
9/21日…関東では秋ヶ瀬の80's&90'sヨッコイオフが開催されていましたが,東海地方のお知り合いはほとんどが新舞子に行かれるとの事前情報で,9月から本来の会場に復帰した新舞子サンデーに行って来ました.
前日,LEONISさんから謎の外車レンタカーで参上するとの予告メールをもらっており,10時過ぎに会場について見ましたら,すぐ後ろから,
たまらなくテイスティ。な
シトロエン・クサラで,LEONISさんのご登場でした.
このクサラ,会場に着くなり,いきなりこの個体の前オーナー様にお声掛けいただき,飛び石傷跡や劣化部分の説明など,多分現オーナーのレンタル屋さんもご存じないほどの様々なご説明をいただけました.いや〜新舞子サンデーってすごい集まりですね…たまたまレンタルした車の前オーナー様が参加していて,しかもすぐに見つけてもらえるなんて…
で,会場はチョイチョイ見学しつつ,早速LEONISさんと,クサラの詳細観察が始まりました.
・概要
この車両は,初代C5風に
純正魔改造された後期型.
寸法では,4190mm×1710mm×1405と,当時のCセグでは,セダンとハッチバックの平均値を取ったような値.比較対象にカローラを挙げると,同時期の120カローラハッチバック(ランクス)が4175×1695×1460,同時期のゴルフⅣが4155×1735×1455なので,これら実用性を取った車種より,ちょっと長くてちょっと低いプロポーションになっている.寸法には現れないが,クサラはこれらの同クラス他車よりもリヤハッチを後席頭上からリヤハッチを伸ばし,大きく寝かせているため,数値の差以上に伸びやかな印象を受ける.その分,リヤ席後方上部は積載スペースにならないので,高さのある箱を荷室に積むには適さない.高さがある荷物の場合は,後述のリヤ席折り畳みで対応できます.
このクラスで実用性ばかりを前面に出すと,カローラやゴルフと真っ向勝負することになり,
おしゃれ泥棒たるおフランス人気質
(余談:イギリス=腹黒紳士)には許せなかったようで,ソコソコの実用性とスタイリッシュなハッチバックを身にまとってみた…という感じでしょうか.これも前期型ではXantia風味のシックなデザインで統一されていたのですが,マイナーチェンジは東洋の神秘の如き魔改造によ(ry
とにかく,強敵との真っ向勝負を避け,独自の存在価値を探したシトロエン
クサラ.現実的なライバルは,初代メガーヌやアルメーラあたりなのかもしれません.3ナンバーとはいえ,わずか10mmのオーバーなので実質的なサイズは5ナンバーと同じ.まだ全幅インフレに陥る前の貴重なフランスCセグですので,日本の細い道での実用性を考えると,限界ギリギリで通れるサイズのなかなか美味しいフランス車なんですよね.
・フロントビュー

この顔が時代を表す
(純正魔改造)
前期のすっきりした小型Xantiaっぽい顔の方が好みですが,この時代はこういう顔にこういう色が流行っていたのも事実.2代目インプレッサと近い雰囲気はあります
が,顔だけ直した純正魔改造状態.
・リヤビュー

スーパーリッド装備
パッと見はトランクの短いセダンに見えますが,当然のごとくシトロエンの大好きなスーパーリッド=5ドアセダン=一部に大ウケ.
(一般にはウケない)
ナンバー上のガーニッシュとバンパーモールが黒いと,ワンポイントが効いてオシャレに見えるんですが…
・サイドビュー

モチーフはボブスレーかも?
(アスティナ+アプローズ÷シトロエン)
リヤオーバーハングはかなり短いながらも,Cピラーを太く寝かせてAピラー・Bピラー・Cピラーの前のラインとリヤガラスのラインの延長線が,1点に集中するようなデザインになっています.フロントタイヤとリヤタイヤは,それぞれAピラーとCピラーで6の字状に,ホイールハウスに各ラインの延長線が正接するデザインですね.リヤドアはこのデザインを成立させ,さらに開口部をリヤフェンダーの前側を全て覆うようにしてあるので,ドアの開口面積の割に,張り出しの大きなリヤドアになっています.開閉時は胸や腹を打たないように注意が必要.
・エンジン&ミッション

フルカバードのエンジンルーム
(ただしほとんど乗ってるだけ…爪割れてるから)
エンジンは1.6LのNA,DOHCで,108ps/5800rpm・15.0kgm/4000rpm.性能は実用エンジンそのものですが,その割りに日本では税金が2Lと同じになってしまうのが辛いところ.向こうでは1.4と1.6でクラスが変わるので,日本では1.5を用意できないと大衆車としては土俵に上がれませんが,そもそもそういう勝負を挑んでないということが,1.6Lと2.0Lに現れていそうです.この時代にしては時代を先取りした電子制御スロットルが特徴ですが,これは多分オートクルーズを設定した影響と思われます.他は特に変わったエンジンでもなさそうです.組み合わされるミッションは,3モードを切替できる電子制御付きの4ATで,シフトレバーはゲート式.
・室内
室内は普通の布シート仕様で,プラスチック+布のフルトリム.インパネも普通のパキパキのプラッチックですが,割れたりベトついたり縮んで隙間ができたりしないので,これはこれで潔くて好印象.もちろん,ライバル他車に比べれば見劣りはしますが,シトロエンを選ぶ人はそういう視点で選ばないでしょうし…ここでケチった分は,その分丸ごとシートにお金をかけているようです.
シートですが,形状は特に変わったもの…でして,フロントシートバックはリヤ席の膝前スペースを拡大するために,思いっきり背面をえぐってあります.その割りに,乗り心地は薄っぺらくなくて,座面はソフトなのに底付き感なくしっかり体をホールドしてくれ,シートバックは背中に吸い付くようにフィットする感じが独特で気持ちが良いのです.
リヤシートもフロント同様の座り心地を実現しており,シートバックは6:4分割可倒,ただしそのまま倒すと荷室床面との段差がついてしまい,大きなものを積む場合は,左右一体の座面を起こしてシートバック両方を倒せば,荷室からフラットな空間が作れます.積載性もスーパーリッドのおかげで,大物であれば後方から入れるのが便利.雨の日でもスーパーリッドがある程度は屋根になるので,荷室がズブ濡れになることはなさそうですし,ヒンジが前方にあるので,スーパーリッドを開閉した際に,車両後方への張り出しが小さいのは,ゴルフに対する数少ないメリットでしょうね.


うねったコンソールデザインがフランス的
運転席周りは,高級感と言うのとは対極にあるイメージ.どちらかと言うと軽トラのような実用性を優先したつくりになっていますが,全体がラウンドした形状になっていて,90年代後半~2000年代の雰囲気で,水平・垂直の直線で構成していないのがフレンチの雰囲気でしょうか…オーディオは他にも色々な機能がついたコンピュータと一体になっているのですが,フランス語なので何を言っているのかワカランテーム.せめて英語ならわかるかもしれないですが,操作方法も良くわからないので,こいつと仲良くなるためには,最低限のフランス語(言語設定をするために必要な単語)を勉強する必要があるのかもしれません.あと,ルーバーがリンクでつながっていて,角度を変えても見た目がすっきりしているのとかは,こだわりなんでしょうね.

メーターはすっきりとした4眼式
スピードメーターとタコメーターが同じ大きさで並んでいるのも,この頃にはよく見られた配置.タコメーターの数字が2桁とか,水温計が(精度は別にして)温度表記があるのが日本車と違うところでしょうか…非常にすっきりとしていて見やすいメーターです.
スイッチ類は,右ハンドルでも左がライト・ウインカースイッチ,右がワイパースイッチです.ウインカーを出そうとして,日本車の感覚でワイパーを動かしてしまうのはお約束ですね.
あと,クルコンがついているので斜め下側左右にスイッチがついていますが,こちらは試していませんので操作性は不明.
・操作系
ステアリングは標準的なφ370mmぐらいのウレタン製.マイチェン後なので『へへ』のエンブレムがメッキ風のペイントがされたものになっています.パワステは油圧式で,日本車に比べるとアシスト量は少なめですが,電動パワステのような,わざと作っている重さではないので,不自然さはありません.アクセルは欧州車ですが吊下式の一般的なタイプ.ペダルの表面にはゴムが張られていませんでしたが,これが標準なのか,はがれたままなのかは不明.滑り止めの凹凸もないので,どちらかわかりませんでした.このアクセルペダルは,電スロのため,ワイヤーを引っ張っているわけではないのに結構重く,そのフィーリングもザラザラした感じがあります.ブレーキペダルも特に変わったことはありませんが,同時期の国産車に比べると少し重めでした.シフトレバーは前述のゲート式で,メーター内にゲート形状を模したインジケーターがあるので,初めてでもレンジ変更は手探りでOK.4ATでD,D3,2…というホンダ式というか,O/Dスイッチが別体になっていないタイプです.
・走行インプレ
新舞子マリンパークの駐車場を出発して,例のうどん屋まで,自動車専用道路と市街地を走りました.
まずは,自動車専用道路ですが,60km/h以上の巡航がこの車のハイライトであることがよくわかります.重めのステアリングフィールも,アクセルペダルも,巡航時の頻繁ではない操作のときに,落ち着くセッティングです.エンジンはSPEC以上に低回転向きに振ってあるようでしたが,実のところは電スロのセッティングが,2/3ぐらいで全開になるセッティングのようです.のこりの1/3はキックダウンスイッチとしての機能ですが,そもそも奥まで踏むのにはかなりの踏力を意識してかけないと踏み込めないので,踏みすぎて暴走…みたいなことにはならないと思います.
ATは,ロックアップをしたら開放しない制御で,アクセルだけで速度調整がしやすいので,私が気に入っているヴィッツ系やNCVカローラ以降のトヨタ・ダイハツの4ATや,SKYACTIV-DRIVEに近い巡航状態です.ただし,シフトショックは結構大きく,国産の優秀なATに慣れていると,雑に感じます.そもそも頻繁なシフトをしない走り方を狙っているので,変速の機会が少ないのでしょうかね.
足回りは結構固めでフロアは路面の凹凸に合わせて振動していますが,シートが優秀なので,座っている体にはきつい振動は来ません.やはりシートの出来が最高といわれるフランス車.特に普通の車のシートでは,思想の違いを感じることが出来ます.
自動車専用道路を降りて,市街地走行になると重いステアリングやアクセルペダルが,ちょっと重すぎると感じました.国産車が得意としているフィールドですが,シトロエンはもう明らかに苦手ゾーン.劣化した路面の凹凸はゴトゴト拾うし,交差点を曲がるときにはハンドルを回す力が要求されます.乗り心地については,優秀なシートがカバーしてくれますが,狭い路地を右・左とフルステアを切って曲がるのは疲れますし,アクセルの重さも,頻繁に踏み込むのには,しんどいなと感じます.1~2クラス上のディーゼル車で取り回しに気を使って運転している感覚に近いです.
また,電スロ特有の発進~低速域における応答遅れがもたつきを感じさせますので,発進停止の多い市街地は苦手な車でした.しかし,トヨタの初期電スロ車のような,動き始めに過剰にスロットルが開かず,飛出は抑えられているので,ゆっくりと発進できるのは,初期の電スロ車にしては,マシな制御だと思います.
・総評
総じて,シンプル・シックでスタイリッシュなのがこの車の魅力.そして,お金を掛けるところ(シート)にはシッカリとかけ,かけないところ(インパネなど)は割り切った潔さが,さすがの車…車格に囚われない,シトロエンの独自性は,たとえハイドロでなくても生きていることがわかりました.
また,走りについても同様に,選択と集中をしてしまっているのが,潔くて心地良い…こいつは最初から万人ウケは狙っていない,シトロエンとしての存在を,静かにアピールするのがフレンチの粋なんでしょうね.
余談ですが,きっとダイハツはアプローズで,こういう車を作りたかったんだろうな〜という感じがしますが,フレンチの粋ではなく,大阪の粉モンソース味になってしまったのが,残念なところですね.
このような面白いレンタカーがあること,それを体感させてもらえたLEONISさん,ありがとうございました.
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試乗 | クルマ
Posted at
2014/09/22 01:54:27