GWの初日(?)になる4月25日、26日に愛知県は名古屋港金城埠頭にて海上自衛隊の艦艇一般公開が行われました。
名古屋港では過去に護衛艦が幾度となく一般公開されていましたが、今回は?

今回は潜水艦救難母艦AS-405「ちよだ」(満載排水量5400トン)です。
護衛艦は一般公開も多く比較的見る機会が多いですが、潜水救難母艦は非常に珍しいですからとても楽しみです。
ということで名古屋港にいきました。
一般公開は13:30~15:30ですので、13:40頃到着したわけですが・・・

・・・・なんすかこれ・・・・?
判りづらいと思いますが、一番奥まで並んでいるだけじゃなく、さらにそこから折り返して左舷の受付につながっているのでむちゃくちゃ並んでいるわけです。
確かに最近自衛隊のイベントは注目が高まっているというのはよく聞きますが、人、集まりすぎじゃね?
地方協力本部の人たちも「まさかこんなにくるとは思わなかった」そうです(^^;
でも以前は集まっても数百人しかこなかった一般公開がこれだけ人が集まるようになったのは私もうれしい反面ちょっと寂しいような・・・(^^;
あ、結局13:40に並んで2時間半かかりました(汗)

「ちよだ」の艦尾です。
甲板から一段上がったところに設置された結構広めのヘリコプター甲板が目にはいります。
このへんは同時期に建造された護衛艦DD「はつゆき」型と似た雰囲気がありますが、幅はずいぶん広め。
「はつゆき」型の幅は13.6メートルに対して「ちよだ」は17.6メートルもあります。

ヘリコプター甲板を横から。
この時期の対潜ヘリコプターHSS-2Bが着艦できるよう十分余裕を持った大きさなんでしょうね。
現在ではSH-60JやSH-60Kがときどき着艦するそうです。
潜水艦救難活動で救助された乗員の搬送や物資の輸送にはヘリコプターは不可欠です。
ちなみに自衛艦旗にぶらんとぶらさがっている袋のようなものは次の日(4月26日)の海上自衛隊の日に行う満艦旗の準備のため中に信号旗がはいっているそうです。

左舷舷梯子付近にあったプレート。
「潜水艦救難母艦ちよだ」とあります。
実は海上自衛隊で潜水救難母艦は「ちよだ」1隻のみです。
潜水艦事故の際に救助を行う艦艇は「潜水艦急難艦」といいますが、この「ちよだ」は救難に加えて潜水艦に対する補給基地(母艦)としての能力を併せ持っています。
「ちよだ」の後に建造された「ちはや」はこの潜水艦への母艦機能がないため、現時点でこの「ちよだ」が海上自衛隊で唯一の潜水艦救難母艦になります。

艦構造物の後方から。
この方向から見ると護衛艦とはまた違った雰囲気を感じますね。
煙突の形も護衛艦とはずいぶん異なります。
海上自衛隊の護衛艦は一部を除いてガスタービンですが「ちよだ」はディーゼルをもちいています。
三井の8L4M型が2基2軸、出力は111500馬力となっているようです。

左舷後方。
搭載艇と膨張式救命筏がみえます。
ラティスマスト後方に2本見えるアンテナ状のものはラムテンショナ。
救難活動でDSRV等を昇降中に海面のうねりなどで動揺したときに損傷しないためのものです。

膨張式救命筏です。
緊急時にはこれを海面に投下するとカバーが外れて炭酸ガスで膨張して筏になります。

こちらは救命浮環。
海上自衛隊で使われている浮環は視認性をよくするために赤色で塗られています。

DSRV収容部です。
艦構造物は艦艇というよりはまるでコンビナートの工場のような雰囲気がありますね。
「ちよだ」は艦中央部はPTCやDSRVを収納・昇降させる装備がしめています。
2枚目はDSRV収容部を下から眺めたところ。
いくつもの配管やDSRV、PTCを移動させるための搬送機(ガントリークレーン)がみえます。

DSRVを昇降させるためのリール。
DSRVの重さは40トンなのでかなり巨大でごつい印象を受けます。
DSRVは船体中央部に設置されたセンターウエルから海中に昇降させます。

艦首です。
海中なので写真ではわかりませんが艦番号405の下の喫水線下にバウスラスタがあります。
スラスタは艦尾側にもあって細かな操艦が行えます。
潜水艦の救難活動を行う際に母艦となる「ちよだ」はDSRVやPTCの支援ともうひとつ重要なのは定点にとどまる機能です。
常に救助対象の潜水艦の真上に留まって位置を保持できるように自動艦位置保持装置を装備しています。
この保持のために微妙な操艦を行うのがスラスタというわけです。

ガントリークレーンとPTC。
赤いものがPTCです。
PTCとはPersonal Transfer Capsuleのことで水中昇降機です。
作業で使われるときは減圧室で作業深度に応じたヘリウムと酸素の混合気体を吸ったダイバーが乗り込んで目標深度まで降ろして海中と同じ圧力に加圧します。
PTCに繋がっているチューブは温水が流れ、海中作業で低体温にならないように冷えたダイバーの身体を温めるものです。
PTCが球状なのは圧力に対して有利な形状だからです。

艦中央部。
DSRVとPTCの収容部になっています。
手前の赤い柱に囲まれているのがPTC、その後方にある小型の白い潜水艦のようなものがDSRVです。
DSRVとは深海救難艇で全長12.4m、幅3.2m、重量40トンの小型潜水艇で潜水艦救難活動の中心となる装備です。

DSRVの艇首と艇尾。
細かな操舵ができるようにスラスタがついています。
従来潜水艦事故の救難活動ではレスキューチャンバを用いていました。
釣鐘のようなチャンバを潜水艦の脱出ハッチにかぶせて接続して脱出ハッチをあけてチャンバに乗り込んで収容という形をとっていました。
このレスキューチャンバを導くのはダイバーですが、潜水艦の性能が向上してより深く潜水できるようになるとダイバーによる救難作業が難しくなってきました。
そこで小型の救難潜水艇を使って救難作業を行えるようになったわけです。
DSRVの中は3個の大きな球があってそれぞれ操作オペレータ室、要救助者収容室、機械室となっています。
操作員は2名で、救難収容可能人数は12名とされています。

DSRVの前部から中央部にかけて。
ガントリークレーンには青くて丸い樹脂製のローラがついています。
その下の黒いローラは小型飛行機用のタイヤなんだそうです。
海面の状態によっては艦が動揺しますが、DSRVの昇降中に動揺であばれることで破損しないようにやわらかい材質にして衝撃を吸収するためなんだそうです。

DSRVのスクリュ部です。
手前のチューブはPTCに温水を送るためのチューブですね。
「ちよだ」の艦中央部にあたる部分ですが、DSRV収容部側にも窓がありますね。
ここでDSRVやPTCの昇降を行うための管制室になっています。
では乗艦してみましょうか。

まず目に飛び込んでくるのが大量の棒です。
これ何だか判りますか?
これはアクアラングの酸素ボンベの補充作業を行うための作業柱なんです。
とにかく使う酸素ボンベの数が多いのでこれぐらい必要なんだとか。

補充作業を行って収納するための扉がこれなんだそうです。
「X」マークは普段締めておきなさいという意味なんだとか。

かなり特徴的な艦橋です。
断崖絶壁で非常に巨大です。
これはもちろんDSRVの搭載スペースのためですが、まるでタンカーの船橋のようですね。

艦橋前面に横方向に設置された梯子のようなもの、これはなんでしょう?
実は作業用の足場なんです。
航海中に窓を拭いたり防錆のためのペンキを塗るなどの作業は乗員自らが行いますがそのための足場なんだそうで・・・・
めちゃくちゃ高くて怖い!!

艦橋上部に設置されたスーパーバード衛星通信アンテナ。

こちらは艦内の食堂。
思ったよりも小さいですね。
「ちよだ」は乗員は125人です。
潜水艦の母艦機能もありますが、潜水艦の乗員80人分の宿泊・休憩施設は艦後方の甲板(ヘリコプター甲板の下)にあるそうです。

NABEがあったぜ!

この物々しいタンクは何だと思います?
これはDDC(艦上減圧室)です。
DSRVがあるとはいえ、艦外で活動するダイバーは必要です。
人間が深海にもぐり、再び上がってくると水圧変化の関係で窒素が血液内で気泡化して減圧症になってしまいます。
それを防ぐには減圧室で身体を慣らす必要があります。
酸素とヘリウムを充満したDDCの中で十分体を慣らして飽和潜水の準備ができてからPTCに直接乗り込んで潜水を行います。

DDCの監視盤。
タンク内はカメラがあってここに映し出されます。
DDCでの酸素・ヘリウム濃度やダイバーの状態をここで監視します。

DDCの中です。
ベッドとトイレ・シャワーがありますね。
ということは・・・
そう、この減圧はちゃちゃっとできるわけではありません。
減圧症を防ぐためにじっくり行う必要があります。
例えば400メートルという深海で作業を行う場合はここにはいって1ヶ月間生活をして身体を慣らす必要があります。
中では絶対安静が必要で、身体を大きく動かすことも出来ないそうで非常に過酷な状態なんだそうです。
海上自衛隊は400メートルという深海で40日間の作業実績があるそうな。
さて飛行甲板にでてみましょう。

艦尾の自衛艦旗。
自衛艦旗は軍艦旗に相当するもので非常に重要な役割があります。

ヘリコプターの飛行甲板です。
丸いものがいくつもみえますが、これはヘリコプタ固定用のフック。
「ちよだ」は潜水艦母艦の機能もありますが、潜水艦乗組員の宿泊・休憩施設はこのヘリコプタ甲板の下にあります。

こちらはヘリコプタ管制室。
前進しながらも海流で流されながらさらに上下に揺れる艦に着艦するのは非常に難しい技術が必要です。
艦側からヘリコプタの発艦・着艦のサポートを行うのがこの管制室ですが、護衛艦の管制室とはずいぶん形が違いますね。
ヘリコプターはSH-60が着艦するそうですが、頻度としてはそれほど多くないそうです。

飛行甲板から右舷をみたところ。
搭載艇と昇降機がみえます。
「ちよだ」は潜水艦の救難を行う艦艇ですが、「ちよだ」が建造されてから幸運なことに海上自衛隊の潜水艦事故はおきてはいません。
災害派遣などで救難活動で活躍しています。

「ちよだ」を前から。
現在海上自衛隊が保有している潜水艦救難用の艦艇は「ちよだ」とその後に建造された「ちはや」の2隻です。
「ちよだ」は「ちはや(先代)」の代艦として昭和56年度計画艦で昭和58年に進水、昭和60年3月27日に竣工されました。
第2潜水隊群直轄艦として横須賀基地を母港としています。
以上、潜水艦救難母艦「ちよだ」一般公開でした。