
3.0R spec.Bで採用されている6MTはインプの6MTを基本にしている事は良く知られています。
この6MTはSTiのために、将来も考えて38kg以上のトルクに対応出来るように設計されたもので、全シフトロッドにスライドボールベアリング、ディテント部には2重ボール構造のアクセントプランジャーを採用して、剛性感が高く、クイックで節度感のあるシフト操作を可能としています。
また、シンクロは1速・3足・リバースにダブルコーン、2速にトリプルコーンを採用することでスムーズな変速を可能とし、クラッチサイズとカバー荷重のアップも行われています。
以前、スバルはガラスのミッションなどと呼ばれましたが、個人的には決して弱い物だとは思いません。
よく他社の4WDの構造をカタログなどで見ると、エンジンからクラッチ-ミッションを経て後輪のドライブシャフトにつながると同時に、ミッション後端から前方に短いドライブシャフトが伸びて、フロントのデファレンシャルに繋がっているのを見かけると思います。
これに対して、スバル車のミッション構造は特徴的で、そうした前方に繋がるフロント駆動のためのドライブシャフトが見あたりません。(イラストはBCの頃のものでシングルコーンでした)
これは、前輪に動力を伝えるドライブピニオンシャフトが、中空構造のドリブンシャフトの中を貫通する構造をとっているためで、コンパクト・軽量にまとめています。なぜ他社が出来ないかというと、全長が長くなりコストが増すためで、全長の短い水平対抗エンジンの強みが出ています。
まあ、V6も全長が短いので出来るはずですが、他社の4WD駆動レイアウトでは見かけない構造です。
このレイアウトを実現するため、インプ、レガシィのフロントデフにはオフセットの大きな、コストの高い、食い違い歯車を持つハイポイドギアが用いられています。そのため、フロントLSDやセンターLSD(ミッションと一体になっている)を装着するMT車は、特に高負荷に耐えられる、API GL-6規格のミッションオイルが推奨されているようです。
あまり、一般品でGL-6規格なんて見かけませんが、BPで指定されているX5116はGL-6です。
それで、ミッションのギアですが、使用されるギアがシフトによって噛み合うのではなく、リバースを除いて常に噛み合っています。そして、メインシャフトかドリブンシャフトのどちらか一方はシャフトに固定されず空回りしています。
シフトレバーを操作すると、シフトフォークによってスリーブ(メインシャフトの3-4速間、5速のドライブシャフト側、ドリブンシャフトのR-2速間にある)をスライドさせて、スリーブ側面にあるギザギザをギア側面にあるギザギザに噛み合わせます。
それによって、メインシャフトに固定されているハブとギアを接続して駆動力を伝えます。このハブとギアをスムーズに接続するのがシンクロリングの役割です。
ギアにはテーパー状なっている部分があり、スリーブの移動によって、ここにシンクロリングが押しつけられて、摩擦によってシャフトの回転がこれから入れようとするギアに合っていって、スリーブ側面のギザギザが噛み合ってギアが入ります。
ですから、無理なシフトを行ってギアが入りにくくなるのは、ギザギザの山の頂点が削れてしまって噛み合わなくなると言う原因が一番多いです。
ダブル(トリプル)コーンシンクロと言うのは、このシンクロリングが2つ(3つ)重なるようにあって、より強力に回転を合わせてくれる機構です。
結局、こうした機構であるMT(シンクロ)を長持ちさせるには、
・ニュートラルでためを作り特にシフトダウンはに力で押し込むような操作をしない。
・回転差があるときは、回転を合わせたり、慣らし中で入りが悪いときはダブルクラッチを切る。
・ミッションオイルは純正品、またはGL-6を使用する。
・クラッチですが、変速時以外はクラッチに左足を載せておかない。
と言う、昔のシンクロが弱かった(無かった)時のテクニックが有効です。
まあ、普通に乗っていれば、クラッチが10万km、シンクロは20~30万kmまでいけると思います。
Posted at 2005/03/28 00:59:25 | |
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