イトケン(G)のブログ一覧

　納車後1か月、約2000km走行時点で、フィーリングがだいぶ変わってきましたので、加筆します。

　ベーシックな欧州車にMTで乗れることに、このクルマの最大の価値と個性が有ります。スライドドアを持ったミニバンタイプのクルマでMTの組み合わせもこれしかありません。そして、たぶんこれが最後。

◇パワートレインについて◇
　納車当初は、かなりギクシャクして戸惑ったが、あたりが付くにつれ、かなり改善された。
納車時「小排気量とターボの組み合わせに加えてつなぎの遠いクラッチのせいで、トルクが乗る前の回転域や、2速への繋ぎはギクシャクする。発進時にスムースに走らせるには、穏やかにそして的確にアクセルとクラッチとギアの操作をする必要がある。そして、急発進、急加速が苦手だ。」
現在「エンジンはなめらかに回るし、低回転からターボが効いてトルクが立ち上がるので、ラフに扱っても、普通にしっとり加速する。アップテンポで走りたいときは、その気持ちにクルマが反応してくれる。オレは普段ecoモードで走っているが、それをオフにすればかなり軽快に走る。パワートレインにはほぼ不満はナシ。願わくば、繋ぎがもっと近くなればいいのだが」


　そして、エンジンの音が、ノスタルジーなんだな。20年前のトヨタや日産の1トントラック(ライトエースとかがベースの、小型トラックね。今でもあるのかな)と同じ音がする。キュルルルというセルの回り方も、モーンというアイドリング時の排気音も、昔のビジネスカー、それも一番安いやつの音だ。この音がたまらなく好きだ。

◇シートについて◇
　最初、シート形状はオレの体には合わないと思っていたが、すぐに慣れた。ふんわり座り心地の良いシートです。ただし、座面のサイズは小さめだけれど。(後部座席も)日本人の体にはちょうどいいサイズだとも思う。日本人向けに小さくしているとか？いや、それはないか。

◇足回りについて◇
　足回りはフロントストラットに、リアはトーションビームとお金のかかっていないシンプルな構造。ここに195-65-15という高扁平率の華奢なタイヤを組み合わせる。
納車時「65扁平のタイヤが、重くて硬いボディと、安い足が処理できない振動を受け止め、ポヨンポヨンとした挙動が発生する。夢のように快適な走行フィーリングをイメージしていたのだけれど、しっかり揺れるクルマだった。」
現在「乗り心地もかなりいい。ふんわりと包み込んでくれるような乗り心地で、いつまでもどこまでも走っていけるような気がする。ただし、大きなわだちや段差で、強いゲインが入った場合は、クルマ全体が揺さぶられる。トーションビームの特性で、これは避けようがないのだと思う。長い間マルチリンクのクルマばかり乗り継いできたので、ビームの揺すぶりだけは好きになれない。」

　不満もあるが、苦痛に感じる場面は少ない。ふんわりしっとりとした乗り味のおかげで、気持ちが穏やかになる。速く走れるクルマではないが、のんびり走ることに心地よさを感じる足回りの設定です。

　高速道路での直進安定性は高く、ハンドルの修正は最小限で済む。ただし、ドイツ車のような怒涛の安定感はない。

　
◇剛性感と共鳴振動について◇
　カタログには、大人の女の人がボンネットの上に乗り、屋根に子どもが乗っている写真が掲載されている。昨今のクルマは、そんなことをしたらベコベコにへこんでしまう。写真はフェイクかと思っていたら、本当に固い。鉄板の分厚さは、20年以上前の業界水準だと思う。おそらく、超高張力鋼鈑なんて、使っていない。肉厚の鉄板で、この鬼のようなむっちりとした剛性感を出しているのだ。そして、この肉厚な鉄板がエンジンやロードノイズの微振動を拾って共鳴し、全体的に低周波の音を発している。この音も懐かしい。
　
◇総論◇　
　総じて、すごく味が濃く、楽しい世界です。エンジンの音やボディのゆすぶられ方、そしてロードノイズなど、五感を刺激するすべてが、遠い昔どこかで味わったことのあるものだという気がする。それこそがタフな道具感を演出しているのだとも思う。道具感あふれる乗り物が暮らしの中にあることの満足感は非常に高い。

　更に、カングーは室内をDIYで仕上げていくという楽しみがある。クルマいじりと言うと、高性能パーツを付ける事というイメージがあるが、カングーの場合は日常大工や園芸の延長線だ。木工や裁縫といったハンドクラフトで、自分だけの家や家具を仕上げていくような楽しみがある。早速、杉の香りが漂う木製のベッドキットを完成させた。

　これまでとは全く違うカーライフが、カングーとなら繰り広げられるのは間違いない。