていました。特にInscriptionグレードは、シートも柔らかく感触の良いナッパレザーを奢っており、またベンチレーション機能や各種サポート調整、さらにはマッサージ機能も付くなど至れり尽くせりでした(家内はマッサージ機能に感心していました)。実車を見る前はこのような贅沢装備は不要だなと思っていましたが、実際に乗り込んでみると魅力的で、CCであれば余分にお金を払ってもMomentumより、Summumが良いのではないかと気持ちが揺らぎました。前席空間としては、少し横がゆったりしているかなとは思いますが、基本はS60と変わりませんし、(ボルボの太くて小径の)ハンドルを握った感じや、前方視界などには違和感を覚えませんでした。ただし、運転席で体を動かしたとき頭が天井に触れそうになったことからやはり室内高は低めにデザインされているのではとの印象です(確かではないですが)。
次に新世代になって一新された前席インターフェースですが、これも第一印象は良好で、スイッチやボタン、ダイヤル類の数が随分と減って、ミニマムのオーディオや空調の操作ボタン、ドライブモードの切り替え、イグニッション、パーキングブレーキといったもののみが残されてスッキリしています。その他は基本、コンソール中央にある大型ディスプレイに集約されていることは皆さんもご存知かと思います。
短時間触ってみての印象ですが、画面への映り込みやミスタッチによる誤動作の低減などクルマのために独自工夫されていますが、操作感は想像どおりタブレットそのものといったところです。体系は良く作り込まれていますし、殆どの項目は一度設定すると運転中に変更することはなく、操作自体も使っているうちに慣れるとは思いますがS60のような手探り操作は基本無理なのでその点は注意が必要でしょう。また、今後2~3年はユーザーからのフィードバックにより、使い勝手もさらに改善されるのではないかと想像(期待)します。
メーター類は、トレンドに沿ってフルデジタル化されています。スピートメーターとタコメーターの間にナビ画面が表示され、前述のセンターディスプレイとのデュアル表示になるところなど、最近のインターフェースの進化には感銘を受けました(写真ではディスプレイにピントがあっておらず恐縮ですが)。
なお本車にはオプションとして45万円もするS&W社製高級オーディオシステムが装備されていました。ラジオ放送しか聞いていませんが(笑)、音の広がりや音質はやはり別次元だと思いました。幸か不幸か私はクルマで良い音で音楽を鑑賞する志向はないので、V90を購入するとしてもこのオプションは選ばないと思いますが、音楽好きの人にとっては確かに一考に値するのであろうな、と思いました。
最後に後席ですが、S60に比べて、一回り~二回り余裕のある空間が実現しています。ナパレザーのシートの座り心地が良いのは当然として、横方向、縦方向には断然広く、特に足元周りのゆったり感は最高でした。これは全長を伸ばした恩恵が出ているところだと思います。開口部も広く乗り込みも容易でした。ただし、後席のシート設計としては、あくまで2プラスアルファの範囲内であり、中央席を含めて3名がほぼ同等に座れるかといったらそれは難しいことは類車と同じです。子供が3人いる身からは、ここは結構重要なポイントではありますが、これを解決するためには、同じボルボであればXC90のような高床の3列シートも備えた大型SUVか、シトロエンC4ピカソのようなミニバン的なクルマに行かざるを得ず、一番悩ましいところではあります。まだ結論が出ていないのですが、子供ももう大きいので、ここは割り切ってしまおうかというのが今現在の心境です。
子供がいない、あるいは二人以下の方には関係のないことで長々と書いてしまい恐縮ですが、クルマメーカーに、セダンやワゴンといった車種でも後席に3名がしっかり座れるクルマをもう少し真剣に考えて作って欲しいなと日頃から思っているので、敢えて書かせて頂きました。
また長くなりましたので今回はここまでとし、次は運転してみての感想などを書いてみたいと思います。
了
Posted at 2017/02/26 16:47:12 | |
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