
たまには、車の話なんぞも(^^)
先日、precisionさんのポルシェのフロントサスのブログがあったので、フロントサスまわりの運動学について...
最近は、一般にもアライメントと言う言葉が知られるようになり、トーイン、キャンバー、キャスターなどと言う言葉も車好きの人には普通に使われるようになり、トーインにすると直進安定性が上がると言うことも知られるようになりました。
それは間違いではないのですが、車の運動は単純に1要素で決まらないので、アライメントを1つ変化させて、希望の特性を引き出すと、必ず犠牲になる特性があります。
それも、「直進安定性の向上←→アンダー・タイヤの片減り」と言った単純なところでない、知識がないと思いもよらない運動特性にです。
なので、車は購入して足回りを触ることが出来ますが、所詮スタビ、バネ、ブッシュ、ダンパー、アライメント程度で、基本運動特性を決定するサスジオメトリは、その車が設計された段階で決まるので、試乗を繰り返して手を入れなくて満足な足回り(特性)を持った車を選択するのが理想です。
写真はホイールポジションですので、記号を参考にして下さい。
先日、
高速安定性とはで書きましたが、日本車の高速安定性が基本ジオメトリによらず、アライメントレベルのサスセッティングによって引き出していると感じるのは、このあたりの考え方の違いだと思います。
超高速域で安定性を出すためには、トーインの調整がありますが、それは本質的なものでは無く、FF車におけるステアリングの弾性運動学的変化を補正(FRの15~25mmに対して、-20mm以内)するのに使うのが本来です。
下手にトーインをいじるのは弊害もあるので、キャスター角とキャスタートレールの適切な設定と、サスの横剛性の向上によって対応するのが良いと思います。
ベンツ、BMWなどは200km/hでハンドルから手を離して、メーターにカメラを向ける余裕があるほどの直視安定性がありながら、トーインに頼っていないので、車検におけるサイドスリップテストでは既定値(5mm)に収まらないことが知られており、車検場でも既定値に入らなくてもパスさせてもらえます。
キャスター角:τとキャスタートレール(ナッハラウフ):nは、影響を混同される場合がありますが、その力の働きを分けて考える物です。
◎キャスター角τ
図のように側面からみた、キングピン中心線と垂直線のなす角度です。
キングピン傾斜角とともに、ステアリングアングルによる、キャンバーの変化とステアリングの直進位置への復元力に影響を与えます。
バイクでも、フロントフォークが寝た物ほど、ステアリングを切った際に、タイヤが寝るように、欧州車の多くはステアリングを切って行くと、壊れたようにタイヤが寝てくるのは、τの設定が日本車よりも大きく設定されていることからもわかります。
このあたりは、回転半径を小さくすると言う思想もあると思いますが、超高速域での安定性を狙った設定と言う意味合いが大きいでしょう。
ベンツなどは、τが大きい割にステアリングの戻りが悪いのですが、これはアシストとステアリング系の味付けで、ハンドルの戻しも滑らすのは咄嗟の場合に対応出来ないので、運転者が意識してハンドルを戻すべきと言う思想から来ているように思います。
◎キャスタートレールn
図の側面からみた、タイヤの接地点とキングピン中心線(ストラット中心線と考えても良い)と路面との交点との距離です。
nは、タイヤの直進位置への復元に作用して、コーナリーング時のステアリングモーメントおよび直進安定性に影響します。
通常、τを大きくすればnも大きくなりますが、市販車、とくにFF車ではnを大きくすると、アンダーとステアリング反力の変化が大きくなるので、あまり大きくせず、また駆動力補正のためのトーインと総合的に考える必要があります。
τ、nは通常プラス側にされます。
これは、ブレーキングや通常の入力をダンパーに伝えやすく、剛性が出しやすいのと、ステアリング系の設計においてもギアボックスやリンクの配置が楽なためです。
直進安定性やハンドルの戻る力は、プラスマイナスで関係無いと思いますが、動的な運動では違いが出てきます。
ポルシェなどでは、マイナス側に設計されているようですが、マイナスにするとステアリングを切ったときに引きずられて、アンダーが強くなります。これは、928なのようなFRでの設定をみていないのではっきりわかりませんが、オーバー傾向のRRゆえの設計と思います。
また、マイナス側にすると、ブレーキングにおいてもノーズダイブしにくくなりますが、ストラットに高い剛性が無ければ、正確にサスを動かすことが出来なくなります。
Posted at 2005/05/15 12:48:23 | |
トラックバック(0) |
技術解説 | クルマ