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2025年05月06日

DUCATI SSの整備【57】変速タッチの改善 & 乾式クラッチ考

DUCATI SSの整備【57】変速タッチの改善 & 乾式クラッチ考
致命的とは言えないレベルではあるが、変速タッチが重く、ダウンシフト時に時折ミスが起きるのが気になっていた。

変速フィーリングはトランスミッション本体やペダルなどに主原因はあるが、卑しくも”商品”として広く一般向けに販売された車両。
明確な故障や不具合がない限り、スロットルやクラッチの遊びや応答性、レバーやペダルなどの動きの軽さや滑らかさ、無理のない乗車姿勢といった、関連操作を含めた車両&運転者全体で「動的」に考える必要があると思います。
****************************************

●ギヤペダルリンケージの最適化
【変更前】
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【変更後】(※シフトロッドが車体から離れて見えるのは撮影アングルの違いゆえ、為念)
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・シート座面を実質10mm以上高くしていても筆者の体格では膝の曲がりがきつい。
 必然的につま先は下向きにしたいので、以前よりもさらにペダルを下向きに調整。
・ピボット奥のワッシャー厚み変更で、ペダルとシフトロッドを1mm内側に追い込む。
 (曲げモーメント減少のため、ギヤチェンジシャフト支持部(クランクケース内ベアリング)に、たとえ僅かでも近い内側に寄せる)
・ペダル軸/ギヤチェンジシャフトとシフトロッドが、上から見て90度で交わるよう、
 ロッド位置シム調整&チェンジシャフトレバーのクランプ位置(スラスト方向)調整。
 直角でなくても連結部の作動が円滑なのがピローボールの美点だが、軸と交わる角度が90度からずれると回転力と曲げモーメント以外に、スラスト方向にも力が掛かり好ましくないように思う。
 (車体中心線に平行なフットペグブラケットの外面と、シフトロッドが平行になるように)
・動きが重い片側のロッドエンド(ピローボール)を、僅かにがたつきがあるが動きの軽いもの(中古保管品)と交換。これに関しては適材適所で個体選択すべき。
・ギヤチェンジシャフトオイルシールにメタルラバーを吹き付けて潤滑

●クラッチラインのエア抜き
冷間時は少ないショックでニュートラルからローギヤにシフトできるが、温まるとショックが大きくなりガチャンと音がするようになるのがいたたまれない。
暖機が進むにつれ熱膨張でプレート/ディスク間のクリアランス減少、あるいは面歪みの増幅で切れが悪くなると思われるが、エア噛みでストロークが減少していないかも気になるところ。

・すでにフルード交換後、2度行なっているが、再度フルード交換がてらエア抜きをおこなう。
※スレイブ側は、それなりに高温になるクランクケースカバーに取り付けられている上、
筆者の住環境(市街地)の場合、”通算ストローク量”(ストローク量×回数)がブレーキシリンダーのそれよりはるかに多いので、ブレーキフルードより早く褐色化する。(劣化と同義ではないのかもしれないが)
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ホースの中間部が高くなっているとエアが滞留するので持ち上げておき、スレイブシリンダーからマスターシリンダー・リザボアに向けてなるべく直線的にして、
各部をプラハンマーで軽く叩き、段差や角などに引っかかっているエアに衝撃を与えて移動のきっかけを与えてやる。
結果、想像以上に両シリンダーから気泡が上がってきた。

※リザボア別体型マスターシリンダー(横置き)は見た目のレース車両イメージを狙っていると思われるが、ホース差し込み部で内径に段差ができるためかエアが滞留しやすい(抜けにくい)ようだ。
余程カウルとマスターシリンダー上面のクリアランスがない場合を除き、余計なコストを掛けるメリットがあるとは思えない。
(そもそもストリート車両の場合、隣接して高さのあるハンドルスイッチが必ず存在するはずだ)

※クラッチ本体側は整備未着手につき期をあらためて構造・現状確認を兼ねてディスク周辺だけでも分解整備を行いたい。
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【余談】
但し「乾式」(=オイルに浸っていない)という言葉から想像されるほど、例えば旧BMW RシリーズやグッツィVツインのような乾式単板とは違って、切れはそれほど良くないようだ。

実際、通気穴からプレッシャープレートの動きを見ているとストローク量はわずかで、500ccのパンタSLに端を発する軽量コンパクトを旨とした基本設計(軸間距離)を変えず、
大排気量=高出力化に対応して、摩擦係数を高め、ディスク枚数を増やしてクラッチ容量を大きくするための乾式化(750F1中期以降)と思われる
必ずしもレース前提の構造ではないであろうが、思想としては競技車両と軌を一にしているように思える。
(初期のパンタSL登場当時から、面積が小さい分は圧着力で補っていて、日本車よりも早い時期から油圧作動を取り入れていたが、元来レバーの引きは重い)

※ドゥカティに限らず、乾式クラッチ採用の目的はオイル攪拌抵抗を無くすため、との記述を二輪誌では多く見かけたが、的外れな気がする。
筆者の意見では「可能な限りのクラッチ小径化(あるいは外径維持)」=軸間寸法最小化(=エンジンユニットコンパクト化)と慣性モーメント(=質量×回転半径)軽減、摩擦係数を高めてクラッチ容量増大が主な目的、副次的には更なる多板化が比較的容易で、整備性の向上もあるように思う。
【追記】
忘れていたが、フリクションディスクライニングの摩耗かすがオイルに混入しないこともメリットと思う。

読者諸兄のご意見はいかがでしょうか?

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【整備後の操作感】
クラッチラインエア抜きの効果に大きな期待を抱いたが、意外やクラッチの切れや操作感に大きな違いは感じられない。多少無効ストロークが減った(気がする)程度。
ではあるが、変速時のペダル操作力は明確に軽くなり、変速時の節度の感触は向上した

恐らくはペダル角度変更とピローボール交換の効果が大きいと思われるが、
ちょうど最近入手したクシタニ製レーシングブーツのフィット感や足首の動かしやすさも功を奏しているように思う(ファスナーやかかと周辺の樹脂プロテクターを排除した造りでお勧め!)。

細かな事柄の積み重ねが違いにつながると信じて、今後も煮詰め作業を楽しみたい。

長年の愛好家としての経験や読書などの情報を基に「なぜそうするのか」科学的な考察を意識しつつ無い知恵を絞った改善作業を自ら行い、結果を確かめる試運転を行うことは、
ドゥカティの「機械としての造りや考え方の面白さ」に心奪われた一マニアとして無上の喜びであり、
好ましい結果が得られた場合は嬉しさのあまり寝付けない夜もあるほどで、我ながら大人げないとも思う(笑)

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Posted at 2025/05/10 14:04:48

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この記事へのコメント

2025年6月3日 22:53
個人的には、乾クラの好きなポイントは、クラッチかすがオイルに入らないのが第一です
次はメンテ性ですね

実はCRも乾クラ計画が…( ´∀`)
コメントへの返答
2025年6月4日 13:02
こんにちは。
いわれてみると、確かに抜いたオイルにクラッチのライニングかすみたいなスラッジはなかったですね。

CR乾式化、いいですね!
ダイシンの超絶改造マシンみたいで楽しみ(^^)

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