![[試乗] VW ポロTSI vs スズキ スイフトXL [試乗] VW ポロTSI vs スズキ スイフトXL](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/019/896/975/19896975/p1m.jpg?ct=6bcd5ba41dce)
EuroFordClub関西オフの合間に,神戸市内の各ディーラーにて自分にとっての「最も気になるクルマ」たちに試乗させていただいた。
お取りはからいいただいたSTS.さん,ポロTSIに試乗させていただいた
VW Duo 北野坂さん,
スズキアリーナ芦尾さん,ありがとうございました。
まずは,ポロTSI ハイライン(1.2Lターボ+7速DSG)。

TSIとDSGの組み合わせは初めてではなかったが,1.2Lという小排気量でこの組み合わせは初めてだった。回転を抑えてシフトアップする様は,理想的な「エコラン仕様」だった。加速時のアクセルはやや重く,エンジン音からももどかしさを感じる。これは,より排気量の大きいTSIなゴルフでは感じなかったことだ。しかし,実際の加速は十分に速く,アンダーパワーと思えるほどではない。慣れればかなり良い燃費をたたき出すことができるだろう。なお,変速ショックは減速時にのみわずかに感じた。
試乗した個体はまだ足回りの慣らしが済んでいないようで,乗り心地はやや堅かったが,ロールには不快感がない。ボディはシャシーとの一体感や剛性感が明確で,コーナリングは軽快で運転はすざましくラクである。とくに,シャシーの剛性感は際だっており,その上に軽量かつブレない骨格を持つボディが乗っているかのような感覚を覚える。
エンジンルーム~車内までの遮音はトヨタ車のように徹底しており,コンパクトカーとは思えない上質感をまとっている。プレミアムコンパクトを謳ういくつかの国産車に見られる中途半端な対策や演出とは違う。最新の高い技術がクルマ全体に施されていることが走行中に常に実感できる。先代前期型のポロに感じた退屈さや安っぽさは見事に解消されていた。
一方,なかなか回ってくれないエンジンや,やや無機質なステアリングからは運転の楽しさを覚えにくい。刺激を求めるならSモードやマニュアルモードで走るか,GTIかポロ以上の車格のクルマを選ぶ必要があるのだろう。長距離巡航もラクそうに感じたが,残念ながらシートがやや薄いため長時間の移動では疲れが出やすいかもしれない。ブレーキはよく効くが,強く踏み込んだときはややフワフワした(おそらくブレーキラインの特性だろう)。
サイドミラーは小さく形状の点からも見にくい。雨で水滴がついてしまうと役に立たない。室内に点滅中のウインカーが見える仕様のドアミラーウインカーも個人的には嫌いだ。前席は下がったルーフによる包まれ感というよりは圧迫感がある。サイドドアを開けた時のドアの角のとんがった出っ張りは怖い。ルーフの遮音性は低く,雨が降ると車内は途端に安っぽい雰囲気になってしまう。
などなど,不満な点もないわけではないが,それを上回る圧倒的な洗練には口をつぐむしかない。ワールドCOTYに輝いたのも至極納得。大きなクルマからのダウンサイジングや高級感のある(だけどそれほど気取らずにすむ)コンパクトカーに乗りたい人にはうってつけだろう。また,「若い頃は元気に走ったりクルマをいじるのが好きだったけど,いまはもう・・・」といった方々にも満足できる&納得させられる内容だと思う。
そして次に,Newスイフトのミドルグレード,XL(1.2L NAエンジン+副変速機構付きCVT)に試乗。

今回のスイフトが発表されたときから感じていたことだが,このクルマは開発に対する気合いが他の国産のコンパクトカーと違う。過度に力は入っていないと思うのだが,生真面目に作られたことが伝わってくる。コストダウンが優先されたことが伝わりまくってくる現行マーチとはオーラが違う。
デザイン的に先代との違いが分からないという声もしばしば見聞きするが,自分は先代より走りと実用性に重きをおいたであろうサイズ拡大と,欧州車的な雰囲気を強めたエクステリアに明確な進化を覚えていた。
実際に先代と現行のスイフトを並べて見ると,先代はずんぐりして見えるし,後席がいかにも狭そう。対する現行は,SX4やスプラッシュと相通ずるデザインとなっていることがよく分かる。とくに,サイドからリアのラインは,SX4と同じジウジアーロによってデザインされているフィアットのグランデプントのそれを彷彿とさせる。フロントのワッペングリルは,先代のゴルフやポロではなじめなかったが,スプラッシュとの共通感とともに日本車とは異なる雰囲気を醸し出している。
走り出す前に実用車としての圧倒的な造り込みに感嘆する。フィエスタよりも後席や前席の乗り降りがしやすいと感じたコンパクトカーは初めてだ。ポロの後に乗るとフロントの開放感やサイドミラーの見やすさも明確である。シートの表面の素材はスズキの悪いイメージそのままの安っぽさが残っているが,前席の形状はポロのそれより好きだ。後席は広くないが楽な姿勢を保てるようになっており,先代では決して乗りたくないと思った居住性もアップしている。トランクルームの見た目は広くはないが,荷物をとても安定させやすそうである。
エンジンをかけて走り出してみると,アイドリングは抑えられ静寂性も高い。それでいて妙な密閉感や重さはなく,緊張は強いられない。加速時にアクセルを踏んだ時の感覚はポロTSIより自然で軽いように感じられた。ちょっと踏めば3千回転くらいまでを使うことができ,回転を抑えたポロTSIよりも普通の感覚で運転できそう。ブレーキタッチは軽くロールも抑えられており,街中をちょこまかと走るにはちょうどよさそうだ。
残念なのは,ステアリングが軽い&中立が安定しないこと。ママや高齢者に乗ってもらうにはこうしておかないといけないのだろう。おそらくステアリングがよりしっかりするであろうであろう「スポーツモード」を上のポロ同様に今回は試すことができなかったのが残念。足まわりに関しては,ポロほどの堅さもないかわりに接地感もないが,16インチのタイヤを履きながら乗り心地の悪さやばたつきは感じさせないことを考えれば容認できる(むしろスゴイ)。
もっと踏み込んだらエンジンがどう反応するのか,高速や山坂道で足回りがどんな反応を示すのか興味が湧く。ポロTSIはそれらの反応におおよその想像がつくのだが,スイフトでは良くも悪くも想像がつかない(追記: 危惧していたように,
やや物足りないようだ)。
ポロとスイフト。どちらも素晴らしい車でとても気分のいい試乗となった。ただ,その特性や世界はかなり異なる。スイフトは国産の他のコンパクトカーと闘うならプラスアルファの華やディーラーの洗練が必要だろう。また,欧州コンパクトと闘うには「見た目がやんちゃっぽくない」スイフトスポーツか,より高性能で上質な上位グレードを出す必要があると思う。個人的には先代の「スイフト・スタイル」のようなコンセプトの内外装で,中身は欧州ホットハッチなみのハンドリングマシンなスイフトがあっても良いのではないかと思っている。対するポロは,高性能と洗練だけではない「何か」を忘れないで欲しい。
おそらく,これからまもなくスイフトはポロTSIの半値かそれ以下で買えるようになってしまうだろう。ポロと同じ価格帯で競合するのはスイフトスポーツになるはずだ。VWグループの一員となったスズキが,そこでどのようなすみ分けと品質や性能の確保を狙ってくるのか? とても楽しみである。
Posted at 2010/10/04 17:35:57 | |
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