ある物事の価値を判断する際には、それが世に現れた時もしくは生起した際の状況や環境、雰囲気、あるいはその時代の流行や主流となる考え方といった諸事とともにその価値を推し量る、更には評価者のその際の印象や感動をも価値の一部として評価する方法があります。
一方で、その物事が後に与えた影響や、短期的な価値観や流行の変遷、あるいは当事者の意図といったものを排除して、ある意味普遍的な、総合的な価値を判断するために、ある程度の時間を置いてから改めて評価してみることも、また重要な手法といえるでしょう。
クルマのエクステリアデザインにもそのことが当てはまります。10年、20年前のクルマを改めて見てみると、その価値の素晴らしさが再確認できるものと、逆に「あれ、あの時なんでこんなクルマが格好いいと思ったんだろう」と思うようなクルマがあるのもまた事実です。
で、下の写真は1966年に登場した初代カローラになります。
45年を経て改めて見て皆さん如何感じられたでしょうか?私は悪くない、いや積極的に良いデザインではないかと思いました。フロントグリルからサイドのあたりは特に機能的であり、シンプルながら味気なくならないぎりぎりのところに落とし込まれてデザインされているのではないかと感じました。
国民車構想に呼応するかたちで登場したトヨタパブリカの上級車種として、その趣旨は引き継ぎつつ、より自由に設計できたこと、またパブリカのノウハウを活用できたこと等から、良いクルマとして登場できる素地は整っていたと言えるでしょう。また、当時の日本の技術レベルでは、贅沢や凝った作りを訴求することはやりたくてもできなかったでしょうが、そのことが却って良い結果に結びついたのかもしれません。
現代のクルマから見たら性能的には比較にならないローテクであり、当時の欧米車とくらべても大きく見劣りしていたのでしょうが、初代カローラのデザインには紛れもなく優れた工業製品としての普遍的価値と、設計者の才能が感じられるのではないでしょうか?
そして11代目の新型カローラには、初代ほどの普遍的価値があるのか否か、それを判断するには45年の時間は不要なのかもしせません。
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余談になりますが、今回のブログを書いていて、いわゆるヒストリックカーを愛好する方の気持ちの一面が分かったような気がしました。上に書いたように、時を経ることで、付随的なものが取り払われ、クルマの普遍的な価値が明確になるならば、その価値を認め、愛することには大きな楽しみがあると思うのです。
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Posted at
2012/06/09 17:03:22